コンピレーション・アルバム
コンピレーション・アルバム(Compilation Album)は、特定のテーマや一定のコンセプトに基づいて集められた楽曲によって構成された音楽アルバム。「コンピレーションアルバム」とも表記されるほか[1]、「コンピレーション盤」とも称し、省略されて「コンピレーション」、「コンピ」[2]、「コンピレーション・ベスト」、「コンピベスト」、「コンピ盤」[3]と呼ばれることもある。日本語では「編集盤」[2]「編集企画盤」[4]「編集アルバム」[5]として言及されることもある。CDアルバムの場合は「コンピレーションCD」[4]と称することもある。以前は「オムニバス・アルバム」と称していた。
多くの場合、様々なアーティストの曲を収録しているが[3]、特定のアーティストやグループの曲だけで構成されたものも少なくない[注釈 1][注釈 2]。
なお「コンピレーション(Compilation)」は「編集」という意味である[6]。
概要
[編集]1970年代まではレコード会社や音楽出版社が主導して、所属アーティストやバンドの録音時期の異なる既発表のヒット曲を集めた「ベスト盤」や、あるジャンルの複数のアーティストによる「ヒット集」、作曲家に焦点を当てた「クラシックアルバム」などをリリースしていた。
1980年代に入ると『NOW』や『HITS』に代表される、複数のレコード会社が共同してポピュラー音楽の最新ヒット曲を集めたコンピレーション・アルバムの制作がイギリスで始まり、独自のヒットチャートが作成される[注釈 3] ほど市場が成長した。複数のレコード会社が協力することになった理由は、音源を借りる側はアルバムの内容を充実でき、貸す側はリスクなしに印税収入を期待できるという、双方に利益があるためと説明されている[4][7]。
日本では1986年に発売されたBEAT EXPRESS以降、1990年代に盛んになったが、特に1993年に発売された『ナウ1』は百万枚ほどを売り上げたとされ[4]、以降は外国の大物アーティストたちからのコンピレーション・アルバム収録への許諾が得やすくなったとされる[3]。
類型
[編集]「コンピレーション・アルバム」は大きく分けると、特定のアーティストやグループの曲で構成されたものと、複数のアーティストやグループの曲で構成されたものの二つになる。よくある類型には、次のようなものがある。
- 『グレイテスト・ヒッツ (Greatest hits)』、『ベスト・オブ・〜 (best of)』、『シングルズ・コレクション (singles collection)』『アンソロジー』などと題された、そのアーティストやグループのよく知られた楽曲を集めたベスト・アルバム[8]。発売時点でまだ活動中であれば、1曲ないし数曲の未発表曲を収録して、既に他の収録曲を手元に持っているファンたちがそのアルバムを買う気になるよう仕向けるインセンティブとすることがよく行われる[注釈 4][9]。
- シングルのカップリング曲や他のコンピレーション・アルバムのみに収録されていた曲、リミックス曲など、そのアーティストやグループのオリジナルアルバムに収録されていない曲をまとめたもの。
- 様々なアーティストが収録された特定ジャンル、例えば、ジャズ、シンセポップ、ロック、クラシック[10]などのコンピレーション。これには、特定の年、十年代、時代など、同じ時期のものを集めたものもあれば、共通の主題で構成されたものもあり、映画やドラマのサウンドトラック・アルバムはその最も代表的な形態である[2][11]。
- 様々なアーティストが収録されたヒット曲のコンピレーション。この分野は、1970年代はじめから市場で大きな成功を収めてきた形態である。最近のヒット・シングルの曲が1枚に収録されている。1970年代には、これがLP盤で10曲ないし12曲、あるいはそれ以上が収録されていた。1980年代には、片面に6曲から8曲を収めたアルバムを2枚組で出す形が定番となった。その後は、CDが主流となっており、通常は、CD1枚のものから、2枚組、3枚組、場合によってはボックス・セットになっているものもある[12]。
印税
[編集]アメリカ合衆国では、複数のアーティストの曲が収録されている場合、印税は通常は比例配分される。多くの場合、1枚のレコードの売り上げのうち一定の比率(1999年の時点で典型的には12%から14%)[13]が、そのアルバムに収録されたアーティストの数で割られることになる。しかし一部のレコード会社は手続きを簡略化し、収録されたアーティストの数に関係なく、比率であれ定額であれ、丸めたキリのいい金額で支払う傾向にある。1999年の時点では、レコード1枚につき1%から2%、あるいは15セントから16セントといった決め方であった[13]。コンピレーション・アルバムに、他のレコード会社の音源を収録する場合、印税はアーティストと原盤権を持つ会社とで分けられる[13]。
ジャンル
[編集]ウィキペディアはオンライン百科事典であって、販売カタログではありません。 |
邦楽
[編集]- フォーク・ニューミュージック
- こころのうた
- フォーク&ポップス ベスト・コレクション
- 青春のフォークソングス名曲集
- ニューミュージック・スーパー・ヒッツ・コレクション
- ニューミュージック・スペシャル・コレクション
- マイ・ソングス -おもいでのうた-
- ニューミュージック・メモリアル・コレクション
- 愛と青春のメロディー
- 愛と青春のうた
- フォーク・ポップス・グラフィティ
- ニューミュージック・ベスト・コレクション
- ニューミュージック・スペシャル
- あの素晴しい曲をもう一度
洋楽
[編集]- ガレージロック
ナゲッツシリーズ
- ナゲッツ:オリジナル・アーティファクツ・フロム・ザ・ファースト・サイケデリック・エラ、1965-1968
- ナゲッツII:オリジナル・アーティファクツ・フロム・ザ・ブリティッシュ・エンパイア・アンド・ビヨンド、1964-1969
- ディスコ
この節の加筆が望まれています。 |
その他
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 例えば、華原朋美(Tomomi Kahala – Kahala Compilatio - Discogs (発売一覧))などの例がある。
- ^ ただし、細野晴臣の例(Haruomi Hosono – Medicine Compilation - From The Quiet Lodge - Discogs (発売一覧))のように、オリジナル・アルバムのタイトルに「コンピレーション」という言葉が入る場合もある。
