修士

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修士(しゅうし)とは


修士(しゅうし)とは、下位の学士と上位の博士の中間に位置する学位で、学士又はそれと同等の学力を認められた者が高等教育機関より授与されるものである。

英語圏ではmaster、ドイツ語圏ではマギスターまたはマギステル(Magister)、中国韓国などでは碩士などともいう。

また、同等学位を複数保有することをダブルディグリーというが、特に修士号を2つ保有することを、ダブルマスターともいう。個人が二つ以上の修士課程を修了してダブルマスターとなる場合や、大学院等で協定校の学位を同時取得できるダブルマスタープログラム(ダブルディグリープログラムとも)を修了してなる場合がある。

学位の種類[編集]

  • 文学系 - M.A. (Master of Arts)
  • 理学系 - MS または MSc (Master of Science)
  • 哲学系 - MPhil (Master of Philosophy)
  • 科学系 - PSE (Professional of Science Master)
  • 法学系 - LL.M. (Master of Laws)
  • 医学系 - M.P.A.S (Master of Physician Assistant Studies)
  • 公共政策系 - MPP (Master of Public Policy)
  • 薬学系 - MPharm (Master of Pharmacy)
  • 公共経営系 - MPM (Master of Public Management)
  • 看護学系 - MNS (Master of Nursing Science)
  • 経済系 - MEcc (Master of Economics)
  • 工学系 - ME または MEng (Master of Engineering)
  • 経営系 - MBM (Master of Business Management)
  • 技術経営系 - MOT (Master of Management of Technology)
  • 教育系 - M.ed. (Master of Education)
  • 公衆衛生学系 - MPH (Master of Public Health)
  • 芸術系 - M.F.A. (Master of Fine Arts)
  • 情報技術系 - MBIT (Master of Business information technology)
  • 社会福祉系 - M.S.W. (Master of Social Work)
  • 音楽系 - M.M. (Master of Music)

日本の修士[編集]

日本では、修士の学位は、学校教育法昭和22年法律第26号)の第68条の2に「修士の学位」として、大学院を修了した者に博士または修士の学位が授与される旨が規定され、さらに、学位規則第3条において、大学院修士課程を修了した者に修士の学位を授与することが規定されている。また、同規則第6条の2において大学及び大学院に相当する教育を修了し大学評価・学位授与機構による審査を合格した者に対して、同機構より修士の学位を授与することが規定されている。

現行では大学院の修士課程や博士前期課程を修了、一貫制博士課程を修士学位取得退学することなどによって授与されている。なお、高度専門職業人育成を目的として創設された専門職大学院修了者に対して授与される専門職学位においても専攻名の下に修士(専門職)という学位が授与されるが、便宜的に同じ名称が用いられているに過ぎず、通常の修士号とは概念及び趣旨が異なる。

日本国内においては、その学制上、医学部医学科・歯学部歯学科・農学部獣医学科・薬学部薬学科の6年制学部を修了した場合、授与される学位は学士であるが、大学院へ進学する場合、4年制博士課程へ直接進学できる措置がとられている。ただし、修士の学位は授与されていないので、博士課程後期課程へ進学を希望する場合については個別の資格審査によって修士に同等と認められることが必要となる。

修士号の意義[編集]

修士の学位は、主に博士課程を受験する際の基礎的な要件であるとともに、シンクタンク研究員や医療製薬関係の分野や理工系の分野での需要が多い。また、国際公務員の応募資格は、応募するポストと関連する分野での修士号以上の学位があることが求められる。資格・免許では、臨床心理士の受験資格として心理学の修士の学位が必須であり[3]教員免許状の専修免許状の授与を受ける際にも「修士の学位を有すること」が基礎資格になっている。最近では、文部科学省高度専門職業人の社会的充実を急務としていること、生涯学習に対する社会の関心が高まっていることなどから、大学院に進学する人口が拡大し、修士の学位取得がよりスタンダードな地位を占めることが想定されている。このような背景もあり、今日では社会人学生の受け入れを想定した社会人大学院というものも増加しつつある。また、日本では公務員に国内外の大学院に派遣して修士の学位をとらせるなどの制度も定着してきていることから次第に大学院修了人口が増え、今後ステータスとしても、あるいはスキルとしても認知を得られる部分も期待される。また、修士の学位は文部科学省の定める専修学校設置基準にて専修学校専門課程教員資格としても認められている[4]。また、自衛隊では幹部候補生試験に合格した者で通常は3尉に補せられるところを、修士の学位を有する者は2尉に補せられる院卒者試験を受験できるといった優遇を受ける機関もある。

