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{{暫定記事名|date=2016年6月}}
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{{出典の明記|date=2016年9月}}
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'''世界の記憶'''(せかいのきおく、{{lang-en-short|[[:en:Memory of the World Programme|Memory of the World]]: '''MoW'''}})は、[[国際連合教育科学文化機関|国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)]]が主催する事業の一つ。危機に瀕した[[古文書]]や[[書物]]などの歴史的[[記録|記録物]]([[可動文化財]])を保全し、広く公開することを目的とした事業として、[[1992年]]に創設された。[[日本国政府|日本政府]]は[[2010年]]に[[日本ユネスコ国内委員会]]の小委員会で「'''記憶遺産'''」と訳すことを了承したが、「{{en|heritage}}」など遺産を意味する英単語が正式名称に含まれていないことから、[[外務省]]や[[文部科学省]]では[[2016年]]6月から直訳である「世界の記憶」を用いている<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/culture/heritage/20160611-OYS1T50057.html 「記憶遺産」改め「世界の記憶」、外務省が日本語名称変更 : 文化] 読売新聞(YOMIURI ONLINE)、2016年6月11日</ref><ref>[http://www.sankei.com/life/news/160620/lif1606200037-n1.html 記憶遺産「世界の記憶」に 文科省が表記変更] 産経ニュース、2016年6月20日</ref>。
'''世界の記憶'''(せかいのきおく、{{lang-en-short|link=no|[[:en:Memory of the World Programme|Memory of the World]]、略号 '''MoW'''}})は、[[国際連合教育科学文化機関|国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)]]が主催する事業の一つ。危機に瀕した[[古文書]]や[[書物]]などの歴史的[[記録|記録物]]([[可動文化財]])を保全し、広く公開することを目的として、[[1992年]]に創設された。選定件数は2017年10月時点で地域登録を含め470件超である<ref name="mext_2020-10-16">{{cite web|url=https://www.mext.go.jp/unesco/006/1354664.htm|title= 国際関係 > 日本ユネスコ国内委員会 > ユネスコの活動(文化、情報・コミュニケーション) > 「世界の記憶」|website=文部科学省|accessdate=2020-10-16}}</ref>。
[[日本国政府|日本政府]]は[[2010年]]に[[日本ユネスコ国内委員会]]の小委員会で「'''記憶遺産'''」と訳すことを了承したが、u「{{en|heritage}}」など遺産を意味する英単語が正式名称に含まれていないことから、[[外務省]]や[[文部科学省]]では[[2016年]]6月から直訳である「世界の記憶」を用いている<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/culture/heritage/20160611-OYS1T50057.html 「記憶遺産」改め「世界の記憶」、外務省が日本語名称変更 : 文化] 読売新聞(YOMIURI ONLINE)、2016年6月11日</ref><ref>[http://www.sankei.com/life/news/160620/lif1606200037-n1.html 記憶遺産「世界の記憶」に 文科省が表記変更] 産経ニュース、2016年6月20日</ref>。


[[File:UNESCO-MOW-text.svg|thumb|right|150px|記憶遺産のロゴ]]
[[File:UNESCO-MOW-text.svg|thumb|right|150px|記憶遺産のロゴ]]


== 概要 ==
== 概要 ==
歴史的記録物は人類の[[文化]]を受け継ぐ重要な文化遺産であるにもかかわらず、毀損されたり、永遠に消滅する危機に瀕している場合が多い([[文化浄化]])。このためユネスコは[[1995年]]、記録物の保存と利用のためのリストを作成して効果的な保存手段を用意するために「世界の記憶」の選定を開始し、記録物保護の音頭を執っている。事業の主要目的は、世界的重要性を持つ記録物最も適切な保存手段を講じることによっ重要な記録物の保存を奨励し、[[デジタル化]]を通じて全世界の多様な人々の接近を容易に<ref group="注">選定資料デジタル化公開の好例はイスラエルの[[ヤド・ヴァシェム]]における[[ホロコースト]]証言集が上げられる[http://www.yadvashem.org/yv/en/exhibitions/last-letters/1943/index.asp Last Letters From The Holocaust: 1943:I Left Everyone At Home]を参照</ref>、平等な利用を奨励して全世界に広く普及することによって世界的観点で重要な記録物を持つすべての国家の認識を高めることある。
歴史的記録物は人類の[[文化]]を受け継ぐ重要な文化遺産であるにもかかわらず、毀損されたり、永遠に消滅する危機に瀕している場合が多い([[文化浄化]])。このためユネスコは[[1995年]]、記録物の保存と利用のためのリストを作成して効果的な保存手段を用意するために「世界の記憶」の選定を開始し、記録物保護の音頭を執っている。事業の主要目的は、世界的重要記録物最も適切な手段を講じて保存を奨励し、[[デジタル化]]を通じて全世界の多様な人々の接近を容易にすること<!-- タグをテンプレートに変更。出典を含むため。ref group="注" -->{{efn2|選定資料デジタル化公開の好例はイスラエルの[[ヤド・ヴァシェム]]における[[ホロコースト]]証言集が上げられる<ref>[http://www.yadvashem.org/yv/en/exhibitions/last-letters/1943/index.asp Last Letters From The Holocaust: 1943:I Left Everyone At Home]</ref>。}}、平等な利用を奨励して全世界に広く普及させ、世界的観点で重要な記録物を持つすべての国家の認識を高めることある。


「世界の記憶」と呼ぶと歴史的出来事自体を登録するように誤解されがちだが、歴史的出来事を検証・顕彰できる一次記録物が対象であり、ユネスコでも「[http://www.unesco.org/new/en/santiago/communication-information/memory-of-the-world-programme-preservation-of-documentary-heritage/ the documentary heritage]と称していることから<ref name="mow"/>、「世界の記録」「記録遺産」とした方が意味合いとしては適切との指摘もあり、[[大韓民国|韓国]]では記憶({{lang|ko|기억}})でなく記録({{lang|ko|기록}})としている([[:ko:세계기록유산|세계기록유산]])。
「世界の記憶」と呼ぶと歴史的出来事自体を登録するように誤解されがちだが、歴史的出来事を検証・顕彰できる一次記録物が対象であり、ユネスコでも「the documentary heritage」<ref> [http://www.unesco.org/new/en/santiago/communication-information/memory-of-the-world-programme-preservation-of-documentary-heritage/ the documentary heritage] </ref>と称していることから<ref name="mow"/>、「世界の記録」「記録遺産」とした方が意味合いとしては適切との指摘もあり、[[大韓民国|韓国]]では記憶({{lang|ko|기억}})でなく記録({{lang|ko|기록}})としている([[:ko:세계기록유산|세계기록유산]])。


ユネスコ内部の担当部署は、情報・コミュニケーション局情報社会部情報アクセス・保存課である。
ユネスコ内部の担当部署は、情報・コミュニケーション局情報社会部情報アクセス・保存課である。
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== 選定手続 ==
== 選定手続 ==
選定基準は世界歴史に重大な影響をもつ事件・時代・場所・人物・主題・形態・社会的価値を持った記録物(一次資料)を対象とする。申請は原則的に[[政府]]および[[非政府組織|非政府機関]]を含むすべての[[個人]]または[[団体]]ができるが、関連地域または国家の委員会(後述する「[[世界の記憶#地域委員会と地域版、国内委員会と国内版|地域委員会と地域版、国内委員会と国内版]]」の節参照)が存在するのであれば、その援助を受けることができる。申請権は対象記録を所有する事象当事国に限られる(事象と記録が複数国に跨る場合は双方の合意の上)<ref name="mow"/><ref name="手引">{{PDFlink|[http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/micro_detail/_icsFiles/sfieldfile/2015/03/02/1355545_03_1.pdf ユネスコ記憶遺産 登録の手引(仮訳)]}}(文部科学省</ref>。
選定基準は世界歴史に重大な影響をもつ事件・時代・場所・人物・主題・形態・社会的価値を持った記録物(一次資料)を対象とする。申請は原則的に[[政府]]および[[非政府組織|非政府機関]]を含むすべての[[個人]]または[[団体]]ができるが、関連地域または国家の委員会が存在するのであれば、その援助を受けることができる(後述の<!-- anchor を置きリンクさせましたので半角シャープ「#」は除去しないでください。 -->「[[#地域委員会と地域版、国内委員会と国内版]]」の節参照)。申請権は対象記録を所有する事象当事国に限られる(事象と記録が複数国に跨る場合は双方の合意の上)<ref name="mow"/><ref name="手引">{{cite document|和書|url= https://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/02/13/1354665_02.pdf|format=pdf|title=ユネスコ記憶遺産 登録の手引(仮訳)|author=|publisher=文部科学省|year=2012}}</ref>。


まず、申請者はユネスコ本部内の一般情報事業局に申込書を提出して書類審査を受けるが、申請は1国で2件までであり、日本の例では3件以上の申し込みがあれば日本ユネスコ国内委員会が2件に絞り込むよう調整が行われる<ref>{{Cite web|url=http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2013/05/22/1334841_04_3.pdf |title=ユネスコ記憶遺産推薦から登録までの工程について |publisher=文部科学省 |accessdate=2014-03-03}}</ref>。
まず、申請者はユネスコ本部内の一般情報事業局に申込書を提出して書類審査を受けるが、申請は1国で2件までであり、日本の例では3件以上の申し込みがあれば日本ユネスコ国内委員会が2件に絞り込むよう調整が行われる<ref>{{Cite web|url=http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2013/05/22/1334841_04_3.pdf |title=ユネスコ記憶遺産推薦から登録までの工程について |publisher=文部科学省 |accessdate=2014-03-03}}</ref>。


審査はユネスコ事務局長が任命する委員14名によって構成された「国際諮問委員会 (IAC)」を通じて[[1997年]]から2年毎に「MoW選考委員会 (Register Committee)」の場で選定を行っている<ref name="mow">{{PDFlink|[http://unesdoc.unesco.org/images/0012/001256/125637e.pdf General Guidelines to Safeguard Documentary Heritage(記録遺産保護のためのガイドライン)]}} - UNESCO</ref>。国際諮問委員会の委員は、ユネスコの「公共図書館宣言」<ref>[https://www.jla.or.jp/portals/0/html/yunesuko.htm ユネスコ公共図書館宣言 1994年] [[日本図書館協会]]</ref>を遵守する国の[[公文書館]]ユネスコ「図書館統計の国際的な標準化に関する勧告」<ref>{{PDFlink|[http://www.mext.go.jp/unesco/009/004/011.pdf 図書館統計の国際的な標準化に関する勧告]}}(文部科学省)</ref>に定義されるや[[ワールド・デジタル・ライブラリー]]へ参加する[[図書館]]の[[司書]]などが多い。委員に求められる資質は、国連出版物の編纂や国際的な図書普及啓蒙活動に関与した実績、典籍研究が広く評価されていることなど[[国際図書館連盟]] (IFLA) や国際文書館評議会 (ICS) からの推挙もある<ref name="mow"/><ref>[[国立国会図書館]]月報433号 ユネスコ世界の記憶プログラム・アンケート結果報告-日本国内の図書館における資料保存活動 資料保存対策室</ref>。
審査はユネスコ事務局長が任命する委員14名によって構成された「国際諮問委員会 (IAC)」を通じて[[1997年]]から2年毎に「MoW選考委員会 (Register Committee)」の場で選定を行っている<ref name="mow">{{cite document|format=pdf|url=http://unesdoc.unesco.org/images/0012/001256/125637e.pdf |title=General Guidelines to Safeguard Documentary Heritage(記録遺産保護のためのガイドライン)|publisher=UNESCO|accessdate=}}</ref>。国際諮問委員会の委員は、ユネスコの「公共図書館宣言」<ref>[https://www.jla.or.jp/portals/0/html/yunesuko.htm ユネスコ公共図書館宣言 1994年] [[日本図書館協会]]</ref>を遵守する国の[[公文書館]]{{efn2|ユネスコ「図書館統計の国際的な標準化に関する勧告」<ref> 文部科学省「{{PDFlink|[http://www.mext.go.jp/unesco/009/004/011.pdf 図書館統計の国際的な標準化に関する勧告]}}</ref>に定義される。}}や[[ワールド・デジタル・ライブラリー]]へ参加する[[図書館]]の[[司書]]などが多い。委員に求められる資質は、国連出版物の編纂や国際的な図書普及啓蒙活動に関与した実績、典籍研究が広く評価されていることなどとされ、[[国際図書館連盟]] (IFLA) や国際文書館評議会 (ICS) からの推挙もある<ref name="mow"/><ref>[[国立国会図書館]]月報433号 ユネスコ世界の記憶プログラム・アンケート結果報告-日本国内の図書館における資料保存活動資料保存対策室</ref>。


