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[[File:Blacksmoker_in_Atlantic_Ocean.jpg|thumb|熱水噴出孔の一種、[[ブラックスモーカー]]。]]
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[[File:Black smoker hydrothermal vent.ogg|thumb|熱水噴出孔の音]]
[[File:Black smoker hydrothermal vent.ogg|thumb|熱水噴出孔の音]]
'''熱水噴出孔'''(ねっすいふんしゅつこう、{{Lang-en|hydrothermal vent}})は[[地熱]]で熱せられた[[水]]が噴出する割れ目である。数百度[[熱水]]は、[[重金属]][[硫化水素]]を豊富に含む。熱水噴出孔よく見られる場所は、[[火山]]活動が活発ところ[[プレートテクトニクス#発散型境界|発散的プレート界]][[盆]]、[[ホットスポット (地学)|ホットスポット]]である
'''熱水噴出孔'''(ねっすいふんしゅつこう、{{Lang-en|hydrothermal vent}})は[[地熱]]で熱せられた[[水]]が噴出する大地の亀裂である。広義の熱水噴出孔としては[[温泉]][[噴気孔]][[間欠泉]]があげられる教義にはこれらの[[陸上]]にあるものでは海底環境、特に深の熱水噴出孔(深海熱水噴出孔)のことを指す


熱水噴出孔は一般的に、[[火山]]活動が活発なところ([[プレートテクトニクス#発散型境界|発散的プレート境界]]、[[海盆]]、[[ホットスポット (地学)|ホットスポット]])で発見されている<ref name="Colín-García 2016">{{Cite journal|last=Colín-García|first=María|date=2016|title=Hydrothermal vents and prebiotic chemistry: a review|journal=Boletín de la Sociedad Geológica Mexicana|volume=68|issue=3|pages=599–620|DOI=10.18268/BSGM2016v68n3a13}}</ref>。吹き出す[[熱水]]は数百度にも達する事があり、成分として[[重金属]]や[[硫化水素]]を豊富に含むものも知られている。[[海底]]から噴出する[[熱水]]に含まれる[[金属]]などが[[析出]]・[[沈殿]]して'''チムニー'''と呼ばれる構造物ができる場合もある。熱水の溶存成分によってチムニーから黒色や白色の煙が吹き出しているように見えるため、一部の熱水噴出孔は「ブラックスモーカー」や「ホワイトスモーカー」と呼称される場合もある。また、熱水噴出孔の作用によって形成された岩石および鉱石堆積物を熱水堆積物と呼ぶ。
熱水噴出孔は[[地球]]上ではふんだんにみられるが、その理由は[[地質学]]的活動が活発であることと、表面に水が大量にあることである。[[陸上]]にある熱水噴出孔には[[温泉]]・[[噴気孔]]・[[間欠泉]]があるが、これらについては各項目を参照するとして、ここではおもに深海熱水噴出孔について述べる。


[[深海]]によく見られる熱水噴出孔周辺は生物活動が活発であり、噴出する液体中に[[溶解]]した各種の[[化学物質]]を目当てにした複雑な[[生態系]]が成立している。[[有機物]]合成をする[[細菌]]や[[古細菌]]が[[食物連鎖]]の最底辺を支え、そのほかに化学合成細菌と共生したり環境中の化学合成細菌の[[バイオフィルム]]などを摂食する[[チューブワーム|ジャイアントチューブワーム]]・[[二枚貝]]・[[エビ]]などがみられる。
深海の大部分と比べて、 熱水噴出孔周辺は生物活動が活発であり、噴出する液体中に[[溶解]]した各種の[[化学物質]]を目当てにした複雑な[[生態系]]が成立している。[[有機物]]合成をする[[細菌]]や[[古細菌]]が[[食物連鎖]]の最底辺を支え、そのほかに化学合成細菌と共生したり環境中の化学合成細菌の[[バイオフィルム]]などを摂食する[[チューブワーム|ジャイアントチューブワーム]]・[[二枚貝]]・[[エビ]]などがみられる。


地球外では[[木星]]の[[衛星]][[エウロパ (衛星)|エウロパ]]でも熱水噴出孔の活動が活発であるとみられているほか、過去には[[火星]]面にも存在したと考えられている<ref>http://www.space.com/missionlaunches/missions/mars_society_conference_010515-1.html</ref>。
地球外では[[木星]]の[[衛星]][[エウロパ (衛星)|エウロパ]]や[[土星]]の月[[エンケラドゥス (衛星)|エンケラドス]]でも熱水噴出孔の活動が活発であるとみられている<ref name="NYT-20170413">{{Cite news|last=Chang|first=Kenneth|title=Conditions for Life Detected on Saturn Moon Enceladus|url=https://www.nytimes.com/2017/04/13/science/saturn-cassini-moon-enceladus.html|date=13 April 2017|newspaper=[[New York Times]]|accessdate=14 April 2017}}</ref><ref>{{Cite news|url=http://www.nasa.gov/press/2015/march/spacecraft-data-suggest-saturn-moons-ocean-may-harbor-hydrothermal-activity/index.html|title=Spacecraft Data Suggest Saturn Moon's Ocean May Harbor Hydrothermal Activity|newspaper=NASA|date=11 March 2015|accessdate=12 March 2015}}</ref>ほか、古代には[[火星]]面にも存在したと考えられている<ref name="Colín-García 20162">{{Cite journal|last=Colín-García|first=María|date=2016|title=Hydrothermal vents and prebiotic chemistry: a review|journal=Boletín de la Sociedad Geológica Mexicana|volume=68|issue=3|pages=599–620|DOI=10.18268/BSGM2016v68n3a13}}</ref><ref>http://www.space.com/missionlaunches/missions/mars_society_conference_010515-1.html</ref>。


