プロジェクションマッピング
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プロジェクションマッピング(英: projection mapping)とは、プロジェクタ等の映写機器を用いて、立体物にCGなどの映像を投影する技術である。
概要[編集]
従来の映画のような平面スクリーンに映すものとの違いとして、"立体物”に映像を張り合わせる(マッピングする)ことがプロジェクションマッピングの特徴である。そのため、映像は立体を意識して作られている。ゆえに映画のような平面映像をただ建物に当てているものは厳密にはプロジェクションマッピングではない。
呼称[編集]
日本では”プロジェクションマッピング”という呼称が一般的であるが、非常に多い誤用として”プロジェクトマッピング”がある。プロジェクション(投影図)マッピング(張り合わせる)の2つの言葉が合わさってできている言葉である。また欧米ではビデオマッピング、マッピングプロジェクション、3Dプロジェクションマッピング、3Dマッピング、ビジュアルマッピングとも呼ばれており統一されていない。
映写される対象物[編集]
投影される対象は建築物だけでなく、靴、テーブルや椅子、額縁、広場、街そのもの、霧、空、湖、人体、部屋、米、楽器、樹木など、地球上のほぼすべてのものが実質的に投影可能である。
作成ソフトウェア[編集]
投影する映像は、一般的な動画編集ソフト(After EffectsやMotionなど)を使ってあらかじめ現場毎に専用の映像を作成する例と、専用のソフトウェアを使用する例がある。作成方法は図面などのデータから3Dでモデリングをしたり、写真を撮影して補正したりしながらパーツを作るという方法や、実際にプロジェクションをしながら対象のパーツや位置取りを行う方法がある。制作ソフト例
- Catalyst v5/MadMapper/Millumin/Pandorasbox/Resolume Arena/TouchDesigner/VDMX5/VPT (VideoProjectionTool)/WATCHOUT
歴史[編集]
プロジェクションマッピングの歴史は古く、1960年代からあったと言われている。
1969年にはアメリカのアナハイムにあるディズニーランドのホーンテッドマンションで実用化されていた。そして、1970年代のライトショーなどを経ながら、1990年代には研究者やアーティストの表現手法として多く使われていたが、当時はスライド映写装置を用いており、光源の不足もあって現在のように表現できなかった。高輝度のプロジェクターを使うようになり、屋外でもより明るく表現できるようになった2000年代から、「プロジェクションマッピング」や「ビデオマッピング」または「3Dプロジェクションマッピング」などと呼ばれ出し、YouTubeなどで話題を集めるようになった。
日本では、1968年の銀座のディスコ「キラージョーズ」(プロデュースは宮井陸郎、空間設計は早田保博)が商用利用の最初と思われる。この時はコダックのカルーゼル式プロジェクタが使用された。インテリア空間は音に反応し、変化するプロジェクションのスクリーンを兼ねるシルバーテントが使用された。映像演出は宮井陸郎が行った。
プロジェクションマッピングにほぼ類似した概念として、2002 FIFAワールドカップが日本単独で開催することを前提として、開催公約の一環として試合が行われていない会場に、3D立体映像を投影し試合の映像を上映する「バーチャルスタジアム」という試みがなされる予定であったが、大韓民国との共同主催となったため、規模を縮小せざるを得なかった[1]。
海外でプロジェクションマッピングが有名になったきっかけは、2008年の北京オリンピックからといわれている。
日本では2003年から始まったOsaka光のルネサンスの「ウォールタペストリー」や、2006年に京都で行われた「アーキテクチャープロジェクション」などがある。
2009年5月、音楽興業としては日本初となるプロジェクションマッピング演出による公演が、赤坂BLITZにおける睡蓮のflow in her veins 2.5Dである。この模様は月白 flow in her veins 2.5DとしてDVD販売されている。
2010年のライゾマティクスによるPerfume武道館ライブ演出でPerfumeメンバーの動きと同期したマッピングが行われ、最先端の表現技法として紹介されたことから一般層にこの技法が認知され、日本国内の各業界にも衝撃を与えることになった。さらに、2012年9月にはJR東京駅の丸の内駅舎で利用され、大型施設の壁面を用いてプロジェクションマッピングを実施可能なことが日本の一般層にも広く認知されるようになった。
近年
2010年代中盤に入り、オープンソースなソフトウェアフレームワークの整備と、PC、プロジェクタ、無線ネットワークなどの機材が昔に比べ個人でも入手しやすくなり、学校や個人宅における実施例も見られるようになった。
制作の流れ[編集]
一般的なプロジェクションマッピングが制作、投影されるまでの流れをここに記す。
- イベント等のプロジェクトが開始。
- マッピングされる建物や場所などの選定。
- マッピングされる建物や場所の許可を、場合によっては地方自治体に申請。また会場のセキュリティ、機材の確認。
- クリエイターの募集、選定。
- 現地でのマッピングされる“建物の3Dデータ”を作成。
- それを元にクリエイターが映像データを作成。
- 必要な場合、音楽も作成。
- 現地にてテストマッピングをし、映像や音の同期、建物への当て具合など最終調整。
- 投影。
マッピングフェスティバル[編集]
世界各地で長年開催されていたライトインスタレーションフェスティバルに、2010年代以降、プロジェクションマッピングが個人でも作れるようになった事、また巨大で分かりやすいという点から、新しくマッピング作品が加わる機会が増えてきた。あくまでライトフェスティバルの一部としてマッピングが上映されるものから、マッピングオンリーのフェスティバルのイベントも生まれ始めた。また現在欧州で開催されることが多く、そのため夜の長い秋~冬~春にかけての開催が比較的多い。
- Genius Loci(ドイツ)
- Artvision(ロシア)
- imapp(ルーマニア) - 地球上の建築物で2番目に大きな建物「国民の館」に投影される[注 1]。
- Festival of Lights(ドイツ)
- Light Move Festival (ポーランド)
