市町村

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。114.145.128.178 (会話) による 2012年5月12日 (土) 17:33個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎町村の読み方)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

市町村(しちょうそん)とは、地方公共団体であるの総称。日本の基礎的地方公共団体地方自治法2条3項では「基礎的な地方公共団体」)として、包括的(広域的)地方公共団体である都道府県に対比される。

市町村は基礎自治体でもあるが、日本の基礎自治体にはほかに特別区(都の区)があり、合わせて市区町村(しくちょうそん)または市町村区(しちょうそんく)という。東京都では、都内で人口最多の基礎自治体が市ではなく特別区なので、公的には区市町村(くしちょうそん)という[1]2012年(平成24年)1月4日現在の数は

基礎自治体
    787
748
184
市町村計 1719
特別区 23
総計 1742

である[2]

地方自治法は、以下で条数のみ記載する。

市町村の歴史

1889年明治22年)、国会開設に先立ち、府県制などと並ぶ明治憲法下の地方制度として、北海道沖縄県などを除く本土に、市制および町村制が施行された。これらは地方公共団体としての市・町村を対象とした法で、地方における行政事務と警察事務の執行のために、地方官官制(明治19年勅令第54号)が別に定められた。

1911年(明治44年)には市制(法律第68号)と町村制(法律第69号)に分けられ、その後も大きな改正が行われている。

終戦直後の1947年昭和22年)、地方自治法の制定に伴い廃止された。

現在でも「町が市となる処分」があったことを「市制施行」というのはこの名残である。

市・町・村の条件

  • 人口5万人以上。ただし1965年以降は、市町村の合併の特例等に関する法律(平成16年法律第59号の新法では第7条)の規定が適用されれば3万人以上。
  • 中心的市街地に全戸数の6割以上がある。
  • 商工業その他の都市的な業態に従事する者及びそれと同一世帯に属する者の数が全人口の6割以上。
  • 当該都道府県条例で定める都市的施設その他の都市的要件を備えている。

以上の要件を満たさなければならない(8条第1項)。

となるためには、当該都道府県がそれぞれ条例で定める「町」としての各要件(人口、連坦戸数あるいは連坦率、必要な官公署等、産業別就業人口割合等)を具備する必要がある(8条2項)。

村の法的な要件は、特段定めはない。市の要件も町の要件も満たさなければ、自動的に村となる。

市・町・村間の移行

町村が市に、あるいは、村が町になるためには、関係市町村の申請に基づいて都道府県知事都道府県議会の議決を経て決定し、直ちに総務大臣に届け出る(8条3項)。

市制施行後にその要件を満たさなくなった市が町や村に、あるいは町制施行後に要件を満たさなくなった町が村に戻ることについては規定がなく、行われたことがない。歌志内市がその極端な例で、ピーク時には人口約4万6000人を数えたが、後の過疎化によって現在は町制施行基準の人口5000人をも下回っている。

移行は義務ではない。たとえば茨城県美浦村東海村は、いずれも町制施行の要件(茨城県の人口要件は5000人)を満たしているが、美浦トレーニングセンター東海原子力発電所を持ち「村」のほうが全国的知名度が高いため、あえて[要出典]町制施行してない。岩手県滝沢村は、市制施行の要件(5万人)を大きく超えているが、市制移行の動きはあるものの、2011年8月現在、村のままである。

町となるための人口要件

下限 都道府県(村の有無は2010年現在)
村あり 村なし
1万5000人 栃木県
1万0000人 岩手県 群馬県 東京都 新潟県 福井県 香川県
8000人 青森県 山形県 福島県 長野県 大阪府 奈良県 島根県 高知県 大分県 沖縄県 石川県 静岡県
7000人 佐賀県
5000人 北海道 宮城県 秋田県 茨城県 埼玉県 千葉県 神奈川県 山梨県 岐阜県 愛知県 京都府 和歌山県 徳島県 福岡県 熊本県 宮崎県 鹿児島県 三重県 滋賀県 山口県 愛媛県
4000人 鳥取県 広島県 長崎県
3000人 富山県 岡山県 兵庫県

