山中峯太郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

山中 峯太郎(やまなか みねたろう、1885年明治18年)12月15日 - 1966年昭和41年)4月28日)は、日本陸軍軍人小説家翻訳家陸軍士官学校卒業、最終階級は陸軍中尉

略歴[編集]

大阪の旧彦根藩士・呉服商馬淵浅太郎の次男として生まれる。2歳の頃、陸軍一等軍医山中恒斎(戦国武将山中幸盛の末裔を称する)の養子となる。陸軍士官学校では阿南惟幾と同期(18期)。在学中に菊池幽芳の薦めもあって大阪毎日新聞に小説を発表する。またキリスト教伊藤証信無我苑など宗教的に彷徨する。1910年(明治43年)陸軍大学校入学。1913年(大正2年)、辛亥革命後の袁世凱の専制に反対する第二革命に参加し、山中未成の筆名で東京朝日新聞に記事を送稿。陸大は退校となり、1914年依願免官後、東京朝日新聞社入社。

その後も第三革命にも関与するが、一方、「中央公論」「東方時論」「新小説」などに評論や読み物、小説を発表。1917年淡路丸偽電事件の首謀者として逮捕され東京朝日新聞を退社、下獄。1919年出獄後、自らの宗教的告白『我れ爾を救ふ』を出版。一燈園西田天香と交流する。この頃から「婦人倶楽部」「主婦之友」などの婦人雑誌に家庭小説や宗教小説を執筆するようになる。さらに倶楽部雑誌、少年少女雑誌でも活躍するようになり、講談社の雑誌が主舞台となる。1927年(昭和2年)から「少年倶楽部」に登場、1930年の『敵中横断三百里』で人気を博す(戦後に監督森一生脚本黒澤明により「日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里」として映画化)。また『亜細亜の曙』『大東の鉄人』などの本郷義昭シリーズも広く知られる。

戦後は公職追放となり[1]、『実録・アジアの曙』など自伝的回想を発表している。また、海外のエンタテインメント作品をジュニア向けに翻案した作品を発表。なかでもポプラ社から1954年より世界名作探偵文庫の一部として刊行され、1956年よりは名探偵シャーロック全集(全20巻)として刊行されたシャーロック・ホームズものの翻案は、題名や設定を大幅に変更した怪作として知られている。

山中未成、大窪逸人、石上欣哉、三条信子など、ペンネームも用いた。

主な著作[編集]

以下で『→』が挟まるのは、雑誌掲載後に単行本化された作品で、『→』の左が掲載雑誌、右が単行本の出版社である。

  • 『我れ爾を救ふ』全6冊、覚醒社書店(1920.11 - 1922.3)
  • 『自舒伝 否』、覚醒社書店(1921.10)
  • 『敵中横断三百里』、少年倶楽部(1930.4 - 9) → 大日本雄弁会講談社(1931.3)
  • 『亜細亜の曙』、少年倶楽部(1931.1 - 1932.11) → 大日本雄弁会講談社(1932.9)
  • 『大東の鉄人』、少年倶楽部(1932.8 - 1933.12) → 大日本雄弁会講談社(1934.6)
  • 『万国の王城』、少女倶楽部(1931.6 - 1932.12) → 大日本雄弁会講談社(1933.3)
  • 『見えない飛行機』、幼年倶楽部(1935.4 - 1936.3) → 大日本雄弁会講談社(1936.3)
  • 『世界無敵弾』、幼年倶楽部(1936.4 - 1937.7) → 大日本雄弁会講談社(1937.6)
  • 『覚(ボダイ)に生きる』、二見書房(1941.11)
  • 『決戦小説・神兵奇兵』、機械化 (雑誌)(1943.11)
  • 『実録・アジアの曙』、文藝春秋(1962.2 - 10)→ 文藝春秋新社 (1962.10) 
  • 『実録・アジアの曙 第三革命の真相』、文藝春秋新社(1963.11)

「名探偵ホームズ全集」(全20巻)ポプラ社。1956年~1957年。各冊B6型。 (このシリーズは内容の順番と巻数表示が殆ど合致していないと云われている。<>内は内容による順序。) (「長編」と記載してあるもの以外は、短編集) 

