ブラック・アンド・ブルー (ローリング・ストーンズのアルバム)

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ブラック・アンド・ブルー
ローリング・ストーンズスタジオ・アルバム
リリース
録音
  • 1974年12月7日 – 15日 (1974-12-07 – 1974-12-15)
  • 1975年1月22日 – 2月9日 (1975-01-22 – 1975-02-09)
  • 1975年3月25日 – 4月4日 (1975-03-25 – 1975-04-04)
  • 1975年10月19日 – 31日 (1975-10-19 – 1975-10-31)
  • 1975年12月3日 – 16日 (1975-12-03 – 1975-12-16)
  • 1976年1月18日 (1976-01-18) – 2月
ジャンル
時間
レーベル Rolling Stones
イギリスの旗Atlantic(オリジナル盤)
EMICBS UKVirginPolydor(リイシュー盤)
アメリカ合衆国の旗Atlantic(オリジナル盤)
Columbia→Virgin→Interscope(リイシュー盤)
日本の旗ワーナー・パイオニア(オリジナル盤)
東芝EMICBS/SONY→Sony RecordsEMIJ/Virgin→Universal Int'l(リイシュー盤)
プロデュース グリマー・ツインズ
専門評論家によるレビュー
  • All Music Guide 星3 / 5 link
ローリング・ストーンズ アルバム 年表
メイド・イン・ザ・シェイド
(1975年)
ブラック・アンド・ブルー
(1976年)
ラヴ・ユー・ライヴ
(1977年)
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ブラック・アンド・ブルー』(Black And Blue)は、1976年にリリースされたローリング・ストーンズオリジナルアルバム。プロデュースはグリマー・ツインズ。レコーディング・エンジニアはキース・ハーウッドおよびグリン・ジョンズ。全英2位[1]、全米1位[2]を記録。

概要[編集]

ミック・テイラー脱退後、ロン・ウッドが初めて参加したアルバムである。このアルバムに収録されている楽曲は、後に全てライヴで一度以上取り上げられている。同様のスタジオ・アルバムは本作の他に『スティッキー・フィンガーズ』と『女たち』があるのみである。また2016年までにリリースされたストーンズのオリジナルアルバムの中で、最も収録曲数が少ない。

前作『イッツ・オンリー・ロックン・ロール』では、それまで傾倒していたスワンプ・ロックから離れ、ソリッドかつストレートなビートロックへと転換したが[3]、本作では再び自分達のルーツであるブラックミュージックへの回帰が見られる。だが、以前のようなアメリカ南部サウンドの泥臭さはなく、洗練されたニューソウルAORからの影響が強い[4]ファンク・スタイルの「ホット・スタッフ」、「ヘイ・ネグリータ」、レゲエ・ナンバーのカヴァー「チェリー・オー・ベイビー」、ジャズの影響の大きい「メロディー」、そしてアルバム全体に渡ってビリー・プレストンの大きな貢献が認められる。

パッケージはダブル・ジャケットで、タイトルどおり黒と青を基調とした色合いのデザインとなっている。レコードの内袋に各曲のクレジットが記載されている。またレコード・ラベルに記載されている作者クレジットが"Jagger/Richards"ではなく"Richards/Jagger"といつもと逆に表記されている[5]カバーアートのアーティスト写真は、日本人フォトグラファーのヒロ(若林康宏)が撮影した。

前作同様、イギリスでは2位が最高位。アメリカでは1位(計4週)[6]とリリース年内にプラチナ・ディスクを獲得している[7]。アルバムからは「愚か者の涙」がシングルカットされ、全英6位[1]、全米10位につけるヒットとなった[8]1994年ヴァージン・レコードからリマスター版が、2009年にはポリドールから再リマスター版がリリースされた。2011年には日本限定で、ユニバーサルミュージックグループから最新リマスター版がSACDで発売された。

経緯[編集]

グレイト・ギタリスト・ハント[編集]

本作の制作は西ドイツミュンヘンのミュージックランド・スタジオで1974年12月7日から15日まで、オランダロッテルダムにグループ所有の移動式スタジオを持ち込んでのセッションを1975年1月22日から2月9日まで、その後再びミュージックランドにて3月22日から4月4日にかけて行われた。その後10月19日から30日にかけてスイスモントルーのマウンテン・スタジオで、12月3日から16日にかけてミュージックランドで(ここではレッド・ツェッペリンがアルバム『プレゼンス』の制作で先に使っており、予定日までに完成しなかったためストーンズの作業が2日ほど削られた[9])、そして1976年1月18日から2月にかけてニューヨークのアトランティック・スタジオにて、オーバーダブやミキシングが行われた[10]

