コンテンツにスキップ

玄界灘

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
玄界灘
勝島と筑前大島
玄界灘の位置(日本内)
玄界灘
玄界灘
玄界灘の位置(東シナ海内)
玄界灘
玄界灘
玄界灘の位置(九州内)
玄界灘
玄界灘
玄界灘(およその位置)
座標 北緯34度0分 東経130度0分 / 北緯34.000度 東経130.000度 / 34.000; 130.000座標: 北緯34度0分 東経130度0分 / 北緯34.000度 東経130.000度 / 34.000; 130.000
上位水域 日本海 / 東シナ海
海洋 太平洋
国 日本の旗 日本
主な沿岸自治体 福岡、宗像、糸島、古賀、唐津など
テンプレートを表示

玄界灘(げんかいなだ)は、九州の北西部に広がる海域である。大陸棚が広がり、対馬海流が流れて世界有数の漁場として知られる。

名称と表記

[編集]

「灘」は、波が高く潮流が速いなどの理由で航行が困難な海域を指す語である。「玄界」の由来については諸説があり、主要な地名辞典のうちには由来に触れていないものも少なくない[1]。

『日本歴史地名大系』および『角川日本地名大辞典』は、この海域名が博多湾の入口にある玄界島(現・福岡市)に由来するとみられるとする[2][3]。江戸時代の地誌『筑前国続風土記』には「玄界島もと月海島と云へり後改めて玄界となす」とあり、島名がもと「月海島」であったものを改めたとされる[2][4]。

一方、朝倉書店『日本地名大事典』は「玄海」を「玄界灘」の省略名としたうえで、これが「玄(くろ)の海」に由来すると考えられるとし、それゆえ「海」の字を用いる場合には「灘」を付けないとする[1]。「玄」を「暗い・黒い」の意と解して「玄海」を「くろい海」とする説明は、佐賀県東松浦郡玄海町による町名の由来の解説にもみられる[5]。これに対し橋詰信行は、「玄」は方位としての北(玄武)を意味するとして、「玄界灘」は「北との境界をなす海域」の意であると説明している[1]。

表記について、小学館『精選版 日本国語大辞典』は見出しを「玄界灘・玄海灘」と併記している[6]。かつては「玄界洋(げんかいよう)」とも表記され[7]、学校や団体の名称に使われる例がある[8]。

地理

[編集]

範囲

[編集]

最も一般的な範囲として福岡県宗像市の鐘ノ岬から志賀島、糸島半島、唐津湾を経て佐賀県唐津市の東松浦半島までの九州の海岸から、沖合は大島、地島、沖ノ島、長崎県の壱岐、対馬までの海域を指すとされる。海上保安庁が発行する日本の水路図誌(海図)でも上記範囲で掲載されている[9]。東方は響灘に接し、西方は東シナ海(対馬海峡東水道・壱岐水道)、北方は日本海に連なる[注 1]。

一方で、東端を遠賀川河口まで、西端を平戸海峡(平戸瀬戸)までとすることもある[11][12][13]。

なお、山口県沖日本海の見島 - 沖ノ島 - 壱岐島北西端 - 五島列島沖の白瀬の間に基線が設定されており[14]、これより南東側は海洋法上日本の内水(内海)とみなされ、玄界灘のほとんどの範囲は日本の内海または領海となっている。

地形・気候

[編集]

南側は全て水深200m以上の大陸棚である。南西から北東に向かって対馬海流が流れている。新生代になってから日本列島の原型が形成された頃は日本海は巨大な湖で、その当時は朝鮮半島と陸続きであった。そして、第四紀の頃に玄界灘にあたる海域が形成されたとされる。この玄界灘には未知なる海底断層が存在しているとみられて福岡市の警固断層に関係する可能性が指摘されており、学術機関で研究や調査がなされている。

九州・山口沿岸部の気候は温暖であるが、冬は日本海側気候の特徴が現れる。北西の季節風と対馬海流の影響で雲が発生するため曇天の日が多く、沿岸部に雨・雪を降らせることもある。

生態系

[編集]

