帰宅困難者

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東日本大震災における帰宅困難者(2011年3月11日、新宿駅

帰宅困難者(きたくこんなんしゃ)とは、勤務先や外出先等に於いて地震などの自然災害に遭遇し、自宅への帰還が困難になった者を指す用語。帰宅難民(きたくなんみん)ともいう。特に首都直下地震[1]東海地震[2]の発生により、大量の帰宅困難者が出現することが懸念されている。

概要[編集]

災害発生により交通機関が途絶する事態が生じた際に、自宅が余りにも遠距離に在るということで帰宅を諦めた「帰宅断念者」と、何とか帰れると判断して徒歩で帰宅しようとする「遠距離徒歩帰宅者」の両者を併せたものである。

内閣府中央防災会議では、統計上のおおまかな定義として、帰宅距離10キロ以内は全員「帰宅可能」、10キロを超えると「帰宅困難者」が現れ、20キロまで1キロごとに10%ずつ増加、20キロ以上は全員「帰宅困難」としている。

首都直下地震帰宅困難者等対策協議会(中央防災会議設置)策定のガイドラインでは、帰宅困難者の徒歩等による斉帰宅が起こると応急活動に支障をきたすため、災害時には一斉帰宅抑制対策を行い帰宅しないよう呼びかける、企業は三日分の備蓄を行うこととされている[3]

大量の帰宅困難者が発生した例[編集]

2011年の東日本大震災[編集]

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の際には、鉄道バスなど多くの交通機関がストップし、首都圏を中心に約10万人[4]の帰宅困難者が続出する事態となった。

同年6月20日東日本旅客鉄道(JR東日本)社長の清野智は、震災発生当日に首都圏のJR線各駅構内から利用客などを外に締め出し、シャッターを閉めて閉鎖した対応について、東京都知事石原慎太郎に直接面会した上で謝罪した[4]

同年9月1日、東京都庁と警視庁は、帰宅困難者対策の一環として、災害時に緊急車両以外の車両が都内の幹線道路を通行することを規制する訓練を、都内97箇所で実施した。2013年3月8日にも、警視庁は2700名の警察官を動員し、同様の訓練を都内550箇所で実施した。

東京都では、震度6弱以上の震災が都内で発生した場合は、警視庁によって車両の全面通行止等の強力な交通規制が行われることが条例で定められている。緊急車両の円滑な運行のため、帰宅困難者等が運転する一般車両は、警視庁が行う規制に従う義務を負う。千葉県警察、埼玉県警察においても、震災時には一般車両に対する強力な交通規制を実施する方針である。ちなみに、東日本大震災では、都内の震度は最大でも5強であったため、首都高速道路を除いては交通規制が実施されず、深刻な渋滞が発生した。

2011年台風15号[編集]

2011年9月21日午後2時ごろに静岡県浜松市付近に上陸した台風15号は、関東地方への接近が帰宅ラッシュ時と重なる時間帯であった為、首都圏では公共交通機関都営地下鉄大江戸線を除いて軒並み運休、東日本大震災以来の多くの帰宅困難者が発生した。台風の過ぎ去った21時ごろから順次動き出したが徐行運転での運転再開となり、また駅や会社などで待機していた利用客らが一斉に駅に押し寄せた為ホームへの入場制限なども行われ、正常化には終電までかかった。

2013年12月31日 - 1月1日の上海市[編集]

2013年12月31日上海市の主要交通である上海軌道交通は、全線の利用者数が8,898,000人に達し、史上最高記録を更新した[5]。しかし、地下鉄が午前0時前で通常通りに終電してしまったため、帰宅の足がなくなった帰宅困難者が数十万人に上った[6]

公共バスは深夜バスを増発し、黄浦区の観光名所、外灘からは65本の夜間臨時バスを出したものの、外灘のライトアップとプロジェクションマッピングによる観衆は30万人にも及び、対応しきれなかった。イベント終了後には多くの人が中山一路や周辺道路にあふれ出し、交通渋滞を引き起こした。

2014年2月8日の大雪[編集]

南岸低気圧により東京では45年ぶりの大雪(平成26年豪雪)となり交通機関が混乱した。千葉市役所では帰宅困難者のために役所へ宿泊者を受け入れた。千葉県庁でも宿泊者を受け入れた。

帰宅困難者に対する支援[編集]

帰宅支援ステーション[編集]

徒歩による帰宅者に対する支援の一環として、島しょを除く全都立学校及び東京武道館を「帰宅支援ステーション」として位置づけています。 帰宅支援ステーションでは、水道水トイレ・テレビ及びラジオからの災害情報の提供を行うこととしています。上記以外にもコンビニエンスストアガソリンスタンドファミリーレストラン等も同じ役割を担います[7]

その他[編集]

2011年5月25日NTTドコモは、携帯電話の位置情報などを活用して、東日本大震災後の東京都内の人々の動きのデータ解析に成功したと発表した。今後研究を進めることにより、徒歩帰宅者への食料援助をどこに配置すべきかなど、防災計画への運用も可能になるという[8]

2011年12月1日新語・流行語大賞で帰宅難民がトップテンに選出された。

脚注[編集]

  1. ^ 内閣府・中央防災会議「首都直下地震対策に係る被害想定結果について」によると、首都圏直下地震による帰宅困難者は650万人にのぼると推計されている。
  2. ^ 帰宅困難者1万5000人 東海地震の警戒宣言発令時(共同通信 2003年3月21日)では、名古屋市の「名古屋駅地区滞留者等対策検討委員会」が東海地震によってJR名古屋駅周辺で約1万5000人の帰宅困難者が生じるとの試算を発表している。
  3. ^ 事業所における帰宅困難者対策ガイドライン (Report). 首都直下地震帰宅困難者等対策協議会. (2012-09-10). http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/taisaku_syuto/kitaku/kitaku_kyougi_top.html. }
  4. ^ a b 「申し訳ない」に「本当に」…JR東社長が石原知事に陳謝 震災当日の帰宅困難者問題 - 産経新聞 2011年6月21日
  5. ^ 2013年大晦日の上海地下鉄利用者 史上最高889万8000人に - エクスプロア上海 2014年1月2日
  6. ^ 上海大晦日数十万人が帰宅困難に…徒歩3時間、始発待ちも
  7. ^ 帰宅困難者支援 東京都 2017年4月7日
  8. ^ ケータイ情報で帰宅難民の動き把握…NTTドコモ - 読売新聞 2011年5月26日

参考資料[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]