ただし最終決定はユネスコ事務局長が行う権限があり、2015年審査分に[[パレスチナ]]が申請した {{en|[[:en:Palestine Poster Project Archives|Palestine Poster Project Archives]]}} が、余りにも[[反ユダヤ主義]]的で[[文化摩擦]]を招きかねないと、[[イリナ・ボコヴァ]]事務局長(当時)の判断から、除外された例もある<ref>{{Cite web|url=http://www.jewishpress.com/news/breaking-news/unesco-director-rejects-palestine-entry-to-memory-of-the-world-program/2015/02/04/ |title=UNESCO Director Rejects Palestine Entry to ‘Memory of the World’ Program |publisher=The Jewish Press |accessdate=2015-02-07}}</ref>。<!--なお、選定されるとユネスコから給付金が支給される。-->
ただし最終決定はユネスコ事務局長に委ねられ、2015年審査分に[[パレスチナ]]が申請したアーカイブ {{en|[[:en:Palestine Poster Project Archives|Palestine Poster Project Archives]]}} はあまりにも[[反ユダヤ主義]]的で[[文化摩擦]]を招きかねないとして、[[イリナ・ボコヴァ]]事務局長(当時)の判断により除外された例もある<ref>{{Cite web|url=http://www.jewishpress.com/news/breaking-news/unesco-director-rejects-palestine-entry-to-memory-of-the-world-program/2015/02/04/ |title=UNESCO Director Rejects Palestine Entry to ‘Memory of the World’ Program |publisher=The Jewish Press |accessdate=2015-02-07}}</ref>。<!--なお、選定されるとユネスコから給付金が支給される。-->


=== 選定基準 ===
=== 選定基準 ===
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=== 選定指針 ===
=== 選定指針 ===
対象となる歴史資料は、世界遺産同様に{{仮リンク|真正性|en|Authenticity in art}}が重要であり、これは言い換えれば[[信憑性]]がある』ということになる。
対象となる歴史資料は、世界遺産同様に{{仮リンク|真正性|en|Authenticity in art}}が重要であり、これは言い換えれば[[信憑性]]があることになる。


また、[[近現代]]史資料に関しては記録の客観性も評価の対象となる傾向がある。[[2013年]]に審査された[[シンガポール]]申請の録音テープ媒体「日本占領下の証言集 ({{en|Japanese occupation of Singapore oral history collection}})」は戦後かなり経ってからの回顧録で、客観性に欠けるとの理由から不登録となった<ref>{{PDFlink|[http://www.unesco.org/new/fileadmin/MULTIMEDIA/HQ/CI/CI/pdf/mow/nomination_forms/Singapore_occupation.pdf Japanese Occupation of Singapore Oral History Collection (Singapore)]}} - UNESCO</ref>。
また、[[近現代]]史資料に関しては記録の客観性も評価の対象となる傾向がある。[[2013年]]に審査された[[シンガポール]]申請の録音テープ媒体「日本占領下の証言集 ({{en|Japanese occupation of Singapore oral history collection}})」は戦後かなり経ってからの回顧録で、客観性に欠けるとの理由から不登録となった<ref>{{PDFlink|[http://www.unesco.org/new/fileadmin/MULTIMEDIA/HQ/CI/CI/pdf/mow/nomination_forms/Singapore_occupation.pdf Japanese Occupation of Singapore Oral History Collection (Singapore)]}} - UNESCO</ref>。


=== 歴史資料の定義 ===
=== 歴史資料の定義 ===
ユネスコが定義する記録物とは、[[1978年]]に採択した「可動文化財の保護のための勧告」<ref>{{PDFlink|[http://www.mext.go.jp/unesco/009/004/024.pdf 可動文化財の保護のための勧告]}} - 文部科学省</ref>で、(vi) 美術的に重要な物件:独創的創作手段としてのポスターおよび写真、あらゆる材料の独創的美術的なアセンブラージュおよびモンタージュ(vii) 肉筆および初期の活版印刷による古書・写本・書籍・文書または出版物(ix) 原文記録、地図その他の製図上の資料を含む文書・写真・映画フィルム・録音物および機械によって解読できる記録、に該当するものとなる
ユネスコが定義する記録物とは、[[1978年]]に採択した「可動文化財の保護のための勧告」<ref>{{PDFlink|[http://www.mext.go.jp/unesco/009/004/024.pdf 可動文化財の保護のための勧告]}} - 文部科学省</ref>で、以下の各項に該当するものである。
* (vi) 美術的に重要な物件:独創的創作手段としてのポスターおよび写真、あらゆる材料の独創的美術的なアセンブラージュおよびモンタージュ
* (vii) 肉筆および初期の活版印刷による古書・写本・書籍・文書または出版物
* (ix) 原文記録、地図その他の製図上の資料を含む文書・写真・映画フィルム・録音物および機械によって解読できる記録。


=== 特徴 ===
=== 特徴 ===
世界遺産と[[無形文化遺産]]は申請国の法的保護根拠を必要とするが、「世界の記憶」にはそうした条件が求められない。
世界遺産と[[無形文化遺産]]は申請国の法的保護根拠を必要とするが、「世界の記憶」にはそうした条件が求められない。


また、歴史が浅くても構わず、例えば韓国の「[[光州事件]]の民主化運動に関する記録」は[[1980年]]、[[フィリピン]]の「ピープルパワー革命([[エドゥサ革命]])時のラジオ放送」は[[1986年]]、[[東ティモール]]の「ターニングポイント:国家誕生の時」は[[1999年]] - [[2002年]]にかけての出来事の資料が選定されている。
また、歴史が浅くても構わず、例えば韓国の「[[光州事件]]の民主化運動に関する記録」は[[1980年]]、[[フィリピン]]の「ピープルパワー革命([[エドゥサ革命]])時のラジオ放送」は[[1986年]]、[[東ティモール]]の「ターニングポイント:国家誕生の時」は[[1999年]] - [[2002年]]にわたる出来事の資料が選定されている。


世界遺産同様にトランスバウンダリー(国境を越えた複数国による共同申請)も推奨されており、[[2013年]](平成25年)に選定された日本の『[[慶長遣欧使節]]関係資料』は[[スペイン]]と共同申請によるもので、[[2017年]](平成29年)には民間と地方自治体主導で日韓共同による『[[朝鮮通信使]]関係資料』が選定された<ref>[http://enchiren.exblog.jp/ NPO法人 朝鮮通信使縁地連絡協議会]</ref>。
世界遺産同様にトランスバウンダリー(国境を越えた複数国による共同申請)も推奨されており、[[2013年]](平成25年)に選定された日本の『[[慶長遣欧使節]]関係資料』は[[スペイン]]と共同申請、[[2017年]](平成29年)には民間と地方自治体主導で日韓共同による『[[朝鮮通信使]]関係資料』が選定された<ref>[http://enchiren.exblog.jp/ NPO法人 朝鮮通信使縁地連絡協議会]</ref>。


=== 制度改革 ===
=== 制度改革 ===
審査は非公開であり、国家間で見解が異なる係争中の資料を密室審議することへの批判もあり、ユネスコの中立性・政治的利用が懸念されている<ref>{{Cite news |url=http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015101602000135.html |title=世界記憶遺産 選定には公開の議論を |newspaper=[[東京新聞]] |publisher=中日新聞社 |date=2015-10-16 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20151019043934/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015101602000135.html |archivedate=2015-10-19}}</ref>このことはユネスコも認めており<ref>[http://news.yahoo.co.jp/pickup/6180038 記憶遺産 透明性の欠如認める] [[時事通信]]2015年11月6日([[Yahoo!ニュース]])</ref>日本がユネスコ分担金約44億円の支払いを凍結するなど異議申し立てもあり制度改革進められになり<ref>[http://www.asahi.com/articles/ASJ4X52PYJ4XUTFK00F.html ユネスコ記憶遺産の制度改革「進展している」 外務省] [[朝日新聞]]2016年4月29日</ref>[[2018年]]のユネスコ執行委員会議題として扱われ、[[2019年]]には新制度による審査実施するとし、それまでは新規の申請を受け付けないとなった<ref>[https://www.sankei.com/world/news/180331/wor1803310034-n1.html ユネスコ、「世界の記憶」制度改正へ行動計画案発表 7月に改正案作成へ] 産経新聞2018年3月31日</ref>。しかし韓国反対したことで進展しなかったこともあって2019年の申請受付は中止となり改革は[[2020年]]に持ち越されたが<ref>{{Cite news |url=https://search.yahoo.co.jp/amp/s/www.sankei.com/world/amp/190922/wor1909220013-a.html%3Fusqp%3Dmq331AQRKAGYAbCCxILe3dDajAGwASA%253D |title=ユネスコ「世界の記憶」年内改革を断念 韓国反対、作業部会で結論出ず |newspaper=[[産経新聞]] |publisher=Yahoo!ニュース |date=2019-09-22 |accessdate=2020-04-22}}<br />{{Cite news |url=https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191018-00000221-kyodonews-int |title=「世界の記憶」改革を延期 日韓が対立、来年秋まで |newspaper=[[産経新聞]] |publisher=Yahoo!ニュース |date=2019-10-18 |accessdate=2020-04-22}}</ref>[[2019新型コロナウイルス|新型コロナウイルス]]の[[パンデミック]]により協議を開催することができず2021年3月まで再延期された<ref>読売新聞2020年7月24日</ref>。
審査は非公開で、国家間で見解が異なる係争中の資料を密室審議することへの批判もあり、ユネスコの中立性・政治的利用が懸念され<ref>{{Cite news |url=http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015101602000135.html |title=世界記憶遺産 選定には公開の議論を |newspaper=[[東京新聞]] |publisher=中日新聞社 |date=2015-10-16 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20151019043934/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015101602000135.html |archivedate=2015-10-19}}</ref>このことはユネスコも認め<ref>[http://news.yahoo.co.jp/pickup/6180038 記憶遺産 透明性の欠如認める] [[時事通信]]2015年11月6日([[Yahoo!ニュース]])</ref>。2016年には日本政府がユネスコ分担金約44億円の支払いを凍結するなど異議申し立て制度改革進めるとされた<ref>[http://www.asahi.com/articles/ASJ4X52PYJ4XUTFK00F.html ユネスコ記憶遺産の制度改革「進展している」 外務省] [[朝日新聞]]2016年4月29日</ref>[[2018年]]のユネスコ執行委員会議題として扱われ、[[2019年]]には審査に新制度をあてるとし、2018年は新規の申請を受け付けないと発表された<ref>[https://www.sankei.com/world/news/180331/wor1803310034-n1.html ユネスコ、「世界の記憶」制度改正へ行動計画案発表 7月に改正案作成へ] 産経新聞2018年3月31日</ref>。しかしながら韓国反対で翌2019年の協議が進展しなかったことから、改革は[[2020年]]に持ち越され申請受付も中止される<ref>{{Cite news |url=https://search.yahoo.co.jp/amp/s/www.sankei.com/world/amp/190922/wor1909220013-a.html%3Fusqp%3Dmq331AQRKAGYAbCCxILe3dDajAGwASA%253D |title=ユネスコ「世界の記憶」年内改革を断念 韓国反対、作業部会で結論出ず |newspaper=[[産経新聞]] |publisher=Yahoo!ニュース |date=2019-09-22 |accessdate=2020-04-22}}<br />{{Cite news |url=https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191018-00000221-kyodonews-int |title=「世界の記憶」改革を延期 日韓が対立、来年秋まで |newspaper=[[産経新聞]] |publisher=Yahoo!ニュース |date=2019-10-18 |accessdate=2020-04-22}}</ref>。2020年は[[2019新型コロナウイルス|新型コロナウイルス]]の[[パンデミック]]により協議を開催できず、制度改革は2021年3月まで再延期された<ref>{{cite news|和書|url= https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200724-OYT1T50001/ |title=政治 > 【独自】ユネスコ、「世界の記憶」改革延期へ…コロナで年内断念|access-level=読者会員限定|newspaper=読売新聞|date=2020年7月24日|accessdate=2020-10-16}} 読者会員限定アクセス。</ref>。


