虚偽報道

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虚偽報道(きょぎほうどう)とは、マスメディアソーシャルメディア等において事実と異なる情報報道すること、または事実と異なる報道を行うメディアそのものを指し示すことである。

初めから虚偽であることを認識した上で行う架空の報道や、推測を事実のように報道するなど、故意のものについては捏造報道といわれることもある。

英語ではFake Newsと言うが、日本語で「フェイクニュース」と言った場合、報道機関では、ソーシャルメディアの虚報・虚偽報道を指すことが多い。

目次

概要[ソースを編集]

虚偽報道は広義の誤報に該当するが[1]、法的には、「誤報」が過失によるものを指すのに対し、「虚偽報道」ないし「虚報」は故意によるものを指す[2]。特にコモン・ローにおいては、悪意を持って行う虚報である悪意虚偽(英:Malicious falsehood)が問題とされるが、これはあくまで法的な問題で、報道の受け手からすれば、故意でも過失でも、悪意があってもなくても、全て「虚偽報道」である。また法的には、虚偽報道の対象となった個人または法人(報道被害者)の名誉棄損やプライバシー侵害を法廷で問うことによる救済が重要視されるが、虚偽報道が実在の個人や法人に関連しない場合でも、報道の受け手が、すなわち正確な情報を知る権利を有する大衆が、虚偽報道による「報道被害者」となりうる。

かつては、テレビ・新聞・雑誌などの「オールドメディア」とされるマスメディアの報道のみが虚偽報道となりえたが、ソーシャルメディアが発達した時代においては、SNSなどで個々人が流すデマや、発信元(ニュース・ソース)が全く不明な報道も虚偽報道となりえるようになった。SNSでは、「事実」であるかないかには全く関心が払われず、友人などの「信頼できる人物」から回って来た「真実性の高い情報」が盛んにシェアされ、爆発的に流布される[3]。このような、「事実」ではないが「真実」である、と言う報道(ポスト真実、英:Post-truth)も、事実と異なる限りは虚偽報道である。

最初から「嘘」であることが明示されたニュース(嘘ニュース)は虚偽報道ではない。嘘ニュースは、本文どころか見出しから受けを狙っているなど明らかにおかしく、記事本文や社名や社是などの目立つところに「嘘」「虚」などと書いてあるか、「(うそ)八百」「バ科」などまともな報道機関としてはありえない記事名で、まともな報道機関による記事の場合は発表された日付が現地時間で4月1日であることが多い(エイプリルフール)。が、真に受ける人も多く、「嘘ニュース」を「真実」としてSNSなどで拡散してしまった場合、拡散した人自身が虚偽報道を行ったことになる。英語圏で「嘘ニュース」の代表とされる「ジ・オニオン」(日本で言うと「虚構新聞」や「バ科ニュース」のようなもの)の記事ですら、真に受ける人が少なくなく、「嘘」と明示された記事すら「真実」と思うレベルでメディア・リテラシーの低い人が一定数いることも虚偽報道問題の一面とされる[4]

英語では「fake news」と呼ばれる。「fake news」は、広義の「Misinformation」(誤報)または「Disinformation」(偽情報)に該当し、また「Hoax」(捏造)の一種でもある。かつては、テレビ・新聞・雑誌などの報道機関による「ジャーナリズム」における虚偽報道は「Journalistic hoaxes」(捏造記事)と呼ばれ、「(ネットの)嘘ニュース」のことを「fake news」と呼んだが、新聞や雑誌にも載っているのと同じ記事がソーシャルメディアで流れてきたものを見る人が多い時代においては、リアルの新聞にも載っている記事でもネットの嘘ニュースサイトにしか載っていない記事でも大した違いは無いため、特にアメリカの大統領が「報道機関」にあたるテレビ局に「fake news」とのお墨付きを与えた2017年以降は、どちらも区別せずに「fake news」と呼ばれることが多い。2016年頃より「ポスト真実」時代の重要なキーワードの一つとして、高い政治性を持つようになった言葉である。

