アイアムアヒーロー

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アイアムアヒーロー
ジャンル 成年向け青年漫画
サスペンスホラー漫画
漫画
作者 花沢健吾
出版社 小学館
掲載誌 ビッグコミックスピリッツ
レーベル ビッグスピリッツコミックス
発表号 2009年22・23合併号 - 連載中
発表期間 2009年4月20日 - 連載中
巻数 既刊19巻(2016年3月現在)
テンプレート - ノート

アイアムアヒーロー』(I Am a Hero)は、花沢健吾による日本漫画。漫画雑誌『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、2009年22・23合併号(2009年4月20日発売)から連載中。

概要

謎の感染病による平凡な日常の崩壊を描いたホラー漫画。当作品は「生ける死体」を題材とした作品ジャンルの一つではあるが、同じジャンルの作品とは違い「ゾンビ」という言葉は直接使っていない。

連載開始時は、単行本ほぼ一巻分を主人公の日常を描くことに割き、パンデミック後も「日常性の崩壊」と「災害」が仔細かつ淡々と描かれる。さらに主人公を始め、様々な形で「これまでの社会に劣等感を抱いていた者」の行動にスポットを当てている。

マンガ大賞2010で4位、マンガ大賞2011で3位。第58回(平成24年度)小学館漫画賞一般向け部門受賞[1]

2016年に実写映画が公開予定[2][3]。この制作発表時には、作中の感染者を表すZQNが「ゾンビ」であると表現された[4]

あらすじ

物語序盤のモデルとなった三原台一丁目陸橋から見た関越自動車道方面の眺望[5]

主人公・鈴木英雄は、さえない35歳の漫画家。デビュー作は連載開始後半年で早々に打ち切られ、借金も背負い、アシスタントをしながら再デビューを目指しネームを描いては持ち込む日々が3年を経たが、依然として出版社には相手にされない悶々とした日常を過ごしている。職場の人間関係も上手く行かず、さらに夜になれば何者かが忍び寄る妄想に囚われ、朝方まで眠れぬ生活が続いていた。そんな無為な日常の中の救いは、恋人である黒川徹子の存在。だがその彼女もすでに売れっ子漫画家になった元カレを何かと引き合いに出し、さらには酔うたびに英雄の不甲斐なさをなじる始末。

その一方、社会では2009年のゴールデンウィークシーズンを前にして、不穏な兆候を示す出来事が相次いで起こっていた。全国的に多発する噛み付き事件、町に増えてゆく警官の数、厚労相の入院と入院先での銃撃戦といった報道。英雄も深夜、練馬区石神井公園付近の雑木林で、タクシーに轢かれて両腕と右足が潰れ首が真後ろに折れても運転手に噛み付き奇声を発し立ち去る女性を目撃する[6]。だが、日々の生活で手一杯の英雄らにそれらを気に留める余裕などあるはずもなかった。

そしてある日、そんな日常は思いもよらない形で崩壊を始める。英雄の眼前に繰り広げられるのは、周囲の人々がゾンビのような食人鬼と化す謎の奇病が蔓延、彼らに噛み付かれた者は感染者となり次々と増えて行く悪夢のような光景であった。恋人や仕事仲間も犠牲となり、世界がパニック拡大と秩序崩壊へと覆われるパンデミックの中、英雄は早狩比呂美との出会いを通じ、世界の崩壊から生き延びようとする。

