M65 (フィールドジャケット)

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緑色のM-65
ベージュ色のM-65

M65: M-1965 field jacket)は、アメリカ軍によって用いられた戦闘服で野戦用ジャケット[1]。仕様番号MIL-C-43455にて規定される。一般的にM-65「フィールドジャケット」と呼ばれているが、米軍MIL規格上は、「フィールドコート」と表記される。当初はラベルに「COAT, MAN'S, FIELD, M-65」の表記があったが、1970年代初頭以降「M-65」の表記が無くなり、代わりに「COLD WEATHER」の文字が追加された。「COAT, COLD WEATHER」とは、平均気温が華氏14度(摂氏-10度)から華氏68度(摂氏20度)の環境で使われることを想定したコートという意味である。

概要[編集]

本モデルは第二次世界大戦から朝鮮戦争にかけて使用されたM-41M-43M-50M-51フィールドジャケットの後継として開発され、2008年UCP(Universal Camouflage Pattern)の軍への納入が完了するまで実に40年以上にわたってアメリカ軍の現用モデルであり続けた。特に湾岸戦争では夜間、砂漠地帯の急激な冷え込みに対応するため、多くのM-65が支給され、テレビに登場する指揮官も着用していたため、ベトナム戦争以来多くの人々の目に触れることとなった。

主にアメリカ軍及びアメリカ沿岸警備隊などによって用いられたが、南ベトナム軍韓国軍などアメリカの支援する国々の兵士達にも少数ながら支給され着用された例がある。非公式に戦闘地域で用いられた例は後述する。

また、官給品以外にも多くのPX(Post eXchange)などで販売されており、UCPの他アメリカ海兵隊が採用する2種類のMARPAT(MARine PATtern)等も存在している。なお、アメリカ軍ではヘルメットボディアーマー以外の個人装具に関しては、実際に私物のM-65が訓練や戦場に持ち込まれることもある。

M-43の洗練されたジャケットスタイル、M-50のライナー統合システム、USAFフィールドジャケットの襟内蔵フードを継承・統合したM-65のデザインは他のモデルにも強い影響を与え、アメリカ軍のみならず、NATOなど周辺国の戦闘服でも類似するデザインを採用している例が多くある。日本においても自衛隊防寒戦闘服外衣の上衣は、襟に収納するフードなど外観はM-65に強く影響されていることがうかがえる。

M-65の特徴[編集]

M-65は前の採用モデルであるM-51を継承しており、両者は類似している部分も多い。改良された点としては

  • 生地がコットン100%からナイロンとの混紡になった
  • 通常の襟から立ち襟へ意匠が変更され、簡易フードが付加されるようになった
  • ボタンで止めていた襟と袖口にベルクロが取付けられた
  • 袖口に手を保護するため折り込み可能な角形のフラップが付けられた(一部モデルでは省略されている)
  • 脱着式のライナーがウールパイルを内貼りしたものからポリエステル綿をキルティングしたものに変更された

などがある。

60年代以降、いくつかのバージョンが多数の企業によって生産されている。

軍への納入実績のある主な製造会社には、MA-1フライトジャケットで有名なアルファ・インダストリーズの他にSO-SEW STYLESGolden MFGWINFIELD MFGアメリカンアパレル等があるが、これ以外にも多数の民間アパレルメーカーが契約納入している。 また、契約会社と製造会社がそれぞれ異なる二つの社名がラベルに記された物もあり、繁忙期には受注を取りすぎた会社が手の空いている会社に仕事を回していた事がうかがえる。 他に軍の需品製造部門であるDefense Personnel Support Centerで製作された物もあり、民間企業で製造された物とはコントラクトナンバーが異なる。

製造会社によって、細部の違いはあるものの、正式納入された製品の表地の素材はコットン:ナイロン=50:50もしくは55:45の混紡のサテン。ナイロンの代わりにポリエステルが用いられているものもあるが、これらは官給品ではなくPX品や民生品である。この丈夫な素材の組み合わせはナイロンコットン、NYCO(ナイコ)と呼ばれ、ナイロン素材の特徴である速乾性と耐久性、綿の特徴である保温性と吸湿性を兼ね備えた生地となっており、当時、軍用の衣服に多用された。M-51ジャケットに比べて薄手の生地で作られてはいるが、裏地はコットンポプリン生地で、見た目よりもジャケットに重量感がある。80年頃からは鉤裂きなどの小さな破れが広がりにくいよう格子状に繊維が織り込まれたコットンリップストップ生地や、ナイロンコットン混紡生地が使われたモデルも製造されている。

生地はオリーブグリーン色をはじめとして、ウッドランド・パターン、デザート・パターン、ユニバーサル・パターンなどの迷彩柄なども採用/生産された。主に60年代から80年代初頭にかけてオリーブグリーン(OG-107)色が生産され、1980年代初期にアメリカ軍の多くの装備でウッドランド・パターンを採用されてからは、しばらく両者が並行して生産された。その後1990年前後に中東などの砂漠地帯での活動が盛んになるにつれて、3C(通称:コーヒーステイン)デザート・パターンが製造された。更に2006年2008年には装備がACUに移行しているのに合わせてUCPが製造されている。