== 物理的特 ==
== 熱水噴出孔の海中探査 ==
[[ファイル:Phase-diag2.svg|リンク=https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Phase-diag2.svg|左|サムネイル|この[[相図]]では、緑の点線は[[融点]]を、青の線は[[沸点]]を示し、水の状態が圧力によってどのように変化するかを示しています。緑の実線は、一般的な物質の典型的な融点の挙動を示している。]]
[[1949年]]に[[紅海]]中部の海底を調査したところ特異な熱水床の存在が報告された。[[1960年代]]になると60 [[セルシウス度|°C]]の塩類を含む水とこれに関係する[[金属]]を含む[[泥]]の存在が確認された。熱い[[水溶液]]は活発な海底下の[[海溝#リフト|リフト]]から噴出していた。[[塩分濃度]]が高すぎて生物の生息は無理な環境であった<ref>Degens, Egon T. (ed.), 1969, ''Hot Brines and Recent Heavy Metal Deposits in the Red Sea,'' 600 pp, Springer-Verlag</ref>。この塩水と泥が[[貴金属]]や[[卑金属]]の供給源でありうるか現在調査中である。
深海熱水噴出孔は通常、[[東太平洋海嶺|東太平洋]][[大西洋中央海嶺|海嶺]]や[[大西洋中央海嶺|中部大西洋海嶺]]などの、2つの[[プレートのリスト|構造プレート]]が分岐し、[[マントルプリューム]]が上昇して新しい地殻が形成されてる場所で見られる<ref>{{cite journal | author=Weinstein, Stuart A., Olson, Peter L. | title=The proximity of hotspots to convergent and divergent plate boundaries | journal=Geophysical Research Letters | year=1989 | volume=16 | pages=433-436 | url=http://adsabs.harvard.edu/abs/1989GeoRL..16..433W }}</ref>。熱水噴出孔から出てくる水は、主に近辺の火山層中の断層や多孔質堆積物を通じて染み込み火山性の地熱構造で熱せられた[[海水]]と、湧昇する[[マグマ]]から放出されたマグマ水、の2種から構成される<ref name="Colín-García 20163">{{Cite journal|last=Colín-García|first=María|date=2016|title=Hydrothermal vents and prebiotic chemistry: a review|journal=Boletín de la Sociedad Geológica Mexicana|volume=68|issue=3|pages=599–620|DOI=10.18268/BSGM2016v68n3a13}}</ref>。一方で[[噴気孔]]や[[間欠泉]]といった陸上の熱水システムにおいては、循環する水の大部分は地表から熱水システムに浸透した天水(雨水)と[[地下水]]であり、一部で[[変成作用|変成水]]や[[マグマ水]]、堆積層中で塩類を溶解した形成[[塩水]]も含まれる。その割合は、それぞれの場所によって異なる。


一般的に深海の海水温は約{{Convert|2|C|F}}程度であるのに対し、熱水噴出孔周囲の水温は{{Convert|60|C|F}}になり<ref>{{Cite book|last=Garcia, Elena Guijarro|last2=Ragnarsson, Stefán Akí|last3=Steingrimsson, Sigmar Arnar|last4=Nævestad, Dag|last5=Haraldsson, Haukur|last6=Fosså, Jan Helge|last7=Tendal, Ole Secher|last8=Eiríksson, Hrafnkell|year=2007|title=Bottom trawling and scallop dredging in the Arctic: Impacts of fishing on non-target species, vulnerable habitats and cultural heritage|publisher=Nordic Council of Ministers|page=278|isbn=978-92-893-1332-2}}</ref>、最高で{{Convert|464|C|F}} にも達する例が知られている<ref name="Haas2007">{{Cite journal|last=Haase|first=K. M.|year=2007|title=Young volcanism and related hydrothermal activity at 5°S on the slow-spreading southern Mid-Atlantic Ridge|journal=[[Geochemistry Geophysics Geosystems]]|volume=8|issue=11|pages=Q11002|bibcode=2007GGG.....811002H|DOI=10.1029/2006GC001509}}</ref><ref name="Karst2009">{{Cite journal|last=Haase|first=K. M.|year=2009|title=Fluid compositions and mineralogy of precipitates from Mid Atlantic Ridge hydrothermal vents at 4°48'S|journal=Pangaea|DOI=10.1594/PANGAEA.727454}}</ref>。深海ではその深さのため[[流体静力学|静水圧]]が高く、高温であっても水は期待にならずに液体の形で存在し、環境中で[[超臨界流体]]として存在していると考えられている。例えば、218気圧の環境であれば、純水の[[臨界点]]は{{Convert|375|C|F}} である。さらに、純粋ではなく塩分を含む水の場合、高温と高圧の臨界点はさらに上昇する。海水(重量比で3.2%のNaClを含む)の臨界点は、298.5大気圧下で{{Convert|407|C|F}}であり<ref name="bischoff1988">{{Cite journal|last=Bischoff|first=James L|last2=Rosenbauer|first2=Robert J|year=1988|title=Liquid-vapor relations in the critical region of the system NaCl-H2O from 380 to 415°C: A refined determination of the critical point and two-phase boundary of seawater|url=https://zenodo.org/record/1253886|journal=Geochimica et Cosmochimica Acta|volume=52|issue=8|pages=2121–2126|bibcode=1988GeCoA..52.2121B|DOI=10.1016/0016-7037(88)90192-5}}</ref><ref>{{cite web | author = A. Koschinsky, C. Devey |date= 2006-05-22 | url = http://www.iu-bremen.de/news/iubnews/09634/ | title = Deep-Sea Heat Record: Scientists Observe Highest Temperature Ever Registered at the Sea Floor | publisher = International University Bremen | language = English| accessdate = 2006-07-06 }}</ref>、これは深さ{{Convert|2960|m|ft}}の水圧環境下に対応する。したがって、この塩分濃度と深さの場合、熱水の温度が{{Convert|407|C|F}}を超えると超臨界となる。さらに、地殻の相分離のために、熱水噴出孔から吹き出す流体中の塩分は、大きく変動することが知られている<ref name="VonDamm1991">{{Cite journal|last=Von Damm|first=K L|year=1990|title=Seafloor Hydrothermal Activity: Black Smoker Chemistry and Chimneys|url=https://zenodo.org/record/1234953|journal=Annual Review of Earth and Planetary Sciences|volume=18|issue=1|pages=173–204|bibcode=1990AREPS..18..173V|DOI=10.1146/annurev.ea.18.050190.001133}}</ref>。同一の圧力条件下において、塩分濃度の低い液体の臨界点温度は、海水よりも低く、純水よりも場合よりも高くなる。たとえば、280.5大気圧下での2.24%のNaCl溶液の臨界点温度は{{Convert|400|C|F}}である。したがって、熱水噴出孔の最も高温の部分から出てくる水は、[[気体|気体の]]物性と[[液体|液体の]]物性の間の物理的性質を持つ、いわゆる[[超臨界流体]]である可能性がある<ref name="Haas20072">{{Cite journal|last=Haase|first=K. M.|year=2007|title=Young volcanism and related hydrothermal activity at 5°S on the slow-spreading southern Mid-Atlantic Ridge|journal=[[Geochemistry Geophysics Geosystems]]|volume=8|issue=11|pages=Q11002|bibcode=2007GGG.....811002H|DOI=10.1029/2006GC001509}}</ref><ref name="Karst20092">{{Cite journal|last=Haase|first=K. M.|year=2009|title=Fluid compositions and mineralogy of precipitates from Mid Atlantic Ridge hydrothermal vents at 4°48'S|journal=Pangaea|DOI=10.1594/PANGAEA.727454}}</ref>。 実際にいくつかの噴出孔において、超臨界状態が観察されている。しかしながら、熱水循環、鉱物堆積物形成、地球化学フラックス、または生物活性の点で、この超臨界がどのような意味を持っているのかは、まだよく分かってない。
海中の熱水噴出孔の一種である[[ブラックスモーカー]]は[[東太平洋海嶺]]の支脈にあたる[[ガラパゴス]]リフトのある海域で、海水温を調査中の海洋地質学者のグループが[[1976年]]に発見した。計測温度とその他の証拠から、地質学者はこの発見は熱水噴出孔からの噴出水であると結論付けるに十分な情報を得た。[[1977年]]、リフトに戻った地質学者は[[ウッズホール海洋研究所]]の潜水艇[[アルビン号]]を使って数々の熱水噴出孔を目視確認した。同年、Peter Lonsdaleは熱水噴出孔に関する初の論文を発表した。


