スティーブン・バノン

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スティーブン・バノン

スティーブン・ケビン・バノン(Stephen Kevin "Steve" Bannon, 1953年11月27日 - )は、アメリカ合衆国実業家右派のインターネット・メディア経営者。アメリカ合衆国首席戦略官・大統領上級顧問ドナルド・トランプ支持者。

人物[編集]

ブライトバート・ニュースの元会長である[1]。同ニュースはアメリカにおけるファー・ライトのニュース、論説そして解説のウェブサイトであり、オルタナ右翼とつながりがあるとされている[2]。かつて、選挙コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカの役員でもあった[3][4][5][6]

2016年8月17日、バノンは大統領選挙共和党候補者であるドナルド・トランプ陣営の選挙対策本部長に起用される。バノンの分析力がトランプやその娘イヴァンカ・トランプと娘婿ジャレッド・クシュナーにも信頼されたからとされる[7]

ウラジミール・レーニンは国家を破壊しようとしたが、それこそ私の目標だ」[8]としてレーニン主義者を自称しており[9]グローバリゼーションがもたらした米国の労働者階級の没落に伴うアジアの台頭に批判的な経済ナショナリストも自称し、人種差別主義者の疑惑は否定[10][11]している。また、シリコンバレーでのアジア人の多さを巡る議論などでトランプとバノンの意見は必ずしも一致してないとされ[12]、トランプも「バノンが人種差別主義者かオルタナ右翼だと思ったら私は彼を雇うことさえ考えない」と語っている[13]。だが、バノンとトランプの無理な弁明は、メディアには認められなかった。ニューヨーク・タイムズは、バノンを好戦的なポピュリストだとの記事を掲載した。さらにNYTは、批評家がトランプがバノンを戦略担当にしたのは、『レイシスト(人種差別主義者)の声』として起用したものだと報道した[14]

経歴[編集]

バージニア州ノーフォーク生まれ。家族は労働者階級、アイルランド系カトリック教徒、ケネディびいき、労働組合びいきで、民主党を支持していた[15]。彼はバージニア州リッチモンドにあるカソリック系のベネディクティンカレッジ付属高校を1971年に卒業した。1976年にバージニア工科大学を卒業し都市計画で学士号を得た[16]。次にジョージタウン大学(エドムンド・A・ウォルシュ外交大学院)で安全保障論を専攻して修士の学位を取得した。1985年にはハーバード・ビジネス・スクール経営学修士の学位(優等)を取得した[17][18]

アメリカ海軍勤務から投資会社・ 映像プロデューサー[編集]

バノンは1976年から1983年まで海軍で大尉(O-3)を務め[19]太平洋艦隊の水上戦将校としてUSSポール・F・フォスター駆逐艦に乗艦した[20]。またアメリカ本土ではペンタゴン海軍作戦部長の特別補佐官として勤務した。兵役には7年間ついていた[21]
その後は1984年から1990年まで、ゴールドマン・サックスのM&A部門で働いていた[22]ゴールドマン・サックス退職後の1990年、ビバリーヒルズでメディア専門の投資会社バノン株式会社を立ち上げた。この会社はテレビ番組制作会社のキャッスル・ロック・エンターテインメントテッド・ターナーに売却する交渉を手がけて成功を収めた[23]1998年にバノン株式会社はソシエテ・ジェネラルに売却された。
1990年代にバノンは娯楽メディアに参入し、映像プロデューサーとして保守派の市民運動ティーパーティーを称賛する内容の映画などを製作した。2012年創業者アンドリュー・ブライトバートの死去後に、保守系ニュースサイトであるブライトバート・ニュース・ネットワークの経営権を引き継ぎ、その会長に就任した[24]

2016年8月17日、バノンは大統領選挙共和党候補者であるドナルド・トランプから選挙対策本部長に任命された。

トランプ政権[編集]

大統領選挙で勝利し、次期米国大統領となったトランプは2016年11月13日、首席戦略官と上級顧問にバノンを指名した。このときトランプは、「スティーブとラインスは非常に有能なリーダーで、選挙では協力して歴史的な勝利に導いてくれた」とその貢献を指摘した[25]

2017年1月28日、大統領となったトランプはバノンを国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーとし、統合参謀本部議長国家情報長官を常任メンバーから外す大統領令を出した[26]。オバマ政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務めたスーザン・ライスは、「イスラム国やシリア、アフガニスタン、北朝鮮に関する政策を決定する上で軍事的な助言(や機密情報)が必要なのは誰なのだ」として、今回の組織再編は「まったくいかれている(stone cold crazy)」と評した[27]