  1. <5>スパイ王者(黄色い顔、謎の自転車、スパイ王者) 1956年3月10日初版
  2. <8>火の地獄船(火の地獄船、奇人先生の最後、床下に秘密機械)1956年3月10日初版
  3. <13>獅子の爪 (試験前の問題、写真と煙、獅子の爪、断崖の最期)1956年3月25日初版
  4. <9>鍵と地下鉄 (歯の男とギリシャ人、鍵と地下鉄、二人強盗ホームズとワトソン)1956年3月31日初版
  5. <1>深夜の謎(長編。原題「緋色の研究」)1956年4月20日初版
  6. <14>踊る人形(虎狩りモーラン、耳の小包、踊る人形)1956年4月25日初版
  7. <3>怪盗の宝(長編。原題「四つの署名」)1956年4月25日初版
  8. <4>まだらの紐 (六つのナポレオン、口のまがった男、まだらの紐)1956年5月30日初版
  9. <2>恐怖の谷(長編)1956年7月5日初版
  10. <11>王冠の謎 (王冠の謎、サンペドロの虎、無かった指紋)1956年5月25日初版
  11. <15>悪魔の足 (悪魔の足、死ぬ前の名探偵、美しい自転車乗り、アンバリ老人の金庫室)1956年6月25日初版
  12. <10>夜光怪獣(長編。原題「バスカヴィル家の犬」)
  13. <6>銀星号事件 (銀星号事件、怪女の鼻目がね、魔術師ホームズ)
  14. <7>謎屋敷の怪 (青い紅玉、黒ジャック団、謎屋敷の怪)1956年6月20日初版
  15. <12>閃光暗号 (閃光暗号、銀行王の謎、トンネルの怪盗) 
  16. <16>黒蛇紳士 (一体二面の謎、怪スパイの巣、猿の秘薬、黒蛇紳士、パイ君は正直だ)1956年8月5日初版
  17. <17>謎の手品師 (技師の親指、花嫁の奇運、怪談秘帳、謎の手品師)1956年8月30日初版
  18. <18>土人の毒矢 (金山王夫人、土人の毒矢、悲しみの選手、一人二体の芸当)1956年10月1日初版
  19. <19>消えた蝋面 (消えた蝋面、バカな毒婦、博士の左耳、犯人と握手して)1956年12月10日初版
  20. <20>黒い魔船 (黒い魔船、疑問の「十二時十五分」、オレンジの種五つ、ライオンのたてがみ)1957年3月10日初版

全集の前身は「世界名作探偵文庫」(1954年~。各冊B6型)であり(内容による順序<1>「深夜の謎」~<12>「閃光暗号」が収録されていた)、この「世界名作探偵文庫」の中でホームズものの売行きが突出して良いので、「名探偵ホームズ全集」が刊行される事になったが、「世界名作探偵文庫」版の在庫があったために「世界名作探偵文庫」版が品切になった巻や「世界名作探偵文庫」版に未収の巻で原稿ができあがった巻から刊行していったために内容の順序と巻数表示が一致していないという。また、度々装丁が変更され表紙画も途中で変更されているのは価格変更した際に古い価格の本と間違えないためだとされているが(北原尚彦『こどもの古本』ちくま文庫。S.36による)、同一価格で装幀が異なるものも発見されているので他の理由も存在すると思われる。

 ポプラ社文庫「名探偵ホームズ」(全10冊)ポプラ社。各冊1976年12月。新書サイズ(番号は文庫の整理番号。「長編」と記載してあるもの以外は、短編集)