== チムニーの成長と熱水の例 ==
[[2005年]]にはある鉱物資源調査会社が、[[ケルマディック諸島|ケルマディック島弧]]で3万5,000km<sup>2</sup>の調査を許可され、熱水噴出孔により形成された[[鉛]]・[[亜鉛]]・[[銅]]の[[硫化物]]の新しい鉱床たりうる海底硫黄鉱床を探査した。[[2007年]][[4月]]には中米[[コスタリカ]]沖合の[[太平洋]]における新しい熱水噴出孔海域([[ギリシア神話]]の怪物 [[メドゥーサ]] にちなんで命名された)の発見が発表された<ref>{{cite news | first= | last= | coauthors= | title=New undersea vent suggests snake-headed mythology | date=April 18 2007 | publisher= | url =http://www.eurekalert.org/pub_releases/2007-04/du-nuv041707.php | work =EurekaAert | pages = | accessdate = 2007-04-18 | language = }}</ref>。
熱水噴出孔によってはチムニー(煙突)とよばれる円柱状の構造物を形成することがある。超高温の熱水に溶解している鉱物が0°Cに近い海水と接触すると、接触面で化学反応が進み生成物が析出・沈殿してこのようなチムニーができる。噴出孔のチムニーの初期段階は、鉱物の[[硬石膏|無水石膏]]の堆積から始まる。次に、[[銅]]や[[鉄]]、[[亜鉛]]などの[[硫化鉱物|硫化]]物が海水の境界面で析出してチムニーの隙間に沈殿し、時間の経過とともに[[ポロシティ|多孔性]]が低下する。今までの研究から、{{Convert|30|cm|ft|0}}程度のベントの一日あたりの成長が記録されている<ref name="black_smoker">{{cite web|last=Tivey|first=Margaret K.|date=1998-12-01|url=http://www.whoi.edu/oceanus/viewArticle.do?id=2400|title=How to Build a Black Smoker Chimney: The Formation of Mineral Deposits At Mid-Ocean Ridges|publisher=Woods Hole Oceanographic Institution.|language=English|accessdate=2006-07-07}}</ref>。チムニーの例としては、[[オレゴン州]]の沖合にある高さ40mで折れてしまった通称『ゴジラ』が知られる。なかには高さ60mに達するものもある<ref>{{cite journal|author=Sid Perkins|year=2001|title=New type of hydrothermal vent looms large|url=http://www.sciencenews.org/articles/20010714/fob3.asp|journal=Science News|volume=160|issue=2|pages=21}}</ref> 。また、2007年4月の[[フィジー]]沿岸沖の深海ベントの調査では、これらのベントが溶存鉄の重要な供給源であることが判明した<ref>{{Cite journal|last=Petkewich|first=Rachel|date=September 2008|title=Tracking ocean iron|journal=Chemical & Engineering News|volume=86|issue=35|pages=62–63|DOI=10.1021/cen-v086n035.p062}}</ref>。
[[ファイル:BlackSmoker.jpg|リンク=https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:BlackSmoker.jpg|代替文=|サムネイル|ブラックスモーカーは、1979年に北緯21度の東太平洋海上で最初に発見された。]]
チムニー構造で黒色の熱水を噴出するものは、黒い煙を放出する煙突のように見えるため、'''ブラックスモーカー'''と呼ばれる。ブラックスモーカーは、[[海底]]にあるタイプの熱水ベントで、通常は[[海底]][[漸深層|帯]](水深2500-3000 m)でよく見られるが、より浅層や深層でも発見されている<ref name="Colín-García 20164">{{Cite journal|last=Colín-García|first=María|date=2016|title=Hydrothermal vents and prebiotic chemistry: a review|journal=Boletín de la Sociedad Geológica Mexicana|volume=68|issue=3|pages=599–620|DOI=10.18268/BSGM2016v68n3a13}}</ref>。ブラックスモーカーは通常、地殻から熱水に溶け混んだ高レベルの硫黄含有ミネラルや硫化物を含む粒子を放出しており、水は400℃以上の高温に達することもある。地球の地殻の下から過熱された水が海底を通過する際に幅数百メートルに広がり、近辺で複数のブラックスモーカーが形成される<ref name="Colín-García 20164" />。 冷たい海の水と接触すると、多くのミネラルが沈殿し、各通気孔の周りに黒い煙突のような構造を形成する。堆積した金属硫化物は、ゆくゆくは塊状の硫化鉱床になる可能性がある。 [[大西洋中央海嶺]]の[[アゾレス諸島の熱水噴出孔と海山|アゾレス諸島の]]一部のブラックスモーカーは、[[アゾレス諸島の熱水噴出孔と海山|24,000μM]]の[[鉄|鉄を]]含む[[レインボーベントフィールド]]など、 [[金属]]含有量が非常に豊富なことが知られている<ref>{{Cite journal|last=Douville|first=E|last2=Charlou|first2=J.L|last3=Oelkers|first3=E.H|last4=Bienvenu|first4=P|last5=Jove Colon|first5=C.F|last6=Donval|first6=J.P|last7=Fouquet|first7=Y|last8=Prieur|first8=D|last9=Appriou|first9=P|date=March 2002|title=The rainbow vent fluids (36°14′N, MAR): the influence of ultramafic rocks and phase separation on trace metal content in Mid-Atlantic Ridge hydrothermal fluids|journal=Chemical Geology|volume=184|issue=1–2|pages=37–48|bibcode=2002ChGeo.184...37D|DOI=10.1016/S0009-2541(01)00351-5}}</ref>。


