アグネスデジタル

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アグネスデジタル
2001年6月3日 東京競馬場
現役期間 1999年 - 2003年
欧字表記 Agnes Digital
品種 サラブレッド
性別
毛色 栗毛
生誕 1997年5月15日(27歳)
登録日 1999年7月8日
抹消日 2004年1月18日
Crafty Prospector
Chancey Squaw
母の父 Chief's Crown
生国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
生産者 ケイツビー W.クレイ
&ペーター J.キャラハン
馬主 渡辺孝男
調教師 白井寿昭栗東
調教助手 白坂宗治
厩務員 井上多実男
競走成績
生涯成績 32戦12勝
内訳
  中央競馬21戦7勝
  地方競馬8戦4勝
  日本国外3戦1勝
    (香港2戦1勝)
    (ドバイ1戦0勝)
獲得賞金 9億4889万2700円(換算額)
WTRR T/M 116(2003年)
IC T/M 117(2002年)
T/I 120(2001年)
D/M 117(2002年)
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アグネスデジタル英語表記:Agnes Digital香港表記:愛麗數碼)とは日本の元競走馬である。アメリカ合衆国で生まれ、日本で調教された外国産馬である。芝・ダート、良馬場・道悪、国内・海外を問わず活躍をした。現在は、北海道新冠郡新冠町ビッグレッドファームにおいて種牡馬として過ごしている。

経歴

1997年アメリカ合衆国ケンタッキー州にあるラニモードファームで生まれたアグネスデジタルは、生後2週間の時に日本の調教師白井寿昭に見いだされて購入され、翌1998年秋に日本へ輸入された。しかし同馬は「60頭くらい見たなかで1番気に入った馬」と白井により高評価を下されていた一方で、現地関係者からは「なぜこんな馬にするんだ?」と言われたほど目立たない馬であったという[1]

競走馬としてのデビューは1999年9月12日阪神競馬場の新馬戦(ダート1400m)。このレースではマチカネランの2着に敗れたが、折り返しの2戦目で勝利を挙げる。3戦目で初めてのレースに出走したが8着に敗れると再びダートのレースに出走するようになり、鞍上が若手の福永祐一からベテランの的場均にスイッチした5戦目の500万下条件戦で2勝目を挙げ、続く交流GIIの全日本3歳優駿も優勝し重賞制覇を成し遂げた。

2000年、陣営は目標を芝のNHKマイルカップとした。芝の重賞レースでも健闘はしたものの勝ちきれないレースが続き、NHKマイルカップで7着に敗れた後はダートのレースに続けて出走。6月名古屋優駿をレコードタイムで優勝。9月にはユニコーンステークスを優勝し、武蔵野ステークスでも2着に入った。武蔵野ステークスの後、アグネスデジタルの次走の候補にはマイルチャンピオンシップジャパンカップダートが挙がった。

調教師の白井は「春に芝で出走した感じでは大丈夫[1]」とアグネスデジタルの芝への適性に見切りをつけておらず、「ジャパンカップダートは距離が100m長い[1]」(当時2100m)との判断によりマイルチャンピオンシップへの出走を決定した。

レースではそれまで経験したことのない速いペースについていくことができず後方を追走する形となったが直線に入ると鋭い伸びを見せて1番人気ダイタクリーヴァを差しきり優勝。1分32秒6というレコードタイムでGI初制覇を達成した[2]

マイルチャンピオンシップを制した後、陣営は次の目標を翌2001年2月に行われるフェブラリーステークスとした。しかし京都金杯に出走した後で左前脚の球節を痛めたため、目標は6月安田記念に切り替えられた。この間に主戦騎手だった的場が引退したため新たに四位洋文を鞍上に迎えた。しかし前哨戦の京王杯スプリングカップと安田記念ではそれぞれ9着、11着に敗れた。安田記念の後は夏期休養がとられ、9月に復帰。日本テレビ盃、交流GIのマイルチャンピオンシップ南部杯を連勝した。当初陣営はマイルチャンピオンシップ南部杯の後マイルチャンピオンシップに出走させる予定を立てていたが、調教師の白井はアグネスデジタルの収得賞金額が天皇賞(秋)への出走要件を満たしていることから急遽同レースへの出走を決定した[3]。同レースはJRAの国際化計画によって前年から外国産馬に一部開放されたばかりで、当時外国産馬は2頭までしか出走できなかった。レースでは連覇がかかっていたテイエムオペラオーをゴール直前で差し切って優勝。45年ぶりの外国産馬による優勝を達成した。