虚偽報道を行う権利は、アメリカでは合衆国憲法の修正第1条で保証されており[5]、日本でも同様の言論の自由がある。虚偽報道を行った場合、懲戒処分を受けたり法で裁かれることがあるが、裁かれないこともあり、一人二人が裁かれようが裁かれまいが新手の虚偽報道が次々と登場する。そのため、虚偽報道の発生自体は防ぎようがないが、虚偽報道を見抜くためには、ファクトチェックが有効とされる(Wikipedia内にも虚偽報道がありうるので、それを見抜くのにもファクトチェックは有効)。アメリカでは1990年代より専門のファクトチェック機関が存在し、またマスコミ各社にも専従のファクトチェック要員が存在する。ただし、機能しないこともあり、2016年アメリカ合衆国大統領選挙では、真偽不明の情報があまりに多すぎたり、ファクトチェックを行うマスコミ自身が「フェイク・ニュース」とみなされたりして、ファクトチェックが十分に機能しなかったという[6]。また、虚偽報道を見抜こうとする以前に、虚偽報道は見た時点で相手に報酬を与えるのと同じであり、さらにリツイートやシェアをした時点で自分も虚偽報道に加担したのと同じになるので、あからさまに扇情的な報道にはそもそも「興味を持たない」「見ない」ことも重要である[7]

「ポスト真実」時代の虚偽報道(フェイク・ニュース)[ソースを編集]

虚偽報道は、20世紀初頭には新聞・雑誌などにおいて既に問題視されており、虚偽報道しかしない報道機関が「イエロージャーナリズム」と呼ばれ、あるいは政治的な虚偽報道は「プロパガンダ」と呼ばれるなどしていたが、インターネットが発達した21世紀初頭、2000年代以降において、アフィリエイトによる金銭目的で、わざと扇情的な虚偽報道で閲覧者のクリックを誘う「クリックベイト」や、あるいは金銭目的や悪意すらなくただ単にネット上で注目を浴びたいがためだけに虚偽報道を行う者が登場し、インターネットが新たな虚偽報道の舞台として立ち上がった。SNSが発達した2010年代には、検索サイトアルゴリズムの最適化が向上しすぎた結果、「事実」かどうかにかかわらず個々人が見たい「真実」しか検索で引っかからなくなるフィルターバブル現象が発生し、「真実」と言う名のもとに虚偽報道がSNSで爆発的に広まるようになったために、「ポスト真実」の時代の虚偽報道の在り方として再び脚光を浴びることになった。

アメリカでは、SNSにおけるフェイク・ニュースの応酬があったとされる2016年アメリカ合衆国大統領選挙と、「街のとあるピザ屋が、大統領候補のヒラリー・クリントンが関わる児童売春の拠点になっている疑惑がある」との報道をSNSで知った男が「真実を知る」ためにピザ屋にライフルを持って押し入った「ピザゲート事件」(2016年11月)がきっかけで、SNSにおけるフェイク・ニュースの在り方が議論になった[8](アメリカでは、「街のとあるピザ屋がヒラリーも運営に関与する児童買春の拠点である」と言う説が「事実である」と考える人と、「フェイク・ニュースである」と考える人と、これが「事実」かどうかはともかくヒラリーが逮捕されるべき存在なのは「真実」である、と考える人がいる)。さらに、ヒラリー・クリントン候補を支持したとされるCNNが、2017年1月11日のトランプ大統領の記者会見で大統領に「フェイク・ニュース」と名指しされたことで、オールドメディアも巻き込んでさらに議論が活発化した。

日本では、2016年アメリカ大統領選挙の報道に加えて、DeNAなどのネット企業が「キュレーションサイト」などの名目で、虚偽の情報を多数公開してアフィリエイト収入を上げていたことが発覚した「まとめサイト問題」(2016年12月)があったことが、「ポスト真実」の時代の虚偽報道とメディアの在り方の議論が活発化した契機である[9]

「ポスト真実」時代の確立に、TwitterFacebookで虚偽報道の拡散が大きな役割を果たした。偽情報拡散の批判を受け、Facebookは2016年12月にファクトチェック機能を実装した[10]

「事実」かどうかはともかく「真実」である、と言う事象を指す「ポスト真実」(Post-truth)とよく似た概念として、「事実」と並行して存在する「もう一つの事実」と言う意味の代替的事実(英:alternative facts)という言葉がある。これは、2017年1月22日にケリーアン・コンウェイ大統領顧問が口にした言葉で、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』を惹起させる言葉だったため、「ポスト真実」時代を象徴する言葉として広まった。

メディアの報道と自分の認識が食い違った場合、メディアが虚偽報道を行っている可能性があるが、「ファクトチェック」の結果として、メディアの報道が「事実」だと判明しても、自分の認識が「もう一つの事実」だとすれば、自分の認識は「事実」と言うことになり、そうすると「事実」に反する報道を行っているメディアが逆に「虚偽報道」であるという事実が確定的に明らかになる(このように「事実」を認識しながら「もう一つの事実」を信じる思考を『1984年』の用語で「二重思考」と言う)。なお、コンウェイ大統領顧問は「代替的事実」が「事実」だと主張しているが、テレビ司会者のチャック・トッドは、「代替的事実」は「」だと主張している[11]

