消火栓

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使用中の地上式消火栓(カナダオタワ

消火栓しょうかせん)とは、消火活動に必要な水を供給する為の設備である。

消防水利として公設の水道に設けられ、主に消防隊が用いる物と、消防法等により建築物などの消防設備として設置を義務付けられ、主に一般人や自衛消防隊が用いる物の二種がある。

消防水利としての消火栓[編集]

日本[編集]

消火栓本体[編集]

地上式消火栓の構造

道端でよく見かける物である。

消防隊が通常用いる消火栓は消防法上消防水利に分類され、防火水槽ため池河川などと同様に扱われる。公共の場等(個人等の敷地を除く)における消火栓の設置については消防法第20条および水道法第24条に規定され、その場所を管轄する水道事業者が設置と維持管理をしなければならないが、その基準は総務省消防庁告示の「消防水利の基準」に明記され、一基あたり毎分1トンの水を40分以上供給しうる物で、接続部の口径は呼び65mmを要求している。また、吐水口をネジ式か差し込み式(町野式)結合金具とするなど、本体各部の構造については水道法に基づき社団法人日本水道協会 (JWWA) がその規格を定めている。塗色は赤色の鋼製消火栓が多く一般的であるが規定はなく、近年は耐腐食性を考慮したステンレス製消火栓が普及してきている。

同時に開口し得る消火栓の数は水道の規模、水道本管の口径によりかなりの差がある。圧力に関しての規定は無い。消防ポンプを連結して使用する事が前提であるためである。

そのほか設置基準や本体の構造、塗色、有効圧力等について、自治体により条例で付加細目を定めている場合もある。

種別は設置形態により、地盤面下のマンホール内に設けられる地下式消火栓と地上に立管を伸ばした地上式消火栓の2種がある。一般には地下式が多く、積雪、山間地帯では地上式消火栓が多い。ホース結合部の数により、単口、双口、その他の種類がある。圧倒的に単口の物が多いが、水道本管の口径が大きい消火栓には双口の物も用いられる。国内では滅多に見かけないが、65mm以上の結合金具を設け、吸管を用いずに大口径の消防ホースで消防ポンプ自動車へ大量の送水をする事を前提に設計されている物もある。豪雪地帯では雪により埋もれないように、立管部を著しく長くし、積雪期以外でも使用を容易にする為に立管の上と下にホース結合部を持つ物もある。

なお、消火栓を使用した場合の水道料金は水道法第24条の規定により徴収が認められていない。ただし、この規定は「公共の消防用として使用された水の料金」と明示されており、実際の消火活動以外で使用した場合(訓練なども含む)は料金を徴収することが出来、それについて条例で定めている自治体もある。また、消防本部によっては自ら消火に使用した水道料を支払っている本部もあり、東京消防庁の場合、公式ホームページによると地方公営企業法の規定に基づき消火に使用した水道料を都水道局に支払っているとの事。

類似の設備[編集]

防火対象物に義務付けられる、消防用水の一つの方式に採水口と呼ばれるものがある。 消防用水は公設消防隊に水利を提供する為の設備であり、単にプール状の水槽でも法律上は十分なのであるが、都市部では敷地の都合で設備し難い場合が非常に多い。これらの場合地下や離れた場所の水槽等から消防隊に消防用水を供給しうるように設置する。この場合、水槽が地下に設けられる事が非常に多く、その有効な低水面が消防ポンプ車の吸水性能の点から消防法で定める4.5m以下になる場合が殆どであるので、消防用水ポンプを設置し、有圧で採水口に送水するように設置される。

採水口は建築物の外面に設置される場合が多く、連結送水設備の送水口と一緒に設置されるのが一般的である。またその形態、用途から防火栓、ウォールハイドラント、消防用給水栓とも呼称される場合もある。

また、地盤面下4.5mの規定をクリアしている場合でも、消防ポンプ車の部署し難いなどの水利を有効に活用するべく、ポンプ車のサクションホース(吸管)で吸い上げて使用する為の無圧の採水口もあり、こちらは英語圏ではドライハイドラントと呼称される。なお、このドライハイドラント状の設備は特に豪雪地帯に於いて、公設の消防水利でもしばしば設置される。

ホース格納箱[編集]

常設消防機関の到着が遅れる様な場所で、消火栓直結で有効な放水の可能な消火栓にあっては消火栓付近にホース格納箱が設置される場合がある。住民の使う物であるから、設置されている場所ではその使い方を訓練等で知っておく必要がある。但し、消防署や消防団の消防隊が到着した後は、消防法第6章(第24条から第30条の2)の規定に基づき、その指示の元に運用せねばならない。

その他[編集]

消火栓の存在を示す標識の設置は法令上義務付けられていないが、私設などの設置形態から指定水利となった場合は標識の設置が義務付けられる(道路交通法に規定された道路に面した場所に設置されている場合のみ)。自治体によっては条例で標識の設置や地下式消火栓を表す路面上のマークなどを規定している場合もある。→ 詳しくは消防水利の項を参照

道路交通法の規定により、消防水利の周辺には車両を駐車してはならない。消火栓の場合は、消火栓本体から5m以内は駐車禁止に該当する。また、ホース格納箱の側端から5m以内も駐車禁止である。なおいずれの場所も停車は禁止されていないが、火災時に消防活動の妨げとなると消防法第40条の罰則規定により2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される場合がある。

日本国外[編集]

消火栓本体[編集]

消防設備の消火栓[編集]

日本[編集]