天皇賞(秋)優勝後、陣営は香港国際競走への遠征を決定。出走レースには香港カップが選ばれた。レースでは先行策から直線で先頭に立って優勝した[4]。この年は中央競馬、地方競馬、海外で1つずつGI・G1競走を勝つ活躍を見せ、2001年JRA賞最優秀4歳以上牡馬に選出された。

2002年、アグネスデジタルは2月フェブラリーステークスを1番人気に応えて優勝し、GIの連勝記録を4と伸ばした。その後ドバイワールドカップへ遠征。しかし経由地の香港で飛行機の乗り換えがスムーズに進まず、9時間にわたって輸送用コンテナに入ったまま待たされる誤算が生じた。ドバイに到着したアグネスデジタルは満足な調教が行えないほど落ち込んでおり、ドバイワールドカップではストリートクライから2.6秒離された6着と敗れた。レース後は日本へ帰国せず香港の沙田競馬場で行われたクイーンエリザベス2世カップに出走し、エイシンプレストンの2着に敗れた。

クイーンエリザベス2世カップ出走後アグネスデジタルは体調不良に陥り、長期間の休養を余儀なくされた。白井は目標を翌2003年6月の安田記念に定め、5月かきつばた記念(結果は4着)を経て出走させた。レースではレコードタイムでアドマイヤマックス以下を差しきり優勝し、GI6勝目を挙げた。その後は5戦して未勝利で、有馬記念を最後に引退、ビッグレッドファームにて種牡馬入りした。

