佐伯彰一
佐伯 彰一(さえき しょういち、1922年〈大正11年〉4月26日 - 2016年〈平成28年〉1月1日)は、日本のアメリカ文学者、東京大学名誉教授、比較文学研究者、文芸評論家。
略歴
富山県出身。古代日本に存在した佐伯部の子孫で神官の家柄[1]。旧制富山高校を経て、東京帝国大学英文科、同大学院修了、東京都立大学助教授を67年に辞職、トロント大学客員教授として日本文学を教えたあと、1968年東京大学教養学部教授、1976年から大学院比較文学比較文化研究室主任。1983年定年退官後は中央大学教授を1993年まで勤め、世田谷文学館館長、2007年同名誉館長。三島由紀夫文学館初代館長。1980年『物語芸術論』で読売文学賞、82年日本芸術院賞[2]、86年『自伝の世紀』で芸術選奨文部大臣賞受賞。88年より日本芸術院会員。1994年勲三等旭日章受章。
1958年、篠田一士、村松剛らと雑誌『批評』を創刊し、批評活動を行った。日米関係を軸とした比較文学、伝記批評と分析批評の融合などを試みるが[要出典]、1970年代以降は自伝や伝記研究に重点をおき、その方面での著作があった。『三島由紀夫全集』(1973年4月-1976年6月)の編纂、作品論や伝記を執筆し、政治言論では保守系の評論家として、日本会議代表委員も務めた。『作家の自伝』シリーズを松本健一と監修している。
2016年1月1日、肺炎のため死去[3]。93歳没。叙従四位。[4]
単著
- 『現代英米小説の問題点』南雲堂新書 1956
- 『日本を考える』新潮社 1966
- 『伝記と分析の間』南北社 1967
- 『文学的アメリカ』中公新書 1967
- 『内と外からの日本文学』新潮選書 1969
- 『アメリカ文学史』筑摩書房 1969、筑摩叢書 1980
- 『内なるアメリカ・外なるアメリカ』新潮社 1971
- 『日本への視点』PHP研究所 1974
- 『日本人の自伝』講談社 1974、講談社文庫 1979、講談社学術文庫 1991
- 『日本の「私」を索めて』河出書房新社 1974
- 『評伝 三島由紀夫』新潮社 1978 中公文庫 1988(改訂版)
- 『書いた、恋した、生きた ヘミングウェイ伝』研究社出版 1979
- 『物語芸術論 芥川・谷崎・三島』講談社 1979、中公文庫 1993
- 『狂気の時代』サンケイ新聞出版 1979
- 『外から見た近代日本』日本経済新聞社 1980、講談社学術文庫 1984
- 『近代日本の自伝』講談社 1981、中公文庫 1990
- 『外から見た日本文学』TBSブリタニカ 1981
- 『日米関係のなかの文学』文藝春秋 1984
- 『批評家の自伝』研究社出版 1985
- 『自伝の世紀』講談社, 1985、講談社文芸文庫, 2001
- 『神道のこころ 見えざる神を索めて』日本教文社〈教文選書〉, 1989、中公文庫, 1992
- 『伝記のなかのエロス』筑摩書房 1990、中公文庫 1994
- 『昭和史のなかの私』筑摩書房 1993
- 『大世俗化の時代と文学』講談社 1993
- 『読書という悪徳』文藝春秋 1995
- 『わが愛する伝記作家たち』講談社 1997
- 『作家の手紙をのぞき読む』講談社 2000
- 『回想 私の出会った作家たち』文藝春秋 2001
- 『作家論集 島崎藤村から安部公房まで』未知谷 2004
- 『作家伝の魅力と落とし穴』勉誠出版 2006
翻訳
- E.ミュアー『小説の構造』ダヴィッド社 1954、改訂1976
- ジョゼフ・コンラッド『潟・エイミィ・フォスター』(増田義郎と共訳)英宝社 1956
- 『持つと持たぬと 午後の死』ヘミングウェイ全集 三笠書房 1956
- P.ラボック『小説の技術』ダヴィッド社 1957
- ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』荒地出版社(現代アメリカ文学全集) 1958
- フォークナー『死の床に横たわりて』(世界文学大系)筑摩書房、1959。講談社文芸文庫 2000
- アーウィン・ショー『湖畔の情事』三笠書房 1959
- 『ポオ全集』東京創元新社(全3巻) 1963。のち創元推理文庫(全5巻)-解説・共訳は福永武彦・吉田健一 ほか多数
- エドワード・G・サイデンステッカー『現代日本作家論』新潮社 1964
- フィリップ・ロス『さようならコロンバス』(世界文学全集)集英社 1965、集英社文庫 1977
- ヘミングウェイ『日はまた昇る』『ヘミングウェイ 世界文学全集 20世紀の文学 (5) 』集英社、1966。集英社文庫 1978 改版2009
- ソール・ベロー『雨の王ヘンダソン』(世界の文学)中央公論社、1967。中公文庫 1988
- カーソン・マッカラーズ『針のない時計』(田辺五十鈴との共訳)講談社世界文学全集 1970、講談社 1971
- フラナリー・オコナー『烈しく攻むる者はこれを奪う』新潮社 1971。文遊社 2013
- フィリップ・ロス『狂信者イーライ』(宮本陽吉との共訳)集英社 1973
- ミロ・ケインズ編『ケインズ 人・学問・活動』(早坂忠との共訳)東洋経済新報社 1978
- トニー・タナー『言語の都市 現代アメリカ小説』(武藤脩二との共訳)白水社、1980
- 岡倉天心『東洋の理想』「天心全集」平凡社、1980。平凡社東洋文庫、1983、のちワイド版
- アーウィン・ショー『ルーシィ・クラウンという女』大和書房 1987
- レスリー・A・フィードラー『アメリカ小説における愛と死』(行方昭夫、入江隆則、井上謙治と共訳)新潮社 1989
編著
- 『ジョイス入門』(荒正人との共編)南雲堂、1960
- 編『批評 '58-'70文学的決算』番町書房、1970
- 編『三島由紀夫全集』新潮社、1973-76
- 『ふたつの日本 対談集』 集英社, 1973
- 『旅人への贈り物 ボルヘス日本滞在誌』(神吉敬三と共編)法政大学出版局、1982
- 『非行文化の時代 新しいライフスタイルの創造』(高根正昭と共著)紀尾井書房、1982
- 編『伝記文学の世界』朝日出版社、1983(退官記念論文集)
- 編『アメリカハンドブック』三省堂、1986
- 『外国人による日本論の名著』(芳賀徹と共編) 中公新書、1987
- 『山本七平と日本人 一神教文明のなかの日本文化をめぐって』会田雄次との対論、廣済堂出版、1993
- 『作家の自伝 シリーズ』松本健一と共編・監修、日本図書センター、1995-2000
- 編『自伝の名著101』新書館、2000(序論といくつかの項目を執筆)
註
参考
- デジタル版日本人名大辞典
- 「年譜」『自伝の世紀』講談社文芸文庫
関連人物
外部リンク
- 佐伯彰一「理性の王者の落とし穴(B.ラッセル)」