コロナウイルス

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コロナウイルス
分類(ウイルス)
: 第4群(1本鎖RNA +鎖)
: ニドウイルス目
: コロナウイルス科
亜科(本文参照)

コロナウイルス: coronavirus)は哺乳類鳥類病気を引き起こす多くのウイルスのうちの1つである。 ヒトでは、ウイルスは風邪を含む呼吸器感染症を引き起こすが、稀なタイプのSARSMERSおよびCOVID-192019-nCoV, SARS-CoV-2)のようなウイルスは致死的である。鶏には上気道疾患を引き起こし、牛や豚には下痢を引き起こす。ヒトコロナウイルス感染を予防または治療するためのワクチン抗ウイルス薬は存在しない。

コロナウイルスはニドウイルス目コロナウイルス科オルトコロナウイルス亜科に属する[1][2]。それらは正の一本鎖RNAゲノムとらせん対称性のヌクレオカプシドをもつエンベロープウイルスである。コロナウイルスのゲノムサイズは約26から32キロベース (kb) で、 RNAウイルスでは最大である。

「コロナウイルス」という名前は、ラテン語コロナに由来する。コロナとは、王冠または丸い光の輪(光冠)を意味し、ウイルス粒子 (ビリオン) の特徴的な外観(王冠または太陽コロナを連想させる周縁)を意味する。

発見

コロナウイルスは1960年代に発見された[3]。最初に発見されたのは、ニワトリの伝染性気管支炎ウイルスと、風邪をひいたヒト患者の鼻腔からの2つのウイルスで、後にヒトコロナウイルス229EおよびヒトコロナウイルスOC43と名付けられた[4]。その後、このファミリーの他のメンバーが同定され、 2003年にSARS-CoV、2004年にHCoV NL63、2005年にHKU1 、2012年にMERS-CoV、2019年に2019-nCoV (SARS-CoV-2) が同定された。そのほとんどが重篤な気道感染症に関与している。

名前と形態

「コロナウイルス」の名称はラテン語 corona (コロナ) およびギリシャ語の王冠または光冠、花冠を意味する κορώνη (korṓnē) に由来する。この名称は電子顕微鏡によるビリオン (感染性を有するウイルス粒子) の特徴的な外観に由来する。ビリオンは大きな球状の表面突起の縁をもち、樹冠や太陽コロナを思わせる像をつくる。この形態はウイルスのスパイク (S) ペプロマーによってつくられる。ペプロマーはウイルスの表面にあるタンパク質で、宿主の向性を決定する。

すべてのコロナウイルスの全体構造に関与するタンパク質は、スパイク (S)、エンベロープ (E)、膜 (M)、ヌクレオカプシド (N) である。SARSコロナウイルスの特異的な例では、S上の定義された受容体結合ドメインがウイルスの細胞受容体であるアンジオテンシン変換酵素2 (ACE2) への結合を仲介する[5]。一部のコロナウイルス (特にベータコロナウイルスサブグループAのメンバー) は、血球凝集素エステラーゼ (HE) と呼ばれる、より短い棘状の蛋白質も有する[6]

分類

ヒトに感染するコロナウイルス

コロナウイルスによる感染症

風邪症候群

風邪を引き起こすものが4種類あり、風邪の10〜15%(流行期35%)の原因を占める。HCoV-229E、HCoV-OC43は1960年代に発見され、HCoV-NL63、HCoV-HKU1は2000年代に入って発見された[7]

重症急性呼吸器症候群

2002年に発見されたSARS-CoVによる。キクガシラコウモリが自然宿主であると考えられている[7]

中国広東省を起源とした2002年11月から 2003年7月における流行では、中国を中心として全世界で約8,000人が感染し、774人が死亡した(致命率約10%)[注 1]。広東省(珠江デルタ地帯付近)が発生地とされる。

中東呼吸器症候群

2012年に発見されたMERS-CoVによる。ヒトコブラクダに風邪症状を引き起こすウイルスで、ヒトに感染すると重症肺炎を引き起こすと考えられている[7]。2012年9月[注 2] - 2020年1月現在流行中。2020年1月27時点で約2,490人が感染し約850人が死亡。約27ヶ国に感染例が波及している[8]