登場人物

名前の読みや本名(フルネーム)は明確に判明していない限りそのまま表記する。

主要キャラクター

鈴木英雄(すずき ひでお)
本作の主人公。35歳。泡沫の漫画家であり、プロ漫画家の松尾の下で作画アシスタントとして働いている。かつてはデビュー作として連載を持っていたが、単行本2冊を出し打ち切りとなり、再デビューを果たすべく、出版社にネームの持込みを繰り返していた。練馬区三原台近く関越自動車道高架沿いに在住。クレー射撃を趣味としており、銃砲所持許可証および散弾銃(新SKB MJ-7)を所持していることが後々、極限状況を乗り越えることの武器となる。
内向的かつ臆病な性格で、極度に肥大した妄想癖があり、深夜は寝室隣の高速道の騒音さえ聞こえなくなるほどの恐怖に毎夜囚われていた。彼の想像にだけ存在する男「矢島」を話相手にしたり、周囲から賞賛されているような妄想をするが、端から見ればそれは単なる独り言であり、それが原因で現実には三谷たち周囲に倦厭されていた。「自分は世界の脇役で、自分自身の人生でさえ主役になる事はない」というコンプレックスに陥っている。パンデミック後も街中で銃を抜くことをためらっていたが、比呂美と知り合ってからは彼女を守るために発砲も厭わなくなる。
アウトレットモール脱出後は比呂美、小田と行動を共にし、東京に向かう目標の元で場所を転々としている。途中、異形と化したZQNに飲み込まれ心肺停止に陥るも、吐き出された後小田らによる心臓マッサージで蘇生する。
矢島(やじま)
英雄が作り出した妄想上の存在。外見は小柄で小太りで童顔。英雄が呼べばどこにでも現れ、基本的に英雄の言葉に賛同するようなことしか言わないが、てっこが感染した後には実体のないもやのような存在で登場し、英雄に対し諭すような言葉を残し姿を消す。
同作者の作品『ルサンチマン』及び『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の矢島に酷似。
早狩比呂美(はやかり ひろみ)
右目の下に泣きぼくろがある、髪の長い女子高生。おとなしい性格ゆえに学校では地味な印象で、クラスメイトにイジメの対象にされていたが、感染者と思われる首吊り自殺体にも臆せずに救いの手を差し伸べ、感染した紗衣を安楽死させるべく自ら英雄の銃で撃つ事を志願するなど、度胸がある一面もある。小栗真司という男性と付き合っていた。
ゴールデンウィーク中の林間学校富士山麓に来ており、クラスメイトとの樹海での肝試しで、逃れてきた英雄と遭遇する。英雄と共に富士山へ向かう集団から逃れる際、感染した新生児に首筋を噛まれる。新生児には歯が生えていなかったためか急激な感染は避けられたが、一夜明けた後に発症する。しかし英雄達を襲うことはない「半感染」状態となり、意識の混濁したまま同行する。アウトレットモールで伊浦に頭をクロスボウで撃たれ意識を失うも、小田の懸命の手術により回復、感染以前のように行動できるようになった。また、感染により「遠く離れた覚醒者やZQNとの意思疎通」や「身体能力の向上」などが見られた。
藪(やぶ) / 小田つぐみ(おだ つぐみ)
アウトレットモールに避難していた女性。表面的には伊浦やサンゴに従っていたが、本心では彼らのやり方を快く思っておらず、たびたび英雄達を手助けする。元は近辺の病院に勤めていた看護師で、非番だったため感染を免れた。発症後も英雄達を襲わない比呂美を、感染パニック解決の鍵になるのではないかと考えている。コミュニティの崩壊後、英雄・比呂美と共にアウトレットモールから脱出。その際に本名を明かす(「」の呼び名は注射が下手な事や子供が苦手な事に由来)。
比呂美が意識を失っていた際に、立ち寄った宿で英雄と肉体関係を持つ。後に妊娠が発覚(英雄と出会う前のコミュニティにて既に妊娠していた模様)。英雄達と別行動を決意するもZQNに噛まれ発症、かろうじて自我を保ちながらゴミ収集車のプレス機構に自ら入り込み、最終的に比呂美が作動ボタンを押し、プレス機構に巻き込まれ死亡。

