エゾヒグマ

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エゾヒグマ
エゾヒグマ (Ursus arctos yesoensis)多摩動物公園(2009年3月)
エゾヒグマ (Ursus arctos yesoensis)
多摩動物公園(2009年3月)
保全状況評価
LP(石狩西部と天塩増毛の地域個体群)[1]
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネコ目(食肉目) Carnivora
亜目 : イヌ亜目 Caniformia
下目 : クマ下目 Arctoidea
小目 : クマ小目 Ursida
上科 : クマ上科 Ursoide
: クマ科 Ursidae
亜科 : クマ亜科 Ursinae
: クマ属 Ursus
: ヒグマ U. arctos
亜種 : エゾヒグマ Ursus arctos yesoensis[2]
学名
Ursus arctos yesoensis
Lydekker, 1897[2]
和名
エゾヒグマ
英名
Ezo Brown Bear[2]

Grizzly Bear[3]
Hokkaido Brown Bear[4]
Ussuri Brown Bear[5]

エゾヒグマ(多摩動物公園、2009年3月)

エゾヒグマ(学名:Ursus arctos yesoensis)は、ネコ目(食肉目)クマ科クマ亜科クマ属に分類されるヒグマ亜種で、北海道に生息するクマである。日本に生息する陸上動物としては最大の動物である[1]

ヒグマの亜種であるウスリーヒグマUrsus arctos lasiotus)と同亜種とする説もある[6]

目次

[編集] 分布

北海道森林および原野夏季から秋季にかけての時期は中山帯高山帯へも活動領域を広げる。石狩西部と天塩増毛の地域個体群は、絶滅のおそれがある地域個体群(LP)に指定されている[1]

北海道野生動物研究所門崎允昭は、江戸時代末期から明治時代初期(1865年 - 1868年)にかけては、集落などのように人が多い地域を除けば、北海道全域が本種の生息域であった、と推察している[7]

オホーツク文化期の末期(13世紀)までは利尻島礼文島にも生息していたようである[8]

[編集] 特徴

成獣の大きさはオスメスとで異なり、オスの方が大きく、体長はオスが約1.9 - 2.3m、メスが約1.6 - 1.8m。体重はオス約120 - 250kg、メスが約150 - 160kg[9]。480kgの個体もある[10]。近年の記録に残されている最大の個体では、体重はオスが404kg(1974年、12 - 13歳)、メスが160kg(1985年、8 - 9歳)。体長はオスが243cm(1980年、14 - 15歳)、メスが186cm(1985年、8 - 9歳)[9]毛色は褐色から黒色まで個体により様々であり[1]、その色合いごとに名称が付けられている。黄褐色系の個体は金毛、白色系の個体は銀毛頸部前胸部に長方形様の白色がある個体は月の輪。また夏毛刺毛で構成されており、冬毛は刺毛と綿毛で構成されている[9]数は、切歯が上6本下6本、犬歯が上2本下2本、前臼歯が上8本下8本、後臼歯が上4本下6本、合計42本。乳頭数が、胸部2対、腹部は無し、鼠径部1対、合計6個。指趾数(の数)は、前肢が5本、後肢が5本、合計20本[11]

新生子の大きさは、体長が25 - 35cm。体重は300 - 600g。視力はなく、も生えていない。体毛は、産毛がまばらに生えている[9]

[編集] 生態

本種の行動は、発情期と子育て期以外は単独行動である。活動時間帯はを問わず一定していない。休息場所は特に決まっておらず、気に入った場所で休息する。本種は犬掻きによる泳ぎが得意である。若い本種は木登りも得意であるが[9]、それは体重が軽いためである[3]。本種はをよく使い、手のが伸びる速さはの爪が伸びる速さの約2倍である。これは手をよく使うために手の爪の摩耗が速く、摩耗した爪を補うために速く伸びるものと推考できる。また後肢で2本足立もする[9](→立ち姿の写真)。

活動期間は、から晩秋初冬にかけての期間で、活動地域は平野部から高山帯に至るまで様々な地域で活動する。となる植物を得られない残雪(春)や降雪による積雪(晩秋・初冬)の多い地域にはおらず、植物を採食できる地域に移動している。越冬のために巣穴に籠る時期は晩秋から初冬にかけての時期で、出産は越冬期間中に行われる[9]

寿命は、野生下では約30歳[9]

[編集] 食性

食性雑食性である。 植物性のものを食べる目的は二つあり、一つは栄養を摂取するため。もう一つは便秘予防や消化促進のためである。 本種が前者の目的で摂取する植物は、栄養素を多量に含むフキセリ科などの木の実である。 本種は植物繊維を分解して栄養素に変換する機構を備えておらず、また草食動物のように植物繊維を分解して栄養素に変換する腸内細菌共棲していない。そのため本種がスゲ類[12]などの植物繊維の多い植物を摂取する目的は後者である。 本種は様々な動物性のものを摂取するが、主に鳥類哺乳類昆虫類水棲動物ではザリガニサケ、その他の魚類である。鳥類と哺乳類の場合は既に死亡しているものを食べ、捕食することは珍しい。本種は共食いをすることがある。摂取した昆虫類やザリカニの外骨格羽毛獣毛などは分解できず、未消化のまま排泄される。 本種の食性は非常に多様性に富み、人が食べることができるものは元より、それ以外のもの食べることができ、樹脂も食べる。草類は約60種類、木の実が約40種類、動物が約30種類である[13]

前述の通り本種が様々な動植物を食べるが、代表的なものをいくつか次に示す。

[編集] 鳴き声

成獣は相手を威嚇する時に「ウオー」「グオー」「フー」などの鳴き声を発声する。鳴き声以外にもを鳴らしたり、地面を擦るなどして音を出して威嚇する[19]