2013年5月15日世界保健機関(WHO)は患者が入院したサウジアラビアの病院の2人(看護婦と医療関係者)への「ヒトヒト感染」が初めて確認されたと発表した[9][注 3][注 4]。この疾病はその後、2015年5月から7月にかけて韓国アウトブレイクを引き起こし、186人が感染し、そのうち36人が死亡した(2015年韓国におけるMERSの流行)。2019年においてもサウジアラビアにおいて14人が感染し、そのうち5人が死亡した[10][11]

2019年の新型コロナウイルスによる呼吸器症候群

2019年12月31日に最初にWHOに報告された2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV, SARS-CoV-2)による疾患(COVID-19)およびその流行である[12]。初発流行地は中国湖北省武漢市とされている。

2020年2月現在、中国国内と国外では規模に大きな差があるものの、日本を含むアジアを中心に感染拡大が続いている。

このウイルスについて、日本の厚生労働省は単に「新型コロナウイルス」と2020年1月時点で呼称している[13]

治療法・抗生物質やワクチン

治療は、コロナウイルスを原因とする風邪に際して行っているのと同じで、解熱薬やその他の対症療法で行う。

ヒトに感染するコロナウイルスは、以下に掲げる風邪、その他重篤な呼吸器症候群肺炎いずれもウイルス性疾患であるため、抗生物質は無効である。

ヒトに対し安全性・有効性の両方が確認されているワクチンは、治療用・予防用どちらも存在しない

ヒトにおける感染経路

コロナウイルスの感染経路には、「飛沫感染」と「接触感染」がある、と考えられている[14]。 「飛沫感染」とは、感染者がくしゃみなどをする時に、ツバなどの飛沫(=しぶき)とともにウイルスが飛び散り、別の人がそのウイルスを口や鼻から吸い込み感染してしまうことである[14]

接触感染とは、感染者がくしゃみや咳をする時に口を手で覆うなどして手がウイルスを含んだ唾液で汚染され、手で触れてモノの表面にウイルスが付き、別の人がそのモノに触ってウイルスが手に付着し、その手で顔(口や鼻(や眼)の周囲などの粘膜)に触ることで体内にウイルスが入り込むことである[14]。特に多い接触感染の経路は例えば電車のつり革、バスのつり革、ドアノブ、各種スイッチ[14]照明のスイッチ、エレベーターのスイッチ、エアコンのスイッチ、コピー機のボタン、PCの電源スイッチやキーボードATMタッチパネル式スイッチ 等々)などである(また、スーパーショッピングセンターの買い物かご取っ手ショッピングカートの取っ手 、釣り銭として受け取った小銭や紙幣、舐めて塗らして貼付した切手、スマートフォン等々からも経由して感染する可能性がある)。

ヒトにおける感染予防法

コロナウイルスに対しては、通常のインフルエンザウイルスと同様の感染予防法が有効だと考えられている。つまり、手指や顔を石鹸で洗ううがい粘膜を護るために湿度を50〜60%に保つこと、などである。咳や発熱などの症状のある人に近づかない人混みの多い場所に行かない、ということも重要である。マスクの着用についてはWHO(世界保健機関)、アメリカ疾病予防管理センターは予防に効果がなく、資源の無使いになるとして推奨していない[15]が、日本政府のサイトでは薦められている(マスクについては多少但し書きはある)[14]

石鹸による手指からひじまでの洗浄、アルコールによる消毒・殺菌、うがい、洗顔

つり革、ドアノブ、スイッチ、小銭、紙幣、スマートフォンなど様々なものに触れることにより、誰の手にも(コロナ)ウイルスが付着している可能性があるが、コロナウイルスの表面はエンベロープと呼ばれる脂質で覆われており、アルコールによる消毒が可能で、石鹸などの界面活性剤にも弱いといえる[16]ので、以下のような時にこまめに手洗いを行う[14]

  • 外出後の帰宅時
  • 調理を行う前、および後
  • 食事
  • (自分の顔に触れる前は毎回)

「感染予防のための正しい手の洗い方」というものがあり(医療関係者が医療機関で行っている手の洗い方をほぼ踏襲している洗い方であり)、まず手を濡らし、石鹸をつけ、手のひら側をこする→手の甲の側を洗い→指先、爪の間を念入りにこすり→(指と指をからませるようにして)指の間をよく洗い→(親指を手で包むようにして)「親指のねじり洗い」をし→手首までしっかりと洗う[14](なお、最後に関して、医療関係者や調理者などの規則やマニュアルでは、手首だけでなく、手首から「ひじ」にかけてまでしっかり洗う、とされており、そのほうがより一層安全である)。

