BMP-3

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BMP-3
BMP-3 0027 copy.jpg
基礎データ
全長 7.14m
全幅 3.23m
全高 2.30m
重量 18.7t
乗員数 3名
乗員配置 乗員3名、歩兵7-9名
装甲・武装
装甲 7-40mm
主武装 100mm低圧砲2A70
30mm機関砲2A42
9M117 バスティオン(AT-10 スタッバー)砲発射式対戦車ミサイル
副武装 7.62mm機関銃PKT
機動力
速度 10km/h(水上)
整地速度 70km/h
不整地速度 45km/h
エンジン UTD-29
4ストロークV型10気筒液冷ディーゼル
500hp
懸架・駆動 水圧式
行動距離 600km
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BMP-3ロシア語БМП-3ベエムペー・トリー)は、ソビエト連邦およびロシア連邦で開発された歩兵戦闘車である。

概要[編集]

BMP-3の最大の特徴とされるのは極めて火力重視の火器システムである。主砲の100mm低圧砲に30mm機関砲と7.62mm機関銃同軸で装備しており、さらに2丁の7.62mm機関銃を持つ。また、主砲からは対戦車ミサイルも発射できる。

開発[編集]

ソ連陸軍で運用されていたBMP-1は、1979年から始まったアフガニスタン侵攻で実戦を経験したが、武装の73mm低圧砲は命中率が悪く、全高が2mしかない車体は居住性が劣悪であるうえに、後部扉が燃料タンクを兼ねているなど防御力にも問題があり、歩兵戦闘車としては攻守共に欠点が多い車体となってしまった。

1981年BMP-2の開発を行なったクルガンスキー自動車工場では、アフガン侵攻の戦訓を基にした新型BMPの開発がA・ニコノフ技師を中心になって始まった。開発にあたりソ連機甲局が攻撃力でかなり重武装の要求を行なったこともあり、設計のベースには1975年頃に同工場でPT-76の後継として開発されたが不採用となった水陸両用戦車オブイェークト685を原型とした[1]。従来のBMPと外見は大きく異なった車体となったBMP-3は1987年に採用された。

車体[編集]

武装[編集]

主砲は100mm低圧砲2A70で、歩兵戦闘車に搭載する砲では非常に大きなものである。2A70は自動装填装置を装備しており、1分間に8-10発程度を主砲に送り込む能力を持つ。この砲からは射程4,000m程度の破片効果榴弾(FRAG HE)3OF32や軽装甲目標用のAPFSDS弾3BM25が発射できる。砲弾は弾底部にロケット噴進口があり、弾道計算機・風力センサー・レーザー測距儀などを装備した射撃管制装置によって、主力戦車であるT-80にも劣らない高精度の射撃が可能になっている[1]

2A70からは、9M117 バスティオン(AT-10 スタッバー)砲発射式対戦車ミサイルを発射できる。9M117は、100mm低圧砲に車内から装填しての砲口から発射したミサイルレーザー誘導装置1K13-2で誘導するもので、BMP-1BMP-2と異なり車外にミサイル発射機がなく、再装填の際に車外に出る必要がなくなっている。9M117の有効射程は1,000-4,000mで、圧延鋼板換算で600mmの貫徹力を有する。100mm低圧砲は、自動装填装置に榴弾22発、手動装填用として榴弾18発が用意されており、合計で40発の榴弾と、8発前後の対戦車ミサイルを搭載することができる。しかし具体的な砲弾の置場は不明である。

主砲の横には30mm機関砲2A42も取りつけられている。2A42はBMP-2にも主砲として装備されていたもので、1,500mから2,000m程度の射程で一分間に300発ほどの砲弾を発射できる。弾薬装甲貫通を目的としたAP弾と破片効果榴弾HE-FRAGから選択できるようになっている。副武装としてPKT7.62mm機関銃主砲同軸に加えて、車体前方の左右にも各1丁装備している。これは搭乗した歩兵が車体前部左右で操作するが、潜望鏡から曳光弾の光跡を見ながら射撃するもので、命中を期待したものではない威嚇目的のものである[1]。7.62mm弾は2,000発を格納している。

この他、兵員室上方ハッチから射撃するための9K34携行地対空ミサイルの発射機を2基搭載しているほか、車体側面には搭乗歩兵の乗車戦闘用に各2箇所の銃眼砲塔には6基の発煙弾発射機が装備されている。

車体と機関[編集]

車体は一新され、従来のBMPよりも容積が大きいことから居住性の向上も為されている。車体は18tを超える重量になったが、エンジンは500馬力のディーゼルエンジンUTD-29に強化されており、軽戦車ゆずりの機動力で荒地走破能力は格段に向上し、最高時速は70km/hに達し、実用キャタピラ車両の中では世界一速いとも言われる。ただし、水平対向型とはいえエンジンを車体後部の後部扉から至る連絡通路の床下に配置したため、車体後部背面のハッチ2枚と同じく後部上面のハッチ2枚の合計4枚ものハッチを開けなければ、兵士たちは速やかに兵員室への出入りができないという不都合も持っている。