- ^ イギリスでは、オフィシャル・チャーツ・カンパニーが、コンピレーション・アルバムの週間ヒットチャートを作成しており、その対象は、様々なアーティストが収録されているコンピレーションと、サウンドトラックのコンピレーションだけに限られている
- ^ ボブ・ディランのブートレッグ・シリーズ第1〜3集など。
出典
[編集]- ^ “80年代、もう懐メロです 邦楽ヒット集CD、3社が発売”. 朝日新聞・夕刊: p. 16. (1998年4月30日). "八〇年代 ... 、当時のヒット曲がもう懐メロの仲間入りをしてコンピレーションアルバムになっている。" - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
- ^ a b c 近藤康太郎 (1994年3月21日). “映画はサントラのプロモーションか グラミー賞(リポート・音楽)”. アエラ: p. 73. "一方、最近、特に目立つのが、「コンピ(コンピレーション、編集盤)もの」と呼ばれるサントラアルバムだ。" - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
- ^ a b c “消費者への究極の親切企画? コンピ盤が人気(in・short)”. アエラ: p. 71. (1995年5月15日). "様々な音楽家の曲を編集した「コンピレーション・アルバム」が売れている。WEAジャパンでは、四月二十五日から「HITS」シリーズの発売を始めた。マドンナやエリック・クラプトンら洋楽の最新ヒット曲を、原則として一曲ずつ収録している。海外の音楽家の場合、自作を他人の曲と一緒に編集されることに拒否反応が強かった。「日本には、編集アルバムに百万枚規模の市場があることが理解され、超大物からもOKが取りやすくなった」と担当者はいう。... 実際のところ、「編集アルバムの場合、音楽家に支払うロイヤルティーが安く、宣伝のため音楽家を動かさなくていいから、楽」という営業判断があるようだ。" - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
- ^ a b c d “最新ヒット曲の編集盤 コンピレーションCD 洋楽市場で空前の人気”. 読売新聞・東京夕刊: p. 7. (1994年10月8日). "... コンピレーションCD(編集企画盤)が、洋楽市場で空前の売れ行きだ。複数のアーチストが競演するのがコンピレーション盤。中で、最近、注目を集めているのは最新ヒット曲集だ。昨年末に発売された「ナウ1」(東芝EMI)は、売り上げ百万枚を突破する勢い。従来は、この種の企画は三万枚がせいぜいだっただけに、驚異的な数字だ。もともと、このシリーズは英国が本家。アルバムの売り上げ活性化を図ろうと十年ほど前に企画され、現在はすっかり定着して編集盤専門チャートまで出来た。... 複数のレコード会社が連携して内容は一層豪華になってきた。「ナウ2」は三社の連携。制作・発売元の東芝EMIに曲を提供したポリドールでは「曲を借りる側は強力な作品を網羅でき、貸す側は宣伝費や在庫のリスクを負わずに印税を確保できる」... と、双方の利点を挙げている。" - ヨミダス歴史館にて閲覧
- ^ a b 近藤康太郎 (1993年4月13日). “無名バンドの「編集アルバム」に新傾向(sound)”. アエラ: p. 71. "いまだ世に知られていないバンドの曲を集めた「コンピレーション(編集)アルバム」は、だから重宝する。様々な音楽性のバンドを、一枚に詰めたCDのことだ。" - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
- ^ 大辞林 第三版. “コンピレーション【compilation】”. コトバンク. 2017年11月8日閲覧。
- ^ "UK Top 40 Compilation Albums", BBC, retrieved 2012-04-01
- ^ a b 米田浩子 (1998年6月13日). “聴きたい曲だけ、お好みCD コンピレーション盤が人気 12万枚のヒットも”. 読売新聞・大阪夕刊: p. 9. "ラジオや雑誌が、レコード会社とタイアップしてコンピレーション(編集)CDを出す動きが活発だ。メディア側はステーションイメージをPRでき、提携するレコード会社は電波や誌上での告知利点に注目する。 ... コンピレーションアルバムとは、あるテーマのもとに、発表済みの曲を編集し直したもの。各レコード会社が手持ちの音源の有効利用も狙って、ここ五、六年、力を入れている。" - ヨミダス歴史館にて閲覧
- ^ “TLC to Release Greatest Hits Compilation to Accompany Biopic, New Album Coming in 2014”. Pitchfork (2013年9月23日). 2013年12月1日閲覧。
- ^ “クラシック編集で新傾向 スケルツォやアダージョ集(音楽の風景)”. 朝日新聞・夕刊: p. 10. (1995年5月25日). "ヒット曲を集めて一枚や一セットのCDにして発売するものを、コンピレーション(編集)アルバムといい、最近ではベストセラーになることも珍しくない。" - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
- ^ Gentile, John (2013年11月8日). “Deadmau5 Compilation 'We Are Friends Vol. 2' – Album Premiere”. Rolling Stone. 2013年12月1日閲覧。
- ^ Suchet, Richard (2013年11月28日). “Now Compilation Albums Celebrate 30 Years”. Sky News. 2013年12月1日閲覧。
- ^ a b c McPherson, Brian (1999). Get It in Writing: The Musician's Guide to the Music Business. Hal Leonard Corp.. p. 68. ISBN 9780793566990 2015年3月24日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- デジタル大辞泉『コンピレーションアルバム』 - コトバンク