修士の学位を有する者が増加していくことは、日本の研究人口も増加し高等教育水準の向上によりあらゆる効果が期待されるという部分もあるが、一方で(文系の場合)大学院修了者が「高学歴過ぎても扱いにくく、協調性や職場の和を乱す」との偏見や「新卒でも給与を多く払わなければならず、負担が大きい」などの理由で採用時に忌避される傾向も少なからずあり、募集・採用や活用の難しさが根底にあることが当面の問題である。

大学院修士課程の学生のことを修士の英語圏表記である「Master」の頭文字をとり、「M」と呼ぶことがある。また、学年と合わせてM1、M2などと呼ぶこともある[5]

その他[編集]

富山県立大学では、大学院研究生を対象に地域活性化への貢献をテーマとして準修士コースを設定し、修了生に「準修士」という独自の称号を授与している。この称号を受けた者は、同大学の大学院修士課程に進学した場合、在学年限及び単位認定において、準修士コースの単位をそのまま認定される。

各国の制度[編集]

欧州連合[編集]

ヨーロッパ修士とは、欧州委員会により進められる欧州連合高等教育留学制度「エラスムス計画」で主に使用される修士号[6]。 単位の計算には、European Credit Transfer System (ECTS) 、成績評価には、ECTS grading scaleが使用される。

オーストラリア[編集]

オーストラリアにおける修士号(Maser degree)は、オーストラリア教育訓練省の定める豪州資格フレームワーク(AQF)においてレベル9とされる[7]

なお、準修士とも訳される、グラデュエート・ディプロマ(Graduate diploma)、グラデュエート・サーティフィケート(Graduate certificate)は AQFレベル8と定義されている[7]

イギリス[編集]

イギリスでは修士レベルの学位には、修士学位(Master degree)、 ポストグラデュエート・サーティフィケートポストグラデュエート・ディプロマが存在する[8]。これらは資格単位フレームワーク(QCF)においてレベル7である。

うち、修士学位(Master degree)は、課程学位(taught degrees)と研究学位(research degrees)の二つに分かれ、前者はコースワークのみである一方で、後者は研究論文によって評価を受ける[8]

ドイツ[編集]

ドイツでは、修士号はドイツ資格フレームワーク(DQF)においてレベル7である。

フランス[編集]

フランスでは、修士号は国家資格フレームワーク (NQF)においてレベルIである。

脚注[編集]

  1. ^ 新村出広辞苑 第六版』(岩波書店2011年)1321頁および松村明編『大辞林 第三版』(三省堂2006年)1177頁参照。
  2. ^ 生命保険修士会ウェブサイト参照。
  3. ^ ただし医師免許取得者は修士の学位は不要。
  4. ^ 専修学校設置基準第18条の5では専修学校の専門課程の教員たる資格として「修士の学位又は学位規則(昭和二十八年文部省令第九号)第五条の二に規定する専門職学位を有する者」と定めている。
  5. ^ 同様に、学部生はB1〜B4、博士課程学生はD1〜D3と呼ばれる。
  6. ^ http://ec.europa.eu/education/external-relation-programmes/doc72_en.htm Erasmus Mundus Programme Website
  7. ^ a b The AQF Second Edition, Department of Education and Training, (2013-01), http://www.aqf.edu.au/aqf/in-detail/2nd-ed-jan-2013/ 
  8. ^ a b 吉川 裕美子「イギリス高等教育の学位統一への動き--高等教育資格枠組み導入の背景、概要、展望」、『学位研究』第14巻、大学評価・学位授与機構、2001年3月、 29-54頁、 NAID 120005566599

関連項目[編集]

外部リンク[編集]