原則として単独町制の場合であり、合併促進のために特例を設けている都道府県もある。

廃置に伴う「降格」

市または町を廃し、同地に(要件を満たしていないなどの理由で)町または村を新設すれば、市または町から町または村へ降格されたように見える。しかしこの場合、たとえ名前が(「市」「町」「村」部分を除いて)同じでも、旧市町と新町村は別個の地方公共団体であり、法人格は連続していない。

実際にはこのようなことは、他の廃置分合や境界変更を伴う場合に起こり、たとえば、

渋谷町→渋谷村
町域の一部が他市に編入され、残った町域で町が廃され同時に村が新設された。
宮田町→駒ヶ根市宮田村
他の自治体と合併して市となった後、再度分離独立して村が新設された。

が挙げられる。

回避されたケースとしては、加美町がある。平成の大合併の際、宮城県加美郡では中新田町小野田町宮崎町色麻町の4町が合併して加美市を作る構想があった。しかし、途中で色麻町が合併協議を離脱したため、合計人口が3万人を割り込んで市制の条件を満たさなくなり、さらに中心部の建物の密度が県条例で定める町の要件に満たなかったので、合併によって逆に村に「降格」するのではと取り沙汰された。最終的には、県条例を改正した結果、加美町として合併することとなった[3]

機能

市町村は、自治事務を行い、条例規則などを制定する自治立法権などを持つ。

市・町・村での差

地方自治法上は、市町村の間で法的な取扱いについて大きな違いはないが、市のうち政令指定都市については事務配分や行政区制度に関する特例がある(252条の19第252条の20)。

町村では条例で議会を置かず、これに代えて選挙権者の総会である町村総会を設けることができる(同法第94条、第95条)。過去に町村制の施行下における神奈川県足柄下郡芦之湯村(現在の箱根町の一部)の事例と、地方自治法下における東京都八丈支庁管内宇津木村(現在の八丈町の一部。八丈小島の項参照)の事例が報告されているが、2006年平成18年)に多重債務で財政再建団体への転落が危惧される長野県木曽郡王滝村で議案(議会決議で否決)として検討されたことがある。

北方領土の村

ロシア実効支配している北方領土には、日本の村が6ヶ村あった。ただし、日本の基礎自治体としては機能を喪失しており、戸籍に関する業務のみを根室市が代行している。

主な下部組織

市町村の機関には、議決機関として市町村議会が、執行機関として市区町村長、各種行政委員会などが置かれる。町村は議会を置かず選挙権者全員による総会を設けることもできる。首長市長町長、村長、特別区区長)と地方議会議員は、住民による選挙によって選出される。

市町村の中の町・村

市町村の区域内の「~町」「~村」のほとんどは、公式なものであっても、(あざ)と同様に、法人格を持たず、地理上の区域にすぎない。歴史的には江戸時代の町村に由来するが、長い間に廃置分合が相次いだため、現在では単純な対応関係にない。

ただし、「~町」「~村」という名の地域自治区合併特例区もある。地域自治区は市町村の下部組織である。合併特例区は法人格を持ち、特別区と同じく特別地方公共団体で、多くの場合ごく最近まで独立した市町村だった。

町村の読み方

都道府県によって「町」「村」の読み方が異なる。

都道府県名 備考
北海道 ちょう むら 森町のみ例外 
静岡県 ちょう - 森町のみ例外 
鳥取県 ちょう そん
島根県 ちょう むら 川本町のみ例外
岡山県 ちょう そん
広島県
山口県 ちょう -
徳島県 ちょう そん
香川県 ちょう -
愛媛県 ちょう -
高知県 ちょう むら
福岡県 まち むら 遠賀町のみ例外
佐賀県 ちょう - 江北町のみ例外
長崎県 ちょう -
大分県 まち むら
熊本県 まち むら あさぎり町山都町氷川町の3町は例外
宮崎県 ちょう そん
鹿児島県 ちょう むら・そん 鹿児島郡2村は「むら」、大島郡2村は「そん」
沖縄県 ちょう そん

脚注

関連項目