新聞の虚偽報道[ソースを編集]

新聞における虚偽報道の事例をいくつか挙げる。新聞などの活字系メディアは、いわゆる「筆先三寸」(「舌先三寸」の洒落)で虚偽報道が可能なので、テレビの出演者を巻き込んでの大掛かりな「やらせ」を伴う虚偽報道に対し、比較的単純である。ここでは代表的な虚偽報道事件をあげるが、過去に多くの新聞社で虚偽報道事件が発生している(各社での事件は各社の項目「疑義が持たれた報道、スキャンダル」の節を参照)。

八戸事件[ソースを編集]

八戸事件[12]は、同治5年12月(1867年1月)に広州新聞『中外新聞』に掲載された、「八戸順叔」なる香港在住の日本人が寄稿した征韓論の記事がきっかけとなり、日本李氏朝鮮および清国との間の外交関係を悪化させた事件。征韓論は江戸時代末期(幕末)の吉田松陰勝海舟らの思想にその萌芽が見られるが、現実の外交問題として日清朝三国に影響を及ぼしたのはこの八戸事件が最初である[13]。この事件はその後も10年近く尾を引き、後の江華島事件における両国間交渉にまで影響を及ぼした。

蔵王山噴火偽報道事件[ソースを編集]

1890年明治23年)1月24日東京朝日新聞(現在の朝日新聞)朝刊に、広島県深津郡市村(現在の福山市蔵王町)にある蔵王山が1月16日午後8時に噴火し山体が破裂し、土石流が南側に広がり福山市街地に1間(約30cm)以上積もるなど甚大な被害が出たと報じた。それによると蔵王山の北にある千田村(現在の福山市千田町)の酒造業者の水越某が噴火に巻き込まれ非業の死を遂げたため、妻が後追い自殺したなど、生々しい災害報道をした。しかし、蔵王山は火山ではなく当然噴火した事実もない。そのため翌日「事実無根」として記事の全面取消しをしたが、謝罪や虚偽報道をした背景は掲載されていないため、原因不明である。

西郷隆盛生還偽報道事件[ソースを編集]

1891年明治24年)3月31日東京日日新聞(現在の毎日新聞)に、西南戦争(1877年)で戦死したはずの西郷隆盛シベリアで存命中との記事が掲載され、全国各地の新聞にも転載され、折りしもロシア皇太子(後の皇帝ニコライ2世)が来日することになっており、西郷も帰国するとの噂で持ちきりとなったが、実際には西郷が生きているはずは無かった。なおこれが原因で大津事件が発生している。

淡路丸沈没虚偽報道事件[ソースを編集]

1917年(大正6年)3月26日、報知新聞日本郵船華北連絡船「淡路丸」が玄界灘で沈没したと至急電報がもたらされ、同社はただちに号外を出した。当時は第一次世界大戦の最中であり、日本近海にドイツ帝国海軍が敷設した機雷で沈没したとして株式市場が混乱した。実際は淡路丸は無事であり、株価の混乱を引き起こすことで巨額の資金を得ようとした詐欺事件であった。容疑者として東京朝日新聞記者の山中峯太郎国民新聞記者の松岡泰助証券会社社員のグループなどが検挙された。

伊藤律会見報道事件[ソースを編集]

1950年(昭和25年)9月27日付け朝日新聞夕刊に、当時レッドパージにより地下に潜伏中だった日本共産党幹部伊藤律宝塚市の山林で会見したとする記事が載ったが、その後に記事が完全な虚偽であったことを判明した。朝日新聞は3日後社告で謝罪した。担当記者は退社、神戸支局長は依願退社、大阪本社編集局長は解任となった。

もく星号墜落事故・死者の談話掲載事件[ソースを編集]

1952年4月9日日本航空マーチン2-0-2旅客機「もく星号」が飛行中消息を絶った。翌日、三原山に激突・大破しているのが発見され乗員乗客全員の死亡が確認された。しかし事故の翌日の長崎民友新聞に乗客であった漫談家大辻司郎の救助後の談話が掲載された。無論、大辻も既に“亡くなっていた”わけで虚偽であった。原因であるが「漂流中に全員救助」の誤った情報を耳にした秘書が早合点して長崎の新聞社に気を利かせて無事を連絡したためであった。

売春汚職事件[ソースを編集]

