李文亮
李文亮 | |
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生誕 |
1985年10月12日 [1] 中華人民共和国遼寧省錦州市 |
死没 |
2020年2月6日 (34歳没) 中華人民共和国湖北省武漢市 |
死因 | 新型コロナウイルス感染症 |
別名 | 「疫情吹哨人」[2][3] |
職業 | 眼科医 |
著名な実績 | 2019新型コロナウイルスによる肺炎の内部告発 |
政党 | 中国共産党 |
李文亮 | |
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各種表記 | |
拼音: | Lǐ Wénliàng |
和名表記: | り ぶんりょう |
李 文亮(り ぶんりょう、英語: Li Wenliang、1985年10月12日 - 2020年2月6日)は、中華人民共和国の眼科医。遼寧省北鎮市出身。2019新型コロナウイルスによる肺炎の流行の時、医療関係者として内部告発した最初の数人のうちの1人であり、この肺炎の犠牲者の1人でもある[4]。「インターネット上で虚偽の内容を掲載した」として、2020年1月3日に訓戒処分を下されたが、中国政府は国民からの猛反発を受けることとなったため、本人の死後2020年3月5日、新型肺炎の抑制に模範的な役割を果たしたとして表彰した[5]。
経歴
[編集]2004年に7年制の武漢大学臨床医学部に入学し、卒業後は廈門市で3年間働いたのち、2014年から武漢市中心医院に勤務[7]。
訓戒処分
[編集]2019年12月30日午後、勤務先の病院である患者からSARSコロナウイルスが検出された検査結果を見つけたため、同日午後5時43分に大学の同級生らのWeChatグループで「華南海鮮市場で7人のSARS感染者が確認された」と発信し、その直後に患者の検査結果と肺のCT検査の写真も送った。同日午後6時42分に「コロナウイルスの感染が確認され、どのタイプかまだ調査中」と補足した[8]。
しかし、「インターネット上で虚偽の内容を掲載した」として、2020年1月3日に武漢市公安局武昌区分局の中南路派出所に呼び出された。そこで懲戒書への署名を求められ、訓戒処分を下された[9][10]。
メディアは当初、李文亮が「デマを散布した」8人のうちの1人と見なし報道したが[11][12]、その8人は1月1日に呼び出されたため、李氏は報道における8人に含まれていないとみられる[13]。李はのちにメディアのインタビューで、自分が真実だけを話したのに処分を受けたと答えた[14]。
その後、引き続き武漢市中心医院で働きコロナウイルス流行への対応にあたっていたが、自身もコロナウイルスに感染し1月12日から入院生活を送ることとなった。入院中の1月31日、ようやくSNSで懲戒書をアップロードし、警察に呼び出された経過を詳しく述べることができた[15]。
新型コロナウイルス感染と死去
[編集]2020年1月8日、高齢の緑内障患者を診察したが、翌日にこの患者に発熱や肺炎の症状が現れたため、この患者が新型肺炎を患っていると強く疑った[16]。1月10日に、自身も咳や発熱などの症状が現れた[17]ため、1月12日から集中治療室で隔離治療を受け始めた[18]。入院から1月30日まで何度も核酸検査を受けていたが、陽性との結果は出なかった[19]。2月1日に感染が確認され[18]、同日に彼の両親や数人の同僚医師の感染も確認された[20]。
2月6日夜に、中国国内の複数のメディアは李文亮が武漢市内の病院で亡くなったと報道した[21][22]。メディアによると、午後9時30分に心停止が発生し[23][24][25][26]、その後も体外式膜型人工肺(ECMO)による救命措置が続いた[27]。
2月7日2時58分、勤務先の武漢市中心医院は李文亮の死去を発表した[28]。
反応
[編集]- 死の前に、「健全な社会はただ一つの主張のみに依拠してはならない」と発言(中国語原文:健康的社會不該只有一種聲音)。
- 訓戒の際と特にその後の死の際、中国政府は国民からの猛反発を受けることとなった。
- 世界保健機関は2月6日23時25分に、Twitterに李文亮医師の死を追悼する文を投稿した[29]。
脚注
[編集]- ^ “Briefing on the investigation of the situation involving Dr Li Wenliang as reflected by the public (关于群众反映的涉及李文亮医生有关情况调查的通报)”. National Supervisory Commission Investigation Team (国家监委调查组) (2020年3月19日). 2024年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月26日閲覧。
- ^ “[早前标题]新冠肺炎“吹哨人”李文亮:真相比平反更重要”. 财新网 (2020年1月31日). 2020年1月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月6日閲覧。 アーカイブ 2020年1月31日 - ウェイバックマシン
- ^ “武汉肺炎:一个敢于公开疫情的“吹哨人”李文亮”. BBC News 中文 (2020年2月4日). 2020年2月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月6日閲覧。 アーカイブ 2020年5月1日 - ウェイバックマシン