  • 21.深夜の謎「長篇」
  • 22.怪盗の宝「長篇」
  • 23.スパイ王者(黄色い顔、謎の自転車、スパイ王者)
  • 24.火の地獄船(火の地獄船、奇人先生の最後、断崖の最期) *上掲の同題書と収録短編が異なる。
  • 25.踊る人形(虎狩りモーラン、耳の小包、踊る人形)
  • 26.鍵と地下鉄(歯の男とギリシャ人、鍵と地下鉄、二人強盗ホームズとワトソン)
  • 27.夜光怪獣「長篇」
  • 28.銀星号事件 (銀星号事件、怪女の鼻目がね、魔術師ホームズ)
  • 29.謎の手品師(花嫁の奇運、トンネルの怪盗、謎の手品師) *上掲の同題書と収録短編が異なる。
  • 30.恐怖の谷「長篇」
  • 上掲の全集のものと文章が異なる部分がある。また、山中峯太郎の序文はすべて省略され巻末に中島河太郎氏の解説が付されている。

「名探偵ホームズ全集」(全3巻)作品社。2017年。各冊A5型。 (上記全集版を内容の順番に合わせて合冊復刻(すべて新組版)したもの。挿絵や表紙画は省略されている。元の各巻分毎に平山雄一氏が原典及び山中峯太郎合が参照したと思われる延原謙訳「シャーロックしホームズ全集」(全13巻、月曜書房)などと比較し大きな相違などを注として付している

  1. 深夜の謎/恐怖の谷/怪盗の宝/まだらの紐((六つのナポレオン、口のまがった男、まだらの紐)/スパイ王者(黄色い顔、謎の自転車、スパイ王者)/銀星号事件 (銀星号事件、怪女の鼻目がね、魔術師ホームズ)/謎屋敷の怪 (青い紅玉、黒ジャック団、謎屋敷の怪) 2017年1月30日初版
  2. 火の地獄船(火の地獄船、奇人先生の最後、床下に秘密機械)/鍵と地下鉄 (歯の男とギリシャ人、鍵と地下鉄、二人強盗ホームズとワトソン)/夜光怪獣/王冠の謎 (王冠の謎、サンペドロの虎、無かった指紋)/閃光暗号 (閃光暗号、銀行王の謎、トンネルの怪盗)/獅子の爪 (試験前の問題、写真と煙、獅子の爪、断崖の最期)/踊る人形(虎狩りモーラン、耳の小包、踊る人形) 2017年4月**日初版予定
  3. 悪魔の足 (悪魔の足、死ぬ前の名探偵、美しい自転車乗り、アンバリ老人の金庫室)/黒蛇紳士 (一体二面の謎、怪スパイの巣、猿の秘薬、黒蛇紳士、パイ君は正直だ)/謎の手品師 (技師の親指、花嫁の奇運、怪談秘帳、謎の手品師)/土人の毒矢 (金山王夫人、土人の毒矢、悲しみの選手、一人二体の芸当)/消えた蝋面 (消えた蝋面、バカな毒婦、博士の左耳、犯人と握手して)/黒い魔船 (黒い魔船、疑問の「十二時十五分」、オレンジの種五つ、ライオンのたてがみ)/解説〔平山雄一〕 2017年7月**日初版予定

「ポー推理小説文庫」ポプラ社。1962年(全5巻、既刊3巻で中絶)

  1. モルグ街の怪声 1962年3月  *モルグ街の殺人
  2. 盗まれた秘密書 1962年3月  *盗まれた手紙
  3. 黒猫 1962年5月
  4. セーヌ川の怪事件 続刊予定(不刊)  *マリー・ロージェの迷宮事件
  5. 黄金虫 続刊(不刊)

脚注[編集]

  1. ^ 総理庁官房監査課編 『公職追放に関する覚書該当者名簿』 日比谷政経会、1949年692頁。NDLJP:1276156 

関連項目[編集]

  • 森川久美:『南京路に花吹雪』などの著作で本郷義昭やその中国人名・黄子満の名前を使った(ただしこちらでは「本郷義明」)。
  • 荒巻義雄:『紺碧の艦隊』・『旭日の艦隊』シリーズにおいて本郷義昭を登場させたり登場兵器のモチーフに取り上げている。
  • 睦月影郎:ならやたかし名義で発表した『ケンペーくん』において主人公・南部十四郎憲兵大尉の上官および武道の師匠として本郷義昭を登場させた。
  • シルバー假面』:リメイク作品の主人公として本郷義昭が登場。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]