ブラックスモーカーは、[[ RISEプロジェクト(海洋学)|RISEプロジェクト]]中に[[スクリップス海洋研究所]]の研究者によって、1979年に[[東太平洋海嶺]]から発見され、[[ウッズホール海洋研究所]]の深海潜水[[アルビン号|艇ALVIN]]を用いて観測された<ref name="Spiess et al 1980">{{Cite journal|last=Spiess|first=F. N.|last2=Macdonald|first2=K. C.|last3=Atwater|first3=T.|last4=Ballard|first4=R.|last5=Carranza|first5=A.|last6=Cordoba|first6=D.|last7=Cox|first7=C.|last8=Garcia|first8=V. M. D.|last9=Francheteau|first9=J.|date=28 March 1980|title=East Pacific Rise: Hot Springs and Geophysical Experiments|journal=Science|volume=207|issue=4438|pages=1421–1433|bibcode=1980Sci...207.1421S|DOI=10.1126/science.207.4438.1421|PMID=17779602}}</ref>。現在、ブラックスモーカーは[[大西洋]]と[[太平洋]]に、平均2100mの深度で存在することが知られている。最も北に位置するブラックスモーカーは、 [[グリーンランド]]と[[ノルウェー|ノルウェーの]]間の[[大西洋中央海嶺]]の[[北緯73度線|北緯73度]]の位置から、[[ベルゲン大学]]の研究者によって2008年に発見された、ロキの城([[:en:Loki's Castle|Loki's Castle]])フィールドの5本のチムニーからなるクラスターである<ref>{{Cite web|url=http://www.livescience.com/environment/080724-black-smokers.html|title=Boiling Hot Water Found in Frigid Arctic Sea|accessdate=2008-07-25|website=[[LiveScience]]|date=24 July 2008}}</ref>。これらのブラックスモーカーは、地殻変動力が少ない安定した地殻領域にあり、熱水噴出孔のフィールドとしてはあまり一般的ではないため、興味がもたれている<ref>{{Cite web|url=https://www.sciencedaily.com/releases/2008/07/080724153941.htm|title=Scientists Break Record By Finding Northernmost Hydrothermal Vent Field|accessdate=2008-07-25|website=[[Science Daily]]|date=24 July 2008}}</ref>。世界で最も有名なブラックスモーカーの一つは[[ケイマントラフ]]にあり、5,000 mの海面下に存在する<ref>{{Cite web|author=Cross|first=A.|url=http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8611771.stm|title=World's deepest undersea vents discovered in Caribbean|accessdate=2010-04-13|publisher=[[BBC News]]|date=12 April 2010}}</ref>。
[[2010年]][[4月6日]]、[[イギリス国立海洋学センター]]の研究チームが、[[カリブ海]][[ケイマン諸島]]沖合の[[ケイマン海溝]]で、世界で最も深い場所に位置する熱水噴出孔を発見した<ref name ="natio1">{{cite news |title=カリブの海底に世界最深の熱水噴出孔 |newspaper=[[ナショナルジオグラフィック協会|National Geographic News]] | date=2010-04-13 |url =http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2554/ |accessdate=2016-06-14}}</ref><ref name="natio2"/>。それまで確認されていた通常の熱水噴出孔の約2倍、最も深いとされたブラックスモーカーよりもさらに800m深い水深5,000mの海底にある<ref name ="natio1"/>。海洋探検家[[ウィリアム・ビービ]]([[:en:William Beebe]])にちなんで「ビービ(ビーブ噴出孔フィールド<ref name="afpbb"/>)」と名付けられたこの熱水噴出孔は、鉄と銅の鉱石で形成されたチムニーを持つブラックスモーカーのひとつである<ref name ="natio1"/><ref name="natio2">{{cite news |title=噴き出す黒煙、世界最深の熱水噴出孔 |newspaper=National Geographic News | date=2012-01-10 |url =http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/5472/ |accessdate=2016-06-14}}</ref>。水温は摂氏400度と推定され、周辺では目を持たず代わりに背中に光受容体を持つ新種の[[エビ|エビ類]]や白い触手を持つ新種の[[イソギンチャク|イソギンチャク類]]など発見が相次いでいる<ref name="afpbb">{{cite news |title=カリブ海の世界最深の噴出孔で新種続々発見、目のないエビなど |newspaper=[[AFPBB News]] | date=2012-01-12 |url =http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2850113/8279391?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics |accessdate=2012-01-12}}</ref>。


一方で、'''ホワイトスモーカー'''と呼ばれるチムニーからは、[[バリウム]]、[[カルシウム]]、[[ケイ素|シリコン]]などの明るい色のミネラルが放出される。 これらのベントは、おそらく熱源から一般に離れているため、プルームが低温になる傾向がある<ref name="Colín-García 20165">{{Cite journal|last=Colín-García|first=María|date=2016|title=Hydrothermal vents and prebiotic chemistry: a review|journal=Boletín de la Sociedad Geológica Mexicana|volume=68|issue=3|pages=599–620|DOI=10.18268/BSGM2016v68n3a13}}</ref>。
== 物理的特 ==
深海熱水噴出孔がよくみられるのは[[中央海嶺]]沿いである。ここは2つの[[プレート]]の境界域で[[マントルプリューム]]が上昇するところである<ref>{{cite journal | author=Weinstein, Stuart A., Olson, Peter L. | title=The proximity of hotspots to convergent and divergent plate boundaries | journal=Geophysical Research Letters | year=1989 | volume=16 | pages=433-436 | url=http://adsabs.harvard.edu/abs/1989GeoRL..16..433W }}</ref>。


ブラックとホワイトのチムニーは、同じ熱水フィールドで共存する可能性があり、それぞれ一般的に、熱源に対して近位か遠位かで分かれる。 また、マグマ熱源がマグマの結晶化により熱源から次第に遠ざかり、次第に熱水がマグマ水ではなく海水に支配されるようになること、すなわち熱水域の衰退段階に対応する形で、ホワイトスモーカーは成立することもある。 このタイプのベントから吹き出す熱水はカルシウムが豊富で、主に硫酸塩( [[重晶石]]と無水石膏)や炭酸塩に富む堆積物を形成する<ref name="Colín-García 20166">{{Cite journal|last=Colín-García|first=María|date=2016|title=Hydrothermal vents and prebiotic chemistry: a review|journal=Boletín de la Sociedad Geológica Mexicana|volume=68|issue=3|pages=599–620|DOI=10.18268/BSGM2016v68n3a13}}</ref>。
海底の熱水噴出孔から噴出する水は、[[断層]]や透水性の堆積層からしみ込んで火山性の地熱構造で熱せられた[[海水]]が多いが、[[マグマ]]の上昇に伴って放出されたマグマ水も一部含む。


また、[[沖縄トラフ]]の鳩間海丘では有人潜水調査船[[しんかい6500]]による探査で「ブルースモーカー」が発見されたが、この色の解明は今後の調査を待つ段階である<ref>{{Cite web|title=0123|url=http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20070123/|website=www.jamstec.go.jp|accessdate=2020-08-29}}</ref>。
陸上では噴気孔や間欠泉に回る水の多くが[[降水]]と[[地下水]]であり、これらは地表から地熱を受ける深さまでしみ込んだものであるが、一部には変成水、堆積層中で塩類を溶解した水、マグマから放出されたマグマ水を含む。


== 熱水噴出孔周辺の生態系 ==
熱水噴出孔から噴出する水温は400°Cにも達するが、熱水噴出孔がある深海の水温は2°Cくらいである。深海の高い水圧によりこの高温でも水は液体のままで沸騰しない。水深3,000mで407°Cの水は[[超臨界状態]]である<ref>{{cite web | author = A. Koschinsky, C. Devey |date= 2006-05-22 | url = http://www.iu-bremen.de/news/iubnews/09634/ | title = Deep-Sea Heat Record: Scientists Observe Highest Temperature Ever Registered at the Sea Floor | publisher = International University Bremen | language = English| accessdate = 2006-07-06 }}</ref> 。塩濃度が上昇すると、[[臨界点]]は高くなる。
かつては太陽エネルギーこそがあらゆる生命エネルギーの源であると考えられてきたが、一方で深海の生物は太陽光の恩恵を受けることができない環境に生息している。そのため熱水噴出孔周辺の生物群集は、太陽の光ではなく、それらが住んでいる環境中の堆積物や熱水中の化学物質にエネルギー源を依存する必要がある。以前の[[水体の底辺|底生生物]]研究においては、熱水噴出孔周辺の生物のエネルギー獲得はは深海生物と同様にマリンスノーに依存していると考えられており、すなわちマリンスノーの大本である表層海域の植物、そして太陽に依存した生態系の一部とみなされていた。一部の熱水噴出孔周辺の生物は、たしかにこの太陽からのエネルギー源を消費するが、もし仮に太陽依存のシステムしか存在していないのであれば、熱水噴出孔周辺の生物はもっと疎になるはずである。しかしながら実際には、周囲の海底と比較して熱水噴出帯の生物密度は10,000〜100,000倍ほどもある。


