交通静穏化

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汐見台ニュータウンのハンプとフォルト

交通静穏化(こうつうせいおんか)またはトラフィック・カーミング: traffic calming)とは、住環境保全や交通安全のために自動車交通を抑制する取り組みのことである[1]。特に住宅密集地の生活道路を利用する近隣住民の交通安全を確保するために行われる。

オランダのボンエルフの訳語としてこの語が用いられることもある。

概要[編集]

地域間の移動を目的として大量の交通に対応した構造を持つ幹線道路とは異なり、住宅地の中を通る生活道路は幅員が狭く、自動車と歩行者の交通が錯綜しやすい。抜け道などの目的で自動車が高速かつ大量に生活道路を通過する場合、近隣住民に交通事故の危険が及ぶこととなり、騒音等による住環境悪化の恐れがある。モータリゼーションの進展と共にこうした問題を解決する必要性は高まり、21世紀に入った現在でも欧米を中心とする各国で継続的に交通静穏化の取り組みが行われている。

取り組み[編集]

交通静穏化への取り組みは、1970年代初めのオランダにおけるボンエルフ: woonerf、「生活の庭」の意)が始まりとされる。

日本では、1980年大阪府大阪市長池町にコミュニティ道路が開通し、宮城県七ヶ浜町では西洋環境開発がボンエルフ建設に取り組んだ汐見台ニュータウンの分譲が開始された。同社は後に京都市西区でも同様の理念で桂坂ニュータウンも建設する。このコミュニティ道路事業は1996年に「コミュニティゾーン」となって取り組みが広げられることとなる。

その後、オランダでは交通信号道路標識をなくす「共有空間(Shared Space)」という考え方が提唱され、欧州連合の援助でドイツのボームテがこのプロジェクトに取り組んで国際的に注目されるなど、交通静穏化の手法は進化し続けている。

日本においても、2003年には国土交通省警察庁が進めるあんしん歩行エリアの指定による整備を進めている。さらに、2011年9月には警察庁が「ゾーン30」の取り組みを開始した[2]

手法[編集]

ハンプ
ハンプの例。ソウル鐘路区嘉会路
イメージバンプの例

歩車分離や自動車の速度抑制を目的とした道路構造の改善が行われる。基本的には、地域の実情に合わせて以下のいずれかを組み合わせて交通静穏化を行う。

  • 狭窄 - 植栽枡(フォルト)やボラードなどを使用して車道の一部を狭くし、速度を低下させる。複数の狭窄でスラロームやクランクなどの蛇行道路にすることもある。
  • 車止め - 道路の一部を遮断することで自動車の通過を防ぎ、抜け道などの目的で地域外の自動車が進入しないようにする。柵やボラードなどを用いる。
  • クルドサック - 住宅が面する道路を袋小路状にし、通過交通の流入を防ぐもの。道路の先端はロータリー状にし、住民や立寄者の便宜を図る。
  • ハンプ - 路面の一部を隆起させ、通過車両の速度を低下させるよう促す。舗装材をそのまま用いるものや、ゴム製のものがある。
  • ロードペイント - 路面標示などを用いて、視覚的に注意を促すもの。錯視を利用したものはイメージハンプとも呼ばれる。

これらを組み合わせた道路を「コミュニティ道路」、また一定の区域でまとめて交通静穏化を行ったものを「コミュニティゾーン」という。

脚注[編集]

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  1. ^ EICネット[環境用語集:「トラフィック・カーミング」]”. EICネット. 2017年7月30日閲覧。
  2. ^ ゾーン30”. コトバンク. 2017年2月16日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]