クロスプレーン
クロスプレーン(Crossplane)とは、内燃機関のクランクシャフトの構造の一つで、主に90度のシリンダーバンクを持つV型8気筒エンジンに用いられる。
概要
クロスプレーンは4気筒分のクランクピンが90度のオフセットで取り付けられている。4気筒のうち1番目と4番目のクランクピンは180度オフセットであり、2番目と3番目のクランクピンがそれに対して90度の角度で配置される。このようにクランクシャフトが通る平面(プレーン)が交差(クロス)しており,クロスプレーンと呼ばれる。
クロスプレーンは通常、5つのメインベアリングと大きなカウンターウェイトを持つ。クロスプレーンのV8エンジンは不規則な点火順序を持つために排気音がゴボゴボ(Burble)という特徴的な音を立てる。そして、エンジンの振動バランスが良いためにバランスシャフトが不要であるという特徴も持つ。
クロスプレーン以外のV8エンジンのクランクシャフトの構造としては、フラットプレーン(Flatplane)が存在する。これは全てのクランクピンが180度のオフセットで配置され、正面から見た際に平らな形状を呈す。クロスプレーン登場以前のV8エンジンや、近代的なレース用エンジンではフラットプレーンが用いられる。身近な利用例では直列4気筒や水平対向4気筒のクランクシャフトにも用いられている。フラットプレーンのV8エンジンはシリンダーバンクが60度、90度、あるいはその他の角度が利用される。このようなV8エンジンはゴボゴボという特徴的な排気音と優れた振動バランスを持たないが、クロスプレーンのように大きなカウンターウェイトを必要としない利点がある。フラットプレーンのクランクビッグエンドは直列4気筒に類似しており、しばしば振動の低減のためにバランスシャフトが併用される。なお、バランスシャフトを省いて設計することも可能であり、レース用エンジンのように振動の発生を度外視してでもフライホイール重量やクランクマスを極端に軽量化する場合にあえてフラットプレーンが用いられることがある。
クロスプレーンは1915年にキャデラックとピアレス(en:Peerless)で考案された。それ以前のV8エンジンは全てフラットプレーンであった。キャデラックは1923年にクロスプレーンを量産車両に採用し、ピアレスも1924年から追随した。
直列4気筒のクロスプレーン
直列4気筒にもクロスプレーンの概念が採用されている例がある。2009年のヤマハ・YZF-R1ではクロスプレーン式クランクシャフトが採用されたが、V8エンジンのようにクロスプレーンのみで振動を抑え込むことができないため、同時に特殊な形状のカウンターウェイトも設計された。
このタイプのクランクシャフトは最初にMotoGPのレーサーヤマハ・YZR-M1で初めて採用された。ヤマハの金属鍛造技術の進歩により、市販車両にレース技術が導入された一例である[1]。
このようなクロスプレーン式クランクシャフトは、ビッグバンエンジンの点火順序(en:big-bang firing order)を併用する事で更なるパワーを発揮する。