ベント生物は食物を化学合成細菌に依存しているため、熱水ベント群集はそのような膨大な量の生命を維持することができる。 熱水噴出孔からの水は溶解したミネラルが豊富で、化学独立栄養細菌の大規模な集団をサポートする。 これらのバクテリアは硫黄化合物、特に[[硫化水素]]といった、ほとんどの生物種にとって有毒な化学物質を利用して、[[化学合成 (生命科学)|化学合成]]によって有機物を生産する。
熱水噴出孔によってはチムニー(煙突)とよばれる円柱状の構造物を形成することがある。超高温の熱水に溶解している鉱物が0°Cに近い海水と接触すると、接触面で化学反応が進み生成物が析出・沈殿してこのようなチムニーができる。そのようなチムニーの例としては、[[オレゴン州]]の沖合にある高さ40mで折れてしまった通称『ゴジラ』がよく知られる。なかには高さ60mに達するものもある<ref>{{cite journal | author=Sid Perkins | title=New type of hydrothermal vent looms large | journal=Science News | year=2001 | volume=160 | issue=2 | pages=21 | url=http://www.sciencenews.org/articles/20010714/fob3.asp }}</ref> 。


=== 生物学的コミュニティ ===
熱水チムニーの生成には、硫化鉱物と[[硬石膏]]の沈殿が伴う。これらの鉱物はチムニーと海水の境界面で析出して沈殿し、長い間には透水性が低下する。チムニーが一日30cmずつ成長したという記録もある<ref name="black_smoker">{{cite web | last = Tivey | first = Margaret K. |date= 1998-12-01 | url = http://www.whoi.edu/oceanus/viewArticle.do?id=2400 | title = How to Build a Black Smoker Chimney: The Formation of Mineral Deposits At Mid-Ocean Ridges | publisher = Woods Hole Oceanographic Institution. | language = English | accessdate = 2006-07-07 }}</ref>。

チムニー構造で黒色の熱水を噴出するものを特に「[[ブラックスモーカー]]」とよぶ。ブラックスモーカーが噴出するのは、黒色の硫化物の微細結晶を多量に含むためである。一方、「[[ホワイトスモーカー]]」が噴出するのは、無色に近い[[バリウム]]・[[カルシウム]]の硫酸塩鉱物や[[石英]]などを多量に含むためである。ホワイトスモーカーの熱水はブラックスモーカーの熱水より温度が低い傾向がある。また[[沖縄トラフ]]の鳩間海丘では有人潜水調査船[[しんかい6500]]による探査で「ブルースモーカー」が発見されたが、この色の解明は今後の調査を待つ段階である。

== チムニー ==
'''チムニー'''は、[[海底]]から噴出する[[熱水]]に含まれる[[金属]]などが[[析出]]・[[沈殿]]してできる構造物。海底から柱状に突きだした構造物となり、柱の突端から金属や[[硫化水素]]等を多く含んだ黒い熱水をあたかも煙突のように噴出する様から名付けられた([[硫化物]]や金属成分の少ない白いチムニーも存在する)。[[プレート|海洋プレート]]の境界部、[[火山島]]周辺の海底で観察される。

本来、[[地質学]]の面からアプローチが行われてきたが、チムニー周辺に、本来、生物に有害であるはずの硫化水素や[[メタン]]などを材料に[[有機物]]を合成する熱水生物群集や、[[鎧]]のような[[硫化鉄]]の皮膚を持つ生物などが発見されるに至り、[[生物学]]的見地からも注目を浴びるようになった。チムニーの[[生態系]]はそれぞれに固有のもので、わずか数メートル程の距離の隣り合うチムニーでも生態が異なることが確認されている。まさに[[鉱床]]が造られている場所であり、有用金属の採取などからも注目を浴びている。

=== 外部リンク ===
*[http://www.gsj.jp/Muse/minitour/rm02/chimney.html 海底熱水鉱床:チムニー](地質標本館)

== 熱水噴出孔まわりの生物社会 ==
[[File:Nur04512.jpg|thumb|[[ブラックスモーカー]]の周りに棲息する[[チューブワーム]]。]]
[[File:Nur04512.jpg|thumb|[[ブラックスモーカー]]の周りに棲息する[[チューブワーム]]。]]


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この生態系に息づく動物相特有の珍しい例としては、[[鉄]]と有機物の[[うろこ]]で装甲した巻貝([[ウロコフネタマガイ]])や80°Cの水温でも生息できるポンペイワーム''Alvinella Pompeiana''がある。
この生態系に息づく動物相特有の珍しい例としては、[[鉄]]と有機物の[[うろこ]]で装甲した巻貝([[ウロコフネタマガイ]])や80°Cの水温でも生息できるポンペイワーム''Alvinella Pompeiana''がある。


熱水噴出孔周辺で発見された新種の生物は300種を超える<ref>{{cite web|last = Botos | first =Sonia | title = Life on a hydrothermal vent| url = http://www.botos.com/marine/vents01.html#body_4|accessdate=2008-05-14}}</ref>。
熱水噴出孔周辺で発見された新種の生物は300種を超える<ref>{{cite web|last=Botos|first=Sonia|title=Life on a hydrothermal vent|url=http://www.botos.com/marine/vents01.html#body_4|accessdate=2008-05-14}}</ref>。
[[ファイル:Bischoff_and_Rosenbauer,_1988_-_Liquid-vapor_relations.pdf|リンク=https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Bischoff_and_Rosenbauer,_1988_-_Liquid-vapor_relations.pdf|ページ=3|サムネイル|380〜415°Cの臨界領域における気液境界の実験結果]]

== 熱水噴出孔の海中探査 ==
[[1949年]]に[[紅海]]中部の海底を調査したところ特異な熱水床の存在が報告された。[[1960年代]]になると60 [[セルシウス度|°C]]の塩類を含む水とこれに関係する[[金属]]を含む[[泥]]の存在が確認された。熱い[[水溶液]]は活発な海底下の[[海溝#リフト|リフト]]から噴出していた。[[塩分濃度]]が高すぎて生物の生息は無理な環境であった<ref>Degens, Egon T. (ed.), 1969, ''Hot Brines and Recent Heavy Metal Deposits in the Red Sea,'' 600 pp, Springer-Verlag</ref>。この塩水と泥が[[貴金属]]や[[卑金属]]の供給源でありうるか現在調査中である。