制度改革案は日本国内でさまざまな意見が発せられており、例えば慰安婦や南京事件の検証を続ける[[秦郁彦]]は[[19世紀]]以降の事象は除外することを提言している<ref>読売新聞2017年11月29日</ref>。
制度改革案は日本国内でさまざまな意見が発せられており、例えば慰安婦や南京事件の検証を続ける[[秦郁彦]]は[[19世紀]]以降の事象は除外することを提言している<ref>読売新聞2017年11月29日</ref>。


=== 選定後の変更 ===
=== 選定後の変更 ===
「世界の記憶」は選定後に対象物の追加や一部削除は可能であるが(実例なし)<ref name="mow"/>、抹消することは出来ないことを[[松浦晃一郎]]前ユネスコ事務局長は指摘した<ref>[http://www.sankei.com/politics/news/151016/plt1510160051-n1.html 南京登録は日本外交の“敗北” 松浦前ユネスコ事務局長「部分的に取り消す手順ある」] [[産経新聞]](2015年10月16日)2015年10月17日閲覧</ref>。その後、制度改革が進められ、原本が失われた場合や、真正性が否定されることが確認できた場合には選定抹消も可能となった<ref name="手引"/>。
「世界の記憶」は選定後に対象物の追加や一部削除を認めるが(実例なし)<ref name="mow"/>、抹消は出来ないことを[[松浦晃一郎]]前ユネスコ事務局長は指摘した<ref>{{cite news|url=http://www.sankei.com/politics/news/151016/plt1510160051-n1.html |title=南京登録は日本外交の“敗北” 松浦前ユネスコ事務局長「部分的に取り消す手順ある」|newspaper=[[産経新聞]]|date=2015年10月16日|accessdate=2015年10月17日}}</ref>。その後、制度改革が進められ、原本が失われた場合や、真正性が否定されることが確認できた場合には選定抹消も可能となった<ref name="手引"/>。


== 国際諮問委員会総会(MoW選考委員会) ==
== これまでの国際諮問委員会総会(MoW選考委員会) ==
*1993年9月:[[ポーランド]]・{{仮リンク|プウトゥスク|pl|Pułtusk}}…準備委員会
*1993年9月:準備委員会、[[ポーランド]]・{{仮リンク|プウトゥスク|pl|Pułtusk}}
*1995年5月:[[フランス]]・[[パリ]]…準備委員会
*1995年5月:準備委員会、[[フランス]]・[[パリ]]
*1997年9月:[[ウズベキスタン]]・[[タシケント]]
*1997年9月:[[ウズベキスタン]]・[[タシケント]]
*1999年6月:[[オーストリア]]・[[ウィーン]]
*1999年6月:[[オーストリア]]・[[ウィーン]]
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== 登録物件 ==
== 登録物件 ==
{{更新|date=2019年6月}}
{{更新|date=2019年6月}}
{{Main|世界の記憶の一覧}}
[[ファイル:Memory of the World.png|thumb|right|360px|2009年7月31日時点(第9回定期総会終了時点)での選定の国別分布図<ref group="注">この時点で日本の登録数はゼロ。</ref>]]
[[ファイル:Memory of the World.png|thumb|right|360px|第9回定期総会終了時の選定物件の国別分布図(2009年7月31日)<!-- ref group="注" -->{{efn2|2009年7月31日時点で日本の登録数はゼロであった}}]]


世界各地からの多数の選定があり、[[2005年]][[6月18日]]時点で57ヶ国120点、[[2009年]][[7月31日]]時点で193点(35点追加)<ref name="AFB 20090731" />、[[2011年]][[5月25日]]時点(第10回定期総会終了時点)では268点(75点追加となった。
世界各地多数の選定物件があり、[[2005年]][[6月18日]]時点で57ヶ国120点、[[2009年]][[7月31日]]時点で193点(35点追加)<ref name="AFB 20090731" />、[[2011年]][[5月25日]]時点(第10回定期総会終了時点)では75追加し268点となった。


なお、以下に記述する地域区分はユネスコの発表に準じたものであり、通常、日本で用いられる地理的区分とは大きく異なるので注意が必要。例えば、一方で[[トルコ]]は[[ヨーロッパ]]に含まれ、[[エジプト]]や[[モロッコ]]などは[[アフリカ]]ではなく[[#アラブ諸国|アラブ諸国]]に含まれる。[[サウジアラビア]]なども[[アジア]]ではなくアラブ諸国に含まれるが、方、[[オセアニア]]はアジアと同じ区分として扱われる。
; 個別の詳細は別項「[[世界の記憶の一覧]]」を参照のこと。

なお、以下に記述する地域区分はユネスコの発表に準じたものであり、日本で通常的に用いられていものとは大きく異なるので注意が必要。例えば、[[トルコ]]は[[ヨーロッパ]]に含まれ、[[エジプト]]や[[モロッコ]]などは[[アフリカ]]ではなく[[#アラブ諸国|アラブ諸国]]に含まれる。[[サウジアラビア]]なども[[アジア]]ではなくアラブ諸国に含まれるが、、[[オセアニア]]はアジアと同じ区分として扱われる。


=== ヨーロッパおよび北アメリカ ===
=== ヨーロッパおよび北アメリカ ===
[[ヨーロッパ]]および[[北アメリカ]]地域では、現在、145点が選定されており、特に[[ドイツ]]の選定数が多い。代表的な登録物件としては、子供と家庭の物語([[グリム童話]][[2005年]]選定)、[[バイユーのタペストリー]](バイユー・タペストリー美術館所蔵[[2007年]]選定)、[[ニーベルンゲンの歌]]([[2009年]]選定)、[[マグナ・カルタ]]([[イギリス]]、2009年選定)、[[アンネの日記]]([[アンネ・フランク]]による文学作品<ref group="注">言及されていないが、原テキストと初版本の一部が対象か。原テキストはオランダ国立戦時資料研究所が所蔵。</ref>)(2009年登録)<ref name="AFB 20090731">{{Cite news |title=「アンネの日記」、ユネスコが世界記憶遺産に登録 |url=http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2626596/4412911 |work=AFPBB News(ウェブサイト) |publisher=[[フランス通信社]] |date=2009-07-31 |accessdate=2011-09-19}}</ref>、[[グーテンベルク聖書]]([[2001年]]選定)、[[ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン|ベートーヴェン]]の[[交響曲第9番 (ベートーヴェン)|交響曲第9番]]の自筆[[楽譜]]([[ベルリン国立図書館]]所蔵2001年選定)、[[共産党宣言]]及び[[資本論]]初版第1部(2013年選定)<ref>[http://www.unesco.de/8005.html Schriften von Karl Marx: "Das Manifest der Kommunistischen Partei" (1848) und "Das Kapital", ernster Band (1867)]</ref>などが挙げられる。
[[ヨーロッパ]]および[[北アメリカ]]地域では、現在、145点が選定されており<ref name="2011_Europe_and_N_America">{{Cite web |title=Europe and North America |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-region-and-country/europe-and-north-america/ |work=Memory of the World (公式サイト) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}}</ref>、特に[[ドイツ]]の選定数が多い。代表的な登録物件としては、子供と家庭の物語([[グリム童話]][[2005年]]選定)、[[バイユーのタペストリー]](バイユー・タペストリー美術館所蔵[[2007年]]選定)、[[ニーベルンゲンの歌]]([[2009年]]選定)、[[マグナ・カルタ]]([[イギリス]]、2009年選定)、[[アンネの日記]](文学作品<!-- ref group="注" -->{{efn2|言及されていないが、原テキストと初版本の一部が対象か。原テキストはオランダ国立戦時資料研究所が所蔵。}}、2009年登録)<ref name="AFB 20090731">{{Cite news |title=「アンネの日記」、ユネスコが世界記憶遺産に登録 |url=http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2626596/4412911 |work=AFPBB News(ウェブサイト) |publisher=[[フランス通信社]] |date=2009-07-31 |accessdate=2011-09-19}}</ref>、[[グーテンベルク聖書]]([[2001年]]選定)、[[ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン|ベートーヴェン]]の[[交響曲第9番 (ベートーヴェン)|交響曲第9番]]の自筆[[楽譜]]([[ベルリン国立図書館]]所蔵2001年選定)、[[共産党宣言]]及び[[資本論]]初版第1部(2013年選定)<ref>[http://www.unesco.de/8005.html Schriften von Karl Marx: "Das Manifest der Kommunistischen Partei" (1848) und "Das Kapital", ernster Band (1867)]</ref>などが挙げられる。


* [[ドイツ]] (13)、[[オーストリア]] (12)、[[ロシア]] (11)、[[ポーランド]] (10)、[[デンマーク]] (8)、[[フランス]] (8)、[[イギリス]] (8)、[[オランダ]] (7)、[[スウェーデン]] (6)、[[ハンガリー]] (5)、[[アメリカ合衆国]] (5)、[[リトアニア]] (4)、[[ノルウェー]] (4)、[[ベルギー]] (3)、[[カナダ]] (3)、[[チェコ]] (3)、[[イタリア]] (3)、[[ポルトガル]] (3)、[[スロバキア]] (3)、[[トルコ]] (3)、[[クロアチア]] (2)、[[エストニア]] (2)、[[フィンランド]] (2)、[[ラトビア]] (2)、[[セルビア]] (2)、[[スペイン]] (2)、[[ウクライナ]] (2)、[[アルバニア]] (1)、[[アルメニア]] (1)、[[アゼルバイジャン]] (1)、[[ベラルーシ]] (1)、[[ブルガリア]] (1)、[[アイスランド]] (1)、[[アイルランド]] (1)、[[ルクセンブルク]] (1)、[[スロベニア]] (1)。
* [[ドイツ]] (13)、[[オーストリア]] (12)、[[ロシア]] (11)、[[ポーランド]] (10)、[[デンマーク]] (8)、[[フランス]] (8)、[[イギリス]] (8)、[[オランダ]] (7)、[[スウェーデン]] (6)、[[ハンガリー]] (5)、[[アメリカ合衆国]] (5)、[[リトアニア]] (4)、[[ノルウェー]] (4)、[[ベルギー]] (3)、[[カナダ]] (3)、[[チェコ]] (3)、[[イタリア]] (3)、[[ポルトガル]] (3)、[[スロバキア]] (3)、[[トルコ]] (3)、[[クロアチア]] (2)、[[エストニア]] (2)、[[フィンランド]] (2)、[[ラトビア]] (2)、[[セルビア]] (2)、[[スペイン]] (2)、[[ウクライナ]] (2)、[[アルバニア]] (1)、[[アルメニア]] (1)、[[アゼルバイジャン]] (1)、[[ベラルーシ]] (1)、[[ブルガリア]] (1)、[[アイスランド]] (1)、[[アイルランド]] (1)、[[ルクセンブルク]] (1)、[[スロベニア]] (1) <ref name="2011_Europe_and_N_America" />
* <small>≪外部リンク≫</small> {{Cite web |title=Europe and North America |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-region-and-country/europe-and-north-america/ |work=Memory of the World (official website) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}}