生地表面に撥水加工が施されているため、ベトナム戦争の際、兵士達が南ベトナムの高地で、スコールの後の寒さなどをしのぐのに、役に立ったと広く語られているが、実際には着用や洗濯を繰り返すうちに容易にその効果は失われてしまう。雨に濡れて生地が水分を吸収すると、相当に重くなり、自由な動きがしづらく著しく体力を奪われるので、雨天時に野外で行動をする必要がある場合は、小雨でもすぐにポンチョなどの雨具を別に着用をする必要がある。基本的には雨天向きの衣料ではない。

1966会計年度に発注された初期モデルには肩の部分にショルダーループがない。前モデルのM-51などには採用されていたショルダーループをあえて省略した形であったが、いかなる理由からか、すぐにM-65にも復活採用された。なお、UCPでは再び省略されることとなる。ショルダーループの有無はM-65を分類する上で使用されることがあり、このことについては後述する。

肩の後ろの背中の部分にはバイスイング(アクションプリーツ)と呼ばれるひだ構造を設け布に余裕を持たせており、更に肘の部分にダーツを設け立体的にすることで、腕の取り回しがし易いように設計されている。

袖口には絞るためのベルクロと、手の保護を目的とするハンドシールドが付けられている。初期のモデルにはベルクロで絞る際に、袖口を内側に折りたたみやすいようマチが設けられていたが、のちのモデルでは省略されている。ハンドシールドは三角のフラップ状になっており、袖の内側に折り込み、ベルクロで固定できるようになっている。UCPでは省略された。

裾とウエストの部分にはドローストリングと呼ばれる引き紐が取付けられており、身頃を体に密着させ動き易くしたり、寒さを防ぐことができるようになっている。ウエストの引き紐の端はM-51では外側だったが、M-65ではM-50と同様の内側に戻されている。ウエストの引き紐にはコットン製のもの、裾の部分には腰と足の動作を阻害しないようにエラスティックコード(伸縮性のあるゴム紐)が取付けられている。引き紐の出口部分が補強縫いされているものと金属ハトメがつけられているものが存在する。

フロント部分はファスナースナップボタンの両方で閉じるようになっている。ファスナーは大型のものが使われ、引き紐が装着されており、グローブを装着したままでも、使い易いように考慮されている。

1971年頃までの初期納入分はアルミ製ファスナーが用いられていたが、柔らかい金属であるアルミは耐久性や酸化すると開閉しづらくなる問題があり、ブラス製ファスナーに変更された。1985年頃のモデルからは、塩害の防止、軽量化、金属部の消音効果を期待して、プラスチック製ファスナーのものが製造されるようになった。ブラス製からプラスチック製への移行期には、フロントがブラス製、襟がプラスチック製のモデルも製造されている。プラスチック製ファスナーは生地に合わせて、オリーブグリーン生地ではOD色、ウッドランド・パターン生地ではOD色または茶色、3Cデザート・パターン生地ではベージュ色、UCP生地では灰色になっている。ファスナーの種類はM-65を分類する上で使用されることがあり、このことについては後述する。

ポケットは大型のものが胸部左右に1つづつ、腰部左右に1つづつの計4つ備え付けられている。これはM-43以降共通の意匠となっている。それぞれのポケットにはフラップがあり、金属製のスナップボタンで閉じられるようになっている。胸側のポケットはマチ付き、腰側のポケットは開口部が玉縁仕上げとなっている。

フロント部とポケットのスナップボタンは全て見返し側のみに打ち込まれており、金属部が本体の表面に露出しないようになっている。

襟の部分は立て襟の意匠が採用されている。通常は襟を折り開いて着用するが、襟の部分にはベルクロで固定できるストラップが付けられており、襟を立て固定することで首元から寒気が侵入することを防ぐこともできる。また、襟の背面にあるファスナーの中にはフードが収納されている。フードはナイロンコットンオックスフォード生地で、接続部は伸縮性のあるナイロンニットになっている。引き紐がつけられており、絞ることで頭部との密着度を調節することできる。極寒地では別に、M-65パーカと共用のファーの付いた厚手のフードを襟に装着できるようにボタンホールとボタンが用意されており、通常は使用されない襟の周りのボタンホールとボタンはその際に使われる。

本体の内側には防寒用ライナーを固定するためのボタンがついており、ライナーを装着することで、より厳寒な環境に対応できるように設計されている。ライナーはラベルによると「LINER, COLD WEATHER COAT」である。袢纏のような形状をしており、腋の部分が袖と完全に繋げられておらず空いている。ナイロンリップストップ生地にポリエステル綿をダンベルパターンにキルティングしたもので、M-51のライナーと比較すると、とても軽量である。1987年頃のモデルからはECWCSの一部として流用されること想定して、単体でも着用しやすいよう、フロント部を閉じて固定するためのボタンが追加されている。