サブキャラクター

英雄の仕事関係

黒川徹子(くろかわ てつこ) / てっこ
英雄の恋人で、かつて松尾の漫画アシスタントをしていた。眼鏡と口元のほくろが特徴。英雄のアパートや松尾の職場すぐ近くの、古いモルタルアパートに一人暮らしをしている。アシスタント時代、同僚だった中田コロリと交際していた。別れた後も彼の才能に心酔し、連絡も取り合っていた事を英雄は不快に感じていた。酒乱であり、よく英雄を翻弄する。
事件の発端となった現場付近で少女に噛まれた事で、自室で発症。尋ねてきた英雄に襲いかかり噛み付くも、直前に歯が全部抜けるまで玄関のドアを噛んでいたため英雄は感染せずに済んだ(後に英雄は、彼を感染させないように彼女が自ら歯を落としたのではないかと推測する[7])。自らの死期を悟ったかのように遺書めいたメモを残しており、自室内も中田の単行本を纏めて捨て、英雄の単行本を本棚に整列させるなど身辺整理的な行動が見られた。感染後も英雄に襲い掛かろうとする他の感染者を倒し英雄を守ろうとしたが、最期は「もう彼女は救えない」と矢島に諭された英雄の手により、首を切断された。
中田コロリ(なかた コロリ)
てっこの元交際相手で、3年前に英雄と入れ替わる形で松尾のアシスタントを辞めて漫画家デビュー。実家は渋谷の土地持ちで裕福。英雄の漫画家としての才能を買ってくれていた。
パンデミック以来、東京都豊島区の高層ビルに結成されたコミュニティに籠城しており、苫米地と無線で交信をしていた。女性のストッキングに執着を持つ。
松尾(まつお)
英雄のアシスタント先の漫画家。妻子がいるにもかかわらず、みーちゃんと不倫していた。三谷によれば、「職場に来る女性には手当たり次第手を出していた」という。感染したみーちゃんに噛まれ、しばらくは平静を装っていたが、後に発症し、三谷に撲殺された。
三谷(みたに)
松尾のチーフアシスタント。40歳代。18歳のときに漫画界に入ったものの、デビュー出来ずに年だけとってしまった事を嘆いている。態度が大きく、その性格を英雄は嫌っている。女子アナオタクで、そのため職場でもニュース番組をよく見ている。同じ職場のみーちゃんに好意を持っており、たびたびアプローチを仕掛けていたが、まったく相手にされていなかった。YouTubeを通して街の非常事態について何らかの情報を得ていたため、臨機応変に対応して感染を免れた。英雄と共に生存をかけ東京からの脱出を図るが、三原台一丁目の歩道橋に上がる途中で街の感染者に襲われ、墜落するジェット旅客機の車輪に頭部を巻き込まれ即死した。
パッシー
英雄のアシスタントつながりの知り合い。関西弁を話す。英雄とは一緒に飲みに行く仲であった。英雄との通話の中で、アシスタント先の師匠が感染したと思しき会話があった。
佐田和也(さだ かずや)
通称「カズさん」(カオリからは「カズ君」と呼ばれている)。超学館週刊ストリップ編集者。英雄のかつての担当編集であり、松尾を担当していた。英雄や三谷の持ち込みネームはことごとくボツにしている。2009年4月29日の業務終了の後直帰、5月1日に台湾で新人漫画家のカオリと共に取材旅行(実質的には不倫旅行)をしていた。現地で発症した彼女と格闘した際に手を引っ掻かれて感染、発症。ホテルの部屋に、英雄の漫画連載を認める旨を殴り書きしたメモを残して、行方をくらませた。
同僚アシスタント
松尾プロの男性アシスタント。眼鏡と前分けの髪型が特徴。松尾と共に、みーちゃんと付き合っており、三谷は彼を「クソ虫」と蔑んでいた。みーちゃんと松尾の感染後に三谷に最初に撲殺されるが、本人が「あの狭い仕事場でも二人が感染した」と発言していた為、本当に感染していたかどうかは不明である。
みーちゃん
松尾プロの女性アシスタント。眼鏡をかけており、三つ編みにそばかす顔が特徴。松尾とは不倫関係にあった。感染者となって松尾に襲いかかり、彼の男性器を食いちぎるが、包丁で松尾に刺され、水が入った浴槽に沈められ放置される。その後、水を含んで肥大化した醜悪な姿で復活し、三谷に可燃性ガスが入ったスプレーを噛まされ、ライターの炎によって頭部を爆破され活動停止。
カオリ
新人の女性漫画家。週刊ストリップで連載枠の候補に挙がっていた。編集者の和也とは不倫関係にあり、彼との子を身ごもったと語る。台湾で不倫旅行中に士林夜市で子供に足を噛まれて感染し、翌日訪れた九份で発症、逃げる和也を追う途中で観光バスに轢かれる。