しかし、2017年4月4日付けでバノンは国家安全保障会議の常任メンバーから外され、統合参謀本部議長と国家情報長官が常任メンバーに復帰する大統領令が出された[28][29]バノンは国家安全保障担当大統領補佐官で戦闘的なマイケル・フリンに対する抑えとしての役割とNSCを機能させることが役割であったが、バノンのスタイルは見守ることに主眼があったと報道された[30]。 ところが、フリンがロシアとの接触に関するスキャンダルによって辞任したことでNSCに席を置く必要がなくなったために常任メンバーから外されたという観測もある [31] また、ワシントン・ポスト紙は、バノンはNSCの会議に1・2回出席しただけであったと報道した[30]。トランプ政権内の人事についても、バノンとハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)との間で確執があると報道されている[31]。 またバノンとクシュナーとの衝突が伝えられ、共和党への超大口資金援助者(megadonor)のレベッカ・マーサーがバノンに辞任せず、職に留まるよう説得したと報道された。NSCからバノンが外れる大統領令に署名したら辞任すると言って変更にバノンは反対したが、挫折した[32]。 米国下院の外交委員長イリアナ・ロス・レイティネン(共和党)は2017年4月7日に、バノンは非アメリカ的であるため、ホワイトハウスから完全に追放すべきだと語った[33]。トランプ大統領からは同年4月11日のニューヨーク・ポストのインタビューで「スティーブン(バノン)は好きだが、彼は選挙戦の終盤に我々の陣営に参加したにすぎない」と距離を置くかのような発言も出ている[34][35]ドナルド・トランプ大統領がバノンを必要とする理由について、フィナンシャル・タイムズは、トランプ政権内で戦略的な頭脳と世界観をもつ唯一の人物であるからだとして中東ではバノンの判断力はキッシンジャー元国務長官並みであると評し、トランプが自らが大統領に選ばれた理由を覚えているかどうかを測る指標がバノンの命運でわかると報道した[36]。バノンは正統的な保守ではないが、誰からも愛されている人物であり、ホワイトハウスのウェストウイング(西棟)民主党員に対してバランスを取るためにバノンが必要と考えられている、とガーディアンは報じた[37]

2017年5月1日のインタビューでトランプ米大統領は、バノン首席戦略官兼上級顧問を自由主義者できちんとした人物とであるとして、手放す考えはないと報道された[38]。 2017年6月1日、トランプ米大統領はパリ協定 (気候変動)から離脱すると表明したが、この決定は離脱を主張していたバノンとスコット・プルーイットが残留を主張していたジャレッド・クシュナーレックス・ティラーソンイヴァンカ・トランプを打ち負かしたと報道された[39][40]

脚注[編集]