=== アジアおよびオセアニア ===
=== アジアおよびオセアニア ===
[[#アラブ諸国|アラブ諸国]]を除く[[アジア]]および[[オセアニア]]では、現在、42点が選定されている。
[[#アラブ諸国|アラブ諸国]]を除く[[アジア]]および[[オセアニア]]では、2011年時点で42点が選定されている<ref name="2011_A_P">{{Cite web |title=Asia and the Pacific |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-region-and-country/asia-and-the-pacific/ |work=Memory of the World (official website) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}}
* [[大韓民国|韓国]] (9)、[[日本]] (7)、[[中華人民共和国|中国]] (7)、[[インド]] (6)、[[オーストラリア]] (5)、[[イラン]] (5)、[[マレーシア]] (4)、[[フィリピン]] (4)、[[インドネシア]] (2)、[[カザフスタン]] (2)、[[モンゴル]] (2)、[[ニュージーランド]] (2)、[[タイ王国|タイ]] (2)、[[ウズベキスタン]] (2)、[[フィジー]] (1)、[[カンボジア]] (1)、[[パキスタン]] (1)、[[スリランカ]] (1)、[[タジキスタン]] (1)、[[ベトナム]] (1)。
* [[大韓民国|韓国]] (9)、[[日本]] (7)、[[中華人民共和国|中国]] (7)、[[インド]] (6)、[[オーストラリア]] (5)、[[イラン]] (5)、[[マレーシア]] (4)、[[フィリピン]] (4)、[[インドネシア]] (2)、[[カザフスタン]] (2)、[[モンゴル]] (2)、[[ニュージーランド]] (2)、[[タイ王国|タイ]] (2)、[[ウズベキスタン]] (2)、[[フィジー]] (1)、[[カンボジア]] (1)、[[パキスタン]] (1)、[[スリランカ]] (1)、[[タジキスタン]] (1)、[[ベトナム]] (1)<ref name="2011_A_P" />
* <small>≪外部リンク≫</small> {{Cite web |title=Asia and the Pacific |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-region-and-country/asia-and-the-pacific/ |work=Memory of the World (official website) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}}


==== 日本 ====
==== 日本 ====
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長らく日本からは推薦が無く、事業そのものの国内における[[知名度]]も低かったが、[[福岡県]][[田川市]]と[[福岡県立大学]]が共同で[[2010年]](平成22年)3月、[[炭鉱]]記録画家・[[山本作兵衛]]が描き残した'''[[筑豊]]の炭鉱画'''など約700点の推薦書をユネスコに提出し<ref>{{Cite news |title=山本作兵衛の炭鉱画「ユネスコ記憶遺産に」 |url=http://kyushu.yomiuri.co.jp/local/fukuoka/20100408-OYS1T00235.htm |work=Yomiuri Online |publisher=読売新聞社 |date=2010-04-08 |accessdate=2011-05-26 |archiveurl=https://archive.is/20100430020124/http://kyushu.yomiuri.co.jp/local/fukuoka/20100408-OYS1T00235.htm |archivedate=2010年4月30日 |deadlinkdate=2017年9月 }}</ref>、翌2011年5月25日、697点の作品が国内初の「世界の記憶」として選定された<ref>{{Cite news |title=筑豊の炭鉱画、国内初の「記憶遺産」に 山本作兵衛作 |url=http://www.asahi.com/culture/update/0525/SEB201105250050.html |work=asahi.com |publisher=[[朝日新聞社]] |date=2011-05-25 |accessdate=2011-05-26 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20110528000201/http://www.asahi.com/culture/update/0525/SEB201105250050.html |archivedate=2011年5月28日 |deadlinkdate=2017年9月 }}</ref>。
長らく日本からは推薦が無く、事業そのものの国内における[[知名度]]も低かったが、[[福岡県]][[田川市]]と[[福岡県立大学]]が共同で[[2010年]](平成22年)3月、[[炭鉱]]記録画家・[[山本作兵衛]]が描き残した'''[[筑豊]]の炭鉱画'''など約700点の推薦書をユネスコに提出し<ref>{{Cite news |title=山本作兵衛の炭鉱画「ユネスコ記憶遺産に」 |url=http://kyushu.yomiuri.co.jp/local/fukuoka/20100408-OYS1T00235.htm |work=Yomiuri Online |publisher=読売新聞社 |date=2010-04-08 |accessdate=2011-05-26 |archiveurl=https://archive.is/20100430020124/http://kyushu.yomiuri.co.jp/local/fukuoka/20100408-OYS1T00235.htm |archivedate=2010年4月30日 |deadlinkdate=2017年9月 }}</ref>、翌2011年5月25日、697点の作品が国内初の「世界の記憶」として選定された<ref>{{Cite news |title=筑豊の炭鉱画、国内初の「記憶遺産」に 山本作兵衛作 |url=http://www.asahi.com/culture/update/0525/SEB201105250050.html |work=asahi.com |publisher=[[朝日新聞社]] |date=2011-05-25 |accessdate=2011-05-26 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20110528000201/http://www.asahi.com/culture/update/0525/SEB201105250050.html |archivedate=2011年5月28日 |deadlinkdate=2017年9月 }}</ref>。


一方、政府は[[2012年]]3月までに[[日本ユネスコ国内委員会]]推薦するとして、候補に『[[鳥獣戯画]]』や『[[源氏物語絵巻]]』などが挙がってい<ref>{{Cite news |title=ユネスコ「記憶遺産」日本も推薦へ…鳥獣戯画など |url=http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20100303-OYT1T00029.htm |work=[[YOMIURI ONLINE|Yomiuri Online]] |publisher=[[読売新聞社]] |date=2010-03-03 |accessdate=2010-03-03 |archiveurl=https://archive.is/20110514142133/http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20110511-OYT1T00800.htm |archivedate=2011年5月14日 |deadlinkdate=2017年9月 }}</ref>、[[2011年]]5月記憶遺産選考委員会で[[国宝]]の『'''[[御堂関白記]]'''』と『'''[[慶長遣欧使節]]関係資料'''』について日本国政府として初めての推薦が決まり<ref>{{Cite news |title=御堂関白記など、ユネスコ記憶遺産に推薦 |url=http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20110511-OYT1T00800.htm |work=Yomiuri Online |publisher=読売新聞社 |date=2011-05-11 |accessdate=2011-05-26}}{{リンク切れ|date=2016年6月}}</ref><ref>{{Cite news | url = http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1103P_R10C11A5CR8000/ | title = 藤原道長の自筆日記などユネスコ「記憶遺産」に推薦へ 文科省 | publisher = [[日本経済新聞]] | date = 2011-05-11 | accessdate = 2016-09-30 }}</ref>2013年6月に選定された<ref>{{Cite news |url=http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130619-00000120-yom-soci |title=世界記憶遺産に御堂関白記と慶長遣欧使節資料 |newspaper=Yahoo!ニュース |agency=読売新聞 |publisher=Yahoo Japan |date=2011-06-19 |archiveurl=https://archive.is/20130625132839/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130619-00000120-yom-soci |archivedate=2013年6月25日 |deadlinkdate=2017年9月 }}</ref>。
2010年時点の政府の見通しで[[2012年]]3月に[[日本ユネスコ国内委員会]]から推薦するとして『[[鳥獣戯画]]』や『[[源氏物語絵巻]]』などが候補に挙がったところ<ref>{{Cite news |title=ユネスコ「記憶遺産」日本も推薦へ…鳥獣戯画など |url=http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20100303-OYT1T00029.htm |work=[[YOMIURI ONLINE|Yomiuri Online]] |publisher=[[読売新聞社]] |date=2010-03-03 |accessdate=2010-03-03 |archiveurl=https://archive.is/20110514142133/http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20110511-OYT1T00800.htm |archivedate=2011年5月14日 |deadlinkdate=2017年9月 }}</ref>、それに先んじて[[2011年]]5月記憶遺産選考委員会で日本国政府として初めての推薦物件が[[国宝]]の『'''[[御堂関白記]]'''』と『'''[[慶長遣欧使節]]関係資料'''』に決まり、推薦すると<ref>{{Cite news |title=御堂関白記など、ユネスコ記憶遺産に推薦 |url=http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20110511-OYT1T00800.htm |work=Yomiuri Online |publisher=読売新聞社 |date=2011-05-11 |accessdate=2011-05-26}}{{リンク切れ|date=2016年6月}}</ref><ref>{{Cite news | url = http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1103P_R10C11A5CR8000/ | title = 藤原道長の自筆日記などユネスコ「記憶遺産」に推薦へ 文科省 | publisher = [[日本経済新聞]] | date = 2011-05-11 | accessdate = 2016-09-30 }}</ref>審査を経て2013年6月に選定された<ref>{{Cite news |url=http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130619-00000120-yom-soci |title=世界記憶遺産に御堂関白記と慶長遣欧使節資料 |newspaper=Yahoo!ニュース |agency=読売新聞 |publisher=Yahoo Japan |date=2011-06-19 |archiveurl=https://archive.is/20130625132839/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130619-00000120-yom-soci |archivedate=2013年6月25日 |deadlinkdate=2017年9月 }}</ref>。


[[2015年]]の選定では[[舞鶴引揚記念館]]が所蔵する『'''[[舞鶴港|舞鶴]]への生還 1945-1956[[シベリア抑留]]等日本人の本国への[[引き揚げ]]の記録'''』と『'''[[東寺百合文書]]'''』を申請し<ref>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/articles/ASG6C43Q0G6CUCVL00S.html |title=記憶遺産候補に「東寺百合文書」「舞鶴引き揚げ記録」 |newspaper=朝日新聞デジタル |publisher=朝日新聞社 |date=2014-06-12 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20140612160426/http://www.asahi.com/articles/ASG6C43Q0G6CUCVL00S.html |archivedate=2014-06-12}}</ref><ref>{{Cite news |url=http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/06/1348757.htm |title=「ユネスコ記憶遺産事業」の平成26年の審査に付する案件の選定について-第128回文化活動小委員会の審議結果- |publisher=文部科学省 |date=2014-06-12}}</ref>、いずれも同年10月に選定され<ref>{{Cite news |url=http://www.47news.jp/CN/201510/CN2015100901002199.html |title=シベリア抑留が世界記憶遺産登録 ユネスコ決定、東寺文書も |agency=[[共同通信社]] |publisher=[[47NEWS]] |date=2015-10-10 |accessdate=2015-10-10}}</ref>[[舞鶴引揚記念館]]資料寄贈者の[[木内信夫]]、安田清一は日本初の生存作家となった。
[[2015年]]の選定では[[舞鶴引揚記念館]]が所蔵する『'''[[舞鶴港|舞鶴]]への生還 1945-1956[[シベリア抑留]]等日本人の本国への[[引き揚げ]]の記録'''』と『'''[[東寺百合文書]]'''』を申請し<ref>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/articles/ASG6C43Q0G6CUCVL00S.html |title=記憶遺産候補に「東寺百合文書」「舞鶴引き揚げ記録」 |newspaper=朝日新聞デジタル |publisher=朝日新聞社 |date=2014-06-12 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20140612160426/http://www.asahi.com/articles/ASG6C43Q0G6CUCVL00S.html |archivedate=2014-06-12}}</ref><ref>{{Cite news |url=http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/06/1348757.htm |title=「ユネスコ記憶遺産事業」の平成26年の審査に付する案件の選定について-第128回文化活動小委員会の審議結果- |publisher=文部科学省 |date=2014-06-12}}</ref>、いずれも同年10月に選定されると<ref>{{Cite news |url=http://www.47news.jp/CN/201510/CN2015100901002199.html |title=シベリア抑留が世界記憶遺産登録 ユネスコ決定、東寺文書も |agency=[[共同通信社]] |publisher=[[47NEWS]] |date=2015-10-10 |accessdate=2015-10-10}}</ref>[[舞鶴引揚記念館]]資料寄贈者の[[木内信夫]]、安田清一は日本初の生存作家となった。


