SWAT

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対ハイジャック訓練を行うFBI SWAT隊員

SWAT(スワット)とは、Special Weapons And Tactics(特殊火器戦術部隊)の略称で、アメリカ合衆国の警察に設置されている特殊部隊および同種の部隊を指す。

歴史と概要[編集]

M113装甲兵員輸送車とともに行動するFBI SWAT隊員

アメリカ合衆国は建国以降、国内の大規模騒乱など、警察保安官が対応し切れない事案にはが関与する規定になっていたが1873年に、「民兵隊壮年団制定法」が制定され、暴動、騒乱等には、保安官の招集を受けた成年男子が、集団で対処することとなった。また一方で、軍の動員を基本的に禁止し、軍の関与は最後の手段と規定された。

同法の制定により、各自治体警察では、暴動等に対処するための部隊を編成したが、部隊の名称、人員規模、指揮系統などは警察により異なっていた。その後、1966年テキサスタワー乱射事件が発生し、事件を管轄したオースティン市警察は対応し切れず、結果として、警察官を含む15名が死亡した。この事件がSWAT創設の契機となった。

なお、最初にSWATを編成し、またSWATと命名したのは、ロサンゼルス市警察とされている。ロサンゼルス市警察は、先述のテキサスタワー乱射事件の翌年に、同様の無差別乱射事件(負傷者3名)を経験しており、また、1965年に発生したワッツ暴動の経験から、1967年にダリル・ゲイツ警視(当時)の指揮により、約60名体制でSWATを創設した。

創設時にSWATは、ベトナム戦争での軍隊経験を有する警察官を中心に編成され、合衆国陸軍海軍から指導を受けた後、警察独自の戦術を確立させた。以後、全米の警察機関が、ロサンゼルス市警察を参考にしてSWAT、もしくは名称の異なる同種の部隊を相次いで創設し、現在に至っている。

また、当初の部隊名称は「Special Weapons Assault Team(特殊火器攻撃隊)」であったが、「警察部隊にしては過激な名称だ」との指摘を受け、「Special Weapons And Tactics(特殊火器戦術部隊)」に名称が変更された。

現在、ロサンゼルス市警察のSWATは約80名体制であり、市警察の「メトロディビジョン」に所属している。

配備状況[編集]

SWATは、全米の市警察や州警察、保安局(Sheriff's Dept. 保安官事務所)などに設置されている。SWATの規模や体制は、各警察組織の予算により異なっている。

ニューヨーク市警察等では、人命救助等の任務も特殊部隊が担当している為、「SWAT」ではなく「ESU(Emergency Service Unit:緊急活動部隊)」と称している。

また、警察組織によっては、「SERT(Special Emergency Response Team:特別緊急対策チーム)」や、「SRT(Special Response Team:緊急対応チーム)」などと呼称される特殊部隊が存在する。

なお、ロサンゼルス郡保安官事務所の特殊部隊は、「SEB(Special Enforcement Bureau:特別執行局)」に所属しており、「SWT」(Aが省略される)と称している。

編成と任務[編集]

部隊の編成は主に、突入班、狙撃・監視班、交渉班などの役割に分かれている。

主要任務は、一般の警察官では対応しきれない凶悪犯罪(立て篭もり事件など)への対処である。映画などに登場するSWATは、閃光弾を投げ、一気に突入する「ダイナミックエントリー」を用いることが多いが、実際のSWATの突入方法は、「サーチ&リカバリー(捜索と回復、安全確保)」が基本である。室内に入る際は、入念な打ち合わせを行い、先頭の隊員は捜索用の柄付き鏡、ラジコンカメラ、盗聴器、ピンホールカメラなどの各種センサーで室内を慎重に捜索する。そのため、建物で一つの部屋を制圧するのに30分を費やすこともある。また、犯人を銃で制圧する際も、人質や第三者への二次被害の発生を考慮しながら射撃する。突入は最終手段であるが、突入までに至る案件も多く殉職する隊員も多い。


事件の他にも、自殺志願者の保護などのためにSWATが出動することもある。自殺志願者の保護は、交渉班が話術を駆使して実施するが、突入・狙撃班員が実施したこともある。それは、公園のベンチで拳銃自殺をしようとしていた人を保護するため、狙撃班員が物陰から狙撃銃を1発発砲して自殺志願者の拳銃だけを破壊し、それと同時に突入班員が取り押さえを実施して身柄を保護したものである。

SWATは、その任務の性格上、建築物の中に突入して犯人を取り押さえるCQB(Close Quarter Battle:近接・接近戦闘)という技術が発達している。また、全米の各SWATは、デルタフォースや、Navy SEALsなどの軍の特殊部隊や、GSG-9(ドイツ連邦警察国境警備隊 第9グループ)といった他国の特殊部隊とも合同訓練を行い、技量の向上に努めている。

なお、アメリカでは毎年『 World SWAT Challenge』と呼ばれるSWATチームの能力を競う世界大会が開かれており、2006年はアーカンソー州リトルロックで3月に開催された。2006年の大会ではドイツGSG-9が優勝したが、上位20チームの内、準優勝のサンアントニオ市警察SWATチーム(米国テキサス州サンアントニオ市)を筆頭に、テキサス州のチームが6つ入っている。

入隊基準[編集]

