アメリカ海軍作戦部長

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海軍作戦部長旗

アメリカ海軍作戦部長(-かいぐんさくせんぶちょう、Chief of Naval Operations 、略称CNO)は、アメリカ合衆国海軍省における最高位の軍人で、統合参謀本部議長または副議長が海軍から出ていない場合は最先任の海軍士官である。

任期は4年[1]ジェームズ・フォレスタル海軍長官と不仲だったチェスター・ニミッツ元帥は、例外的に2年)。現在の海軍作戦部長は、ジョン・M・リチャードソン大将(第31代、2015年9月18日 - )である。

海軍作戦部長の職は、海軍改革派と連邦議会が、制服軍人の権限拡大を嫌うジョセファス・ダニエルズ海軍長官の反対を押し切る形で1915年3月に少将職として新設されたが、議会は翌1916年8月に大将職に格上げした[2]。設置時の経緯から海軍作戦部長に艦隊指揮権は与えられなかった。しかし真珠湾攻撃でアメリカが第二次世界大戦に参戦すると、フランクリン・ルーズベルト大統領とフランク・ノックス海軍長官は、1941年2月に常設職としては廃止したばかりの合衆国艦隊司令長官(Commander in Chief, United States Fleet、略称CINCUS)を、大統領令第8984号[3]によりCOMINCHの略称で復活させて艦隊指揮権を与え、アーネスト・キング大将を任命した。このため海軍作戦部長ハロルド・スターク大将とキング大将のどちらが海軍のトップか分からない状態になって部内に混乱が生じ、スターク大将が海軍作戦部長を辞任したので、大統領令第9096号[4]によって合衆国艦隊司令長官兼海軍作戦部長(Commander in Chief, United States Fleet, and Chief of Naval Operations、略称COMINCH-CNO)の肩書きが新設され、COM INCH-CNOのキングがCOMINCHとCNOの職務にあたる形となった。第二次世界大戦が終結すると合衆国艦隊司令長官は廃止され、再び海軍作戦部長がトップとなった。

近年、慣習訳である海軍作戦部長以外に海軍作戦総長[5][6]との表記が見られる。これついては、海軍作戦部長では単なる部局の長のようにみえてしまうが、海軍作戦総長であれば、同じく統合参謀本部の構成員である陸軍参謀総長および空軍参謀総長と釣り合うとしている[7]

歴代海軍作戦部長[編集]