富士で出会う人物

紗衣
比呂美の同級生。親が有力者で学校にも影響を持つ。比呂美に好感を抱きつつも、実は隠れて比呂美イジメを行う中心人物だった。発症した教師に手を噛まれたことで感染。発症後は比呂美を探し回りつつも襲うことは無く、同じく発症した可奈子から比呂美を守ろうとした。可奈子と共食いの末、比呂美か英雄の発砲により活動停止。
可奈子
比呂美の同級生。紗衣の取り巻きの一人で恰幅が良い。比呂美イジメの一員。発症後、比呂美のところまで紗衣に引きずられて来た。紗衣に喰われて活動停止。
荒木(あらき)
自称通販カタログ専属カメラマン。パンデミックの撮影で世界的な報道カメラ賞の受賞を狙って、妻子を残して富士山五合目へ向かっていたところ、散弾銃を持っている英雄達を目にし、行動を共にする。御殿場アウトレットモールで非感染者がコミュニティを形成しているとの情報を得て、英雄・比呂美とともに避難したが、コミュニティの崩壊時に英雄達と分断される。最期はもう一人の生存者である少年を生かす為に、陸上選手の感染者を道連れに焼死した。

アウトレットモールのコミュニティ

伊浦(いうら)
アウトレットモールの屋上で籠城する非感染者コミュニティの裏の支配者で、高い洞察力を持つ。ピストルクロスボウを所持し、反逆者や気に入らない者を感染者の多数徘徊する地上に落として処刑してきた。比呂美の症状に興味を抱き「感染をコントロールできるのではないか」と考えていた模様。
フードコートへの食料調達に参加していたが、作戦失敗のどさくさに紛れ一人だけで帰還。藪の車を停めている駐車場で待ちぶせしていたものの、藪たちが着いた頃には既に発症していた。比呂美によって顎を外されて駐車場の最上階から転落し、薮の運転する車にはねられる。英雄・藪・比呂美がモールを脱出した後、かつて自分達が散々嬲ってきた女性の感染者に首をもがれる。
サンゴ
元・引きこもりで、アウトレットモールの非感染者コミュニティの支配者(実際は伊浦が上で、サンゴは裸の王様)。本名不明。英雄の散弾銃に目を付け奇襲を試み、英雄から銃を奪うのに成功したものの、フードコートに食料調達に向かった際に返り討ちに遭い、感染者に首をもがれ死亡。首は「燃えないゴミ」用のゴミ箱に投棄される。
目白
サンゴと組む武闘派。女子高生に電車で痴漢冤罪をされた過去がある。英雄と藪に危害を加え、比呂美が感染した事が判明した際に自慢の腕力で撃退しようとするも、手と足を折られ敗北。その後、藪の説得で心を開き、陸上選手の感染者が背面跳びでモールに進入してきた際には、藪と比呂美を助けるべく自ら囮となる。
ブライ / 村井正和(むらい まさかず)
モールに籠城するメンバーの1人。ミリタリーオタクでエアーガンを所持。サンゴが散弾銃を英雄から奪った後の食糧調達隊の1人になる。調達部隊の危機に際し、覚悟を決め英雄に本名を明かす。英雄を援護してフードコートからの脱出に成功するが、感染者を殲滅しながら撤退する中で弾丸を撃ち尽くし、橋から飛び下り自決。橋の下にZQNが落下する描写があるので、飛び降りそのものが原因で死亡したかは謎である。
黒沢
アウトレットモールの元従業員。伊浦、サンゴ、ブライ、英雄と共にフードコートにある食料庫に案内するが、冷蔵庫に潜んでいた感染者に頭部を噛まれ、手遅れと判断された村井(ブライ)によって冷蔵庫に閉じ込められる。
田村
目白と同じサンゴの手駒、食料の調達時に見張り役として働いていた。ZQN化して徘徊している描写がある。