  1. ^ "Savage Disses Breitbart News, Bannon,The Daily Wire(2017年2月5日)" 2017年2月6日閲覧.
  2. ^ http://toyokeizai.net/articles/-/146406?page=2
  3. ^ https://en.wikipedia.org/wiki/Cambridge_Analytica
  4. ^ Rachael Revesz (2016年11月23日). “Steve Bannon’s data firm in talks for lucrative White House contracts”. Independent. 2017年5月22日閲覧。
  5. ^ Cadwalladr, Carole (2016-12-04). "Google, democracy and the truth about internet search". The Guardian. Retrieved 2016-12-12.
  6. ^ Tyler Cherry (March 14, 2017). "Legal Questions Abound For Stephen Bannon's Shady Address Book". Media Matters for America. Retrieved March 20, 2017.
  7. ^ “焦点:トランプ新政権で影響力発揮へ、娘婿クシュナー氏の横顔”. ロイター. (2016年11月19日). http://jp.reuters.com/article/usa-trump-kushner-profile-idJPKBN13D06Z 2016年11月23日閲覧。 
  8. ^ “Steve Bannon, Trump's Top Guy, Told Me He Was 'A Leninist' Who Wants To ‘Destroy the State’”. The Daily Beast. (2016年8月21日). http://www.thedailybeast.com/articles/2016/08/22/steve-bannon-trump-s-top-guy-told-me-he-was-a-leninist.html 2016年12月5日閲覧。 
  9. ^ “【社説】スティーブ・バノン氏とは何者か”. ウォール・ストリート・ジャーナル. http://jp.wsj.com/articles/SB10780138144506903447704582439731512187466 2016年12月5日閲覧。 
  10. ^ “Ringside With Steve Bannon at Trump Tower as the President-Elect's Strategist Plots "An Entirely New Political Movement" (Exclusive)”. ハリウッド・リポーター. (2016年11月18日). http://www.hollywoodreporter.com/news/steve-bannon-trump-tower-interview-trumps-strategist-plots-new-political-movement-948747 2016年11月20日閲覧。 
  11. ^ “次期米政権で要職のバノン氏「邪悪さ」を称賛 人種差別は否定”. AFP. (2016年11月19日). http://www.afpbb.com/articles/-/3108588 2016年11月20日閲覧。 
  12. ^ “トランプ次期大統領の側近スティーブ・バノン氏「シリコンバレーにはアジア人のCEOが多すぎる」”. ハフィントン・ポスト. (2016年11月17日). http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/16/steve-bannon_n_13032712.html 2016年12月10日閲覧。 
  13. ^ “Donald Trump disavows 'alt-right'”. CNN. (2016年11月23日). http://edition.cnn.com/2016/11/22/politics/donald-trump-disavow-groups-new-york-times/ 2016年11月23日閲覧。 
  14. ^ MICHAEL D. SHEAR (2016年11月14日). “Critics See Stephen Bannon, Trump’s Pick for Strategist, as Voice of Racism”. The New York Times. 2017年5月22日閲覧。
  15. ^ トランプ米大統領の最側近バノン氏の正体=彼は比類なき戦略家なのか?”. 時事通信 (2017年3月14日). 2017年5月22日閲覧。
  16. ^ Richard Chumney (2017年1月30日). “Virginia Tech silent as community members condemn Steve Bannon”. Collegiate Times. 2017年5月22日閲覧。
  17. ^ Steve Bannon’s Educational Background: Where Did Trump’s Controversial Adviser Earn His Degrees?”. EDU in review. 2017年5月22日閲覧。
  18. ^ DUFF MCDONALD (2017年4月19日). “HOW HARVARD BUSINESS SCHOOL HELPED TURN STEVE BANNON INTO A MONSTER”. Vanity Fair. 2017年5月22日閲覧。
  19. ^ Eric Lutz (2017年1月31日). “Steve Bannon's Naval Career: What to know about Trump chief strategist's military history”. MIC. 2017年4月5日閲覧。
  20. ^ Julia Bolton (2016年11月14日). “Steve Bannon: 5 Fast Facts You Need To Known”. 2017年2月21日閲覧。
  21. ^ Michael Kranish (2017年2月10日). “How Bannon’s Navy service during the Iran hostage crisis shaped his views”. The Washington Post. 2017年5月22日閲覧。
  22. ^ Primack, Dan (2016年8月17日). “Another Goldman Sachs Alum Joins Donald Trump’s Campaign”. 2016年11月23日閲覧。
  23. ^ Michael Kranish (2017年3月31日). “Stephen K. Bannon, architect of anti-globalist policies, got rich as a global capitalist”. The Washington Post. 2017年5月22日閲覧。
  24. ^ Ellen Killoran (2016年11月14日). “Steve Bannon And Breitbart News: Why Everyone But The Alt-Right Fears Trump's Top Adviser Pick”. Forbes. 2017年2月25日閲覧。
  25. ^ "「過激」参謀、重用が火種 首席戦略官にバノン氏" 日本経済新聞(2016年11月16日),2017年2月6日閲覧.
  26. ^ "トランプ政権、バノン戦略官を安全保障会議常任に 統合参謀本部議長は除外" BBC(2017年1月30日),2017年2月6日閲覧.
  27. ^ "Steve Bannon's role in inner circle of Trump team raises fears of security crisis" The Guardian(2017年1月31日),2017年2月6日閲覧.
  28. ^ "米NSCからバノン首席戦略官が外れる" NHK(2017年4月6日),2017年4月6日閲覧.
  29. ^ トランプ大統領、NSCからスティーブ・バノンを排除』 2017年4月6日 Onebox News
  30. ^ a b Robert Costa (2017年4月5日). “Bannon removed from security council as McMaster asserts control”. The Washington Post. 2017年4月6日閲覧。
  31. ^ a b バノン上級顧問、NSCから外れる マクマスター氏と対立か”. 朝日新聞 (2017年4月6日). 2017年4月6日閲覧。
  32. ^ ELIANA JOHNSON (2017年4月5日). “Mega-donor urged Bannon not to resign”. Politico. 2017年4月6日閲覧。
  33. ^ MARC CAPUTO (2017年4月7日). “GOP Congresswoman: Trump should oust Bannon”. Politico. 2017年4月8日閲覧。
  34. ^ Bannon allies 'blindsided' by Trump's remarks”. ニューヨーク・ポスト (2017年4月12日). 2017年4月13日閲覧。
  35. ^ 焦点:トランプ氏が対外政策を急転換、中国に接近 対ロ関係悪化”. ロイター (2017年4月13日). 2017年4月13日閲覧。
  36. ^ Edward Luce (2017年4月12日). “Why Donald Trump still needs Stephen Bannon”. Financial Times. 2017年4月16日閲覧。
  37. ^ Ben Jacobs (2017年4月15日). “Steve Bannon: is Trump's right-hand man falling from grace?”. The Guardian. 2017年4月16日閲覧。
  38. ^ Jennifer Jacobs (2017年5月2日). “‘Alt-Left’ Strategist Bannon Isn’t Going Anywhere, Trump Says”. Bloomberg. 2017年5月31日閲覧。
  39. ^ Sarah Westwood (2017年6月2日). “Steve Bannon and Scott Pruitt beat Kushner, Tillerson and Ivanka on Paris Agreement”. Examiner. 2017年6月17日閲覧。
  40. ^ ANDREW RESTUCCIA; JOSH DAWSEY (2017年5月31日). “How Bannon and Pruitt boxed in Trump on climate pact”. Politoco. 2017年6月15日閲覧。

外部リンク[編集]