K9 155mm自走榴弾砲

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K9 155mm自走榴弾砲
K-9thunder.jpg
K9自走砲とK10弾薬運搬車
性能諸元
全長 12m
車体長 6.114m
全幅 3.4m
全高 3.5m
重量 47t
速度 67km/h
行動距離 360km
主砲 52口径155mm榴弾砲×1
副武装 12.7mm重機関銃M2×1
エンジン MTU 881Ka-500 ディーゼル
1,000hp
乗員 5名
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K9 155mm自走榴弾砲(K9 155ミリじそうりゅうだんほう)は、大韓民国が開発した自走砲。愛称はThunder/サンダー「雷鳴」。

開発経緯[編集]

北朝鮮は10,000門以上の火砲(170-240mmクラス)をDMZ沿いに配置、特にM1989 170mm自走加農砲「コクサン」(谷山砲)は射程60kmに達する。これに対抗し韓国陸軍在韓米軍M109 155mm自走榴弾砲などを装備してきたが射程威力に押されたので1980年代から新型自走砲を開発した(M109A6パラディンなどによる更新には、新規開発よりもコストを要する)。

  • 1989年7月 - ADD(Agency for Defense Development:国防科学研究所)と三星テックウィン社が共同開発
  • 1995年1月 - 試作車輌完成
  • 1996年6月 - 射撃テスト
  • 1998年12月 - 国防部量産契約
  • 1999年 - 本格的量産、当時1輌約37億ウォン計477輌生産予定
  • 2004年 - トルコライセンス輸出開始、10億USドルで10年以上に渡りK9自走砲300輌の構成部品を供給の契約、他にはスペインマレーシアサウジアラビアチリエジプトなどと交渉したが成立していない。
  • 2007年3月21日 - 18輌追加生産決定
  • 2009年3月6日 - オーストラリアケビン・ラッド首相は、「K-9自走砲の性能を高く評価する。購入を積極的に検討したい」と述べた。
  • 2009年6月25日 - オーストラリアの新型自走榴弾砲調達計画にPzH2000を提示していたドイツのKMW社が撤退を表明、計画に残っているのはK9を提示している韓国の三星テックウィン社のみとなる。その後、調達計画自体が中止された。
  • 2010年11月23日 - 北朝鮮軍が、黄海上の北方限界線(NLL)に近い仁川・延坪島とその近海に向け、2回にわたり計170発余りの砲撃を加え、うち80発余りが延坪島に、90発余りが付近の海上に着弾した(延坪島砲撃事件)。韓国軍は海兵隊延坪部隊の「K9」6輌で敵の砲陣地2か所に計80発応射し、K9は初の実戦を経験した。この際、最初は6輌中3輌が故障で作動せず(3輌のうち2輌は、北朝鮮軍の砲弾に被击されたことが故障の原因[1])3輌で反撃、その約30分後に1輌の応急修理を終え、後は4輌で応射したという[2]
  • 2013年11月13日 - 国防技術品質院が過去3年間の納入部品を検査した結果、197件に及ぶ成績証明書の偽造が確認された[3](産経新聞2013/11/13記事引用:偽造した社のうち34社はK9自走砲のほか今年実戦配備された初の国産軍用ヘリコプター≪スリオン英語版≫にもおよぶ成績証明書の偽造に関わったとされている)。

概要[編集]

攻撃力[編集]

韓国WIA社とADDが開発した52口径155mm榴弾砲を装備し(最大仰角70度)、砲兵射撃統制システムにより陣地進入から60秒(停止状態から30秒)で射撃を開始する事ができる。

砲撃開始以後最初の3分間の最大連続射撃速度は毎分6発、それ以降の長時間連続射撃速度は毎分2発となっているが、延坪島での実戦射撃でも射撃開始からの5分間で射撃できた弾数は(カタログ上は6発×3分+2発×2分で計22発の発射が可能となっているが)1分30秒に1発の割合で、計4発しか射撃できていない。これは北朝鮮軍の射撃がK-9の射撃訓練が終わった時点で開始されたので、当時K-9には、装填された弾薬がなかったからである。弾薬庫から素手で弾薬を運んで一つずつ装填する必要があり、その分連射速度が低下した。すなわち、この時の連射速度は、K-9本来の連射速度ではなく、弾薬庫からK-9へ砲弾を輸送した速度と見るのが妥当である[1]とする見解がある。しかし、一方で、大統領府に問い詰められた参謀は、実際の射撃速度はカタログスペックとは異なり、最大で一分間に一発しか撃てないと回答している[4]

カタログスペック上は、バースト射撃(15秒に3発発射)した砲弾を同時に着弾させるToT(Time on Target)機能も火器管制装置により可能となっている。 北朝鮮軍のコクサン自走砲(M1978 170mm自走加農砲)は5分に1-2発程度の発射速度で、着弾位置もピンポイントでなく無差別砲撃に近い。