来栖一味

来栖(クルス)
本名・年齢不詳の自称「自宅警備員」で、作品世界のネット上では「小学生時代から引きこもりで個人特定出来ず」と称されている青年風の人物。パンデミックの3週間前(2009年4月上旬)時点で「感染した自分の母親をバットで何度もフルスイングする」映像をYouTubeにアップしていた(当初この映像は「個人の悪ふざけか、それともフェイクドキュメンタリー映画の宣伝か」とも噂されていた)。映像を通して呼びかけていた「俺達の時代」「世界は俺達のもの」という言葉は、ネット上に多くの賛同者を生み、その熱狂的ファンを指して「クルス信者」という呼び名まで出来ていた。埼玉県久喜市周辺でアジトメンバーと共に活動。常に裸にブリーフのみの姿で高い身体能力を持ち、半感染状態であったと推測される。
アジトメンバーが学校に逃げ込んだ際に、(崇が襲われているのを見物していたため)遅れて現れる。気まぐれで羽生兄妹を殺害した後、崇とスコップの男に勝負を挑むも、激昂した崇に敗れる。
江崎崇(えざき たかし)
埼玉県久喜市に住む引きこもり青年。母親が感染した後、自室にバリケードでたてこもりネットの掲示板を見て過ごしていた。来栖一味が仲間を募った書き込みに応え、救出してもらう。その際、来栖に「母親の首を切断しろ」という命令に苦悩しつつも実行。江崎家から脱出の際に周りの感染者が集まりはじめたため、毅と共にアジトに向かう。
アジトが感染者に襲撃された際、彼らを引き付けるため外に出て、激戦の末に噛みつかれ川に落ちる。しかし感染後も意識があり身体能力が飛躍的に上昇する。来栖に羽生兄妹を殺害された事を知らされ激昂。来栖とスコップの男を倒し、新たな「クルス」となった。
毅(こわし)
江崎を救出しに来たメンバーの一人。来栖の右腕的な存在で常に冷静。武道を習得しているようで逆上した春樹を簡単に押さえ込む。
ダニエリ
江崎を救出しに来たメンバーの一人。片言の日本語を話す外国人(台詞は全てカタカナ)。江崎の隣の家にいた感染者が騒いだため、女の命令で毅に報告、その後バラバラに逃げた際に感染し、来栖に殺された。
江崎を救出しに来たメンバーの一人。周りに自分のことは言わず他のメンバーと距離を取っているため、本名や詳しい素性は不明。「女」と称されているが、外見と言動から性同一性障害の男性であることを伺わせる。また、小田が英雄に語っていた話より、小田の妹(弟)であった模様。
江崎の隣の家にいた感染者が騒いだため殺害、ダニエリに毅に伝えるよう命令した後も1人で玄関前を見張る等、戦闘経験は豊富にある模様。アジトの風呂場で寝ていた際、感染者が雨戸を破り窓から侵入し取っ組み合う。苫米地の一言で風呂場で監禁されていた際に発症し、窓から外に逃げた。
苫米地(とまべち)
来栖達のアジトにいるひげをはやした男性。嫌味を交えながらも冷静な発言をする。メンバーでの武器の製造を担当している。アマチュア無線により、他の生存者と連絡を取り合っていた。アウトレットモールの伊浦が発見した「生前の生活習慣をトレースしている」などの他に、「感染者は極めてゆるやかだが南へ移動している」などの発見をしている。
おばちゃん
中年女性の主婦。本名は不明であり、アジトのメンバーには「おばちゃん」と呼ばせている。メンバーの飯炊き係。パンデミック後も電気が使える事や、原発に不安を持つなど主婦ならではの疑問を持つ。アジトの風呂場から感染者が侵入した際は包丁を二刀使い、首をためらうことなく切断した。
春樹
来栖達のアジトに居た男子中学生。江崎の母校の生徒(6年後輩)でもあり、江崎の中学生時代、彼をいじめていた親戚を持つ。短気で攻撃的な性格であるが、城を何かと気にかけている。
山田城(やまだ きずき)
来栖達のアジトに居たメンバーの一人。春樹と同級生の女子中学生。家族が避難したと届いたメールを信じ、避難所の学校に望みをかける。
羽生兄妹
兄は江碕救出の際、後援部隊としてクロスボウ(TAC-15)で感染者達を狙撃した男性。アジト近くの田んぼの物置小屋を改造して、普段はそこでアジトの門に近づく感染者を駆除する。アジトとは携帯ゲーム機のチャット機能を使い交信する。妹は小型のクロスボウを持ち物置小屋で見張っていた。
何らかの理由で来栖一派を信用しておらず、地元民の江崎を独自の避難計画に誘う。学校に逃げ込んで車で留守番する苫米地を脅迫した際、やってきた来栖の気まぐれで兄妹ともに殺害される。
スコップの男
本名不明。2本のスコップを武器にしており、学校で来栖を待ち構えていた。かつてスーパーでバイトをしていたときに感染者に噛まれたが誰も心配されなかったことに憤りを感じ、いくら人助けをしても「ヒーロー」になれなかったことをコンプレックスに思っている。その後は避難所を転々と回り、自分より格上に見える人間を次々と殺害していった。感染後の江崎同様意識はあり、「人間を超越した」と自称している。

