急須

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急須
銀製の急須

急須(きゅうす、英語 Teapot)は、を注ぐ際に使用される道具。乾燥させた茶葉を入れ、を注いで茶葉が開くのを待ち、傾けて茶水を茶碗などに注ぐ。日本の急須は薬缶(やかん)と異なり、直接火に掛けないのが特徴である。 または、ティーポット: Teapot)ととも呼ばれる。

中国で発明され、茶を飲む習慣がある文化圏、とりわけアジアでは古くから使用されている。日本では江戸後期に上方より江戸に伝わった。当時は「きびしょ」と呼称されていた。また紅茶を飲む西欧、ことにイギリスでも17世紀頃から使われた。

各喫茶文化圏で独自の発達も見られ、それぞれ補助的な道具が付随することもある。たとえば日本では玉露などの発達により「湯冷まし」を併用することも多い。また紅茶ではミルクと砂糖を加える関係から、クリーマー、シュガーボウル(蓋がある場合はシュガーボックス)が備えられ、ティーポットと合わせ、これら3点セットを「ティーサーヴィス」と呼ぶ。

ただし、中国や日本でも古くはで直接茶葉を煮出していた。このほか茶碗で立てる抹茶や、茶碗に直接茶葉を入れたり、またサモワールで茶を沸かすなど、急須を用いない喫茶法も多い。

素材[編集]

陶磁器製のものが最も普通である。特に中国で有名だったのが江蘇省宜興窯で作られた紫砂(紫泥)の茶壺である。これは無釉の焼締め陶器で[1] 、ここで産する粘土分を多く含んでいたため、焼成後は朱茶色や黒紫色を呈し、朱泥、紫泥と呼ばれた。後世日本の萬古焼常滑焼やイギリスのウェッジウッドでも同様のものが作られ、日本では急須の主流をこれらの朱泥、紫泥の製品が占めている。

日本では伊万里焼九谷焼瀬戸焼薩摩焼などの磁器製も多い。また、備前焼丹波焼などの焼締陶器や、美濃焼萩焼など陶器製のものなど、非常に多くの種類が生産されている。この他製、ステンレス製、アルミ製、ガラス製、石製のものなども見られる。

紅茶のティーポットは磁器、または炻器製のものが圧倒的で、製も多く、陶器製のものは比較的少ない。ウェッジウッドの炻器ジャスパーウェアをはじめ、西欧の多くの名窯で磁器製ティーポットが作られている。

取っ手つまみプラスチックツル巻ナイロンフェノール樹脂が使われている。一体化した物やネジ止めの物がある。

取っ手による分類[編集]

取っ手の位置によって、以下の三種類に分類される。

後手(あとで)
後手の急須(台湾)
注ぎ口と反対側につく。西洋のティーポットなどに良く見られる。
横手(よこで)
横手の急須
注ぎ口とほぼ90度をなしてつく。角度が90度より小さいのは注ぎやすくするための工夫で、右利き用と左利き用とでは取っ手の取り付け角度が異なるが、通常は右利きの人が使いやすいようになっている。日本での主流。
上手(うわで)
本体上部につく。急須と一体化しているものと、別個に取り付けるものとがある。ただし煎茶道では、上手の急須を土瓶、取っ手のない急須を宝瓶/泡瓶(ほうびん)と呼び分けることがある。

これらは中国の江蘇省宜興で使われていた「茶壺」をモデルとしているといわれるが、「急須」の名の起こりは後手型のやかんを指す福建語が元とされる。なお、上手の取っ手は(つる)ともいう。

宝瓶(泡瓶)[編集]

宝瓶(ほうびん)は、急須の一種。絞り出しともいわれる。基本的に玉露を入れるときに使用し、紅茶中国茶をいれる時には使用しない。

形状の特徴として、取っ手がないことが挙げられる。また通常の急須と比較して注ぎ口が大きい。本来お茶を入れる道具に取っ手がないとやけどの原因になるが、宝瓶を使う玉露などのお茶は抽出温度が低く摂氏60度前後のため、問題にならない。また、取っ手がないことから携帯に適しているとして、旅行用の煎茶道具によく使われる。

起源については諸説有るが、中国茶を抽出する道具の一種「蓋椀」(がいわん)が元になったという説がある。

茶こしの種類[編集]

急須の中の茶こし (Tea strainer) にも、本体と一体化した陶器・磁器のもの、ステンレスをはめ込んだもの、ステンレスやポリプロピレンなどで出来たかご状のものなど、様々な種類がある。

  • 陶器(デベソ、ささめ等)
  • ポコ網
  • 平網
  • 帯網
  • 底網
  • かご網

その他[編集]

急須の注ぎ口に付いているビニールの覆いは輸送時の破損を防ぐための「保護チューブ」であるため、開梱後は取り外す必要がある。ゴムを付けたままだと、そこに汚れが溜まり雑菌が繁殖しやすいという問題もあるとされる。また、食品衛生法に適合していない物は、熱湯を注ぐと有害物質が溶け出す恐れがある。

脚注[編集]

  1. ^ この種の無釉の焼締め陶器を「炻器」に分類する場合もあるが、「炻器」は英語stonewareの訳語で、元々西洋陶磁の概念である。中国では焼き物を「陶器」と「瓷器」に大別しており、「炻器」という概念は通常用いられない。また、「炻」は日本製の漢字(国字)である。以下の文献を参照。
    • 矢部良明編『角川日本陶磁大辞典』(角川書店、2002)「炻器」および「宜興茗壺」の項
    • 矢部良明・入澤美時・小山耕一編『「陶芸」の教科書』(実業之日本社、2008)87頁

参考文献[編集]

関連項目[編集]