海中の熱水噴出孔の一種である[[ブラックスモーカー]]は[[東太平洋海嶺]]の支脈にあたる[[ガラパゴス]]リフトのある海域で、海水温を調査中の海洋地質学者のグループが[[1976年]]に発見した。計測温度とその他の証拠から、地質学者はこの発見は熱水噴出孔からの噴出水であると結論付けるに十分な情報を得た。[[1977年]]、リフトに戻った地質学者は[[ウッズホール海洋研究所]]の潜水艇[[アルビン号]]を使って数々の熱水噴出孔を目視確認した。同年、Peter Lonsdaleは熱水噴出孔に関する初の論文を発表した。

[[2005年]]にはある鉱物資源調査会社が、[[ケルマディック諸島|ケルマディック島弧]]で3万5,000km<sup>2</sup>の調査を許可され、熱水噴出孔により形成された[[鉛]]・[[亜鉛]]・[[銅]]の[[硫化物]]の新しい鉱床たりうる海底硫黄鉱床を探査した。[[2007年]][[4月]]には中米[[コスタリカ]]沖合の[[太平洋]]における新しい熱水噴出孔海域([[ギリシア神話]]の怪物 [[メドゥーサ]] にちなんで命名された)の発見が発表された<ref>{{cite news | first= | last= | coauthors= | title=New undersea vent suggests snake-headed mythology | date=April 18 2007 | publisher= | url =http://www.eurekalert.org/pub_releases/2007-04/du-nuv041707.php | work =EurekaAert | pages = | accessdate = 2007-04-18 | language = }}</ref>。

[[2010年]][[4月6日]]、[[イギリス国立海洋学センター]]の研究チームが、[[カリブ海]][[ケイマン諸島]]沖合の[[ケイマン海溝]]で、世界で最も深い場所に位置する熱水噴出孔を発見した<ref name ="natio1">{{cite news |title=カリブの海底に世界最深の熱水噴出孔 |newspaper=[[ナショナルジオグラフィック協会|National Geographic News]] | date=2010-04-13 |url =http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2554/ |accessdate=2016-06-14}}</ref><ref name="natio2"/>。それまで確認されていた通常の熱水噴出孔の約2倍、最も深いとされたブラックスモーカーよりもさらに800m深い水深5,000mの海底にある<ref name ="natio1"/>。海洋探検家[[ウィリアム・ビービ]]([[:en:William Beebe]])にちなんで「ビービ(ビーブ噴出孔フィールド<ref name="afpbb"/>)」と名付けられたこの熱水噴出孔は、鉄と銅の鉱石で形成されたチムニーを持つブラックスモーカーのひとつである<ref name ="natio1"/><ref name="natio2">{{cite news |title=噴き出す黒煙、世界最深の熱水噴出孔 |newspaper=National Geographic News | date=2012-01-10 |url =http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/5472/ |accessdate=2016-06-14}}</ref>。水温は摂氏400度と推定され、周辺では目を持たず代わりに背中に光受容体を持つ新種の[[エビ|エビ類]]や白い触手を持つ新種の[[イソギンチャク|イソギンチャク類]]など発見が相次いでいる<ref name="afpbb">{{cite news |title=カリブ海の世界最深の噴出孔で新種続々発見、目のないエビなど |newspaper=[[AFPBB News]] | date=2012-01-12 |url =http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2850113/8279391?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics |accessdate=2012-01-12}}</ref>。

== チムニー ==
本来、[[地質学]]の面からアプローチが行われてきたが、チムニー周辺に、本来、生物に有害であるはずの硫化水素や[[メタン]]などを材料に[[有機物]]を合成する熱水生物群集や、[[鎧]]のような[[硫化鉄]]の皮膚を持つ生物などが発見されるに至り、[[生物学]]的見地からも注目を浴びるようになった。チムニーの[[生態系]]はそれぞれに固有のもので、わずか数メートル程の距離の隣り合うチムニーでも生態が異なることが確認されている。まさに[[鉱床]]が造られている場所であり、有用金属の採取などからも注目を浴びている。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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* [http://www.csa.com/discoveryguides/vent/review.pdf a good overview of hydrothermal vent biology, published in 2006]
* [http://www.csa.com/discoveryguides/vent/review.pdf a good overview of hydrothermal vent biology, published in 2006]
* [http://www.nsf.gov/od/lpa/news/press/01/pr0136.htm Images of Hydrothermal Vents in Indian Ocean- Released by National Science Foundation]
* [http://www.nsf.gov/od/lpa/news/press/01/pr0136.htm Images of Hydrothermal Vents in Indian Ocean- Released by National Science Foundation]
* [http://www.gsj.jp/Muse/minitour/rm02/chimney.html 海底熱水鉱床:チムニー](地質標本館)


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2020年8月29日 (土) 12:59時点における版

熱水噴出孔の一種、ブラックスモーカー
熱水噴出孔の音

熱水噴出孔(ねっすいふんしゅつこう、英語: hydrothermal vent)は地熱で熱せられたが噴出する大地の亀裂である。広義の熱水噴出孔としては温泉噴気孔間欠泉があげられるが、教義にはこれらの陸上にあるものではなく、海底環境、特に深海の熱水噴出孔(深海熱水噴出孔)のことを指す。

熱水噴出孔は一般的に、火山活動が活発なところ(発散的プレート境界海盆ホットスポット)で発見されている[1]。吹き出す熱水は数百度にも達する事があり、成分として重金属硫化水素を豊富に含むものも知られている。海底から噴出する熱水に含まれる金属などが析出沈殿してチムニーと呼ばれる構造物ができる場合もある。熱水の溶存成分によってチムニーから黒色や白色の煙が吹き出しているように見えるため、一部の熱水噴出孔は「ブラックスモーカー」や「ホワイトスモーカー」と呼称される場合もある。また、熱水噴出孔の作用によって形成された岩石および鉱石堆積物を熱水堆積物と呼ぶ。

深海の大部分と比べて、 熱水噴出孔周辺では生物活動が活発であり、噴出する液体中に溶解した各種の化学物質を目当てにした複雑な生態系が成立している。有機物合成をする細菌古細菌食物連鎖の最底辺を支え、そのほかに化学合成細菌と共生したり環境中の化学合成細菌のバイオフィルムなどを摂食するジャイアントチューブワーム二枚貝エビなどがみられる。

地球外では、木星衛星エウロパ土星の月エンケラドスでも熱水噴出孔の活動が活発であるとみられている[2][3]ほか、古代には火星面にも存在したと考えられている[4][5]

物理的特性

この相図では、緑の点線は融点を、青の線は沸点を示し、水の状態が圧力によってどのように変化するかを示しています。緑の実線は、一般的な物質の典型的な融点の挙動を示している。

深海熱水噴出孔は通常、東太平洋海嶺中部大西洋海嶺などの、2つの構造プレートが分岐し、マントルプリュームが上昇して新しい地殻が形成されてる場所で見られる[6]。熱水噴出孔から出てくる水は、主に近辺の火山層中の断層や多孔質堆積物を通じて染み込み火山性の地熱構造で熱せられた海水と、湧昇するマグマから放出されたマグマ水、の2種から構成される[7]。一方で噴気孔間欠泉といった陸上の熱水システムにおいては、循環する水の大部分は地表から熱水システムに浸透した天水(雨水)と地下水であり、一部で変成水マグマ水、堆積層中で塩類を溶解した形成塩水も含まれる。その割合は、それぞれの場所によって異なる。