競走成績

年月日 競馬場 レース名 オッズ 着順 距離 タイム 3F タイム
騎手 斤量
[kg]
勝ち馬/(2着馬)
1999.09.12 阪神 3歳新馬 2.2(2人) 2着 ダ1400m(良) 1:26.1 (37.9) 1.1 福永祐一 53 マチカネラン
0000.10.02 阪神 3歳新馬 1.2(1人) 1着 ダ1200m(良) 1:13.0 (36.5) -0.5 福永祐一 53 (ツルマルアラシ)
0000.10.09 京都 もみじS OP 9.1(7人) 8着 芝1200m(良) 1:09.7 (35.8) 1.2 福永祐一 53 エンドアピール
0000.11.07 京都 もちの木賞 4.7(1人) 2着 ダ1400m(良) 1:25.1 (37.4) 0.0 福永祐一 54 スリーフォーナイナ
0000.11.27 東京 3歳500万下 1.8(1人) 1着 ダ1600m(良) 1:38.2 (36.6) -1.2 的場均 54 (ファインイレブン)
0000.12.23 川崎 全日本3歳優駿 GII 1.7(1人) 1着 ダ1600m(良) 1:41.1 (38.7) -0.5 的場均 54 (ツルミカイウン)
2000.02.20 東京 ヒヤシンスS OP 3.5(3人) 3着 ダ1600m(良) 1:37.8 (38.7) 1.4 的場均 57 ノボジャック
0000.03.12 中山 クリスタルC GIII 26.2(8人) 3着 芝1200m(良) 1:10.3 (36.5) 0.5 的場均 56 スイートオーキッド
0000.04.08 中山 NZT4歳S GII 23.4(7人) 3着 芝1600m(良) 1:34.5 (35.6) 0.1 的場均 56 エイシンプレストン
0000.05.07 東京 NHKマイルC GI 8.0(4人) 7着 芝1600m(良) 1:34.3 (36.1) 0.8 的場均 57 イーグルカフェ
0000.06.14 名古屋 名古屋優駿 GIII 4.1(3人) 1着 ダ1900m(重) R1:59.8 -0.3 的場均 55 (マイネルコンバット)
0000.07.12 大井 ジャパンDダービー GI (1人) 14着 ダ2000m(良) 2:09.3 (41.5) 2.9 的場均 56 マイネルコンバット
0000.09.30 中山 ユニコーンS GIII 10.0(4人) 1着 ダ1800m(良) 1:50.7 (37.2) -0.4 的場均 56 (マチカネラン)
0000.10.28 東京 武蔵野S GIII 8.3(4人) 2着 ダ1600m(良) 1:35.2 (36.6) 0.2 的場均 55 サンフォードシチー
0000.11.19 京都 マイルCS GI 55.7(13人) 1着 芝1600m(良) R1:32.6 (34.3) -0.1 的場均 55 ダイタクリーヴァ
2001.01.05 京都 京都金杯 GIII 4.8(3人) 3着 芝1600m(良) 1:33.8 (34.3) 0.4 的場均 58 ダイタクリーヴァ
0000.05.13 東京 京王杯SC GII 8.6(4人) 9着 芝1400m(良) 1:20.7 (34.4) 0.6 四位洋文 59 スティンガー
0000.06.03 東京 安田記念 GI 17.7(6人) 11着 芝1600m(良) 1:34.1 (35.9) 1.1 四位洋文 58 ブラックホーク
0000.09.19 船橋 日本テレビ盃 GIII 4.3(3人) 1着 ダ1800m(良) 1:51.2 (37.9) -0.7 四位洋文 58 タマモストロング
0000.10.08 盛岡 マイルCS南部杯 GI 2.1(1人) 1着 ダ1600m(良) 1:37.7 -0.1 四位洋文 56 トーホウエンペラー
0000.10.28 東京 天皇賞(秋) GI 20.0(4人) 1着 芝2000m(重) 2:02.2 (35.4) -0.2 四位洋文 58 テイエムオペラオー
0000.12.16 香港 香港C GI (1人) 1着 芝2000m(良) 2:02.8 アタマ 四位洋文 57.2 (Tobougg)
2002.02.17 東京 フェブラリーS GI 3.5(1人) 1着 ダ1600m(良) 1:35.1 (35.6) -0.2 四位洋文 57 トーシンブリザード
0000.03.23 UAE ドバイワールドC GI 発売なし 6着 ダ2000m(良) 四位洋文 57 Street Cry
0000.04.21 香港 QE2世C GI 2着 芝2000m(良) 2:02.6 0.1 四位洋文 57.2 Eishin Preston
2003.05.01 名古屋 かきつばた記念 GIII (4人) 4着 ダ1400m(良) 1:25.9 0.4 四位洋文 59 ビワシンセイキ
0000.06.08 東京 安田記念 GI 9.4(4人) 1着 芝1600m(良) R1:32.1 (33.7) クビ 四位洋文 58 アドマイヤマックス
0000.06.29 阪神 宝塚記念 GI 6.8(3人) 13着 芝2200m(良) 2:13.7 (37.9) 1.7 四位洋文 58 ヒシミラクル
0000.09.15 船橋 日本テレビ盃 GII (1人) 2着 ダ1800m(良) 1:52.2 (38.3) 0.8 四位洋文 58 スターキングマン
0000.10.13 盛岡 マイルCS南部杯 GI (2人) 5着 ダ1600m(不) 1:37.0 1.6 四位洋文 57 アドマイヤドン
0000.11.02 東京 天皇賞(秋) GI 7.9(4人) 17着 芝2000m(良) 2:00.4 (35.8) 2.4 四位洋文 58 シンボリクリスエス
0000.12.28 中山 有馬記念 GI 17.4(7人) 9着 芝2500m(良) 2:32.8 (36.6) 2.3 四位洋文 57 シンボリクリスエス
  • 1 タイム欄のRはレコード勝ちを示す。
  • 2 勝利してタイム差がない(0.0秒)場合は着差を表記。
  • 3 香港での正式な負担重量は126ポンド。1ポンドは約453グラム
  • 4 2002年クイーンエリザベス2世カップの勝ち馬エイシンプレストンの表記は、海外国際競走の慣例に従い英語表記とした。