1957年(昭和32年)10月18日読売新聞朝刊の社会面に、前年に成立した売春防止法に反対していた売春組織の赤線から、宇都宮徳馬福田篤泰両代議士が収賄していたという記事が掲載された。しかし、これは読売新聞に情報を漏らす法務省関係者を炙り出すため、検察庁が法務省に仕掛けた偽情報であった。読売新聞社は両代議士から事実無根と告訴され、記事を執筆した立松和博記者は名誉毀損で逮捕(のちに不起訴処分)された。立松はのちに懲戒休職処分をうけ記者生命を絶たれた[14]

「ジミーの世界」事件[ソースを編集]

1980年9月28日アメリカワシントン・ポスト紙はジャネット・クック(en:Janet Cooke)記者の署名の入ったジミーの世界en:Jimmy's World)という長文の記事を報じた。それはワシントン市に住む8歳のヘロイン常習患者について描くもので、彼の母はヘロイン常習者がたむろする食堂を経営し、その愛人は麻薬の密売人。ジミーの腕には注射のあとが残っているなど、生々しい2256語にのぼるルポルタージュであった。当時ヘロインはワシントンの深刻な問題になっており、関心が高まっていた。

記事は市民に衝撃を与え、大きな反響があった。ワシントンの警察もジミーを保護するために大捜索を行った。しかし、そのような少年は見つからなかった。市長や警察はワシントンポストの記事に対する疑念を抱くようになっていた。

この記事で、ワシントン・ポスト紙は1981年ピューリッツァー賞を受賞した。

しかし、やがてAP通信がクック記者の経歴を報道すると、その中に多くのがあることが明らかになった。不審を抱いたポスト紙編集幹部はクックを追及し、彼女は功名心にかられてすべて嘘の記事を書いたことを認めた。「ジミー」は架空の少年だった。クック記者は「人に漏らせば自分の生命に危険が及ぶ」という理由で、当事者の身元も情報源も自社の編集責任者に明らかにしていなかった。ワシントン・ポスト紙はピューリッツァー賞を辞退し、同紙におかれているオンブズマン(外部の大学教授がその任にあった)による調査を実施した。

調査結果は5面にわたって紙上に詳細に公表された。調査結果は捏造の経過と社内の問題点について明らかにし、次のような点を指摘している。

  • 幹部が疑いを持ちながらも、厳しい追及を怠った。
  • 記者を信頼する仕事の仕方が限度を超えた。上司は取材源を確かめて聞くことさえしていない。
  • 特ダネを期待する過度の功名心の弊害が社内に強かった。

などである。

「日出処の天子」事件[ソースを編集]

1984年1月24日毎日新聞夕刊に、「えっこれが聖徳太子?法隆寺カンカン」との記事が掲載。当時連載中だった山岸凉子作の少女漫画『日出処の天子』に登場する聖徳太子の同性愛描写を法隆寺関係者が問題視し、抗議を検討しているという内容で、作者と連載誌編集長の反論コメントも掲載されていたが、その全てが毎日新聞社奈良支局の若手記者による創作であり、2月4日に誤りを認める「おわび」記事が掲載された。

実際には記事掲載前日に法隆寺を訪れた記者の側から「このような漫画があるが問題ではないか」という話をもちかけていたが、法隆寺は「そんな漫画は知らないし、読んでみないことには何とも言えない」と態度を保留。しかし、それで話が通じたと思い込んだ記者は取材を断られた作者と編集部のコメントも創作して記事にしていた。

珊瑚落書き報道事件[ソースを編集]

1989年4月20日朝日新聞夕刊に、「沖縄県西表島のサンゴに『K・Y』の落書きがされている」という記事が載った。しかし、その後朝日新聞は5月16日「報道に行き過ぎがあったこと」としお詫び記事を掲載するが、さらに5月20日に至ってようやく捏造であったことを認めた。当事者の本田嘉郎カメラマンは懲戒解雇され、その他関係者も停職・辞任した。

グリコ・森永事件の犯人取調べ捏造事件[ソースを編集]

1989年6月1日毎日新聞にて、グリコ・森永事件の犯人が取調べを受けているという内容のスクープ記事を掲載されたが、その全てが虚偽であることが判明した。それにともない、岩見隆夫編集局長(当時)が引責辞任した。

宮崎勤のアジト捏造事件[ソースを編集]

1989年8月17日読売新聞にて、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の容疑者である宮崎勤の潜伏するアジトを発見したという内容の記事が掲載された。しかし、記事の内容は虚偽であり、しかも記事を担当した記者の名前や処分は発表されなかった。

スティーブン・グラスによる記事捏造[ソースを編集]