- 1minute Projection Mapping (日本)
- 東京国際プロジェクションマッピングアワード(日本)
- Luminare(ドイツ)
- Sónar Barcelona (スペイン)
- Signal Festival (チェコ)
日本国内での例[編集]

- 東京駅[2]、姫路城[3][4][5][6]、会津若松城[7]、丸亀城[8]、赤穂城[9]、橿原神宮[10]、
- 円融寺[11]、砂の美術館[12]、逗子メディアアートフェスティバル[13]、ドックヤードガーデン[14]、そごう柏店[15]
- 日本大学藝術学部[16]、『天使のくれた奇跡』 - ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのショー(2008年 - )。
- 『ワンス・アポン・ア・タイム』 - 東京ディズニーランドのショー(2014 - 2017年)。シンデレラ城にプロジェクションマッピングで投影している。
- 『Celebrate! Tokyo Disneyland』 - 東京ディズニーランドのショー(2018 - 2019年)。東京ディズニーリゾート35周年限定のプロジェクションマッピング
- 『殺人偏差値70』 - 2014年7月2日に日本テレビ系列で放送されたテレビドラマ。テレビドラマとしては初めてプロジェクションマッピングが用いられた。
- ブレスホテル(神奈川県藤沢市)[17] - 「BREATH THE ILLUSION」(101号室)に常設。映像はNAKED[18]が担当。
- さっぽろ雪まつり(世界で初めて雪像に投影された)
- フェスタin大谷 - 大谷資料館の地下空間(大谷石採掘場跡)に投影[19][20]
- 高野山・金剛峯寺 - 高野山開創1200年記念大法会事業で、2015年(平成27年)5月12日から17日まで、根本大塔を背景にし『南無大師遍照金剛』をテーマとし、プロジェクションマッピングとレーザーによる光の饗宴が行われた[21]。
日本国外での例[編集]
- ギマランイス(ポルトガル)[22]、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂(スペイン)[23]
- Mapping Festival[24]、O-micron[25]、Samsung at Beurs van Berlage[26]、アスタナ・オペラ(カザフスタン)[27]
小型、屋内での事例[編集]
- The Icebook[28]、Chair[29]、Gakubuchi[30]、New Balance[31]、360° 3D Mapping Projection with Rabarama[32]
- PANORAMA FANTASY、DREAMSPHERE GRAND CROSS - 業務用ゲーム機で技術が使用されている例。
- MARUMITSU[33]、ハコビジョン - 玩具として製品化。、アステカ - エレクトロコインジャパンのパチスロ機。パチンコパチスロ業界初のプロジェクションマッピング。
- Barliminal[34] - 六本木レストラン&バー、店内17台のプロジェクターと最大290°のマッピング演出。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 世界一の大きさを誇る人工建築物はアメリカ国防総省である。
出典[編集]
- ^ FIFAワールドカップとVR -バーチャルスタジアム- 世界VR史
- ^ TOKYO HIKARI VISION 東京駅プロジェクションマッピング
- ^ 花あかり「姫路城夜桜会」 3Dプロジェクションマッピング
- ^ 姫路城3Dプロジェクションマッピング
- ^ 【公式動画・本編】【Himeji Castle Mapping】姫路城プロジェクションマッピング【姫路光絵巻 HAKUA -新たなる羽ばたき-】HAKUA
- ^ 世界遺産・姫路城で3Dプロジェクションマッピング
- ^ 鶴ヶ城プロジェクションマッピング - はるか -
- ^ 全国城下町シンポジウムさぬき京極大会
- ^ 第112回赤穂義士祭 忠臣蔵Ukiyoe 2015赤穂義士祭プロジェクションマッピング
- ^ 春の神武祭 プロジェクションマッピング
- ^ 円融寺除夜の鐘プロジェクションマッピング
- ^ 砂の美術館2014【夏】3Dプロジェクションマッピング
- ^ 1minute projection mapping 国際コンペ
- ^ 横浜ランドマークタワー祝20周年!屋外では日本初の「180度体験型プロジェクションマッピング」をレポート!(はまれぽ.com 2013年7月16日)
- ^ Hikarideck Kashiwa 2013
- ^ 日本大学芸術学部『芸術祭2013』 プロジェクションマッピング -
- ^ ブレスホテル公式ウェブサイト
- ^ NAKED
- ^ “フェスタin大谷2017開催 2017年10月21日(土)17:00〜21:00”. 大谷資料館 (2017年9月25日). 2020年10月30日閲覧。
- ^ “うつのみやフェスタin大谷2018”. 日本遺産ポータルサイト. 文化庁. 2020年10月30日閲覧。
- ^ “高野山1200年の光”. 高野山真言宗 総本山金剛峯寺. 2022年7月1日閲覧。
- ^ Guimarães 2012. Opening Show 3D Projection Mapping
- ^ Fuegos del Apóstol 2012. Mapping Catedral de Santiago. Oficial HD
- ^ マッピングフェスティバル(スイス)
- ^ O-micron(AntiVJ)
- ^ Samsung (Amsterdam, the Netherlands)(Nu Former)
- ^ In Astana, 4D multimedia show took place - Новости Казахстана - свежие, актуальные, последние новости об о всем
- ^ The Icebook by Davy and Kristine McGuire
- ^ 「chair 」by Masaru Ozaki
- ^ 額縁を使った作例 by PMAJ
- ^ スニーカーを使った作品
- ^ 人体模型
- ^ まるみつ:オブジェへの投影による作品事例
- ^ Barliminal