これらは、主に自衛消防組織や施設の利用者等による初期消火に利用されるもので、放水性能が限られており、公設消防隊が使用する事は極めて例外的である。

平時より、消火栓設備を設けた建物を利用する者はその使用法を熟知する必要がある。

一般的な消火栓は何れも20分間以上の放水ができる様に設計されている(危険物高圧ガス向けの特殊な物もあるが割愛する)。また、同時に使用し得る消火栓は消防法施行令第11条第3項の2のイ・ロ・ハ各号に規定されているとおり2個程度である。一般的な消火栓は、消防法において簡単な操作で使用できる設計とするよう義務付けられており、個々の設備にも操作法を示した標識の貼付が義務付けられているので、落ち着いて扱えば誰にでも操作しやすいものとなっているので有効活用が望まれる(消火栓に限らず誰もが利用できる設備(消火器、自動火災報知設備の押釦、避難器具など)は簡単な操作と操作法の明示が法による義務である)。

屋内消火栓[編集]

屋内消火栓(一号)

1号と2号の規格がある。

1号は、筒先(ノズル)で毎分130リットル、0.17 - 0.7MPaの放水性能を有する物で、半径25メートルの円で防火対象物をカバーしなければならない。その為、殆どの物は口径40mm、15mのホース2本で構成されている。ノズルの口径は13mm (1/2in) である。

ノズルは開閉機能の無いストレートノズルの場合が多い。また、ホースはゴム引きや樹脂引きの布ホースであり、折れやよれで圧力を損ない易く、扱いはそれなりに熟知する必要がある。特に消火栓近傍の火災であってもホースを全部伸ばさねば放水不能であるし、ノズルでは開閉できないので2人で放水作業をせねばならない(ノズルを開閉機能付きのものに交換するのは容易である)。

2号は、筒先で毎分60リットル、0.25MPaの放水性能を有する物で、半径15mの円で防火対象物をカバーしなければならない。また、ホースは保形ホースといわれる水道ホースの様なもので、口径25mmの物が用いられ、消火栓を開く、ノズルを持ち出す等の動作で自動的にポンプが起動する方式の物である。特に病院等の就寝施設で、一人でも有効に消火活動が行える様に考えられたのがこの消火栓である。但し、放水性能が落ちる為に2号消火栓は倉庫等には設置できない。

ノズルはコック状の開閉弁を持つストレートノズル、先端を回転し放水・噴霧・停止を行う噴霧ノズルの2種がある。1号消火栓と異なり、ホースは全て延長しなくとも放水可能であり、放水量が少なく、ノズルで開閉操作可能であるので操作は極めて容易である。ただ、ノズルの操作法は先に述べたとおり、幾つかの種類があるので、予め確認する必要がある。

最近では1号の放水性能をそのままに、2号と同じ操作で使用できる易操作性1号消火栓も製品化されている。

屋外消火栓[編集]

屋外消火栓

毎分350リットル、0.25Mpaの放水性能を持つ物である。屋内消火栓と違い、消火栓から離れた位置にホース格納箱が設けられホースや筒先が別に設置されている場合がある、また、屋内消火栓同様、何時でもホースをバルブに取り付けた状態のものもある。取り扱いは屋内消火栓より習熟が必要である。ホースや筒先の規格は消防隊が使用する物とかなり似ている。ノズルの口径は19mm (3/4in) である。

補助散水栓[編集]

スプリンクラー設備が設置されている場合、スプリンクラーヘッドの設置を免除されている浴室、トイレ等にも有効に初期消火を行い得るよう、補助散水栓が設けられる場合がある。構造は2号消火栓同様である。(但し自動起動装置がない)

使用方法[編集]

操作法[編集]

1号消火栓の場合や屋外消火栓の場合は必ず2人以上操作する。

  1. 火災報知機または消火栓箱内の起動スイッチを押す(警報が自動火災報知設備の受信盤に送られるとともに消火栓設備のポンプが起動する)。
  2. 筒先担当は筒先を持ちホースを完全に伸ばして火元に走り、しっかり筒先を構えてバルブ開閉担当に放水始めの合図をする。
  3. バルブ開閉担当は筒先担当の放水始めの合図を待ち、安全を確認してバルブを反時計回りに(Oの方向)廻して放水を開始する。

2号消火栓や易操作性1号消火栓の場合は元バルブを開き、ホースを任意の場所に引き出して、ノズルのコックを開けばよい。

注意点[編集]

放水作業の一般的な注意としては、安全上決して筒先(ノズル)から手を離してはならない、また、直接水流を人体に当ててはならない。止むを得ず人体に放水する場合は、天井・壁等に水流を反射させて注水すればよい。この方法は器物の裏側の火炎等直接水流の届かない場合においても活用できる。放水は燃焼実体に有効に注水できるよう留意し、徒に遠方や低所から放水し、或いは煙に放水する事のないようにする。

また、消火のために人命を危険に晒してはならない。特に屋内などの濃煙や熱気が立ち込める場所や火災が消火設備の間近で起こってしまった場合などは避難を最優先し、消火は安全が確保でき、余力がある場合とすべきである。

先にも述べたとおり、同時に使用し得る消火栓は2個程度であり、徒に多数の消火栓を開くと水圧が著しく低下し消火活動に重大な支障を来たすことになるので注意が必要である。

尚、屋内1号消火栓や屋外消火栓は近隣の建物の初期消火にも有効である。阪神・淡路大震災時には、屋内消火栓のホースを建物から集めて伸ばし、放水して延焼を防いだ事例もある。

日本国外[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]