2017年10月には、日韓が共同で申請した[[江戸時代]]に朝鮮から日本に派遣された外交使節'''「[[朝鮮通信使]]」に関する資料'''と、日本独自で申請した古代の[[石碑]]群である'''「[[上野三碑]](こうずけさんぴ)」'''([[群馬県]][[高崎市]])が選定された<ref>{{Cite web |url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22911140R31C17A0CR8000/ |title=世界記憶遺産に「朝鮮通信使|publisher =|accessdate =2018-03-04}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG28047_Z20C14A4CC1000/ |title=朝鮮通信使を記憶遺産に 16年に日韓で共同申請 |publisher =|accessdate =2018-03-04}}</ref>。
2017年10月には、[[江戸時代]]に朝鮮から日本に派遣された外交使節'''「[[朝鮮通信使]]」に関する資料'''が日韓共同申請の物件して<ref>{{Cite web |url=https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG28047_Z20C14A4CC1000/ |title=朝鮮通信使を記憶遺産に 16年に日韓で共同申請 | website=nikkei.com |accessdate =2018-03-04}}</ref><ref>『朝鮮通信使 : 日韓の平和構築と文化交流の歴史 : ユネスコ「世界の記憶」登録記念特別展』下関市立歴史博物館わ2018年。{{NCID|BB25879110}}。</ref>、また日本独自で申請した古代の[[石碑]]群'''「[[上野三碑]](こうずけさんぴ)」'''([[群馬県]][[高崎市]]<ref>『上野三碑 : ユネスコ「世界記憶」(国際登録)申請書 : 2016年5月30日提出 = Nomination form International Memory of the World register - Three Cherished Stelae of ancient Kozuke - submitted on May 30, 2016』、上野三碑世界記憶遺産登録推進協議会、2018年、{{NCID| BB27039416}}</ref>)がともに選定された<ref>{{Cite web |url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22911140R31C17A0CR8000/ |title=世界記憶遺産に「朝鮮通信使 |website=nikkei.com =|accessdate =2018-03-04}}</ref>。


2017年時点で日本関連とされる物件は上の7点である<ref>{{Cite web|url=http://www.mext.go.jp/unesco/006/1354664.htm|title=「世界の記憶」 文部科学省 |publisher =|accessdate =2018-03-04}}</ref>。
2020年時点で日本関連とされる物件は上記に加え、2016年5月に地域登録に選定された「水平社と衡平社国境を越えた被差別民衆連帯記録」との合計8点である<ref name="mext_2020-10-16" />。


==== 大韓民国 ====
==== 大韓民国 ====
韓国では[[1997年]]に[[朝鮮王朝実録]]と[[訓民正音]]解例本がこのリストに選定され。[[2001年]]は[[李氏朝鮮|朝鮮王朝]]時代に国家すべての機密を扱った国王“秘書室”と言える[[承政院]]で毎日扱った文書と事件を記録した『[[承政院日記]]』世界最大の[[連帯記録物]]であり、総数3,243冊・2億4250万字に及ぶがリストに選定された。2002年[[金碩洙]](キム・ソクス)首相は「ユネスコが地球上の文字の中で、唯一[[ハングル]]のみを世界記録遺産に認定した」と発表した<ref>[http://www.hani.co.kr/section-003000000/2002/10/003000000200210091046316.html {{Lang|ko|제556돌 한글날 기념식}}](第556周年ハングルの日記念式)ハンギョレ新聞、2002年10月9日。</ref>。[[2007年]]には『[[グーテンベルク聖書]]』より約80年古世界最初の[[金属活字]]本と公認されてい[[フランス国立図書館]]所蔵の『[[直指心体要節]]』([[1377年]]、[[清州市|清州]]興徳寺にて印刷されるも登録された。2015年は、[[韓国放送公社]]の特別生放送『離散家族を探しています』が選定さるなど、2015年時点で13点と、現在、[[アジア太平洋]]地域では一番多く選定されている。
韓国では[[1997年]]に[[朝鮮王朝実録]][[訓民正音]]解例本がこのリストに選定され、2015年時点で選定物件13点と、[[アジア太平洋]]地域で最多である。[[2001年]]の審査で[[李氏朝鮮|朝鮮王朝]]時代の国王“秘書室”と言える[[承政院]]扱った文書と事件を記録した『[[承政院日記]]』{{efn2|国家のすべての機密を扱った部署による『承政院日記』は世界最大の[[連帯記録物]]であり、総数3,243冊・2億4250万字に及ぶ。}}がリストに選定された。2002年、ハングルの日記念式に出席した[[金碩洙]](キム・ソクス)首相は「ユネスコが地球上の文字の中で、唯一[[ハングル]]のみを世界記録遺産に認定した」と発表した<ref>[http://www.hani.co.kr/section-003000000/2002/10/003000000200210091046316.html {{Lang|ko|제556돌 한글날 기념식}}](第556周年ハングルの日記念式)ハンギョレ新聞、2002年10月9日。</ref>。[[2007年]]には『[[グーテンベルク聖書]]』より約80年古く、[[1377年]]に印刷され世界最初の[[金属活字]]本と公認される『[[直指心体要節]]』も選定された([[フランス国立図書館]]所蔵、[[清州市|清州]]興徳寺にて印刷)。2015年の審査では、[[韓国放送公社]]の特別生放送『離散家族を探しています』が選れる。


2015年に[[日本軍]]の[[従軍慰安婦]]関連資料を申請することを目指し、『[[国際連帯推進委員会]]』を結成した<ref>「慰安婦資料、世界遺産へ国際委=韓国」『時事通信』2015年5月7日</ref>。韓国が申請しようとしているの[[ナヌムの家]]が保管する資料が主体になるが、[[慰安婦像]]まで含まれる可能性もある<ref>{{Cite web |title=世界遺産登録を目指す韓国「慰安婦関連記録物」 “着せ替え”慰安婦ブロンズ像の神格化が進行中!? |url=http://news.livedoor.com/article/detail/10146066/ |work=livedoor NEWS |publisher=サイゾー |date=2015-05-23 |accessdate=2015-05-25}}</ref>。しかし、2017年の審査では選定の可否が先送り扱いとなった。
2015年に[[日本軍]]の[[従軍慰安婦]]関連資料を申請することを目指し、『[[国際連帯推進委員会]]』を結成した<ref>「慰安婦資料、世界遺産へ国際委=韓国」『時事通信』2015年5月7日</ref>。韓国が申請しようとした物件は[[ナヌムの家]]が保管する資料が主体、[[慰安婦像]]まで含まれる可能性もある<ref>{{Cite web |title=世界遺産登録を目指す韓国「慰安婦関連記録物」 “着せ替え”慰安婦ブロンズ像の神格化が進行中!? |url=http://news.livedoor.com/article/detail/10146066/ |work=livedoor NEWS |publisher=サイゾー |date=2015-05-23 |accessdate=2015-05-25}}</ref>とされたものの、2017年の審査では選定の可否が先送りとなった。


==== 中華人民共和国 ====
==== 中華人民共和国 ====
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==== タイ王国 ====
==== タイ王国 ====
[[タイ王国]]では、同国の近代化に貢献した[[ラーマ5世]]チュラロンコーン王の政策を記した文書が、[[2009年]]に選定されている<ref name="AFB 20090731" />。選定数は3。
[[タイ王国]]では、同国の近代化に貢献した[[ラーマ5世]]チュラロンコーン王の政策を記した文書が、[[2009年]]に選定されている<ref name="AFB 20090731" />。選定数は3件{{いつ|date=2020年10月}}


==== インド ====
==== インド ====
[[インド]]では、[[リグ・ヴェーダ]]やヴィマラプラバー(『[[時輪タントラ]]』の註釈書)、ティムール伝の原稿[[ムガル帝国]]初代皇帝[[ティムール]]の生涯を描いた挿絵入りの手書き草稿、ポンディシェリーのシャイヴァ文書、タミル医学文献コレクション、シャーンティナータ・チャリトラ、オランダ東インド会社のアーカイブなど、7点が選定されている。
[[インド]]では、[[リグ・ヴェーダ]]ヴィマラプラバー(『[[時輪タントラ]]』の註釈書)、ティムール伝の原稿{{efn2|『ティムール伝』の原稿とは[[ムガル帝国]]初代皇帝[[ティムール]]の生涯を描いた挿絵入りの手稿を指す。}}、ポンディシェリーのシャイヴァ文書、タミル医学文献コレクション、シャーンティナータ・チャリトラ、オランダ東インド会社のアーカイブなど、7点が選定されている。


=== アラブ諸国 ===
=== アラブ諸国 ===
[[アラブ人|アラブ]]諸国における現在の選定数は8。
[[アラブ人|アラブ]]諸国における選定数は2011時点で8
* [[エジプト]] (3)、[[レバノン]] (2)、[[モロッコ]] (1)、[[サウジアラビア]] (1)、[[チュニジア]] (1)
* [[エジプト]] (3)、[[レバノン]] (2)、[[モロッコ]] (1)、[[サウジアラビア]] (1)、[[チュニジア]] (1)
* <small>≪外部リンク≫</small> {{Cite web |title=Arab States |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-region-and-country/arab-states/ |work=Memory of the World (official website) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}}
*<ref name="" >{{Cite web |title=Arab States |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-region-and-country/arab-states/ |work=Memory of the World (official website) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}} </ref>。


=== アフリカ ===
=== アフリカ ===
[[#アラブ諸国|アラブ諸国]]を除く[[アフリカ]]における現在の選定数は8。
[[#アラブ諸国|アラブ諸国]]を除く[[アフリカ]]における2011時点の選定数は8
* [[南アフリカ共和国]] (3)、[[エチオピア]] (1)、[[ガーナ]] (1)、[[マダガスカル]] (1)、[[モーリシャス]] (1)、[[ナミビア]] (1)。
* [[南アフリカ共和国]] (3)、[[エチオピア]] (1)、[[ガーナ]] (1)、[[マダガスカル]] (1)、[[モーリシャス]] (1)、[[ナミビア]] (1)<ref name="">{{Cite web |title=Africa |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-region-and-country/africa/ |work=Memory of the World (official website) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}} </ref>
* <small>≪外部リンク≫</small> {{Cite web |title=Africa |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-region-and-country/africa/ |work=Memory of the World (official website) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}}


=== 南アメリカおよびカリブ諸国 ===
=== 南アメリカおよびカリブ諸国 ===
[[南アメリカ]]および[[西インド諸島|カリブ諸国]]における現在の選定数は62。
[[南アメリカ]]および[[西インド諸島|カリブ諸国]]における2011年時点の選定数は62件<ref name=L_America_and_the_C />
* [[メキシコ]] (9)、[[トリニダード・トバゴ]] (7)、[[バルバドス]] (4)、[[ブラジル]] (3)、[[スリナム]] (3)、[[ベネズエラ]] (3)、[[アルゼンチン]] (2)、[[バハマ]] (2)、[[ボリビア]] (2)、[[チリ]] (2)、[[コロンビア]] (2)、[[キューバ]] (2)、[[ドミニカ共和国]] (2)、[[ギアナ]] (2)、[[ジャマイカ]] (2)、[[オランダ領アンティル]] (2)、[[セントクリストファー・ネイビス]] (2)、[[セントルシア]] (2)、[[ベリーズ]] (1)、[[バミューダ諸島]] (1)、[[キュラソー島]] (1)、[[ドミニカ]] (1)、[[ニカラグア]] (1)、[[パナマ]] (1)、[[パラグアイ]] (1)、[[ペルー]] (1)、[[ウルグアイ]] (1)。
* [[メキシコ]] (9)、[[トリニダード・トバゴ]] (7)、[[バルバドス]] (4)、[[ブラジル]] (3)、[[スリナム]] (3)、[[ベネズエラ]] (3)、[[アルゼンチン]] (2)、[[バハマ]] (2)、[[ボリビア]] (2)、[[チリ]] (2)、[[コロンビア]] (2)、[[キューバ]] (2)、[[ドミニカ共和国]] (2)、[[ギアナ]] (2)、[[ジャマイカ]] (2)、[[オランダ領アンティル]] (2)、[[セントクリストファー・ネイビス]] (2)、[[セントルシア]] (2)、[[ベリーズ]] (1)、[[バミューダ諸島]] (1)、[[キュラソー島]] (1)、[[ドミニカ]] (1)、[[ニカラグア]] (1)、[[パナマ]] (1)、[[パラグアイ]] (1)、[[ペルー]] (1)、[[ウルグアイ]] (1)<ref name=L_America_and_the_C>{{Cite web |title=Latin America and the Caribbean |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-region-and-country/latin-america-and-the-caribbean/ |work=Memory of the World (official website) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}} </ref>
* <small>≪外部リンク≫</small> {{Cite web |title=Latin America and the Caribbean |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-region-and-country/latin-america-and-the-caribbean/ |work=Memory of the World (official website) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}}