一般的に深海の海水温は約2 °C (36 °F)程度であるのに対し、熱水噴出孔周囲の水温は60 °C (140 °F)になり[8]、最高で464 °C (867 °F) にも達する例が知られている[9][10]。深海ではその深さのため静水圧が高く、高温であっても水は期待にならずに液体の形で存在し、環境中で超臨界流体として存在していると考えられている。例えば、218気圧の環境であれば、純水の臨界点は375 °C (707 °F) である。さらに、純粋ではなく塩分を含む水の場合、高温と高圧の臨界点はさらに上昇する。海水(重量比で3.2%のNaClを含む)の臨界点は、298.5大気圧下で407 °C (765 °F)であり[11][12]、これは深さ2,960メートル (9,710 ft)の水圧環境下に対応する。したがって、この塩分濃度と深さの場合、熱水の温度が407 °C (765 °F)を超えると超臨界となる。さらに、地殻の相分離のために、熱水噴出孔から吹き出す流体中の塩分は、大きく変動することが知られている[13]。同一の圧力条件下において、塩分濃度の低い液体の臨界点温度は、海水よりも低く、純水よりも場合よりも高くなる。たとえば、280.5大気圧下での2.24%のNaCl溶液の臨界点温度は400 °C (752 °F)である。したがって、熱水噴出孔の最も高温の部分から出てくる水は、気体の物性と液体の物性の間の物理的性質を持つ、いわゆる超臨界流体である可能性がある[14][15]。 実際にいくつかの噴出孔において、超臨界状態が観察されている。しかしながら、熱水循環、鉱物堆積物形成、地球化学フラックス、または生物活性の点で、この超臨界がどのような意味を持っているのかは、まだよく分かってない。

チムニーの成長と熱水の例

熱水噴出孔によってはチムニー(煙突)とよばれる円柱状の構造物を形成することがある。超高温の熱水に溶解している鉱物が0°Cに近い海水と接触すると、接触面で化学反応が進み生成物が析出・沈殿してこのようなチムニーができる。噴出孔のチムニーの初期段階は、鉱物の無水石膏の堆積から始まる。次に、亜鉛などの硫化物が海水の境界面で析出してチムニーの隙間に沈殿し、時間の経過とともに多孔性が低下する。今までの研究から、30センチメートル (1 ft)程度のベントの一日あたりの成長が記録されている[16]。チムニーの例としては、オレゴン州の沖合にある高さ40mで折れてしまった通称『ゴジラ』が知られる。なかには高さ60mに達するものもある[17] 。また、2007年4月のフィジー沿岸沖の深海ベントの調査では、これらのベントが溶存鉄の重要な供給源であることが判明した[18]

ブラックスモーカーは、1979年に北緯21度の東太平洋海上で最初に発見された。

チムニー構造で黒色の熱水を噴出するものは、黒い煙を放出する煙突のように見えるため、ブラックスモーカーと呼ばれる。ブラックスモーカーは、海底にあるタイプの熱水ベントで、通常は海底(水深2500-3000 m)でよく見られるが、より浅層や深層でも発見されている[19]。ブラックスモーカーは通常、地殻から熱水に溶け混んだ高レベルの硫黄含有ミネラルや硫化物を含む粒子を放出しており、水は400℃以上の高温に達することもある。地球の地殻の下から過熱された水が海底を通過する際に幅数百メートルに広がり、近辺で複数のブラックスモーカーが形成される[19]。 冷たい海の水と接触すると、多くのミネラルが沈殿し、各通気孔の周りに黒い煙突のような構造を形成する。堆積した金属硫化物は、ゆくゆくは塊状の硫化鉱床になる可能性がある。 大西洋中央海嶺アゾレス諸島の一部のブラックスモーカーは、24,000μM鉄を含むレインボーベントフィールドなど、 金属含有量が非常に豊富なことが知られている[20]

ブラックスモーカーは、RISEプロジェクト中にスクリップス海洋研究所の研究者によって、1979年に東太平洋海嶺から発見され、ウッズホール海洋研究所の深海潜水艇ALVINを用いて観測された[21]。現在、ブラックスモーカーは大西洋太平洋に、平均2100mの深度で存在することが知られている。最も北に位置するブラックスモーカーは、 グリーンランドノルウェーの間の大西洋中央海嶺北緯73度の位置から、ベルゲン大学の研究者によって2008年に発見された、ロキの城(Loki's Castle)フィールドの5本のチムニーからなるクラスターである[22]。これらのブラックスモーカーは、地殻変動力が少ない安定した地殻領域にあり、熱水噴出孔のフィールドとしてはあまり一般的ではないため、興味がもたれている[23]。世界で最も有名なブラックスモーカーの一つはケイマントラフにあり、5,000 mの海面下に存在する[24]

一方で、ホワイトスモーカーと呼ばれるチムニーからは、バリウムカルシウムシリコンなどの明るい色のミネラルが放出される。 これらのベントは、おそらく熱源から一般に離れているため、プルームが低温になる傾向がある[25]

ブラックとホワイトのチムニーは、同じ熱水フィールドで共存する可能性があり、それぞれ一般的に、熱源に対して近位か遠位かで分かれる。 また、マグマ熱源がマグマの結晶化により熱源から次第に遠ざかり、次第に熱水がマグマ水ではなく海水に支配されるようになること、すなわち熱水域の衰退段階に対応する形で、ホワイトスモーカーは成立することもある。 このタイプのベントから吹き出す熱水はカルシウムが豊富で、主に硫酸塩( 重晶石と無水石膏)や炭酸塩に富む堆積物を形成する[26]

また、沖縄トラフの鳩間海丘では有人潜水調査船しんかい6500による探査で「ブルースモーカー」が発見されたが、この色の解明は今後の調査を待つ段階である[27]

熱水噴出孔周辺の生態系

かつては太陽エネルギーこそがあらゆる生命エネルギーの源であると考えられてきたが、一方で深海の生物は太陽光の恩恵を受けることができない環境に生息している。そのため熱水噴出孔周辺の生物群集は、太陽の光ではなく、それらが住んでいる環境中の堆積物や熱水中の化学物質にエネルギー源を依存する必要がある。以前の底生生物研究においては、熱水噴出孔周辺の生物のエネルギー獲得はは深海生物と同様にマリンスノーに依存していると考えられており、すなわちマリンスノーの大本である表層海域の植物、そして太陽に依存した生態系の一部とみなされていた。一部の熱水噴出孔周辺の生物は、たしかにこの太陽からのエネルギー源を消費するが、もし仮に太陽依存のシステムしか存在していないのであれば、熱水噴出孔周辺の生物はもっと疎になるはずである。しかしながら実際には、周囲の海底と比較して熱水噴出帯の生物密度は10,000〜100,000倍ほどもある。