マスクの着用

感染者がマスクをすると咳やくしゃみによる飛沫およびそれらに含まれるウイルス等病原体の飛散を防ぐ効果が高いとされている[14]。 一方、未感染者にとっては、WHO(世界保健機関)、アメリカ疾病予防管理センターは予防に効果がないとして推奨していない[17]が、日本政府は相当混み合っている場所、また屋内・乗り物など換気が不十分な場所では、やはりマスクをすることは有効な方法のひとつだと考えている[14](ただし、屋外や人の少ない場所では、マスクをつけていてもつけていなくても さほど変わりは無い[14]としている)。

(部屋の)湿度を50〜60%に保つ

空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下してしまうので、乾燥しやすい室内では加湿器などを使って、適切な湿度(50〜60%)を保つ[14]

普段からの健康管理

普段から、十分な睡眠とバランスのよい食事を心がけ、免疫力自己治癒力)を高めておく[14]

脚注

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注釈

  1. ^ 当初中国当局により大規模な隠蔽工作が長期にわたって行われ、また検出が技術的に困難だったので、実際はこの数字よりも多いと考えられている。
  2. ^ ザキ博士による全世界初の公表から始まった。
    "Novel coronavirus - Saudi Arabia: human isolate" ProMED-mail,2012-09-20 15:51:26
  3. ^ また合計で関係者21人(死者9人)が医療機関関係者の感染者となる。
  4. ^ ヒト-ヒト感染は、イギリスで父子感染例がある。

出典

  1. ^ AMQ King, ed (2011). “Family Coronaviridae”. Ninth Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses. Elsevier, Oxford. pp. 806–828. ISBN 978-0-12-384684-6. 
  2. ^ ICTV Master Species List 2009 – v10 (xls) - International Committee on Taxonomy of Viruses (24 August 2010)
  3. ^ Coronavirus: Common Symptoms, Preventive Measures, & How to Diagnose It” (英語). Caringly Yours (2020年1月28日). 2020年1月28日閲覧。
  4. ^ “Human coronaviruses: insights into environmental resistance and its influence on the development of new antiseptic strategies”. Viruses 4 (11): 3044–3068. (November 2012). doi:10.3390/v4113044. PMC: 3509683. PMID 23202515. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3509683/. 
  5. ^ “Structure of SARS coronavirus spike receptor-binding domain complexed with receptor”. Science 309 (5742): 1864–1868. (September 2005). Bibcode2005Sci...309.1864L. doi:10.1126/science.1116480. PMID 16166518. https://semanticscholar.org/paper/bbedaafec1ea70e9ae405d1f2ac4c143951630bc. 
  6. ^ AMQ King, ed (2011). “Family Coronaviridae”. Ninth Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses. Elsevier, Oxford. pp. 806–828. ISBN 978-0-12-384684-6. 
  7. ^ a b c コロナウイルスとは 国立感染症研究所,Jan 10,2020 Accessed:2020-01-20
  8. ^ WHO | Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)”. WHO. 2020年1月27日閲覧。
  9. ^ "Novel coronavirus infection - update" 15 May 2013 ,Global Alert and Response(GAR)
  10. ^ Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – The Kingdom of Saudi Arabia”. Word Health Organization. 2020年1月16日閲覧。
  11. ^ MERS-CoV cases reported betwen 1 to 31 May 2019”. World Health Organization. 2020年1月16日閲覧。
  12. ^ Pneumonia of unknown cause – China. Disease outbreak news”. World Health Organization (2020年1月5日). 2020年1月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月6日閲覧。
  13. ^ 中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎の発生について”. www.mhlw.go.jp. 日本厚生労働省. 2020年1月27日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h i j k l 首相官邸「新型コロナウイルスの感染症に備えて」
  15. ^ https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200207/k10012277301000.html
  16. ^ 峰宗太郎 (2020年1月23日). “中国武漢から流行している新型コロナウイルス(2019-nCoV)による新型肺炎について”. ぱそろじすと・あっと・ざ・らぼ. 峰宗太郎. 2020年1月28日閲覧。
  17. ^ https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200207/k10012277301000.html

参考文献

  • 原澤亮 「動物ウイルスの新しい分類(2005)」 『獣医畜産新報』 58号 921-931頁 2005年 ISSN 0447-0192
  • 見上彪監修 『獣医感染症カラーアトラス』 文永堂出版 2006年 ISBN 4830032030なわ

関連項目

外部リンク