M4カービン

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M4カービン
エイムポイントM68と二脚付きフォアグリップを装着したM4カービン
M4カービン
種類 軍用小銃
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
設計・製造 コルト・ファイヤーアームズ
パンサーアームズ(DPMS)
ブッシュマスター
アーマライト
仕様
種別 アサルトカービン
口径 5.56mm
銃身長 368.3mm
ライフリング 6条右転
使用弾薬 5.56x45mm NATO弾
装弾数 20発/30発(箱形弾倉
作動方式 リュングマン式
回転ボルト閉鎖
全長 850.9mm
重量 2,680g(弾倉を除く)
発射速度 700-900発/分
銃口初速 905m/秒
有効射程 点目標500m 面目標600m
歴史 
配備先 アメリカ軍
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M4カービンは、コルト・ファイヤーアームズ社が製造し、アメリカ軍が採用しているアサルトカービン

概要

M4を装備したアメリカ軍の兵士。照準用のダットサイトに加えてハンドガードにレーザーサイトとフォアグリップを取り付けている

第二次世界大戦に採用されたM1カービン、M2、M3に続いて4番目に米軍に採用されたカービン銃。カービン(Carbine)とは、本来歩兵小銃より銃身が短い騎兵用小銃の事だが、現在では概ね「小型のライフル」を意味する。

M4カービンはM16A2アサルトライフルの全長を短縮し軽量化したM16A2の直系の派生型で、M16A2とは約80%の部品互換性を持つ。

他のアサルトカービンと同様にM4はコンパクトで、フルサイズのM16と比べて取り回しがし易いため、戦闘車両の乗員や将校らが使用することが多く、また、その可搬性のよさから身動きの取りづらい都市部における近接戦闘特殊部隊空挺部隊による特殊任務にも幅広く使用されている。1998年にはアメリカ陸軍でM16A2の後継に選定されており、現在ではアメリカ陸軍兵士の大半がM4を装備している。

また、軍に残存しているM3サブマシンガン(これは主に戦車乗員の自衛用に装備されている)もM4に置き換えられる予定だという。M4は、初期のM16の小型版であり1960年代ベトナム戦争時に開発、使用されたXM177との類似点も多いが、細部が異なっている。

現在、コルト社は米国政府2009年までの製造に関する独占契約を締結している。コルト社以外にも、数社が自社ブランドで製造し、AR-15やSR-16と言った名で販売している。

歴史とバリエーション

M4の登場

1980年代初頭、アメリカ軍は、歩兵小銃M16A1からM16A2に切り替えることを決定した。M16A2は、NATOの各国と標準化した新型の5.56mm弾(5.56x45mm NATO弾; SS109あるいはM855)に対応し、銃身が太くなったほか、フルオート射撃にかわって3点バースト射撃を導入するなど、変更点は少なくなかった。このことから、それまで使用されていたM16A1ベースのカービンとは別に、M16A2をベースとしたカービン・モデルとして開発されたのがモデル723(フルオート)およびモデル725(3点バースト)である。

アメリカ軍は、特殊部隊向けにモデル723を少数発注した。また、1983年カナダの旧ディマコはモデル725をC8カービンとしてライセンス生産し、M16A2の小改正型(モデル715)であるC7(en)小銃とともにカナダ軍に配備した。また、アラブ首長国連邦は、M16A2の太い銃身にM203グレネードランチャーを装着できるよう、銃身の一部を細くくびれさせたモデルを発注し、このモデル727は、アラブ首長国連邦の首都からアブダビ・カービンと通称された。

アメリカ軍は1984年より、制式カービンの開発要求を行なっており、モデル727はその候補としてXM4カービンとして選定され、1986年には約40丁がARDC(陸軍開発センター)に納入され、1992年にはこれに対応するよう改良されたM203A1が開発、1994年に、XM4(モデル727)に小改良を加えたモデル777M4カービン(3点バースト)、モデル779M4A1カービン(フルオート)として制式化された。また、キャリングハンドルを着脱式としてレシーバー上にピカティニー・レールを追加したモデルが開発され、それぞれモデル977およびモデル979として生産された。これらは順次、モデル777およびモデル779にかわってM4およびM4A1として納入された。

アメリカ軍における配備

M4A1を使用するネイビーシールズの隊員

M4A1は、レンジャー部隊デルタフォースグリーンベレーアメリカ海軍Navy SEALsアメリカ海兵隊偵察部隊を含むアメリカ軍の各部隊に多数配備されている。

一方、アメリカ空軍は、従来使用してきたGAU-5/A(XM177E1)およびGAU-5A/A(XM177E2)を新型の5.56mm弾(5.56x45mm NATO弾; SS109あるいはM855)に適合するように改修した。これは上部レシーバーを交換し、マーキングを変更したもので、GUU-5/Pと称された。