ミック・テイラーが1974年12月12日に突如グループからの脱退を宣言したため、ロッテルダムでのセッションは新メンバーのオーディションとレコーディングを兼ねた作業となった[6]。このセッションには、多くのギタリスト - ジェフ・ベックロリー・ギャラガーハーヴェイ・マンデルウェイン・パーキンス及びロン・ウッド - が参加することとなった。この様子をメディアは「グレイト・ギタリスト・ハント」と呼び、ストーンズの新メンバーが誰になるかを予想し大いに煽ることとなった。しかし本作に収録された曲で参加が認められるのは、ハーヴィ・マンデル、ウェイン・パーキンス、ロン・ウッドの3人のみである[4]。1975年4月に、グループと最も親交が深かったロン・ウッドが正式にメンバーに加入することで決定した。グループは同年5月より北米ツアーを開始。ウッドはこのツアーから参加しているが、当時はまだフェイセズが活動しており、あくまでサポートメンバーという扱いだった。ウッドが正式にストーンズのメンバーとなったのはフェイセズ解散後の1976年2月である[11]。尚、ウッドが本作で参加したのは8曲中5曲だが、このうちギターで参加したのは2曲のみである。またビル・ワイマンは自著で、自身とイアン・スチュワートは、古い付き合いだったピーター・フランプトンを望んでいたことを告白している[12]

ヨーロピアン・ツアー[編集]

本作リリース後、「Tour of Europe '76」が1976年4月28日に西ドイツ、フランクフルトのフェストハレ公演からスタートし、6月23日のウィーン、シュタットハレ公演で終了した。その後の8月21日には、イギリスネブワースでの「ネブワース・フェスティバル」に参加している。本作からは、「ホット・スタッフ」や「ハンド・オブ・フェイト」「ヘイ・ネグリータ」「愚か者の涙」などが演奏された、また、前ツアーに引き続き、ビリー・プレストンのナンバー「ナッシング・フロム・ナッシング」「アウタ・スペース」が演奏された。このツアーと先の北米ツアー、そして1977年カナダトロントでの公演の音源がライヴアルバムラヴ・ユー・ライヴ』として1977年9月にリリースされる。しかし、このトロント公演を行う直前の1977年2月、キース・リチャーズがヘロイン売買の罪で逮捕された。今回の逮捕はこれまでと異なり密輸での逮捕で、その上カナダではヘロインの密輸は最低でも懲役7年、最高で終身刑という重罪であり、リチャーズが終身刑となる恐れもあった。ストーンズの全キャリア中最も解散の危険性が高まったのはこの時である[13][14]

収録曲[編集]

特筆無い限りジャガー/リチャーズ作詞作曲。ただし、#5はロン・ウッドから、#6はビリー・プレストンからそれぞれインスピレーションを受けたとクレジットに記載されている。

SIDE A[編集]

  1. ホット・スタッフ - Hot Stuff 5:20
    • シングル「愚か者の涙」(アメリカ)のB面収録曲。アメリカではA・B面逆にしたバージョンでも発売され、全米チャート49位にランクインしている[8]。また全米ソウル・チャートでも84位にランクインした[6]
  2. ハンド・オブ・フェイト - Hand of Fate 4:28
  3. チェリー・オー・ベイビー - Cherry Oh Baby (Eric Donaldson) 3:53
  4. メモリー・モーテル - Memory Motel 7:07

SIDE B[編集]

  1. ヘイ・ネグリータ - Hey Negrita 4:58
  2. メロディー - Melody 5:47
  3. 愚か者の涙 - Fool to Cry 5:04
    • アルバムからのシングル第1弾。
  4. クレイジー・ママ - Crazy Mama 4:34
    • イギリスでのシングル「愚か者の涙」のB面収録曲。

レコーディング・メンバー[編集]

レコード/CD記載のクレジットおよび日本版リマスターCD(1994年)付属の越谷政義による解説に準拠

ローリング・ストーンズ
ゲスト・ミュージシャン

脚注[編集]

  1. ^ a b ROLLING STONES | full Official Chart History | Official Charts Company:
  2. ^ The Rolling Stones - Chart history | Billboard:
  3. ^ アーカイヴシリーズvol.4「ザ・ローリング・ストーンズ['69-'74]」(シンコーミュージック刊、2002年ISBN 4-401-61774-6)113頁
  4. ^ a b アーカイヴシリーズvol.5「ザ・ローリング・ストーンズ['74-'03]」(シンコーミュージック刊、2003年ISBN 4-401-61801-7)117頁
  5. ^ The Rolling Stones - Black And Blue at Discogs:” (英語). 2016年12月27日閲覧。
  6. ^ a b c 日本版リマスターCD(1994年)の越谷政義による解説より。
  7. ^ Gold & Platinum - RIAA:
  8. ^ a b The Rolling Stones - Chart history | Billboard:
  9. ^ シンコー・ミュージック・ムック『レッド・ツェッペリン―幻惑されて―』クリス・ウェルチ著、中村美夏訳、1999年ISBN 4-401-70012-0、100頁
  10. ^ Black and Blue:” (英語). 2016年12月27日閲覧。
  11. ^ アーカイヴシリーズvol.5「ザ・ローリング・ストーンズ['74-'03]」(シンコーミュージック刊、2003年、ISBN 4-401-61801-7)14頁
  12. ^ 『ストーン・アローン/上』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年ISBN 4-7897-0780-6)36頁
  13. ^ アーカイヴシリーズvol.5「ザ・ローリング・ストーンズ['74-'03]」(シンコーミュージック刊、2003年、ISBN 4-401-61801-7)17頁
  14. ^ SIGHT VOL.14 特集「ロックの正義!!ストーンズ全100ページ」(株式会社ロッキング・オン、2003年)93-94頁