狭山茶

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狭山茶の畑(入間市・2010年10月)
入間市茶業公園から狭山茶主産地域の眺め

狭山茶(さやまちゃ)は、埼玉県西部及び東京都西多摩地域を中心に生産されているお茶である。埼玉県における農産物生産面積では県下一である。歴史は古く鎌倉時代にまで遡ることが出来、静岡茶宇治茶と並んで『日本三大茶』と呼ばれている。よく知られる俚諺では『色は静岡、香りは宇治と、味は狭山でとどめさす』と謳われている。ただこの文言は狭山茶の茶摘み唄のものであり、一種の宣伝文句である。

歴史・概要[編集]

川越市中院にある「狭山茶発祥之地」の碑
狭山茶 茶葉(所沢市・2006年9月)

茶の生産地としては北に位置し(日本最北限生産地は新潟県村上市)、冬季には霜が降りることもあるその涼しい気候により、厚みのある茶葉ができる。始まりは鎌倉時代で、武蔵国狭山丘陵一帯、特に現在の埼玉県入間市を中心に栽培された。江戸時代には、狭山丘陵一帯の村々が川越藩領であったことから、「河越茶」と呼ばれていた。江戸中期に行われた武蔵野新田開発により地域の特産物として栽培が普及し、産地も拡大したが、現在その多くは入間市で生産されている[1]。茶葉の摘み取りは年に2回行われ、一番茶は4月から5月、二番茶は6月から7月に出荷される。主要品種は「やぶきた」と「さやまかおり」である。

製法[編集]

丹念に選りすぐられた新茶葉と、「狭山火入」という伝統の火入れが、江戸時代から変わらぬ美味しさの秘訣である。この火入れにより狭山茶特有の濃厚な甘味を得ることが出来る。手揉み茶の製法は「茶葉を蒸して焙烙に和紙を敷き、揉み乾かす」というものである。これは、享和2年(1802年)に吉川温恭村野盛政、指田半右衛門らが編み出したもので、現在では、主に手もみ狭山茶保存会によって、保存活動が展開されている。

特長[編集]

茶葉の厚さと伝統の火入れにより色・香り・味ともに濃い茶である。少ない茶葉でも「よく出る」茶に仕上げられている。

現状[編集]

狭山茶の生産地はの生産地としては最も都市化が進んだ地域である。1960年代から生産地のほぼ全域が東京ベッドタウンとなり、人口が急増。相次いで住宅商工業施設が建設される一方で茶畑は減少していった。埼玉県の茶の生産量も静岡県鹿児島県京都府など他の主要産地に比べかなり少ない(但し、埼玉県は茶産地としては比較的寒冷地にあるため、年に2回しか摘み取りができないことが、生産量の少ない大きな要因となっている。温暖な鹿児島の茶産地などは年に数回摘み取りが可能である)。現在、入間市西部・南部には静岡・宇治等と同様の大きな茶畑が存在しているが、他の地域では住宅地の中に小さな茶畑が散在している風景がよく見られる。

周辺に住宅等が増えたことによる日照の問題や土地価格の高騰など、都市化によって他の生産地に比べ不利な面が生じた。一方で人口急増の結果、地元の需要が増えたため遠方に出荷する必要がなくなり、近郊農業として確立。都市化は経営上の利点ともなっている。日常的に消費する飲料であるため特産物としての浸透は比較的容易であり、新旧住民を問わず地域の地場産業として認識されている。また元来観光地でないため観光客向けの販売には頼っておらず、生産性の高い安定した経営・流通が実現している。

新たな展開[編集]

埼玉県内では長らく県西部地域を中心に生産されていたが、近年では県東部地域や秩父地方へも生産地域が拡大しており、さいたま市春日部市久喜市などからも茶葉が出荷されるようになっている。2007年には、鬼玉Nack5)とセーブオンの共同企画で「狭山さやか」の名前でペットボトル入り・500mlの狭山茶が店頭及び自動販売機での販売が開始された。

2008年9月から東大和市のNPOが、地元の狭山茶の葉を使った紅茶「東京紅茶」の販売を開始した。既に2000年から狭山茶葉を用いた紅茶の販売が一部で始まっており、狭山茶(東京狭山茶)をブランド化した「東京緑茶」の販売も行われていたが、新たに「東京紅茶」のブランド化を目指す。パッケージには東京タワー原宿の街並み、多摩湖など東京都内の名所がデザインされている。宅地開発の進展で押され気味の地場産業を盛り上げ、街の新たな活性化につなげようという試みである。

地元茶業協会による狭山茶の定義[編集]

社団法人埼玉県茶業協会による規定(2004年4月16日制定)

生産地の定義[編集]

  • 狭山茶の産地は、埼玉県内及び埼玉県に隣接する東京都の西部地域とする。[2] 
  • 埼玉県内の特定地域名を産地とすることができる。
    • 埼玉県内の特定地域名を産地としたものとして、川越茶・秩父茶・児玉茶がある。
  • なお、東京都内産の狭山茶は、東京狭山茶と表示していることが多い。

表示基準[編集]

  • 「狭山茶」を「産地銘柄」として表示できるものは、埼玉県内産及び埼玉県に隣接する東京都の西部地域産の荒茶を100%使用したものとする。
  • 埼玉県内産及び埼玉県に隣接する東京都の西部地域産の荒茶を50%以上100%未満使用したものは「狭山茶ブレンド」と表示できるものとし、埼玉県内及び埼玉県に隣接する東京都の西部地域で最終的に仕上げ製造したものとする。
  • 上記において「荒茶」とは、埼玉県内及び埼玉県に隣接する東京都の西部地域において、生葉を生産し加工したものをいう。

農業協同組合[編集]

  • 生産者は他の農産物とは別に狭山茶のみを専門に取り扱う農協を組織している。

その他[編集]

  • 中院慈覚大師円仁より茶を伝え境内で茶の栽培を始めた。「狭山茶発祥之地」の石碑がある。
  • 入間市博物館:茶をメインテーマとした博物館。同館所蔵の「狭山茶の生産用具」が、2007年3月7日国の登録有形民俗文化財に登録された。狭山茶に関する特別展もしばしば開催する。HPに狭山茶についての詳しい解説がある。
  • 狭山稲荷山公園:毎年恒例の埼玉県主催茶会「さやま大茶会」会場。1990年、大茶会開催に合わせ、狭山市において新たに狭山抹茶「明松」(みょうしょう)が商品化された。
  • 東村山音頭(オリジナル版):狭山茶の濃厚な味が「人情の厚さ」に掛けて歌われている。
  • 夫婦道:木曜21時枠TBSテレビドラマ。埼玉県入間市で狭山茶を生産する夫婦を主人公に、普通の家族の人間模様を描いたホームドラマ。第1シリーズは2007年、第2シリーズは2009年放送。
  • 津森千里:狭山市出身のファッションデザイナー。2008年、狭山市内の有限会社やまひろ広沢園が製造販売するペットボトル入りお茶「さやま茶」のパッケージデザインを担当した。
  • 狭山グリーンティースタッフ:茶娘の着物や茶はんてんを着て狭山茶のPRを行う女性。

脚注[編集]

  1. ^ 2006年現在の狭山茶栽培面積は1位入間市495ha、2位所沢市209ha、3位狭山市133haである。また生産量(生茶葉収穫高)は1位入間市2060t、2位所沢市599t、3位狭山市536tである。
  2. ^ (社団法人埼玉県茶業協会による規定「狭山茶の表示に関する基準」(2004年4月16日制定)より)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]