=== 国際交流機関 ===
=== 国際交流機関 ===
国際交流機関からの選定は現在3。
国際交流機関からの選定は2011年時点で3
* [[国際連合]] (2)、[[赤十字国際委員会]] (1)。
* [[国際連合]] (2)、[[赤十字国際委員会]] (1)。
* <small>≪外部リンク≫</small> {{Cite web |title=Registered Heritage |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-organization/ |work=Memory of the World (official website) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}}
* <ref name="" >{{Cite web |title=Registered Heritage |url=http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/access-by-organization/ |work=Memory of the World (official website) |language=en |publisher=UNESCO |accessdate=2011-09-20}}</ref>

== 地域委員会と地域版、国内委員会と国内版 == <!-- [[#選定手続]]にリンクあり、見出しを変更したら次の行のanchor 修正をお願いします。 -->
「世界の記憶」{{anchor|地域委員会と地域版、国内委員会と国内版}}にはユネスコ本部と国際諮問委員会が主導する「ワールド・コミッティ」(上記のもの)と、ユネスコ地域事務局と地域委員会による地域版の「リージョナル・コミッティ」、そしてユネスコ憲章が定める国内協力団体として各国政府が設置するユネスコ国内委員会が選定する国内版の「ナショナル・コミッティ」がある。地域委員会は現在、アジア太平洋、アフリカ、ラテンアメリカ・カリブ諸国の三つの区域がある。地域版も選定基準は世界版に準じるが、当該地域における重要性を重視する<ref name="手引"/><ref name="local Committee">[http://www.mowcap.org/core-activities/awareness/meetings/ Memory of the World Committee for Asia and the Pacific] UNESCO</ref>。


== 地域委員会と地域版、国内委員会と国内版 ==
「世界の記憶」にはユネスコ本部と国際諮問委員会が主導する「ワールド・コミッティ」(上記のもの)と、ユネスコ地域事務局と地域委員会による地域版の「リージョナル・コミッティ」、そしてユネスコ憲章が定める国内協力団体として各国政府が設置するユネスコ国内委員会が選定する国内版の「ナショナル・コミッティ」がある。地域委員会は現在、アジア太平洋、アフリカ、ラテンアメリカ・カリブ諸国の三つの区域がある。地域版も選定基準は世界版に準じるが、当該地域における重要性を重視する<ref name="手引"/><ref name="local Committee">[http://www.mowcap.org/core-activities/awareness/meetings/ Memory of the World Committee for Asia and the Pacific] UNESCO</ref>。
===地域版===
===地域版===
アジア太平洋地域版日本としては初となる選定物件として[[全国水平社]]の資料が登録されたほか、日本と共同歩調を取った韓国申請による水平社運動に連動した[[朝鮮衡平社]]の資料も登録された<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG25H3F_V20C16A5000000/ 水平社と朝鮮・衡平社の交流、記憶遺産地域版に登録] 日本経済新聞 2016年5月25日</ref>。また、シンガポール世界版に申請し棄却された「日本占領下の証言集」中国の支援をうけ地域版に再申請されたが、こちらで選定に至らなかった<ref>[http://www.sankei.com/life/news/160524/lif1605240002-n1.html 「華僑虐殺」を記憶遺産アジア太平洋地域版に申請 大戦中の旧日本軍 投票で不登録] 産経新聞 2016年5月24日</ref>。
アジア太平洋地域版日本としては初選定物件として[[全国水平社]]の資料が登録されたほか、水平社運動に連動した[[朝鮮衡平社]]の資料も日本と共同歩調を取った韓国申請により選定された<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG25H3F_V20C16A5000000/ 水平社と朝鮮・衡平社の交流、記憶遺産地域版に登録] 日本経済新聞 2016年5月25日</ref>。また、シンガポール世界版に申請し棄却された「日本占領下の証言集」につき、中国の支援をうけ地域版に再申請するが、こちらで選定に至らなかった<ref>[http://www.sankei.com/life/news/160524/lif1605240002-n1.html 「華僑虐殺」を記憶遺産アジア太平洋地域版に申請 大戦中の旧日本軍 投票で不登録] 産経新聞 2016年5月24日</ref>。

2018年の選定を目指[[日本ユネスコ国内委員会]]が国内候補を公募すると、「[[伊能忠敬]]測量記録・地図」([[千葉県]][[香取市]])、「画家[[加納莞蕾|加納辰夫]]の恒久平和への提言 フィリピン日本人戦犯赦免に関わる運動記録」([[島根県]]・加納美術振興財団)、「[[松川事件]]・松川裁判・松川運動の資料」([[福島大学]])の3件し込んだ。「世界的重要性、唯一性・代替不可能性などの選考基準に照らし合わせ、推薦すべき物件がないと判断した」とし、推薦は見送られた<ref>[https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170728-00000092-jij-soci 国内候補の推薦せず=18年登録「世界の記憶」地域版] [[時事通信社]] 2017年7月28日([[Yahoo!ニュース]])</ref>。


2018年の選定を目指す国内候補を[[日本ユネスコ国内委員会]]が公募、「[[伊能忠敬]]測量記録・地図」([[千葉県]][[香取市]])、「画家[[加納莞蕾|加納辰夫]]の恒久平和への提言 フィリピン日本人戦犯赦免に関わる運動記録」([[島根県]]・加納美術振興財団)、「[[松川事件]]・松川裁判・松川運動の資料」([[福島大学]])の3件請があったが、「世界的重要性、唯一性・代替不可能性などの選考基準に照らし合わせ、推薦すべき物件がないと判断した」とし、推薦を行わないこととした<ref>[https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170728-00000092-jij-soci 国内候補の推薦せず=18年登録「世界の記憶」地域版] [[時事通信社]] 2017年7月28日([[Yahoo!ニュース]])</ref>。
===国内版===
===国内版===
国内版は日本ユネスコ国内委員会が2010年に記憶遺産担当窓口を設けているが、選定は行っていない。具体的な国内版の「世界の記憶」を選定している事例としては、ベトナムの「[[ベトナム独立宣言]]」などがある<ref name="local Committee"/>。
国内版記憶遺産は日本ユネスコ国内委員会が2010年に担当窓口を設けが、選定は行っていない。具体的な国内版の「世界の記憶」を選定している事例としては、ベトナムの「[[ベトナム独立宣言]]」などがある<ref name="local Committee"/>。


== 国際センター ==
== 国際センター ==
世界遺産における[[世界遺産センター]]に相当する「記録遺産国際センター(International Center for Document Heritage)韓国の[[清州市]]に設立することが決まった。ここでの業務は、登録された記録物の管理や関連政策の研究などを行う<ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201711/CK2017110702000242.html 韓国、ユネスコ新組織誘致 世界記憶遺産を管轄]東京新聞 2017年11月7日</ref>。
世界遺産における[[世界遺産センター]]に相当する機関として、「記録遺産国際センター(International Center for Document Heritage)を韓国の[[清州市]]に設立することが決まった。ここでは、登録された記録物の管理や関連政策の研究などを行う<ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201711/CK2017110702000242.html 韓国、ユネスコ新組織誘致 世界記憶遺産を管轄]東京新聞 2017年11月7日</ref>。


== 新たな試み ==
== 新たな試み ==
ユネスコは[[新型コロナウイルス感染症の流行 (2019年-)|新型コロナウイルス感染症の流行]]をうけ、ユネスコ加盟各国に対して[[医療]]や[[2019年コロナウイルス感染症による社会・経済的影響|社会的・経済影響]]などを公的に記録保存するよう要請し、将来的に「世界の記憶」に選定することを表明した<ref>[https://en.unesco.org/covid19/communicationinformationresponse/documentaryheritage Mobilizing the documentary heritage community amid the COVID-19 pandemic] - UNESCO</ref>。
ユネスコは[[新型コロナウイルス感染症の流行 (2019年-)|新型コロナウイルス感染症の流行]]をうけ、加盟各国に対して[[医療]]や[[2019年コロナウイルス感染症による社会・経済的影響|社会経済への影響]]などを公的に記録保存するよう各国に要請し、今後、「世界の記憶」に選定することを表明した<ref>{{cite web|url=https://en.unesco.org/covid19/communicationinformationresponse/documentaryheritage |title=Mobilizing the documentary heritage community amid the COVID-19 pandemic|publisher=UNESCO|language=en|accessdate= 2020-04-22}}</ref>。


== 障壁 ==
== 障壁 ==
176行目: 178行目:


== 関連事業 ==
== 関連事業 ==
ユネスコは1980年に「動的映像の保護及び保存に関するユネスコ勧告」を採択し、文書のみならず映像資料の保存にも乗り出しており、「世界視聴覚遺産 (Audiovisual Heritage)」として保護を呼び掛け<ref>[http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/access-to-knowledge/archives/world-day-for-audiovisual-heritage/ World Day for Audiovisual Heritage] - UNESCO</ref>、「世界の記憶」にも反映されている
ユネスコは1980年に「動的映像の保護及び保存に関するユネスコ勧告」を採択し、文書のみならず映像資料の保存にも乗り出しており、「世界視聴覚遺産」(Audiovisual Heritage)として保護を呼び掛け<ref>[http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/access-to-knowledge/archives/world-day-for-audiovisual-heritage/ World Day for Audiovisual Heritage] - UNESCO</ref>、「世界の記憶」選定規準にも反映した


=== 直指賞 ===
=== 直指賞 ===
{{Main|:en:Memory_of_the_World_Programme#Jikji Prize}}
韓国の[[直指心体要節]]が2001年に「世界の記憶」に選定されたことを記念し、韓国政府記録遺産の保存とデジタル化情報発信に寄与した選定物件所有者を顕彰すべく、2004年に「直指賞 (Jikji Memory of the World Prize)を創設し翌年から2年毎に国際諮問委員会の会合に合わせて表彰している<ref>[http://portal.unesco.org/ci/en/ev.php-URL_ID=16050&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html Jikji Memory of the World Prize] - UNESCO</ref>。
韓国の[[直指心体要節]]が2001年に「世界の記憶」に選定されたことを記念し、韓国政府記録遺産の保存とデジタル化情報発信に寄与した選定物件所有者を顕彰すべく、2004年に「直指賞(Jikji Memory of the World Prize)を創設した。2002年から2年毎に国際諮問委員会の日程に合わせて表彰している<ref>[http://portal.unesco.org/ci/en/ev.php-URL_ID=16050&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html Jikji Memory of the World Prize] - UNESCO</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
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=== 注釈 ===
=== 注釈 ===
{{Notelist2}} <!-- <nowiki> <ref group="注"></nowiki>の代わりに、注釈内に出典を入れる場合に備えて<nowiki>{{efn2|注釈文<ref>出典</ref>}} </nowiki>形式でテンプレートをお使いください。-->
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=== 出典 ===
=== 出典 ===
{{Reflist}}
{{Reflist|30em}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
{{参照方法|date=2020年10月}}
* 清州古印刷博物館パンフレット
* 清州古印刷博物館パンフレット
* 『世界記憶遺産データ・ブック-2015〜2016年版-』(シンクタンクせとうち総合研究機構
* 古田陽久、古田真美『世界記憶遺産データ・ブック-2015〜2016年版-』世界遺産総合研究所企画・編集)、広島:シンクタンクせとうち総合研究機構〈世界の記憶シリーズ〉、2015年。2020年版まで続刊。{{ISBN2|9784862001962}}。
* 『世界の記憶遺産60』幻冬舎
* 古田陽久、古田真美『世界の記憶遺産60』幻冬舎、2015年。{{ISBN2|9784344027848}}。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
197行目: 201行目:
* [[世界の記憶の一覧]]
* [[世界の記憶の一覧]]