- ^ “武汉肺炎:一个敢于公开疫情的“吹哨人”李文亮”. BBC中文. 2020年2月6日閲覧。 アーカイブ 2020年5月1日 - ウェイバックマシン
- ^ “中国、警鐘後に処分された医師ら表彰 批判かわす狙いか”. 朝日新聞デジタル. 2020年3月5日閲覧。 アーカイブ 2020年3月5日 - ウェイバックマシン
- ^ 張子傑 (2020年2月6日). “【武漢肺炎】敢言醫生李文亮病逝 曾被喻為疫情「吹哨人」” (中国語). 香港01. 2020年2月6日閲覧。 アーカイブ 2020年2月6日 - ウェイバックマシン
- ^ 覃建行 (2020年1月31日). “新冠肺炎“吹哨人”李文亮:真相最重要”. 财新网. オリジナルの2020年1月31日時点におけるアーカイブ。 2020年2月6日閲覧。
- ^ 刘名洋 (2020年1月31日11:29:59). “对话“传谣”被训诫医生:我是在提醒大家注意防范”. www.bjnews.com.cn. 新京报. オリジナルの2020年2月6日時点におけるアーカイブ。 2020年2月6日閲覧。
- ^ “武漢肺炎「吹哨者」:三周前就知道可「人傳人」了”. 元气网. 2020年2月6日閲覧。 アーカイブ 2020年5月3日 - ウェイバックマシン
- ^ “首名吹哨者李文亮已死?病房傳出啜泣聲 武漢院方:在搶救” (中国語). 世界新聞網 (2020年2月6日). 2020年2月6日閲覧。 アーカイブ 2020年2月6日 - ウェイバックマシン
- ^ “财新为武汉病毒八个“吹哨人”之一李文亮平反并纾缓民愤”. 法國國際廣播電台. 2020年2月6日閲覧。 アーカイブ 2020年2月4日 - ウェイバックマシン
- ^ “武漢肺炎:最早公開疫情「吹哨人」李文亮去世” (中国語). BBC News 中文. (2020年2月6日). オリジナルの2020年5月19日時点におけるアーカイブ。 2020年2月6日閲覧。
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- ^ 武汉肺炎:最早公开疫情“吹哨人”李文亮去世 アーカイブ 2022年5月6日 - ウェイバックマシン
- ^ 毛淑杰 (2020年1月30日). “对话被训诫的武汉医生李文亮:我没被吊销执照,身体恢复还上一线”. 南方都市报. オリジナルの2020年9月30日時点におけるアーカイブ。 2020年2月6日閲覧。
- ^ a b 吴荣奎 (2020年2月1日). “武汉被训诫医生李文亮:新冠核酸检测为阳性”. 新京报. オリジナルの2020年2月3日時点におけるアーカイブ。 2020年2月6日閲覧。
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- ^ 【武汉疫情】敢言医生李文亮传死讯 院方称仍抢救中 アーカイブ 2020年2月6日 - ウェイバックマシン
- ^ 官方罕见未删 微信一片泪惜:被训诫医生李文亮一线救人感染冠状病毒今晚去世了 アーカイブ 2020年2月6日 - ウェイバックマシン
- ^ sina_mobile (2020年2月6日). “疫情“吹哨人”李文亮去世”. news.sina.cn. 2020年2月6日閲覧。 アーカイブ 2020年2月6日 - ウェイバックマシン
- ^ “披露內地疫情醫生李文亮一度傳出死訊 院方稱仍在搶救”. RTHK News - 香港電台. オリジナルの2020年9月30日時点におけるアーカイブ。 2020年2月6日閲覧。
- ^ “【武漢肺炎】敢言醫生李文亮傳死訊 院方稱仍搶救中”. 香港01. オリジナルの2020年2月6日時点におけるアーカイブ。 2020年2月6日閲覧。
- ^ “【武漢肺炎大爆發】率先披露疫情-李... 【武漢肺炎大爆發】率先披露疫情李文亮醫生搶救無效去世 - 眾新聞”. 眾新聞. オリジナルの2020年2月6日時点におけるアーカイブ。 2020年2月6日閲覧。
- ^ https://www.facebook.com/ETtoday.+“更新/去年就發防護預警!「吹哨人」醫生李文亮確診…心跳停止裝葉克膜(ECOM)搶救 | ETtoday新聞雲” (中国語). www.ettoday.net. 2020年2月6日閲覧。 アーカイブ 2020年2月6日 - ウェイバックマシン
- ^ “李文亮医生感染新冠肺炎病逝”. オリジナルの2020年2月6日時点におけるアーカイブ。 2020年2月6日閲覧。
- ^ Organization (WHO), World Health (2020年2月6日). “We are deeply saddened by the passing of Dr Li Wenliang. We all need to celebrate work that he did on #2019nCoV - @DrMikeRyan” (英語). @WHO. 2020年2月6日閲覧。 アーカイブ 2020年2月6日 - ウェイバックマシン
関連項目
[編集]- カルロ・ウルバニ - SARSを新種の病気と認定した医師。自身もSARSで死亡した。
- 2019年コロナウイルス感染症で亡くなった著名人の一覧 (2020年上半期以前)
外部リンク
[編集]- 李文亮 - 新浪微博
- 新型肺炎を武漢で真っ先に告発した医師の悲運(李文亮医師へのインタビュー)(東洋経済オンライン・財新)