表彰

  • 2001年 JRA賞最優秀4歳以上牡馬

種牡馬時代

2004年春より種牡馬となり163頭に種付けを行った。2005年、ファーストクロップとなる産駒が誕生し117頭が血統登録された。2007年7月にコスモビットが2歳未勝利を制し、この勝利が中央・地方を通じた産駒の初勝利となった。翌2008年ドリームシグナルシンザン記念を制し、初年度産駒から中央競馬の重賞勝ち馬を輩出した。2014年にはカゼノコジャパンダートダービーを制し、産駒が統一GI初勝利を果たした。以後も芝、ダート双方でコンスタントに重賞勝ち馬を輩出する活躍を見せている。

グレード級重賞勝利馬

太字はJpnI競走

地方重賞勝利馬

母の父としての主な産駒

オールラウンダー

芝・ダート、距離、中央・地方・海外を問わず活躍した[5]。調教師の白井寿昭はこの活躍ぶりについてアグネスデジタルを「異端児」と呼んでいる。また、3歳-6歳まで4年連続でGIを制覇するなど息の長い活躍を見せた[6]。さらに安田記念、マイルチャンピオンシップをレコードタイムで制するなどのスピードも見せた。また、当時に国内で行われていた芝・ダート1600mの古馬のGI・統一GIを全て制覇していることになる[7]

血統表

アグネスデジタル血統ミスタープロスペクター系アウトブリード(アウトクロス)) (血統表の出典)

Crafty Prospector
1979 栗毛
父の父
Mr.Prospector
1970 鹿毛
Raise a Native Native Dancer
Raise You
Gold Digger Nashua
Sequence
父の母
Real Crafty Lady
1975 栗毛
In Reality Intentionally
My Dear Girl
Princess Roycraft Royal Note
Crafty Princess

Chancey Squaw
1991 鹿毛
Chief's Crown
1982 鹿毛
Danzig Northern Dancer
Pas de Nom
Six Crowns Secretariat
Chris Evert
母の母
Allicance
1980 鹿毛
Alleged Hoist the Flag
Princess Pout
Runaway Bride Wild Risk
Aimee F-No.22-d


主な兄弟および近親

JRA3勝、主な成績:2004年毎日杯2着、青葉賞3着、巴賞(オープン)現・種牡馬
JRA3勝、主な勝ち鞍:2006年京成杯GIII)、2005年いちょうステークス(当時オープン)
  • 半弟 - フェニックスハート(牡・2004年産、父Pulpit
地方1勝

脚注

  1. ^ a b c 2000年11月20日日刊スポーツ
  2. ^ なお、この勝利が鞍上の的場均にとって最後のGⅠ競走の勝利となった。
  3. ^ 2001年10月29日日刊スポーツ
  4. ^ 香港カップが行われる段階でステイゴールド香港ヴァーズを、エイシンプレストン香港マイルを優勝しており、陣営は大きなプレッシャーを感じていたという。
  5. ^ 中央、地方、海外でGI・G1競走を優勝。中央競馬では史上初めて芝・ダートのGI競走をともに優勝した。アグネスデジタルが勝利を挙げた競馬場は9場にのぼる。
  6. ^ 4年連続GI優勝は他にはメジロマックイーンメジロドーベルアドマイヤドンユートピアウオッカがいる。
  7. ^ 現在ではかしわ記念がこれに加わっている。

参考文献

  • 田中直成「記憶の中の名馬 アグネスデジタル」『週刊Gallop』2008年3月23日号 - 4月13日号、産業経済新聞社

外部リンク