アメリカ海兵隊は、伝統的に中距離以遠の精密射撃を重視するため、一般兵士用の小銃としてはフルサイズのM16A4を採用した。そのため海兵隊では、M4は将校上級下士官重火器射手、車輌操縦士衛生兵などの自衛用として使われるにとどまっている。

2001年時点では、M4M4A1は光学照準器を容易にマウントすることを可能にし、着脱式キャリングハンドルを備えた代表的なカービン銃である。現在、政府が標準採用しているのはコルト社モデル977(M4)と979(M4A1)である。現時点の主な相違点はM4のセレクターがセーフティ-セミ-バースト(S-1-3)であるのに対し、M4A1がセーフティ-セミ-フル(S-1-F)である点である。

なおアメリカ陸軍では、2013年からM4A1調達契約をコルト社より54%も安い金額を提示して落札したFNハースタル社からの購入に切り替え、長年に渡るコルト社からの調達を終了している[1]

派生と改良

M4/A1 MWS アクセサリーキット
M4A1とSOPMOD Block-I アクセサリーキット

M4のバリエーションはイギリス陸軍特殊部隊SAS)、オーストラリア陸軍特殊空挺連隊など様々な海外特殊部隊に配備するため他社でも生産されている。オーストラリアのSASRは基本的にコルト社の輸出用モデルと同じものを使用しているが(コルト社は民間用と輸出用モデルとアメリカ軍用のモデルを区別している)、イギリスのSASは基本的にカナダのコルトカナダ(旧ディマコ)社によって製造されたM16の派生型であるC7A1やC8(M4のカナダ軍での名称)の派生型であるSFWのバリエーションを使用している。皮肉なことに現在コルト社はディマコ社に生産を委託し購入しているため、この区別は本質的に無意味になっている。

コルト社のモデル925はナイツアーマメント社(KAC)のRASを装着したM4E2の制式名称で試験されていたが、既存のカービンが名称変更なしにRASを装着することになったため、この名称は廃止になったようである。アメリカ軍の教範では、RIS(KAC社 M4 RASを含むように拡張の見込み)を装着することによりM4/A1がM4/A1 MWS(Modular Weapon System/モジュラーウェポンシステム)となると規定している。

SOPMOD-I(Special Operations Peculiar Modification-I/特殊作戦用装備-1)用M4A1キットは、アメリカ特殊作戦軍により、その管轄下の部隊での運用のため開発された。M4A1キットの特徴は、ナイツアーマメント(KAC)によって開発されたRIS(Rail Interface System)ハンドガードシステム、全長が短くなり迅速に着脱可能になったM203 グレネードランチャーと専用リーフサイト、KAC社サプレッサー、KAC社リアバックアップサイト、インサイトテクノロジー社AN/PEQ-2A可視/赤外線レーザーサイトナイトビジョン付トリジコン社ACOG(Advanced Combat Optical Gunsight)リフレックススコープなどである。このキットは多様な任務に対応するため組替可能(モジュラー式)の設計で、現在は特殊作戦部隊で使用されている(多くの兵士は、トリジコン社ACOGをM68エイムポイント社レッドドットサイトやEOTech社ホログラフィックサイトに換装している)。

第二世代のSOPMOD(SOPMOD-II)は現在開発中であり、複数のメーカーが受注競争をしている。主なものにはナイツアーマメント社のURX II、ARMS社のSIR(Selective Integrated Rail)システム、Daniel Defense社のRIS II, Lewis Machine & Tool社のMRP(Monolithic Rail Platform)がある。

特徴

M4A1を使用するアメリカ陸軍の兵士

M16A2アサルトライフルより小型のため、室内での近接戦闘用(CQB)に向いているとして、軍の対テロ部隊や警察が好んで使用している。

M4は、M16A2と比べて以下の点が異なる。

  • 銃身長をM16の20インチから14.5インチ(軍用、民間合法最短銃身長は16インチ)に短縮
  • M203 グレネードランチャーを装着できるよう、銃身の一部を細く括れさせた
  • 固定ストックから伸縮式ストックへの変更
  • 発射速度の高速化

銃身長は米陸軍兵器研究所がテストした結果、5.56mm弾が十分な威力を発揮する上で14.5インチが最短銃身長だったためこのサイズになった。 しかしながらM4は短銃身のためM16A2より速く銃身が過熱する傾向があるなどの欠点も指摘されている。

アクセサリー

M4カービンおよびM4A1カービンはピカティニー・レールを装備しているため、暗視装置、可視レーザーサイト、不可視レーザーサイト、光学照準器バイポッドM203 グレネードランチャーM320 グレネードランチャーM26 MASSアンダーマウントショットガンなどのアクセサリーを取り付けることが可能となっている。

ACOGとフォアグリップを装着したM4
M203を装着したM4
M26 MASSを装着したM4

バリエーション

M4(M777/M977)

発射セレクターがセミ/3点バーストのモデル。977はキャリングハンドル着脱式。

M4A1(M779/M979)