ベント生物は食物を化学合成細菌に依存しているため、熱水ベント群集はそのような膨大な量の生命を維持することができる。 熱水噴出孔からの水は溶解したミネラルが豊富で、化学独立栄養細菌の大規模な集団をサポートする。 これらのバクテリアは硫黄化合物、特に硫化水素といった、ほとんどの生物種にとって有毒な化学物質を利用して、化学合成によって有機物を生産する。

生物学的コミュニティ

ブラックスモーカーの周りに棲息するチューブワーム

熱水噴出孔周辺の生物社会は一次生産者であるバクテリア古細菌に大きく依存している。熱水噴出孔から噴出する水は豊かな鉱物資源を溶解しており、有機物合成をするバクテリアの大量増殖が可能である。これらのバクテリアは各種硫化物から有機物を合成する。また、熱水噴出孔近傍の海底下に生息している好熱性の微生物も熱水に巻き込まれて大量に噴出している。多くはバクテリアだが、温度の上昇に伴いThermococcusMethanocaldcoccusを代表とした古細菌の割合が増加する。

バクテリアは増殖して厚いマット状に広がり、これを餌にする端脚類カイアシ類などが集まってくる。そして巻貝エビカニチューブワーム魚類タコなどより大きな生物とともに食物連鎖を形成する。このようにしてできる生態系は熱水噴出孔をエネルギーの供給源として存続し、太陽エネルギーに依存する地表の生態系とは異なる体系をつくる。ただし、この生物社会は太陽とは無関係に存在するといわれることが多いが、そのなかには光合成により生じた酸素に依存するものも混じっている。それ以外のものは太古と変わらぬ嫌気性生物である。

熱水噴出孔の動物と密接な関係にある微生物社会を嫌気性・金属耐性の面から計数観察した結果、対象とした熱水噴出孔周辺の動物相を支えるバクテリア社会の大部分に金属耐性があり嫌気的に金属還元すること、嫌気性金属呼吸テルル酸呼吸)が熱水噴出孔の動物相と共生するバクテリアにおいて重要なプロセスであるらしいことがわかる[1]

熱水噴出孔で無機物有機物から生命が誕生したという仮説も複数存在する。日本の海洋研究開発機構理化学研究所は、熱水噴出孔の周囲で微弱な電流を確認し、これが生命を発生させる役割を果たした可能性があるとの研究結果を2017年5月に発表した[28]

しかし、この仮説に対しては「熱水の組成には必須元素のマグネシウムが欠落している」という反論もある。

チューブワームは熱水噴出孔周りの生物社会では重要な位置にある。チューブワームは寄生生物のように養分を直接体組織に吸収する。チューブワームには口も消化管もなく、バクテリアを体内に寄生させる。チューブワームの体組織1gあたり1000万のバクテリアが寄生しているという。チューブワームは先端の赤い冠毛状の部分で硫化水素酸素二酸化炭素などを取り込み、特殊なヘモグロビンと結合させて、ワームと共生するバクテリアに供給する。その代償にこのバクテリア(イオウ酸化微生物)は有機化合物を合成してワームに供給する。熱水噴出孔に生息するチューブワームにはTevnia jerichonanaRiftia pachyptilaがある。

アメリカ領サモアナファヌア英語版(Nafanua)海底火山近くでは、ウナギばかりが固まって生息する通称Eel Cityが発見された[29]。ウナギが珍しいわけではないが、熱水噴出孔の主だった住人はすでに述べた無脊椎動物である。

この生態系に息づく動物相特有の珍しい例としては、と有機物のうろこで装甲した巻貝(ウロコフネタマガイ)や80°Cの水温でも生息できるポンペイワームAlvinella Pompeianaがある。

熱水噴出孔周辺で発見された新種の生物は300種を超える[30]

380〜415°Cの臨界領域における気液境界の実験結果

熱水噴出孔の海中探査

1949年紅海中部の海底を調査したところ特異な熱水床の存在が報告された。1960年代になると60 °Cの塩類を含む水とこれに関係する金属を含むの存在が確認された。熱い水溶液は活発な海底下のリフトから噴出していた。塩分濃度が高すぎて生物の生息は無理な環境であった[31]。この塩水と泥が貴金属卑金属の供給源でありうるか現在調査中である。

海中の熱水噴出孔の一種であるブラックスモーカー東太平洋海嶺の支脈にあたるガラパゴスリフトのある海域で、海水温を調査中の海洋地質学者のグループが1976年に発見した。計測温度とその他の証拠から、地質学者はこの発見は熱水噴出孔からの噴出水であると結論付けるに十分な情報を得た。1977年、リフトに戻った地質学者はウッズホール海洋研究所の潜水艇アルビン号を使って数々の熱水噴出孔を目視確認した。同年、Peter Lonsdaleは熱水噴出孔に関する初の論文を発表した。

2005年にはある鉱物資源調査会社が、ケルマディック島弧で3万5,000km2の調査を許可され、熱水噴出孔により形成された亜鉛硫化物の新しい鉱床たりうる海底硫黄鉱床を探査した。2007年4月には中米コスタリカ沖合の太平洋における新しい熱水噴出孔海域(ギリシア神話の怪物 メドゥーサ にちなんで命名された)の発見が発表された[32]

2010年4月6日イギリス国立海洋学センターの研究チームが、カリブ海ケイマン諸島沖合のケイマン海溝で、世界で最も深い場所に位置する熱水噴出孔を発見した[33][34]。それまで確認されていた通常の熱水噴出孔の約2倍、最も深いとされたブラックスモーカーよりもさらに800m深い水深5,000mの海底にある[33]。海洋探検家ウィリアム・ビービen:William Beebe)にちなんで「ビービ(ビーブ噴出孔フィールド[35])」と名付けられたこの熱水噴出孔は、鉄と銅の鉱石で形成されたチムニーを持つブラックスモーカーのひとつである[33][34]。水温は摂氏400度と推定され、周辺では目を持たず代わりに背中に光受容体を持つ新種のエビ類や白い触手を持つ新種のイソギンチャク類など発見が相次いでいる[35]

チムニー

本来、地質学の面からアプローチが行われてきたが、チムニー周辺に、本来、生物に有害であるはずの硫化水素やメタンなどを材料に有機物を合成する熱水生物群集や、のような硫化鉄の皮膚を持つ生物などが発見されるに至り、生物学的見地からも注目を浴びるようになった。チムニーの生態系はそれぞれに固有のもので、わずか数メートル程の距離の隣り合うチムニーでも生態が異なることが確認されている。まさに鉱床が造られている場所であり、有用金属の採取などからも注目を浴びている。

脚注

  1. ^ Colín-García, María (2016). “Hydrothermal vents and prebiotic chemistry: a review”. Boletín de la Sociedad Geológica Mexicana 68 (3): 599–620. doi:10.18268/BSGM2016v68n3a13. 
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  3. ^ “Spacecraft Data Suggest Saturn Moon's Ocean May Harbor Hydrothermal Activity”. NASA. (2015年3月11日). http://www.nasa.gov/press/2015/march/spacecraft-data-suggest-saturn-moons-ocean-may-harbor-hydrothermal-activity/index.html 2015年3月12日閲覧。 
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参考文献

関連項目

外部リンク