サイズは胸囲に合わせてX-Small、Small、Medium、Large、X-Largeの5種類、身長に合わせて各々のサイズ毎にX-Short、Short、Regular、Longの4種類がある(ただし、Large、X-LargeにはX-Shortの設定は無い)。 また、より多様な体格に対応する為、ウッドランドとUCPに限りSmall、MediumにはXX-Shortが、Medium、Large、X-Large、XX-LargeにはX-Longが、さらにLargeにはXX-Longが追加された。 ライナーのサイズはX-Short-X-Small、X-Short-Small、X-Short-Medium、X-Small、Small、Medium、Large、X-Largeの8種類。X-Shortを除くすべての身長サイズ共通で、胸囲サイズ毎のバリエーションになっている(つまりMediumのライナー1種類で、Medium-Short、Medium-Regular、Medium-Longに対応)。

非公式での着用[編集]

非正規軍などにおいて軍用として戦場で着用されることもある。

例えばアメリカ同時多発テロ事件を首謀したとされるオサマ・ビンラディンは、犯行声明を収めたビデオの中でウッドランド・パターンのモデルを着用していた。この他にも南米中東アフリカテロリストグループなどが着用していた例がある。

本来アメリカ軍とは敵対する勢力においても使用されていることは、M-65の頑丈な作りと実用性の高さを証明している。

民間の流通[編集]

軍への納入が終了した現在でも民間レベルでのニーズがあるため、製造が続けられ、アメリカ国内以外でも中国などの工場でほぼオリジナルと同じスペックで作られた民生品も軍の放出品やデッドストックと共に多く流通している。アメリカ国内で作られた製品も輸出用として海外へ大量に送られている。MIL規格とほぼ同等に作られたものだけでなく、アジアの工場で作られたものには生地や裁縫が粗雑なものも混在してM-65と称して販売されている。また軍に正式に納入された製品は規格に基づいて一つ一つチェックされることになっているが、実際のところはロットによってその品質にはかなりのムラがあり納入品であっても、糸のほつれや縫いの粗い製品などもある。最終的な製品チェックで不合格になった製品も軍放出品として民間に払い下げられ出回っていることもある。基本的に国費で製作された不合格品や払い下げ品は、赤い塗料などでチェックが入れられた後、民間へ払い下げられる。これらの理由からM-65を称するコピーや粗悪な製品も多く出回っている。

軍納入品と民生品との違いは、内側に縫いつけられたラベルを見るとわかる。素材や使用法の他に、コントラクトナンバーが記載されている。これによって、発注機関、契約年などが分かるようになっている。近年ではラベルと共にコントラクトナンバーの記載されたバーコードも官給品には添付されている。しかしながらこのラベル自体もそのままコピーされている場合もあり、レプリカか正式な軍納入品かを見分けることが困難な場合もある。

M-65の民間レベルでの分類[編集]

M-65の仕様は1965年から2007年までの間に10回ほど改訂されているが、それとは別に民間レベルにおいて大まか4つに分類されることがある。

  • ファーストタイプ。フロントファスナーがアルミ製でショルダーループがついていないモデル
  • セカンドタイプ。フロントファスナーがアルミ製でショルダーループがついているモデル
  • サードタイプ。フロントファスナーがブラス製のモデル
  • フォースタイプ。フロントファスナーがプラスチック製のモデル

上記の分類に加えて、68年と72年に製造された裏地がセージグリーン(SHADE 509)色のモデルは、グレーライニングと呼ばれることがある。

軍事目的以外での使用[編集]

近年では軍用のみならず、カジュアルファッションのアウターとしても一般化しており、日本では俳優高倉健やタレントの所ジョージ浜田雅功木村拓哉などが愛用していることが知られている。

ファッション用の衣類として用いる上での難点として、重量が重いこと、背中の部分にフードが収納される構造のため、猫背気味に見えてしまい、ややシルエットを崩してしまうことがある。また、本来コートとして下に重ね着することを前提としているため、前身ごろや腕の部分がかなり太めに作られており、ジャケットスタイルで着用するには全体的にややだぼついた感じになってしまうことがある。このため軍納入品を製造している会社であっても、民間用には素材や構造をやスリムに改良した製品を販売している場合もある。

これ以外にファッションだけでなく、野外作業の際にも用いられる事があり、アウトドアスポーツの愛好家やオートバイライダーがM-65を着用している様子がしばしば見受けられる。例えば反捕鯨団体シーシェパード設立者のポール・ワトソンは、自団体のロゴをプリントした黒のモデルを着用している。

また、ファッションブランドがジャケットを製作する際のデザインソースに使われることも多い。様々な装飾を加えてリファインされたジャケットが数多く登場しており、一見するとオリジナルが分からないほどにデザイン化されたものもある。

映像作品におけるM-65[編集]

脚注[編集]

一覧[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • Alpha Industries(英語) - メーカーによるアパレルブランドの公式サイト
  • Rothco(英語) - メーカーによるアパレルブランドの公式サイト