== 関連文献 ==
; 上野三碑
* 浅賀方正、井上清、大澤末男『上野三碑 : ユネスコ「世界の記憶」登録記念誌』、高崎市文化協会吉井支部、2018年。{{NCID|BB27010050}}。

; 朝鮮通信使
* 『鞆の浦と朝鮮通信使 : ユネスコ「世界の記憶」朝鮮通信使に関する記録』、[[福山市]]教育委員会管理部文化財課、2018年、{{NCID|BB26429903}}

; 記憶の継承全般
* 櫻井龍彦「開発と自然環境問題に対する民間伝承の「語り」の可能性 」『野生生物保護』、ISSN 1341-8777、「野生生物と社会」学会、1999年、第4巻、第2号、63-92頁、{{doi|10.20798/wildlifeconsjp.4.2_63}}。
* コッホ ラースークリスティアン、ヴィードマン アルブレヒト、チーグラー スザンヌ、足立整治「ベルリン録音資料館(Das Berliner Phonogramm-Archiv) : 音響記録の宝庫(<小特集>貴重な音声・音楽データの採録・修復・保存を考える)」『日本音響学会誌』、ISSN 0369-4232、一般社団法人 日本音響学会、2004年、第60巻第7号、386-391頁、{{doi|10.20697/jasj.60.7_386}}。
* 八重樫純樹「横断的アーカイブズ論研究会」『アート・ドキュメンテーション通信』、ISSN 0915-7956、アート・ドキュメンテーション学会、2005年10月25日、第67巻、2-6頁。
* 小粥良「ガリチアの首都レンベルク」『山口大学独仏文学』、ISSN 0387-6918、山口大学独仏文学研究会、2006年12月25日、第28巻、75-107頁。
* 出口弘「日本漫画と文化多様性 : マンガをめぐる現状と歴史的経緯(<特集>MANGA)」『情報の科学と技術』、ISSN 0913-3801、一般社団法人 情報科学技術協会、2014年、第64巻第4号、122-132頁、{{doi|10.18919/jkg.64.4_122}}。
* 小川千代子「軍隊と情報公開」『藤女子大学文学部紀要 = The bulletin of the Faculty of Humanities, Fuji Women's University』、ISSN 2187-4670、藤女子大学、2016年2月10日、第53巻、57-63頁。
* 小川千代子、小野田美都江「記録管理学会2013-2014年度理事会メンバーによるブレーンストーミング成果報告書」『レコード・マネジメント』、ISSN 0915-4787、記録管理学会、2016年、第70巻、3-14頁、{{doi|10.20704/rmsj.70.0_3}}。
* 黒沢文貴『歴史に向きあう : 未来につなぐ近現代の歴史』、東京大学出版会、2020年、ISBN 9784130263504。
== 外部リンク ==
== 外部リンク ==

* [https://en.unesco.org/programme/mow 「世界の記憶」公式サイト]{{en icon}} - ユネスコ
* [http://www.mext.go.jp/unesco/006/1354664.htm 「世界の記憶」] - 日本ユネスコ国内委員会(文部科学省サイト内)
* [http://www.mext.go.jp/unesco/006/1354664.htm 「世界の記憶」] - 日本ユネスコ国内委員会(文部科学省サイト内)
* [http://www.mext.go.jp/unesco/002/006/002/005/1308398.htm ユネスコ「世界の記憶」選考委員会] - 日本ユネスコ国内委員会(文部科学省サイト内)
* [http://www.mext.go.jp/unesco/002/006/002/005/1308398.htm ユネスコ「世界の記憶」選考委員会] - 日本ユネスコ国内委員会(文部科学省サイト内)
* [https://en.unesco.org/programme/mow 「世界の記憶」公式サイト](英語) - ユネスコ


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2020年10月16日 (金) 10:54時点における版

世界の記憶(せかいのきおく、英: Memory of the World、略号 MoW)は、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が主催する事業の一つ。危機に瀕した古文書書物などの歴史的記録物可動文化財)を保全し、広く公開することを目的として、1992年に創設された。選定件数は2017年10月時点で地域登録を含め470件超である[1]

日本政府2010年日本ユネスコ国内委員会の小委員会で「記憶遺産」と訳すことを了承したが、u「heritage」など遺産を意味する英単語が正式名称に含まれていないことから、外務省文部科学省では2016年6月から直訳である「世界の記憶」を用いている[2][3]

記憶遺産のロゴ

概要

歴史的記録物は人類の文化を受け継ぐ重要な文化遺産であるにもかかわらず、毀損されたり、永遠に消滅する危機に瀕している場合が多い(文化浄化)。このためユネスコは1995年、記録物の保存と利用のためのリストを作成して効果的な保存手段を用意するために「世界の記憶」の選定を開始し、記録物保護の音頭を執っている。事業の主要目的は、世界的に重要な記録物に最も適切な手段を講じて保存を奨励し、デジタル化を通じて全世界の多様な人々の接近を容易にすること[注 1]、平等な利用を奨励して全世界に広く普及させ、世界的観点で重要な記録物を持つすべての国家の認識を高めることにある。

「世界の記憶」と呼ぶと歴史的出来事自体を登録するように誤解されがちだが、歴史的出来事を検証・顕彰できる一次記録物が対象であり、ユネスコでも「the documentary heritage」[5]と称していることから[6]、「世界の記録」「記録遺産」とした方が意味合いとしては適切との指摘もあり、韓国では記憶(기억)でなく記録(기록)としている(세계기록유산)。

ユネスコ内部の担当部署は、情報・コミュニケーション局情報社会部情報アクセス・保存課である。

なお、世界遺産の場合は一般に「登録」(正式には世界遺産リストへの「記載」)と呼ぶが、「世界の記憶」は選定事業であるため、「登録」や「認定」とは言わず、「選定」が正しい呼称となる[6]

選定手続

選定基準は世界歴史に重大な影響をもつ事件・時代・場所・人物・主題・形態・社会的価値を持った記録物(一次資料)を対象とする。申請は原則的に政府および非政府機関を含むすべての個人または団体ができるが、関連地域または国家の委員会が存在するのであれば、その援助を受けることができる(後述の「#地域委員会と地域版、国内委員会と国内版」の節参照)。申請権は対象記録を所有する事象当事国に限られる(事象と記録が複数国に跨る場合は双方の合意の上)[6][7]

まず、申請者はユネスコ本部内の一般情報事業局に申込書を提出して書類審査を受けるが、申請は1国で2件までであり、日本の例では3件以上の申し込みがあれば日本ユネスコ国内委員会が2件に絞り込むよう調整が行われる[8]

審査はユネスコ事務局長が任命する委員14名によって構成された「国際諮問委員会 (IAC)」を通じて1997年から2年毎に「MoW選考委員会 (Register Committee)」の場で選定を行っている[6]。国際諮問委員会の委員は、ユネスコの「公共図書館宣言」[9]を遵守する国の公文書館[注 2]ワールド・デジタル・ライブラリーへ参加する図書館司書などが多い。委員に求められる資質は、国連出版物の編纂や国際的な図書普及啓蒙活動に関与した実績、典籍研究が広く評価されていることなどとされ、国際図書館連盟 (IFLA) や国際文書館評議会 (ICS) からの推挙もある[6][11]

ただし最終決定権はユネスコ事務局長に委ねられ、2015年審査分にパレスチナが申請したアーカイブ Palestine Poster Project Archives はあまりにも反ユダヤ主義的で文化摩擦を招きかねないとして、イリナ・ボコヴァ事務局長(当時)の判断により除外された例もある[12]

選定基準

選定における基準は以下のとおりである。

  • 1次的基準
1. 影響力
2. 時間
3. 場所
4. 人物
5. 対象主題
6. 形態及びスタイル
7. 社会的価値
8. ほか
  • 2次的基準
1. 元の状態での保存
2. 希少性
3. ほか

選定指針

対象となる歴史資料は、世界遺産同様に真正性英語版が重要であり、これは言い換えれば「信憑性がある」ことになる。

また、近現代史資料に関しては記録の客観性も評価の対象となる傾向がある。2013年に審査されたシンガポール申請の録音テープ媒体「日本占領下の証言集 (Japanese occupation of Singapore oral history collection)」は戦後かなり経ってからの回顧録で、客観性に欠けるとの理由から不登録となった[13]

歴史資料の定義

ユネスコが定義する記録物とは、1978年に採択した「可動文化財の保護のための勧告」[14]で、以下の各項に該当するものである。

  • (vi) 美術的に重要な物件:独創的創作手段としてのポスターおよび写真、あらゆる材料の独創的美術的なアセンブラージュおよびモンタージュ。
  • (vii) 肉筆および初期の活版印刷による古書・写本・書籍・文書または出版物。
  • (ix) 原文記録、地図その他の製図上の資料を含む文書・写真・映画フィルム・録音物および機械によって解読できる記録。

特徴

世界遺産と無形文化遺産は申請国の法的保護根拠を必要とするが、「世界の記憶」にはそうした条件が求められない。

また、歴史が浅くても構わず、例えば韓国の「光州事件の民主化運動に関する記録」は1980年フィリピンの「ピープルパワー革命(エドゥサ革命)時のラジオ放送」は1986年東ティモールの「ターニングポイント:国家誕生の時」は1999年 - 2002年にわたる出来事の資料が選定されている。

世界遺産同様にトランスバウンダリー(国境を越えた複数国による共同申請)も推奨されており、2013年(平成25年)に選定された日本の『慶長遣欧使節関係資料』はスペインと共同で申請し、2017年(平成29年)には民間と地方自治体主導で日韓共同による『朝鮮通信使関係資料』が選定された[15]

制度改革

審査は非公開で、国家間で見解が異なる係争中の資料を密室審議することへの批判もあり、ユネスコの中立性・政治的利用が懸念され[16]、このことはユネスコも認めた[17]。2016年には日本政府がユネスコ分担金約44億円の支払いを凍結するなど異議を申し立て、制度改革を進めるとされた[18]2018年のユネスコ執行委員会で議題として扱われ、2019年には審査に新制度をあてるとし、2018年は新規の申請を受け付けないと発表された[19]。しかしながら韓国の反対で翌2019年の協議が進展しなかったことから、改革は2020年秋に持ち越され申請受付も中止される[20]。2020年は新型コロナウイルスパンデミックにより協議を開催できず、制度改革は2021年3月まで再延期された[21]

制度改革案は日本国内でさまざまな意見が発せられており、例えば慰安婦や南京事件の検証を続ける秦郁彦19世紀以降の事象は除外することを提言している[22]

選定後の変更

「世界の記憶」は選定後に対象物の追加や一部削除を認めるが(実例なし)[6]、抹消は出来ないことを松浦晃一郎前ユネスコ事務局長は指摘した[23]。その後、制度改革が進められ、原本が失われた場合や、真正性が否定されることが確認できた場合には選定抹消も可能となった[7]

これまでの国際諮問委員会総会(MoW選考委員会)

※上掲「制度改革」の項にあるように、2018年以降選考会は開催されていない

登録物件

第9回定期総会終了時の選定物件の国別分布図(2009年7月31日)[注 3]

世界各地に多数の選定物件があり、2005年6月18日時点で57ヶ国120点、2009年7月31日時点で193点(35点追加)[24]2011年5月25日時点(第10回定期総会終了時点)では75点を追加し268点となった。

なお、以下に記述する地域区分はユネスコの発表に準じたものであり、通常、日本で用いられる地理的区分とは大きく異なるので注意が必要。例えば、一方でトルコヨーロッパに含まれ、エジプトモロッコなどはアフリカではなくアラブ諸国に含まれる。サウジアラビアなどもアジアではなくアラブ諸国に含まれるが、他方、オセアニアはアジアと同じ区分として扱われる。

ヨーロッパおよび北アメリカ

ヨーロッパおよび北アメリカ地域では、現在、145点が選定されており[25]、特にドイツの選定数が多い。代表的な登録物件としては、子供と家庭の物語(グリム童話2005年選定)、バイユーのタペストリー(バイユー・タペストリー美術館所蔵、2007年選定)、ニーベルンゲンの歌2009年選定)、マグナ・カルタイギリス、2009年選定)、アンネの日記(文学作品[注 4]、2009年登録)[24]グーテンベルク聖書2001年選定)、ベートーヴェン交響曲第9番の自筆楽譜ベルリン国立図書館所蔵、2001年選定)、共産党宣言及び資本論初版第1部(2013年選定)[26]などが挙げられる。