ロサンゼルス市警察SWATの例
  • 志願制
SWATが所属する「メトロディビジョン」の他部隊で勤務歴がある事。さらに、選抜試験を通過する事。
なお「メトロディビジョン」とは、市警本部の現業部門で、他に警察犬部隊・ボディーガード部隊・機動隊が置かれている。
警部補以上へ昇進した場合は他部門へ栄転となる。
  • 指定地域に住む事が出来る事
SWATは24時間如何なる場合にも出動が求められ、この召集に応える義務があるため、隊員達には個人ロッカーが無く、出動用に個人に貸与されている覆面パトカーに、装備品一式を積載している。

日本警察の特殊部隊とSWATの相違[編集]

SWATは、市民に対する説明責任を果たす為と、犯罪者に対する抑止効果、また市民の理解を得ることによって部隊の運用予算を維持する等の理由から、雑誌などの取材も比較的気軽に受け、機密に抵触しない限り訓練内容や現有装備などを公開している。特に、テレビ局の取材は積極的に受けており、実弾を使用した訓練の映像をアメリカのお茶の間に流すことで犯罪者への抑止効果を期待している。近年では、日本警察特殊部隊(SAT)や、特殊犯捜査係(警視庁SIT、大阪府警察MAAT等)も、報道機関に訓練を公開しているが、アメリカのSWATに比べて機密事項が多く、公開の機会は少ない。

SWATには普段、パトカー勤務などの業務に就き、出動時のみSWATに参加する「パートタイムSWAT」と、常設部隊として編成されている「フルタイムSWAT」が存在する。ロサンゼルス市警察の場合、SWAT隊員は普段、覆面パトカーでパトロールを行っている。また、覆面パトカーの車内には、隊員の個人装備一式が積載されており、事件発生の際には、この車両で現場に急行する体制となっている。これに対して日本警察の場合は、特殊部隊(SAT)や警視庁SIT、大阪府警察MAATは常設部隊(フルタイム)だが、他の道府県警察刑事部に所属する突入班は、兼務(パートタイム)であることが多い。また兼務に際しては、機動捜査隊の捜査員を兼ねていることが多い。

SWAT隊員の給料は、所属する警察組織により異なるが、特別手当が付くことは少ない。決して出世コースと言う訳では無く、危険な任務ではあるが、SWATを志願する警察官は多い。また、ロサンゼルス市警察の場合、年齢30代後半から40代の、経験豊富な警察官が部隊の中心となっている。一方、日本警察のSATは、テロ対策部隊として高度な身体能力が要求されるため、隊員の年齢層は比較的若く、一般的な刑事事件を取り扱う特殊犯捜査係には、SATを除隊したOB隊員が配属されていると言われている。

このように日本警察のSAT、特殊犯捜査係とアメリカ警察のSWATは、体制や部隊環境などの面で異なっている。

主要装備[編集]

以前はコルトM16等が使用されていたが、現在ではAR-15カービンH&K G36Cなどの短銃身(カービンCQB)モデルが好んで用いられる。
H&K MP5シリーズに代表される高精度な短機関銃が登場すると、狭い室内で扱いやすいこともあり小銃に替わり広く使用されるようになったが、近年はボディアーマーを装備した相手も想定し、より貫通力の高いアサルトライフルに変更するチームが多く見られる。以前はイングラムM10等が使用されていた。
一発で犯人を制圧する必要があることから、高精度の銃が要求され、レミントンM700M24等のボルトアクションライフルが主流である。
突入の際にドアの錠・蝶番を銃撃破壊したり、催涙弾の投擲にも使われる。
主装備が動作不良を起こした際の予備として、また狭い室内でも使用される。コルト M1911グロック17SIG SAUER P226ベレッタM92などが使用される。
警察部隊であるSWATが殺傷能力のある手榴弾を使用することは基本的にないが、スタングレネード・催涙弾などは犯人を傷つけずに確保するのに非常に有効である。
主に暴動鎮圧用の催涙ガス弾ゴム弾を発射する。無論、対人殺傷力の高い擲弾は使用されない。

その他、突入用の梯子破城槌など。

なお、ロサンゼルス市警察SWATでは、銃火器以外の装備は支給品ではなく、各隊員が自分の体に合わせて自費で購入している(しかもSWATだからといって高い特別手当が出るわけではなく、給料は他の警察官達と同じで他に僅かな資格手当があるだけ)。そのため、各隊員によってベストなどの仕様が異なる。

SWATを扱った作品[編集]

SWATは、ハリウッドのアクション映画等で頻繁に登場する。この項目では、SWATが登場する代表的な映像作品を取り挙げる。

映画[編集]

終盤に大挙して登場。
連続ドラマ特別狙撃隊S.W.A.T.』の映画化作品。テレビドラマ続編の位置づけだが設定は現代となっている。
サイバーダイン社の突入時に登場。なお、本作の劇中でSWATを演じるのは皆本物のSWAT隊員である。
中盤の墓地のシーンで登場。
主人公のピーターとロジャーはSWAT隊員。冒頭の篭城事件では突入場面も描かれている。
モーフィアス救出の際に、ネオとトリニティが相手に回して銃撃戦を繰り広げる。

ドラマ[編集]

シリーズ後半に登場。
HRT(人質レスキュー隊)が登場。
CTUが独自に同種の特殊部隊を運用している。

漫画[編集]

「ニューヨーク激闘編」PART2に登場。同作品では人質の生命も厭わぬ非情な部隊として、悪役的に描かれている。

アニメ[編集]

第3話「Dr.エッグマンの野望」に登場。

特撮ヒーロー物[編集]

後半のパワーアップモードに、SWATモードが登場する。

ゲーム[編集]

特に『Grand Theft Auto: Vice City』、登場人物の一人がSWATに射殺される。

使用できるキャラクターの1人。

関連項目[編集]