発射セレクターがセミ/フルオートのモデル。979はキャリングハンドル着脱式。

M4E2(925)

ハンドガードにアクセサリー装着用のピカティニー・レールを持つMWS(Moduler Weapon System)を装着したもの。MWSとしてナイツアーマメント社のRIS(Rail Interface System)が採用される。

コルトM4コマンドー

C8

コルト・カナダが製造するM4カービン。オリジナルのコルトM4カービンとの相違点がある。相違点はリアサイトとマガジンのデザインである。バリエーションとしてC8(コルトモデル723タイプ)、C8A1(コルトモデル927タイプ)、C8A2,C8A3,C8CQB(11.5インチ銃身モデル)、C8SFWなどがある。

コルト社以外のM4(M4クローン)

SR-16

ナイツアーマメント製のオリジナルM4であり、非常に精度が高く、同社のオリジナルレールインターフェースを標準装備し、サイトが折りたたみ式になっているのが特徴。米軍特殊部隊で採用されている。銃身長などにバリエーションが存在する。

SR-255.56mm弾使用カービンにしたセミオートオンリーの民間モデルSR-15も有る(東京マルイウエスタンアームズの遊戯銃は外観がM4E2になっているがこれは誤りである。ナイツ社公式ページ)。

SR-556

スターム・ルガー社がほぼ外注パーツ組み上げで製品化したM4クローンである。作動方法は同社が特許出願中のツー・ステージ・ピストン・ドリブル・オペレーティング・システム(ガスピストン方式)である。

LR-300

ZM-ウエポンズが開発したM4クローンである。動作機構をショート・ストロークピストン方式に変更することで、ストック内部まで入り込んだバッファー・スプリングを省略できたため、折りたたみ式ストックに変更することができた。ヤンキー・ヒル・マシーン(英:Yankee Hill Machine Co, Inc. YHM)社が下請けとしてパーツを納品している。 YHM社も自社ブランドでYMH-15を製作している。オリジナルのハンドガードと折りたたみ式伸縮ストックを装備している。

カナダM1911メーカー「パラオーディナンス」のアメリカ支社パラUSA社が自社ブランドでタクティカル・ターゲット・ライフル(英:Tactical Target Rifle)として発売している。

H&K HK416(HKM4)
HK416Nを使用するノルウェー軍兵士

H&K社が開発したM4カービンの改良近代化カービンである。同社はエンハンスドカービン(Enhanced Carbine=強化カービン、改良カービン)と呼称している。

SIG516
シグ社製のSIG516(14.5インチ)

シグ社がDSEi 2009で一般公開させたM4カービンである。バレルの長さで複数のバージョンがある。開発したエンジニアの何人かは元H&K社のスタッフ。

作動方法はシグ社のライフル同様ガス圧利用のガス・ピストン方式でターン・ボルト・ロッキングが組み込まれている。マガジンは同社のSG556と同じシグオリジナルのものである。

報告資料

M4をメンテナンスするアメリカ空軍の兵士

2002年4月、ネーティック兵士センターにてチャーリー・ディーン中佐とサム・ニューランド一等軍曹が発表した、アナコンダ作戦などアフガニスタンでの軍事行動において使用されたM4A1に関する兵士からの報告内容は以下のとおりである。

  • 射撃時にハンドガードがガタつき、過熱する - 34%
  • M68 リフレックスサイトの照準を合わせづらい - 15%
  • クリーニングキットにツールとしてヘアブラシを追加した - 35%
  • クリーニングキットにツールとしてデンタルピック(楊枝)を追加した - 24%
  • 報告された動作不良は以下のとおり。
    • 20% - 二重装填
    • 15% - ジャム
    • 13% - 弾倉に起因する装弾不良
  • M4A1に信頼を置いている - 89%
  • メンテナンスの手間に不満がある - 20%

2007年 ダスト・テスト結果

2007年秋、メリーランド州アバディーン試験場において、M4は他の3つのライフル、XM8SCARHK416とともに、砂塵の多い状況下での試験が行われた。この試験では各ライフルが10丁ずつ用意され、1丁につき6,000発が射撃され、全体では1つの種類につき60,000発が発射されたことになる。その結果M4は他のライフルよりはるかに多い882回の射撃停止障害を起こし、19回は部品の修理を必要とした。XM8が最も障害が少なく、障害は116回、重大な障害が11回であった。SCARは223回、HK416は233回の障害発生があった。

現在、アメリカ陸軍はM4を改良する計画をしており、改良点は、新しいコールド・ハンマー製法による寿命の延長と、射撃障害をへらすための弾倉の改良である。M4の射撃障害においては弾倉の不具合が882の内239を占めていた。

アメリカ陸軍によると、新しい弾倉はテストが順調にいけば2008年春には配備できると言う。

採用国

登場作品

関連項目

外部リンク

出典