新生子や子グマは「ビャー」「ピャー」「ギャー」などと鳴く[19]

[編集] 繁殖と子グマの独立

発情期は初夏からにかけての期間。妊娠期間は約8ヶ月間で、翌年の越冬期間中に巣穴出産する。産仔数は1 - 3頭。子育てメスだけで行う[9]。越冬期間中に出産と母乳による子育てをするため、に巣穴から出る頃には母グマの体重は約30%減少している[20]新生子視力などがない。生後6週目に聴力を得て、7週目に視力を得る。生後4ヶ月で乳歯が生え、母グマと同じものを食べるようになる。1 - 2歳になると親離れする(→子グマの写真)。子グマが繁殖できるようになるのは4 - 5歳で、最年少の記録は3歳。30歳ぐらいまで繁殖が可能である[9]

[編集] 冬籠り

越冬用の巣穴斜面穴を掘り、穴は掘らない。他の個体が前回の越冬に使用した穴を使用することもある。穴や樹洞を使うことは滅多にない。独立して行動する年齢になった本種は複数個の巣穴を持っており、その使い方は個体により様々。巣穴に籠る時期は晩秋から初冬にかけての期間であるが、積雪とは関係がない[21]。冬籠り中の体温は活動時期より4 - 5度下がる[22]

動物園での飼育下では、本種を冬籠りさせないことができる[20][23]

[編集] 熊棚

本種は樹木に登って木の実を食べることがあるが、そのときに熊棚(くまだな)ができる場合がある[16]。本種が樹上で木の実がなっているを手繰り寄せたときに枝が折れることがあり、折れた枝は本種の臀部の下に敷く習性があり、枝の数が多くなるとのようになるので、これを熊棚という[24]

[編集] 駆除

(本節は『野生動物調査痕跡学図鑑』(p409, p410)を参考文献とする。)

害獣指定
本種は害獣に指定されて100年以上経つ(2008年時点)。1875年(明治8年)12月20日に害獣に指定され、2008年(平成20年)時点では、10月から翌年1月までの狩猟期と、鳥獣保護区では狩猟期以外の時期も害獣として駆除されている。
捕獲奨励金制度
1877年(明治10年)9月22日に北海道全域で捕獲奨励金制度が始まり、1888年(明治21年)11月22日にこの制度が廃止されるまで続いた。そして1963年(昭和38年)2月3日に奨励金制度が再度始まる。
十勝岳噴火の影響
1962年(昭和37年)6月に十勝岳噴火し、降灰地域に生息していた本種が東へ移動し、本種が移動地域の家畜に被害を与えたため、1963年(昭和38年)4月にヒグマ捕獲奨励金制度が始まり、1980年(昭和55年)3月まで続いた。
春熊駆除
1966年(昭和41年)4月に計画駆除事業(通称「春熊駆除」)が始まり、1989年(平成元年)まで続いた。駆除時期は、1966年(昭和41年)の駆除事業開始時は2月から雪解けまで。1976年(昭和51年)頃から1986年(昭和61年)までは、3月15日から5月31日まで。1987年(昭和62年)から1989年までは、地域により駆除期間を30 - 40日間に短縮した。その後、春熊駆除は中止される。
予防駆除
2008年(平成20年)時点では、予防駆除として本種の駆除が続いている。殺獲数は、2005(平成17)年度が568頭、2006(平成18)年度が430頭。

[編集] 附録

[編集] 本州以南のヒグマ種

ヒグマ種化石ブラキストン線津軽海峡)以南の本州四国九州の約1万年前の更新世末期の地層から発掘されており、本州以南にもヒグマ種が生息していたようである[8]

[編集] 脚注

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  1. ^ a b c d日本の哺乳類 改訂2版』(p77)より。
  2. ^ a b cエゾヒグマ」(環境省 生物多様性センター)より。
  3. ^ a bエゾヒグマ」(旭川市旭山動物園)より。
  4. ^エゾヒグマ」(札幌市円山動物園)より。
  5. ^ en:Ussuri Brown Bearのテンプレート内上部を参照。
  6. ^ Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder. Mammals Species of the World 3rd edition, online list. Ursus arctos lasiotus
  7. ^野生動物調査痕跡学図鑑』(p357)より。
  8. ^ a b c d e野生動物調査痕跡学図鑑』(p356)より。
  9. ^ a b c d e f g h i j野生動物調査痕跡学図鑑』(p348)より。
  10. ^エゾヒグマ」(東山動植物園)より。
  11. ^野生動物調査痕跡学図鑑』(p347)より。
  12. ^ 北海道湿原に多く棲息する。「スゲ属#生育環境」を参照。
  13. ^野生動物調査痕跡学図鑑』(p350, p352)より。
  14. ^野生動物調査痕跡学図鑑』(p352)より。
  15. ^シラネニンジン」(千葉大学、BG Plants 和名-学名インデックス)より。
  16. ^ a b c d e野生動物調査痕跡学図鑑』(p354)より。
  17. ^ a b c d野生動物調査痕跡学図鑑』(p355)より。
  18. ^野生動物調査痕跡学図鑑』(p58)より。
  19. ^ a b野生動物調査痕跡学図鑑』(p350)より。
  20. ^ a bエゾヒグマ」(愛媛県立とべ動物園)より。
  21. ^野生動物調査痕跡学図鑑』(p349, p350)より
  22. ^エゾヒグマ」(京都市動物園)より。
  23. ^エゾヒグマ」(釧路市動物園)より。
  24. ^山の花だより - 冬の森」『奥多摩』(p5、PDF:p5/6)より

[編集] 参考文献

ウェブサイト

出版物

[編集] 関連文献

[編集] 外部リンク

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