スティーブン・グラスは1995年から1998年にかけ『en:The New Republic』などで記事を捏造していた。1998年に発覚し彼は解雇された。後にこの事件は映画化された。

Who are you ?捏造報道[ソースを編集]

2000年5月、当時の首相森喜朗がアメリカ大統領ビル・クリントンに対して出鱈目な英語の挨拶を行ったという報道が、7月末開催の九州・沖縄サミットへの揶揄と併せて、雑誌フライデー、週刊文春により報じられた[15]。なお、週刊朝日はこの話に当初から懐疑的であった[16]。事実は毎日新聞論説委員高畑昭男による創作であり[17]、森はこのデマを批判している[18]

秋篠宮「お言葉」捏造事件[ソースを編集]

2005年4月15日付け産経新聞社会面で、秋篠宮文仁親王が第14回地球環境大賞の授賞式に出席した際、「お言葉」の中で「フジサンケイグループの主催」に言及したとする記事を掲載したが、実際にはそのような事実はなかった(皇族が私企業の活動を讃えたりする事は発言が利用されるのを防ぐ為、控えるべきとされている)。産経は後日誤りを認め、該当部分の撤回を行なった。

新党日本に関する捏造事件[ソースを編集]

2005年8月21日朝日新聞で当時田中康夫長野県知事が新党を結成すると噂されていたことに関し、長野総局記者の取材による記事を掲載したが、田中康夫本人から取材を受けた事実は無いと指摘されたことで、記事の捏造が発覚した。記者は懲戒解雇、朝日新聞は8月30日に謝罪文を発表した。

ニューヨークで発生した著名ラップ歌手銃撃事件に関する報道[ソースを編集]

1994年に起きたこの事件に関する、ロサンゼルス・タイムズの「連邦捜査局から入手した資料」を基にした“マネジャーらが関与”とする特ダネ記事は、ピューリッツァー賞受賞歴もある執筆者の記者による捏造であった事が2008年3月に判明した。同紙は虚報であった事を全面的に認め謝罪・記事を撤回。

毎日デイリーニューズ英語コラム虚偽報道[ソースを編集]

毎日新聞社の英語報道メディアMainichi Daily News(「毎日デイリーニューズ」)で日刊紙時代の1989年10月に連載が始まり、2001年春のWeb サイト移行時にも継承されたコラム「WaiWai」において、日本人についての虚偽にもとづく低俗な内容の記事が掲載・配信された問題。2008年に表面化し、同コラムの閉鎖、担当記者や上司の処分、ウェブサイト配信分に関する社内調査結果の公表などに発展。

京都大学入試問題漏洩報道[ソースを編集]

2011年2月末、京都大学を始めとするいくつかの大学で発生した大学入試問題ネット投稿事件産経新聞は3月2日、電子版と関西版夕刊に“捜査関係者からの情報”として「東京の高校生2人が関与し、京都府警察も特定済み」と報じたが、実際に行なっていたのは仙台市在住の予備校生だった。5日、記事の全面撤回と謝罪公告を掲載。

自衛隊訓練拒否報道[ソースを編集]

2012年7月、陸上自衛隊が東京都内で行なった災害初動対応訓練の際、産経新聞が、“幾つかの区役所で「迷彩服姿を区民に見せるな」と入館を拒否された”と報じた(25日付け朝刊)が、実際には宿泊訓練を「夜間で無人になるから職員が対応出来ない、やるなら駐車場でキャンプを」と言われたのみで、通信訓練は受け容れられていた。“拒否した”と報じられた11区が抗議声明及び虚報に関する申し入れを行い、産経も謝罪[19]

架空の人物による高校球児応援活動[ソースを編集]

茨城新聞は2014年7月27日付紙面で、茨城県内の社会人野球クラブでマネージャーを務めている18歳の女性が白血病と闘病しながら高校球児を応援する活動をおこなっているという内容の記事を掲載したが、その後の取材で、この女性マネージャーが実在せず、中部地方在住の20代女性が創作した架空の人物だったことが10月に判明した。茨城新聞は10月24日付紙面で、訂正・謝罪をおこなった[20][21]

テレビの虚偽報道[ソースを編集]

コメントやテロップによる虚偽報道[ソースを編集]

テレビにおける虚偽報道はいわゆるやらせと密接な関係を持つことが多い。映像・音声(カメラ、マイク、場合によっては照明など)を伴うテレビにおいては新聞、雑誌のような活字メディアより手の込んだ手段、いわゆるやらせ(出演者による演技)を伴う場合が多く、また、出演者が絡まなくとも制作者が介入して「いい絵」を撮るために現場の状況に手を加える場合があり(例:後述の「ムスタン」の流砂の例)、状況が複雑である。