感染者(ZQN)

病状が発症すると全身の血管が浮き出た外見となり、感染していない人間(非感染者)に噛みつきで襲いかかる。発症後は驚異的な身体能力を持つ。また痛覚がないのか、指で自分の目をつぶすなどの自傷行為に及ぶことがあり、車にはねられたり階段や高所から落ちたりしても、何事もないかのように動き回る。ただし生命維持活動は停止しているのか、感染から時間がたつと腐敗により体が脆くなる。また四足歩行(ブリッジ姿勢)で走るなど肉体的に不可思議な行動をとる者もいる。

習性として、以前の生活習慣や行動様式に関連した言動が見受けられる。感染時に心残りであったことを満たしてやれば、非感染者への殺傷摂食衝動が抑えられる傾向が見られる。銃声や金属音など大きな音に反応して集まる習性もあり、非感染者のコミュニティではこの習性を利用して陽動を行っていた他、目の前に非感染者が居る場合であっても、より離れた位置にいる大きな音を出す者を優先して襲う例が見られた。

感染者に噛みつかれた人間は発症し、他の非感染者を襲う。感染から発症までの時間には個人差があり、噛まれてから数時間から数日程度の時間を経て発症する者もいれば、噛まれた直後から即座に発症に至る者もいる。咬傷擦過傷以外の感染経路は明示されておらず、人間以外の動物の症例も描写されていないため、人獣共通感染症であるかどうかは不明。しかし、歯のない感染者に噛まれて皮膚に直接の外傷を受けなかった場合には感染せず、感染者の血飛沫などから血液感染する可能性がある事は示唆されている。

噛み付かれた後も生体として生き続けている人間の場合には、症状の進行と共に正常な思考能力や言語能力が失われていき、最終的には「生体としての」を経て周囲の非感染者を襲い始めるようになる。作中のニュース番組や病院では「多臓器不全及び反社会性人格障害」という病名が公表されているが、これは前述の症状の進行を官僚の文書的に表現したものである。モールのコミュニティではこの症例を元に、認知症テストに似た簡易な質疑応答を行わせる事により感染の有無を判別していた。噛み付かれた後、発症前に生体として死亡した場合でも、その死体が後に(或いは生体としての死と同時に)感染者として攻撃行動を取る例も多く見られる。この場合、既に身体が腐敗していたり四肢や胴体が断裂していても身体機能の許す限りの行動が行える(感染前に既に死亡した人間が噛まれた場合どうなるかは不明)。

いずれの例であっても「頭部を完全に破壊される」「斬首など頸椎を胴体から切り離される」といった決定的な外傷を負うことで、活動停止に至る(ただし英雄たちが比呂美の治療に立ち寄った動物病院で、檻の中で首だけが動いていた例が見られる)。また、来栖一味はサンプルとして女性の感染者を捕獲しており、苫米地によると心音・呼吸・脈無しという状態ではあるが、性器などに触ると反応があることや生理は訪れることを発見している。