氏名 写真 階級 在任期間 出身校 前職 後職 バックグラウンド 備考
着任 退任
1 ウィリアム・シェパード・ベンソン William S. Benson.jpg 海軍少将(在任中に大将に昇進) 1915年5月11日 1919年9月25日 海軍兵学校 フィラデルフィア海軍工廠 合衆国船舶委員会委員長 水上艦乗組員
2 ロバート・クーンツ Robert E. Coontz.jpg 海軍大将 1919年11月1日 1923年7月21日 海軍兵学校 大西洋艦隊戦闘部隊司令官 合衆国艦隊司令長官 水上艦乗組員
3 エドワード・エバール Edward Walter Eberle.jpg 海軍大将 1923年7月21日 1927年11月14日 海軍兵学校 太平洋艦隊司令長官 合衆国海軍評議員 水上艦乗組員
4 チャールズ・ヒューズ Charles Frederick Hughes.jpg 海軍大将 1927年11月14日 1930年9月17日 海軍兵学校 戦闘艦隊司令長官 水上艦乗組員
5 ウィリアム・プラット William Veazie Pratt.jpg 海軍大将 1930年9月17日 1933年6月30日 海軍兵学校 合衆国艦隊司令長官 水上艦乗組員
6 ウィリアム・スタンドレイ William H Standley.jpg 海軍大将 1933年7月1日 1937年1月1日 海軍兵学校 合衆国艦隊戦闘集団司令官 ソビエト連邦大使 水上艦乗組員
7 ウィリアム・リーヒ William Leahy cropped.jpg 海軍大将 1937年1月2日 1939年8月1日 海軍兵学校 合衆国艦隊戦闘集団司令官 プエルトリコ総督 水上艦乗組員
8 ハロルド・スターク Harold Rainsford Stark.jpg 海軍大将 1939年8月1日 1942年3月2日 海軍兵学校 合衆国艦隊戦闘集団巡洋艦部隊司令官 在欧合衆国海軍司令官 水上艦乗組員
9 アーネスト・キング FADM Ernest J. King.jpg 海軍大将(在任中に元帥に昇進) 1942年3月2日 1945年12月15日 海軍兵学校 合衆国艦隊司令長官 飛行士 合衆国艦隊司令長官と兼任。
10 チェスター・ニミッツ Fleet Admiral Chester W. Nimitz portrait.jpg 海軍元帥 1945年12月15日 1947年12月15日 海軍兵学校 太平洋艦隊司令長官 潜水艦乗組員
11 ルイス・デンフェルド Louis E. Denfeld - Project Gutenberg etext 20587.jpg 海軍大将 1947年12月15日 1949年11月2日 海軍兵学校 マーシャル諸島カロリン諸島およびマリアナ諸島軍政長官 水上艦乗組員 提督たちの反乱」の責任を問われ、更迭される。
12 フォレスト・シャーマン Forrest P SHerman.jpg 海軍大将 1949年11月2日 1951年7月22日 海軍兵学校 第6任務艦隊司令官 飛行士 在任中に心臓発作で死去。
13 ウィリアム・フェクテラー William Fechteler.jpg 海軍大将 1951年8月16日 1953年8月17日 海軍兵学校 大西洋軍総司令官兼大西洋艦隊司令長官 NATO南ヨーロッパ連合軍最高司令官 水上艦乗組員
14 ロバート・カーニー Robert Bostwick Carney.jpg 海軍大将 1953年8月17日 1955年8月17日 海軍兵学校 NATO南ヨーロッパ連合軍最高司令官 水上艦乗組員
15 アーレイ・バーク Arleigh Burke 1951.jpg 海軍大将 1955年8月17日 1961年8月1日 海軍兵学校 大西洋艦隊駆逐艦部隊司令官 水上艦乗組員
16 ジョージ・アンダーソン・ジュニア Georgewandersonjr(big).gif 海軍大将 1961年8月1日 1963年8月1日 海軍兵学校 第6艦隊司令官 ポルトガル大使 飛行士
17 デヴィッド・マクドナルド David L McDonald.jpg 海軍大将 1963年8月1日 1967年8月1日 海軍兵学校 在欧合衆国海軍司令官兼東大西洋・地中海合衆国海軍司令官兼東大西洋合衆国軍司令官 飛行士
18 トーマス・モーラー ADM Thomas Moorer.JPG 海軍大将 1967年8月1日 1970年7月1日 海軍兵学校 大西洋軍総司令官兼大西洋艦隊司令長官兼NATO大西洋連合軍最高司令官 統合参謀本部議長 飛行士
19 エルモ・ズムウォルト・ジュニア Elmo Zumwalt.jpg 海軍大将 1970年7月1日 1974年6月29日 海軍兵学校 ベトナム派遣海軍司令官 水上艦乗組員
20 ジェームズ・ホロウェイ3世 James Holloway III.jpg 海軍大将 1974年6月29日 1978年7月1日 海軍兵学校 第7艦隊司令官 飛行士
21 トーマス・ヘイワード ThomasBHayward.jpg 海軍大将 1978年7月1日 1982年6月30日 海軍兵学校 太平洋艦隊司令長官 飛行士
22 ジェームズ・ワトキンス Admiral James Watkins, official military photo.JPEG 海軍大将 1982年6月30日 1986年6月30日 海軍兵学校 太平洋艦隊司令長官 エネルギー長官 潜水艦乗組員
23 カーライル・トロスト Admiral Carlisle Trost, official military photo.JPEG 海軍大将 1986年7月1日 1990年6月29日 海軍兵学校 大西洋軍副総司令官兼大西洋艦隊司令長官 潜水艦乗組員
24 フランク・ケルソー2世 Admiral Frank Kelso, official military photo.JPEG 海軍大将 1990年6月29日 1994年4月23日 海軍兵学校 大西洋軍総司令官兼NATO大西洋連合軍最高司令官 潜水艦乗組員 1993年1月2日から7月21日にかけて、海軍長官代行を兼任。
25 ジェレミー・ボーダ Jeremy M. Boorda.jpg 海軍大将 1994年4月23日 1996年5月16日 ロードアイランド大学(OCS) 在欧合衆国海軍司令官兼東大西洋合衆国軍司令官兼NATO南ヨーロッパ連合軍最高司令官 水上艦乗組員 在任中に自殺。
26 ジェイ・L・ジョンソン Admiral Jay Johnson, official military photo.JPEG 海軍大将 1996年8月2日 2000年7月21日 海軍兵学校 海軍作戦部副長 飛行士 ボーダの自殺後は海軍作戦部副長職のまま8月まで職務代行
27 ヴァーン・クラーク VernClark.jpg 海軍大将 2000年7月21日 2005年7月22日 アーカンソー大学(OCS) 大西洋艦隊司令長官 水上艦乗組員
28 マイケル・マレン Admiral Michael Mullen, official Navy photograph.jpg 海軍大将 2005年7月22日 2007年9月29日 海軍兵学校 在欧合衆国海軍司令官兼NATOナポリ連合統合軍司令官 第17代統合参謀本部議長 水上艦乗組員
29 ゲイリー・ラフヘッド US Navy 071108-N-0000X-001 Navy file photo of Chief of Naval Operations (CNO) Adm. Gary Roughead.jpg 海軍大将 2007年9月29日 2011年9月23日 海軍兵学校 艦隊総軍司令官 退役 水上艦乗組員
30 ジョナサン・グリーナート Admiral Jonathan W. Greenert (CNO).jpg 海軍大将 2011年9月23日 2015年9月18日 海軍兵学校 海軍作戦部副部長 退役 潜水艦乗組員
30 ジョン・M・リチャードソン Admiral John M. Richardson (CNO).jpg 海軍大将 2015年9月18日 在任中 海軍兵学校 海軍原子力推進機関部長 潜水艦乗組員 初の海軍原子力推進機関部長経験者[8]

脚注[編集]

  1. ^ 10 U.S. Code § 5033 - Chief of Naval Operations
  2. ^ Julius Augustus Furer, Administration of the Navy Department in World War II Chapter III: Chief of Naval Operations--Commander-in-Chief, U.S. Fleet
  3. ^ Executive Order 8984
  4. ^ Executive Order 9096
  5. ^ 『世界の艦船』2013年2月号、P130、「アメリカ海軍の組織/編成と基地」野木恵一。
  6. ^ 『軍事研究』2013年2月号、P131、「新旧交代の主力戦闘機:F/A-18からF-35時代へ」河津幸英。
  7. ^ 『世界の艦船』2013年2月号、野木恵一の記事中に記載。
  8. ^ 海軍の空母や潜水艦に搭載される子力推進機関に関連する業務を統括するポストであり、研究開発部門の長という性格が強く、8年間という他職と比較して長期の在任期間が設定されているが、通常は異動なく8年の任期を全うして退役することがほとんど。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]