まず新聞や雑誌などと同様な単純な虚偽報道として「虚偽コメント(ナレーション)」「虚偽テロップ」がある。これはいわゆる「やらせ」にはあたらない虚偽報道である。例えば1992年NHKで放映された『NHKスペシャル』「奥ヒマラヤ禁断の王国・ムスタン」[22]の事例では、取材中、少年僧が雨乞いの祈りをするのだが、わずかな量の雨が降ったにもかかわらず、「少年僧の願いもむなしく、雨は一滴も降らなかった」とコメント(ナレーションでの解説)を付けている。これは調査報告書でも虚偽であったとされた。

これとは別に、NHKの「ムスタン調査報告書」では問題が無いとされたが、番組内ではあたかも「ムスタン」が独立王国であるかのようにコメント・編集されていた件もある。実際には「ネパール王国(当時)」の一部であった。これを虚偽コメントとする見方もある。

いわゆる「やらせ」による虚偽報道[ソースを編集]

ジャーナリストばばこういちは「やらせ」を分類し、「単純再現」「悪質再現」「捏造」を挙げている。ばばは「単純再現」は許され、「悪質再現」は許されないとのスタンスを取っているが、「単純再現」と「悪質再現」の線引きは難しい。

「ムスタン」では高山病にかかったスタッフが回復後にディレクターの指示で高山病の演技をしたが、ディレクターはスタッフにもっと大げさに苦しむ演技を要求したという。これは「単純再現」と見る見方もあるかもしれないが、事実の再現にあたっては誇張や歪曲をせず、出来るだけ正確にすべきという観点からすれば「悪質再現」と見ることも出来る。

また、故意に流砂現象を引き起こしたとされる件もあったが、これは厳密に言うとやらせを伴わない再現行為であり、許されるかどうか微妙なところである。

「捏造」を伴うやらせが虚偽報道であることは論を俟たない。「ムスタン」で言えば小学校の理科の授業として「山羊の解剖」を行なったケースがそれである。この小学校では日常的にそのようなことは行なわれていないため、再現行為には当たらず、「捏造」であることが明らかになっている。

映像・音声の編集による虚偽報道[ソースを編集]

テレビでは撮影された映像をそのまま放送するわけではない。撮影してきた映像の中から必要な部分だけ切り取り、他の多くの映像とつないで編集する。例えばインタビューの場合、前提条件の部分をカットし、結論の部分だけ放送するなども行なわれ、発言者の真意が歪曲され、時には反対の意味で報道されることがある。

また、インタビューでなくても、関係のない映像を編集してつなぐことにより視聴者に一定の意味を伝えることができる(モンタージュ)ので、非言語的な虚偽報道も可能である。

インターネットでの虚偽報道[ソースを編集]

また、近年は虚偽の情報でつくられたインターネットニュースも問題視されている。主にネット上で発信、拡散される嘘の記事を指すが、誹謗中傷を目的にした個人の投稿などを含む場合がある。また、個人の投稿をテレビ、新聞等のニュースメディアが真偽確認をせず拡散する例も頻発している。インターネットでの虚偽報道は、SNSで発信、拡散される影響力を持つが、誤報であったとしても謝罪までは到らずうやむやになるケースが多い。

2016年8月25日、サイゾー系ウェブサイトのネットニュースにて、NHK関係者の発言として番組内の捏造を示唆する記事が掲載されたが、実際は取材の事実はなく、関係者の回答は架空のものであった。記事を書いた20代男性は、契約前に取材や記事執筆の経験はなかった。同社では編集長ら3名の社員が、30人程度の外部執筆者の原稿を受け取り、1日10本程度の記事を配信していたが、内容の真偽については確認していなかった。揖斐憲社長は「ネット上の書き込みを丸ごと信用してしまった」と説明し、「記事量とチェック体制のバランスが欠けていた。コストをかけずにPVを稼ぐため、記事本数で賄おうとする無料ネットメディアの構造的問題もある」とネットメディア全体の問題点も指摘した[23]

映画「ノロイ」では、登場する架空のジャーナリスト小林雅文のホームページインターネットアーカイブや小林のファンのブログなどが実際にインターネット上で閲覧できるようになっていた。このケースでは、映画そのものがフィクションであることは容易に想像がつくため、インターネット上でのページ開設も映画のリアリティを増すための演出としてとらえることが出来る。

その他のメディアにおける虚偽報道[ソースを編集]

ドキュメンタリー映画[ソースを編集]