例外的に、比呂美や江崎など発症後も生体としての死には至らず、高い身体能力を得たまま自意識を保っている者もわずかに存在する(作中では「半感染」とも表現)。比呂美の場合、健常な人間とは大きく異なる脈拍などの生体反応を示し、ある程度以上の言語・思考能力も残っていて、英雄の指示に従順に従うなどの行動が見られた。しかし、周囲の環境や文物に対する外見認知能力は発症前と大きく変質しているようで、彼女の目には周囲の人間がぬいぐるみのような異形の怪物として認識されていたようである。

発症の根源は明らかになっておらず、細菌テロ宇宙人の仕業など様々な噂が飛び交い、物語中の匿名掲示板や非感染者コミュニティ等を発祥に「ZQN」と呼ばれるようになる[8]。なお、作中ではこの「ZQN」の読み方は不明であったが、2014年3月15日にフジテレビONEで放送された、『漫道コバヤシ #8 スピリッツ編集部訪問SP』に出演した花沢にこの疑問が振られると、花沢本人も読み方を定めていなかったことを告白し、その場にいた編集者らと相談した末に「ズキュン」と読む事を公式に決定した。

単行本

スピンオフ

アンソロジー

映画

2016年4月23日に全国東宝系にて公開予定[4][9]R15+指定。

キャスト

スタッフ

受賞

ドラマ

アイアムアヒーロー はじまりの日』(アイアムヒーロー はじまりのひ)と題した映画版のスピンオフ作品で、長澤まさみ演ずる藪(小田つぐみ)が主人公となる。2016年4月から「dTV」で放送予定[14]。「アイアムアヒーロー」の前日譚で小田つぐみの看護師時代にエピソードが描かれている[15]

脚注

  1. ^ 小学館漫画賞:歴代受賞者、小学館、2014年6月4日閲覧。
  2. ^ アイアムアヒーロー - 映画・映像|東宝WEB SITE、東宝、2014年12月11日閲覧。
  3. ^ 当初発表は2015年。花沢健吾「アイアムアヒーロー」大泉洋主演で実写映画化”. コミックナタリー (2014年6月3日). 2014年6月3日閲覧。
  4. ^ a b 大泉洋、人気ゾンビ漫画「アイアムアヒーロー」映画化に主演!有村架純&長澤まさみと共闘、映画.com、2014年6月3日閲覧
  5. ^ 第1話 最終ページから第21話 4ページ目まで数多く登場(『アイアムアヒーロー』第1巻、第2巻)
  6. ^ 第6話 11ページ(『アイアムアヒーロー』第1巻)
  7. ^ 第22話 11ページ(『アイアムアヒーロー』第2巻)
  8. ^ 第55話 9ページ目初出(『アイアムアヒーロー』第5巻)
  9. ^ “実写映画版「アイアムアヒーロー」 2016年4月23日公開決定! 主演・大泉洋さんのビジュアルも解禁”. ねとらぼ (アイティメディア株式会社). (2015年11月30日). http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1511/30/news049.html 2015年11月30日閲覧。 
  10. ^ 大泉洋出演「アイアムアヒーロー」シッチェス映画祭で2冠、日本公開は2016年”. 映画ナタリー (2015年10月19日). 2015年10月20日閲覧。
  11. ^ “大泉洋、ポルト国際映画祭で観客賞受賞「海外の人が認めてくれた」”. スポーツ報知 (株式会社報知新聞社). (2016年3月6日). http://www.hochi.co.jp/entertainment/20160306-OHT1T50131.html 2016年3月7日閲覧。 
  12. ^ 優れたアジア映画に贈られる。
  13. ^ “「アイアムアヒーロー」がアメリカの映画祭SXSWで観客賞受賞”. 映画ナタリー. (2016年3月20日). http://natalie.mu/eiga/news/180484 2016年3月22日閲覧。 
  14. ^ “長澤まさみ、「アイアムアヒーロー」スピンオフドラマに主演”. スポーツ報知 (株式会社報知新聞社). (2015年12月25日). http://www.hochi.co.jp/entertainment/20151224-OHT1T50163.html 2015年12月25日閲覧。 
  15. ^ 長澤まさみ主演「アイアムアヒーロー」前日譚がdTVで配信、“藪”の看護師時代描く”. 映画ナタリー (2015年12月25日). 2015年12月25日閲覧。

外部リンク