最大射程はADDが開発したK9用RAP弾(Rocket Assisted Projectil/ロケット推進砲弾)を使用すると50km以上、だが炸薬は少なく命中精度も低くなるのでM107HE弾(高性能榴弾)の場合の射程は30km、新型のK307榴弾を使用した場合の射程は40kmで、この辺りが標準と思われる。

他にGPSなど高度なシステム装備。

2011年に製造されたものには射撃統制システムIntel486、それ以前のものにはIntel386CPUが使われているものもあるという[5]

防御力[編集]

155mm砲弾の弾片に耐え、重要部は14.5mm徹甲弾の直撃を防御できる装甲を装備した結果K55(韓国軍装備のM109)と比べ重量は倍近くなった(K55約25t→K9約47t)それにより車体後面から砲撃の衝撃を受け止めるため地面に打ち込む駐鋤は除かれた。

与圧式NBC防護装置、内部温度上昇警告システムと自動消火装置に応答式の内部診断システムを備える

機動力[編集]

エンジン、独MTU社製のMT881KA-500ディーゼルを韓国STX社(双竜重工業)がライセンス生産

トランスミッション、米ゼネラルモーターズ社製のATDX1100-5A3を統一重工がライセンス生産、前進4段後進2段。

懸架装置、AS-90自走砲にも搭載されている英HDS(Horstman Defence Systems)社製の高性能サスペンション・サブシステムをライセンス生産。

派生型[編集]

K-10 탄약보급장갑차弾薬運搬車
K9の車体から開発された専用弾薬補給車輌、車内に104発搭載し、ベルトコンベアを使い1分あたり12発の弾薬をK9の車内に自動補給する。
T-155 Fırtına(Storm)旋風
トルコは元々PzH2000自走榴弾砲を導入希望していたが、クルド人問題でドイツ政府の圧力で実現しなかった。そのためトルコはSP2000と呼ばれる155mm自走榴弾砲を開発したが、トルコ陸軍の要求に達せずにK9のトルコ型であるT-155を導入する事になった。英語版のデータでは56tと原型のK9・47tより10t近く重くなっている。また、価格面でのメリットも大きかったと思われる。

各国の自走砲との比較[編集]

2S19ムスタ-S
ロシアの旗
M109A6
アメリカ合衆国の旗
AS-90
イギリスの旗
PzH.2000
ドイツの旗
K9
韓国の旗
99式
日本の旗
全長 11.917m 9.1m 9.07m 11.67m 12m 11.3m
全幅 3.584m 3.1m 3.5m 3.58m 3.4m 3.2m
全高 2.985m 3.2m 2.49m 3.46m 3.5m 3.1m
重量 42t 29t 45t 55.3t 47t 40t
主砲 48口径152mm砲 39口径155mm砲 52口径155mm砲
最大射程 36km RAP弾 45km BB弾 60-80km RAP 40km BB弾 50km RAP弾 40km BB弾
射撃速度 6-8発/分 4発/分 6発/分 8発/分 1-6(?)発/分[6] 6発以上/分
最高速度 60km/h 64km/h 53km/h 60km/h 67km/h 49.6km/h
乗員数 5名 4名 5名 4名
コスト
65万USドル
(6,176万円)
900万USドル
(8億5,527万円)
289万ポンド
(4億4,574万円)
714万ユーロ
(9億4,225万円)
37億ウォン
(2億7,800万円)
1,038万USドル
(9億7,850万円)
採用年 1989年 1992年 1993年 1997年 1999年

採用国[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b 자주포 절반만 작동… 포탄장전도 4발씩만… "안쏜게 아니라 못쐈다"(韓國日報2010年11月26日)
  2. ^ 北朝鮮砲撃:K9の半分が故障、残りも性能発揮できず(朝鮮日報 2010年11月26日)
  3. ^ “韓国原発、「欠陥・事故」続出の恐ろしき実態…偽造部品納入は当たり前、放射能漏れ数値は18倍増に修正”. 産経新聞社. (2014年11月12日). http://www.sankei.com/west/news/141107/wst1411070063-n2.html 2014年11月25日閲覧。 
  4. ^ http://megalodon.jp/2010-1126-1327-32/www.chosunonline.com/news/20101126000033
  5. ^ 韓国軍のK-9自走砲は時代遅れ?10年前のCPU搭載=韓国(サーチナ 2011/09/21(水) 10:11)
  6. ^ カタログスペック上は6発だが事実上は1発である。(朝鮮日報 2010年11月26日 「北朝鮮砲撃:K9の半分が故障、残りも性能発揮できず」より)

参考文献[編集]

月刊グランドパワーNo.152 DEFENCE ASIA 2006 韓国の兵器展示展2007,1/1ガリレオ出版

関連項目[編集]

外部リンク[編集]