ドキュメンタリー映画ビデオにおいてもテレビと同様に映像と音声の問題を抱えている。例えば初期のドキュメンタリー映画の名作とされるフラハティー監督の『アラン』はアイルランドアラン諸島に生きる人々の過酷な生活を記録したものだが、撮影時より50年も前の島の生活の再現が入っているという[24]。テレビのやらせの原点はドキュメンタリー映画にすでに潜んでいたわけである。

また、レニ・リーフェンシュタール監督のベルリンオリンピックの記録映画『オリンピア』や、市川崑監督の『東京オリンピック』にも再現映像がある。芸術的な映像を追求するために事実性を犠牲にしたわけである[24]。例えば、『オリンピア』での西田修平大江季雄棒高跳の対決(俗に「友情のメダル」と称す)は再現映像である。『東京オリンピック』の場合は(競技自体ではないが)富士山をバックに走る聖火リレーは後日の再現映像であり、また競技の効果音の大半は後付である。

ラジオ[ソースを編集]

ラジオでは最近は虚偽報道が表面化することは必ずしも多くはないが、音声を扱っていることから、単純な虚偽コメントだけでなく、出演者を巻き込んで演技させるいわゆる「やらせ」による虚偽報道が行なわれている可能性を指摘する者もいる。音声は映像よりはるかに加工しやすく、編集した跡が映像と違って分からないという特性もある。また擬音を用いることもできる。映像の拘束を受けずに細かい編集も簡単なので、編集による虚偽報道は容易である。

エイプリルフール報道[ソースを編集]

イギリスでは毎年4月1日には新聞各社からテレビのニュース番組で虚偽であるがユーモアに満ちたエイプリルフールのニュース(飛行可能の新種のペンギンをアラスカで発見、ダーウィンもびっくり、等)を各マスコミがこぞって報じるのが慣例になっている。ところが英国放送協会BBCは、かつて朝夕に日本向けに短波ラジオ日本語放送を行っており、日本にも毎年4月1日にはエイプリルフールのニュースが放送されていた。1980年に「ビッグ・ベンの時計がデジタル表示化され、針が不要になったので聴取者のみなさんにプレゼントします」と放送したところ、真に受けた日本の聴取者から問い合わせが相次いだ。故意ではあるが悪意のないユーモアに基づいた報道により、視聴者が騙されることになった。ちなみに「ビッグ・ベンのデジタル時計化」は、2008年にも英デイリー・エクスプレス紙がエイプリルフール・ニュースとして掲載した。

テレビのエイプリルフールのジョーク番組としては「第三の選択(Alternative 3)」(製作英・アングリアTV)が、現在に至るまで影響を与えている。詳細はアポロ計画陰謀論の項を参照。

虚偽報道の背景[ソースを編集]

虚偽報道が後を絶たないことに様々な理由が挙げられる。

取材者や編集者の目論み・思想と事実・現実との差[ソースを編集]

根本的な理由としては、記者・ディレクターや取材チームが取材を開始する以前に、記事に対する評価の期待値を計算し、自分なりの見通しや願望を立てていることがある。特にドキュメンタリー番組・映画などでは撮影以前に企画者がシナリオを作成している事が当たり前である。取材・撮影の進展によって予想外の事態が発生したり、思わぬ事実、さらには自分の理想・思想と相反する実態が判明することも、当然多々起き得るものである。取材者・企画者がそれを受け入れて、自分で組み上げた見通しやシナリオを、取材した事実に沿って修正する事ができるならば虚偽にはならない。だが、当初のままで押し進め、映像やコメントを自らの意図に沿う形に編集したり、取材対象者に自身の発言ではなく取材陣の求める内容の発言をさせるなどして、事実を歪めれば虚偽報道に陥る。

処分の差[ソースを編集]

また、報道機関により、虚偽報道に関与した社員に対する処分にはかなりの差がみられる。解雇という厳罰で臨む社もあれば、口頭での「厳重注意」処分程度で済ませる社もあり、その企業体質も強く関連すると見られる。

組織ぐるみの虚偽報道・国家レベルの虚偽報道[ソースを編集]

伊藤律会見報道、「ジミーの世界」報道、皇族スピーチ報道などはいずれも組織内の個人が功名心などに駆られて行なった虚偽報道であり、組織全体からすれば一種の誤報と見られなくもない。

一方で記者個人のみに一切の責任があるとし、校正を行うべき編集者や責任者たるメディア全体の反省がなされないため、体質改善が出来ずに虚偽報道が続くとの批判がある。逆に徹底した原因究明と明確な謝罪を行ったワシントン・ポストはむしろ評判をあげた。