対馬海流が流れ、世界有数の漁場として知られるなど海洋生物が豊富に生息している。 鐘崎港、博多漁港、唐津港、呼子港などにおいては多くの魚介類が水揚げされる。魚類の他にも、ウミガメ[15]や海鳥などの回遊や渡りの経路にもなっており、江戸時代や明治時代までは沿岸に来遊する多数のヒゲクジラ類を対象とした大規模な古式捕鯨も行われていた[16][17]。

主な島

[編集]

沿岸の自治体

[編集]

主な港

[編集]

歴史

[編集]

「げんかい(玄界・玄海)」の使用例

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ↑ ただし国際水路機関の定義では、日本海の範囲は、玄界灘より西の五島列島から済州島・韓国南部にいたる海域までとされている[10]。

出典

[編集]
  1. 1 2 3 “「玄界灘」という地名について、「界」は「海」とも書くが、その使い分けを知りたい。「玄」は「黒い、暗い」等の意味の他に「北」という意味もあるのか”. レファレンス協同データベース. 国立国会図書館 (2018年11月29日). 2026年9月12日閲覧。
  2. 1 2 “玄界”. コトバンク. 平凡社『日本歴史地名大系』. 2026年9月12日閲覧。 “博多湾入口にある玄界島(現福岡市)から名付けられたとみられる。この島は「筑前続風土記」に「玄界島もと月海島と云へり後改めて玄界となす」とみえ”
  3. ↑ 竹内理三 編「げんかいなだ 玄界灘」『角川日本地名大辞典』 41 佐賀県、角川書店、1991年9月1日、283頁。
  4. ↑ 竹内理三 編「げんかいなだ 玄界灘」『角川日本地名大辞典』 40 福岡県、角川書店、1991年9月1日、535頁。
  5. ↑ “玄海町地名のおこり”. 玄海町 (2025年8月26日). 2026年9月12日閲覧。 “「玄」は「暗い・黒い」という意味があります。「海」は玄界灘を省略したものです。つまり、「玄海」は「くろい海」という意味です。”
  6. ↑ “玄界灘”. コトバンク. 小学館『精選版 日本国語大辞典』. 2026年9月12日閲覧。
  7. ↑ 吉田東伍『増補 大日本地名辞書』 第4巻 西国、冨山房、1979年、211頁。
  8. ↑ 福岡県立玄洋高等学校、玄洋中学校、玄洋社など
  9. ↑ 「海の相談室 FAQ 灘ってなに?」、海上保安庁 海洋情報部、2017年9月10日閲覧
  10. ↑ “「日本海の範囲」国際水路機関による定義”. 海上保安庁 第九管区海上保安本部. 2012年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年9月7日閲覧。
  11. ↑ 玄海町町誌編纂委員会編『玄海町誌』玄海町、1979年
  12. ↑ 角川日本地名大辞典編纂委員会編 『角川日本地名大辞典 35 山口県』 角川書店、1988年、ISBN 4-04-001350-6
  13. ↑ 渡辺光他編 『日本地名大事典 1 九州』 朝倉書店、1967年
  14. ↑ 「管轄海域情報~日本の領海~ 直線基線 九区域 九州:都井岬~鳥屋鼻」、海上保安庁 海洋情報部、2017年9月10日閲覧
  15. ↑ 「ウミガメ保護ハンドブック」『環境省』、日本ウミガメ協議会, 環境省自然環境局、2006年3月、5頁、2025年3月3日閲覧。
  16. ↑ 『西海鯨鯢記』 13巻〈平戸市の文化財〉、1980年3月。 NCID BN15724724。
  17. ↑ “テーマ展「玄界灘でクジラがとれた日ーよみがえる記憶とにぎわいー」”. 佐賀ミュージアムズ. 佐賀県 (2021年). 2025年3月3日閲覧。
  18. ↑ 日置英剛『年表 太平洋戦争全史』国書刊行会、2005年10月31日、783頁。ISBN 978-4-336-04719-9。
  19. ↑ 日本の自然保護地域■玄海国定公園 (環境省)