車体後部には左右両方にウォータージェットが搭載されており、BMP-1以来の水上浮上航行能力は維持され水陸両用戦車PT-76の後継車としての役割も持っている。乗員は車長操縦士砲手の3名で、後部搭乗員室の定数は7名だが前方操縦席両脇に各1名ずつの座席があり、ここに人員を搭乗させた場合固有搭乗員3名を除き最大9名の人員輸送が可能となる。この前部搭乗員席が車体前方左右の7.62mm機関銃の銃手席を兼ねる。

従来のBMPがアフガン侵攻でRPG-7によって次々と撃破されていった戦訓から、BMP-3は要所に二重装甲を施しており、12.7mmから14.5mmの重機関銃程度の銃弾の直撃に耐えることができる。しかし戦車などの成形炸薬弾には不十分であるため、浮航性を損なわない程度の爆発反応装甲を取り付けることが可能となっている。

運用[編集]

1987年に採用されたBMP-3は、生産も同時に始まり、西側諸国には1990年モスクワでのパレードで存在が明らかになった。BMP-3は攻撃力と機動力に優れた歩兵戦闘車であり、ソ連崩壊後も生産が続けられているが、価格も従来のBMP-1BMP-2に比べて高価なものとなったため配備速度は低率である。むしろ、ロシア国内向けよりも輸出に重点が置かれており、ロシア兵器輸出公団では多数のバリエーションやオプション提案と共に海外への売り込みが図っている。単価が約80万ドルと歩兵戦闘車でも比較的安価であることから、すでにアラブ首長国連邦(UAE)やクウェートキプロススリランカ大韓民国で採用されている。UAEでは、エンジンを強化したBMP-3Mを採用し、フランス製の暗視装置を装備するなど独自の改良を行なっている。大韓民国陸軍では、30両を第90機械化歩兵大隊に配備し、機械化歩兵戦力の一翼を構成している。

1990年代後半には、ようやくロシア陸軍でもまとまった数が運用できるようになり、チェチェン紛争南オセチア紛争などの実戦を経験している。

中華人民共和国はBMP-3の射撃管制システムと9M117の技術供与を受け、97式歩兵戦闘車GP-2砲発射式対戦車ミサイルを開発している。

派生型[編集]

BMP-3M
主機をUTD-29T(500馬力)からUTD-32T(660馬力)に向上させ、最大速度は80km/hに達する。オプションとしてGIAT社製の爆発反応装甲や対誘導ミサイル擲弾発射システム「アレナ-E」を装備可能[2]
BMP-3F
BMP-3Mの海軍向け車両。車体前部トリムベーン(波切板)の大型化や給排気用パイプの延伸を行なった[2]ロシア海軍歩兵向けに設計されたが、上陸作戦用に最適として海外への売込みがされている。
BMP-3 コルネートE
1990年代に開発された対戦車誘導ミサイル9M133 コルネートEを発射する自動装填装置付の2連ランチャー砲塔位置に持つ自走対戦車ミサイル車両。コルネートEはレーザー誘導で二重HEAT弾頭、有効射程は100-5,500m。装甲貫徹力はRHA換算で1,000-1,200mm[2]
BMP-3「フリザンテーマ」
大型対戦車誘導ミサイル9M123 フリザンテーマを発射する自動装填装置付の2連ランチャーを砲塔位置に持つ自走対戦車ミサイル車両。フリザンテーマもHEAT弾頭だが、有効射程は100-6,000m。装甲貫徹力はRHA換算で1,000mm(公表値)レーダー照準システムを有する[2]
BMR「ルィーシ」
偵察警戒装甲車。「ルィーシ」はロシア語で「(Лиса́)」の意味。BMP-3の砲塔を30mm機関砲のみのものに換装し、戦場サーベランス・レーダー、暗視システム、センサー類、通信機器を搭載[2]。輸出も提案されているが、ロシア陸軍が若干数を運用している。
BZREM-L「ベグリャンカ」
装甲回収車。「ベグリャンカ」は「放浪者」の意味[1]
2S31
2S31「ヴェーナ」
自走迫撃砲。BMP-3の砲塔を換装し、長砲身の後装式120mm直射・迫撃両用ライフル砲2A80を搭載。


採用国[編集]


登場作品[編集]

ゲーム
プレイヤーやAIが操作可能。
中東民兵歩兵戦闘車として登場。途中で民間軍事会社ジャベリン対戦車ミサイルに破壊される(破壊を阻止することも可能)。
映画
物語後半、タイラントを撃破する際に使用。

出典[編集]

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  1. ^ a b c d 田中義夫 編『戦車名鑑 1946~2002 現用編』光栄 ISBN 4-87719-927-6 2002年 p92~p93
  2. ^ a b c d e 軍事研究2007年8月号「ロシアと中国の最新AFV開発事情」p37~p40

外部リンク[編集]