有事においては、国家レベルで国益追求や政府高官のメンツという功利主義のもとで大規模な虚偽報道がなされる例もある。大日本帝国大東亜戦争中における大本営発表や、敗戦後の占領下でのGHQによる言論統制下に於ける報道ではあえて事実を改変した報道が行われた。また中国北朝鮮や軍政下のミャンマー中東諸国などの独裁国家のメディア、自由主義国であってもイラク戦争におけるアメリカ合衆国の対外発表のように、現在でも例がある。

脚注[ソースを編集]

  1. ^ コトバンク 誤報と虚報
  2. ^ ミドルトン, ジョン (1996年12月25日). “虚報被害者救済法の日本法的アプローチとコモンロー的アプローチ”. 一橋大学. 2014年9月18日閲覧。
  3. ^ Did Social Media Ruin Election 2016? - ナショナル・パブリック・ラジオ
  4. ^ As fake news takes over Facebook feeds, many are taking satire as fact - The Guardian
  5. ^ Who’s to blame for fake news and what can be done about it? - USC News(南カリフォルニア大学)
  6. ^ 米大統領選:ファクト・チェック 報道で話題、権力監視に有効か - 毎日新聞
  7. ^ フェイクニュースは戦争を起こす?! - ニューズウィーク日本版
  8. ^ Pizzagate: What to Know About the Conspiracy Theory - Time.com
  9. ^ あすへのとびら 「ポスト真実」の時代 メディアへの重い問い - 信濃毎日新聞
  10. ^ 「フェイクニュース問題」を巡りFacebookとファクトチェック機関が団結 - Wired
  11. ^ トランプ政権の「事実」と「代替的事実」 - WSJ
  12. ^ 事件の原因となった記事の筆者「八戸順叔」の読み方は不明である。詳しくは八戸事件参照
  13. ^ * 姜範錫『征韓論政変 明治六年の権力闘争』(1990年サイマル出版会ISBN 978-4377108606)259頁。
  14. ^ 本田靖春「不当逮捕」、講談社、1983年
  15. ^ 「蔵出し特集 嘘みたいな本当の話 サミットで首脳夫人にも嫌われた森喜朗首相の英会話」『週刊文春』2000年8月5日
  16. ^ 中村真理子「森首相、クリントン大統領に「フー・アー・ユー」失言の真偽」『週刊朝日』2000年8月11日
  17. ^ 「ブッシュ再選と今後の日米関係」『第141回琉球フォーラム』琉球新報社 2004年8月11日
    この講演にて高畑は創作である旨を認めた。
  18. ^ 「マスコミとの387日戦争」『新潮45』2001年6月
  19. ^ 7月23日産経新聞の自衛隊訓練の記事について 東京都中央区
  20. ^ “本紙7月報道、ヒマワリで球児応援企画 闘病の女性実在せず”. 茨城新聞. (2014年10月24日). オリジナル2014年10月24日時点によるアーカイブ。. http://archive.fo/nsGNZ#selection-189.0-189.28 2017年8月14日閲覧。 
  21. ^ “「記事の人物実在せず」 茨城新聞がおわび”. NHKニュース (日本放送協会). (204-10-24). オリジナル2014年10月24日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141024111148/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141024/k10015678301000.html 2017年8月14日閲覧。 
  22. ^ 1992年9月30日「第1回 幻の王城に入る」10月1日「第2回 極限の大地に祈る」
  23. ^ “ネットメディア誤報 影響力自覚した取材とチェック態勢を”. 毎日新聞. (2016年9月19日). https://mainichi.jp/articles/20160919/ddm/004/040/006000c 
  24. ^ a b 今野勉『テレビの嘘を見破る』

参考文献[ソースを編集]

  • 後藤文康『誤報 ―新聞報道の死角―』(岩波新書、1996年) ISBN 4004304466 著者は新聞協会審査委員
  • 藤田博司『アメリカのジャーナリズム』(岩波新書、1991年) ISBN 4004301831 著者は元共同通信記者、現在早稲田大学客員教授
  • 今野 勉『テレビの嘘を見破る』(新潮新書、2004年) ISBN 4106100886 著者はテレビマンユニオン取締役、武蔵野美術大学教授
  • 大塚将司『新聞の時代錯誤 ―朽ちる第四権力―』(東洋経済新報社、2007年) ISBN 9784492222775 著者は元日本経済新聞記者(ベンチャー市場部長)。社内の不正経理問題を告発し懲戒解雇されるも裁判の結果、和解復職。

関連項目[ソースを編集]