アジアおよびオセアニア

アラブ諸国を除くアジアおよびオセアニアでは、2011年時点で42点が選定されている引用エラー: <ref> タグに対応する </ref> タグが不足しています、翌2011年5月25日、697点の作品が国内初の「世界の記憶」として選定された[27]

2010年時点の政府の見通しでは、2012年3月には日本ユネスコ国内委員会から推薦するとして『鳥獣戯画』や『源氏物語絵巻』などが候補に挙がったところ[28]、それに先んじて2011年5月、記憶遺産選考委員会で日本国政府として初めての推薦物件が国宝の『御堂関白記』と『慶長遣欧使節関係資料』に決まり、推薦すると[29][30]審査を経て2013年6月に選定された[31]

2015年の選定では舞鶴引揚記念館が所蔵する『舞鶴への生還 1945-1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録』と『東寺百合文書』を申請し[32][33]、いずれも同年10月に選定されると[34]舞鶴引揚記念館資料寄贈者の木内信夫、安田清一は日本初の生存作家となった。

2017年10月には、江戸時代に朝鮮から日本に派遣された外交使節朝鮮通信使」に関する資料が日韓共同申請の物件として[35][36]、また日本独自で申請した古代の石碑上野三碑(こうずけさんぴ)」群馬県高崎市[37])がともに選定された[38]

2020年時点で日本関連とされる物件は上記に加え、2016年5月に地域登録に選定された「水平社と衡平社国境を越えた被差別民衆連帯の記録」との合計8点である[1]

大韓民国

韓国では1997年に『朝鮮王朝実録』と『訓民正音解例本』がこのリストに選定され、2015年時点で選定物件13点と、アジア太平洋地域で最多である。2001年の審査では、朝鮮王朝時代の国王“秘書室”とも言える承政院が扱った文書と事件を記録した『承政院日記[注 5]がリストに選定された。2002年、ハングルの日記念式に出席した金碩洙(キム・ソクス)首相は「ユネスコが地球上の文字の中で、唯一ハングルのみを世界記録遺産に認定した」と発表した[39]2007年には『グーテンベルク聖書』より約80年古く、1377年に印刷され世界最初の金属活字本と公認される『直指心体要節』も選定された(フランス国立図書館所蔵、清州興徳寺にて印刷)。2015年の審査では、韓国放送公社の特別生放送『離散家族を探しています』が選ばれる。

2015年に日本軍従軍慰安婦関連資料を申請することを目指し、『国際連帯推進委員会』を結成した[40]。韓国が申請しようとした物件はナヌムの家が保管する資料が主体で、慰安婦像まで含まれる可能性もある[41]とされたものの、2017年の審査では選定の可否が先送りとなった。

中華人民共和国

中国では、『黄帝内経』や『本草綱目』、故宮博物院所蔵の代歴史文書や、雲南省の古代ナシ族が伝えるトンパ文字による古文書など、10点が選定されている。

2014年、中国政府は南京事件および従軍慰安婦に関する資料を申請した。このうち、南京事件に関する資料が2015年10月に選定された[42]

2017年、中国の申請した甲骨文字が選定された[43]

タイ王国

タイ王国では、同国の近代化に貢献したラーマ5世チュラロンコーン王の政策を記した文書が、2009年に選定されている[24]。選定数は3件[いつ?]

インド

インドでは、『リグ・ヴェーダ』や『ヴィマラプラバー』(『時輪タントラ』の註釈書)、『ティムール伝』の原稿[注 6]、ポンディシェリーのシャイヴァ文書、タミル医学文献コレクション、『シャーンティナータ・チャリトラ』、オランダ東インド会社のアーカイブなど、7点が選定されている。

アラブ諸国

アラブ諸国における選定数は2011時点で8件。

アフリカ

アラブ諸国を除くアフリカにおける2011時点の選定数は8件。

南アメリカおよびカリブ諸国

南アメリカおよびカリブ諸国における2011年時点の選定数は62件[46]

国際交流機関

国際交流機関からの選定は2011年時点で3件。

地域委員会と地域版、国内委員会と国内版

「世界の記憶」地域委員会と地域版、国内委員会と国内版にはユネスコ本部と国際諮問委員会が主導する「ワールド・コミッティ」(上記のもの)と、ユネスコ地域事務局と地域委員会による地域版の「リージョナル・コミッティ」、そしてユネスコ憲章が定める国内協力団体として各国政府が設置するユネスコ国内委員会が選定する国内版の「ナショナル・コミッティ」がある。地域委員会は現在、アジア太平洋、アフリカ、ラテンアメリカ・カリブ諸国の三つの区域がある。地域版も選定基準は世界版に準じるが、当該地域における重要性を重視する[7][48]

地域版

アジア太平洋地域版で日本としては初の選定物件として全国水平社の資料が登録されたほか、水平社運動に連動した朝鮮衡平社の資料も日本と共同歩調を取った韓国申請により選定された[49]。また、シンガポールは世界版に申請し棄却された「日本占領下の証言集」につき、中国の支援をうけ地域版に再申請するが、こちらでも選定に至らなかった[50]

2018年の選定を目指し日本ユネスコ国内委員会が国内候補を公募すると、「伊能忠敬測量記録・地図」(千葉県香取市)、「画家加納辰夫の恒久平和への提言 フィリピン日本人戦犯赦免に関わる運動記録」(島根県・加納美術振興財団)、「松川事件・松川裁判・松川運動の資料」(福島大学)の3件が申し込んだ。「世界的重要性、唯一性・代替不可能性などの選考基準に照らし合わせ、推薦すべき物件がないと判断した」とし、推薦は見送られた[51]

国内版

国内版記憶遺産は日本ユネスコ国内委員会が2010年に担当窓口を設けたが、選定は行っていない。具体的な国内版の「世界の記憶」を選定している事例としては、ベトナムの「ベトナム独立宣言」などがある[48]

国際センター

世界遺産における世界遺産センターに相当する機関として、「記録遺産国際センター」(International Center for Document Heritage)を韓国の清州市に設立することが決まった。ここでは、登録された記録物の管理や関連政策の研究などを行う[52]

新たな試み

ユネスコは新型コロナウイルス感染症の流行をうけ、加盟各国に対して医療社会と経済への影響などを公的に記録保存するよう各国に要請し、今後、「世界の記憶」に選定することを表明した[53]

障壁

世界遺産・無形文化遺産とともにユネスコ三大遺産事業と形容される「世界の記憶」だが、決定的に違うのは世界遺産と無形文化遺産が条約に基づく保護活動であるのに対し「世界の記憶」は単なる選定事業に過ぎないことである。

このことから、ユネスコ未加盟の台湾中華民国)が2010年に甲骨文字コレクションを申請したものの受理されなかった経緯がある[54]

関連事業

ユネスコは1980年に「動的映像の保護及び保存に関するユネスコ勧告」を採択し、文書のみならず映像資料の保存にも乗り出しており、「世界視聴覚遺産」(Audiovisual Heritage)として保護を呼び掛け[55]、「世界の記憶」選定規準にも反映した。

直指賞

韓国の『直指心体要節』が2001年に「世界の記憶」に選定されたことを記念し、韓国政府は記録遺産の保存とデジタル化情報発信に寄与した選定物件所有者を顕彰すべく、2004年に「直指賞」(Jikji Memory of the World Prize)を創設した。翌2002年から2年毎に国際諮問委員会の日程に合わせて表彰している[56]

脚注

注釈

  1. ^ 選定資料デジタル化公開の好例はイスラエルのヤド・ヴァシェムにおけるホロコースト証言集が上げられる[4]
  2. ^ ユネスコ「図書館統計の国際的な標準化に関する勧告」[10]に定義される。
  3. ^ 2009年7月31日時点で日本の登録数はゼロであった。
  4. ^ 言及されていないが、原テキストと初版本の一部が対象か。原テキストはオランダ国立戦時資料研究所が所蔵。
  5. ^ 国家のすべての機密を扱った部署による『承政院日記』は世界最大の連帯記録物であり、総数3,243冊・2億4250万字に及ぶ。
  6. ^ 『ティムール伝』の原稿とはムガル帝国初代皇帝ティムールの生涯を描いた挿絵入りの手稿を指す。

出典

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  4. ^ Last Letters From The Holocaust: 1943:I Left Everyone At Home
  5. ^ the documentary heritage
  6. ^ a b c d e f "General Guidelines to Safeguard Documentary Heritage(記録遺産保護のためのガイドライン)" (Document). UNESCO. {{cite document}}: 不明な引数|accessdate=が空白で指定されています。 (説明); 不明な引数|format=は無視されます。 (説明); 不明な引数|url=は無視されます。 (説明)
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参考文献

  • 清州古印刷博物館パンフレット
  • 古田陽久、古田真美『世界記憶遺産データ・ブック-2015〜2016年版-』世界遺産総合研究所(企画・編集)、広島:シンクタンクせとうち総合研究機構〈世界の記憶シリーズ〉、2015年。2020年版まで続刊。ISBN 9784862001962
  • 古田陽久、古田真美『世界の記憶遺産60』、幻冬舎、2015年。ISBN 9784344027848

関連項目

関連文献

上野三碑
  • 浅賀方正、井上清、大澤末男『上野三碑 : ユネスコ「世界の記憶」登録記念誌』、高崎市文化協会吉井支部、2018年。NCID BB27010050
朝鮮通信使
  • 『鞆の浦と朝鮮通信使 : ユネスコ「世界の記憶」朝鮮通信使に関する記録』、福山市教育委員会管理部文化財課、2018年、NCID BB26429903
記憶の継承全般
  • 櫻井龍彦「開発と自然環境問題に対する民間伝承の「語り」の可能性 」『野生生物保護』、ISSN 1341-8777、「野生生物と社会」学会、1999年、第4巻、第2号、63-92頁、doi:10.20798/wildlifeconsjp.4.2_63
  • コッホ ラースークリスティアン、ヴィードマン アルブレヒト、チーグラー スザンヌ、足立整治「ベルリン録音資料館(Das Berliner Phonogramm-Archiv) : 音響記録の宝庫(<小特集>貴重な音声・音楽データの採録・修復・保存を考える)」『日本音響学会誌』、ISSN 0369-4232、一般社団法人 日本音響学会、2004年、第60巻第7号、386-391頁、doi:10.20697/jasj.60.7_386
  • 八重樫純樹「横断的アーカイブズ論研究会」『アート・ドキュメンテーション通信』、ISSN 0915-7956、アート・ドキュメンテーション学会、2005年10月25日、第67巻、2-6頁。
  • 小粥良「ガリチアの首都レンベルク」『山口大学独仏文学』、ISSN 0387-6918、山口大学独仏文学研究会、2006年12月25日、第28巻、75-107頁。
  • 出口弘「日本漫画と文化多様性 : マンガをめぐる現状と歴史的経緯(<特集>MANGA)」『情報の科学と技術』、ISSN 0913-3801、一般社団法人 情報科学技術協会、2014年、第64巻第4号、122-132頁、doi:10.18919/jkg.64.4_122
  • 小川千代子「軍隊と情報公開」『藤女子大学文学部紀要 = The bulletin of the Faculty of Humanities, Fuji Women's University』、ISSN 2187-4670、藤女子大学、2016年2月10日、第53巻、57-63頁。
  • 小川千代子、小野田美都江「記録管理学会2013-2014年度理事会メンバーによるブレーンストーミング成果報告書」『レコード・マネジメント』、ISSN 0915-4787、記録管理学会、2016年、第70巻、3-14頁、doi:10.20704/rmsj.70.0_3
  • 黒沢文貴『歴史に向きあう : 未来につなぐ近現代の歴史』、東京大学出版会、2020年、ISBN 9784130263504

外部リンク