スイバ

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スイバ
Rumex acetosa cultivar 01.jpg
スイバ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
: ナデシコ目 Caryophyllales
: タデ科 Polygonaceae
: スイバ属 Rumex
: スイバ R. acetosa
学名
Rumex acetosa
L.
和名
スイバ
英名
Common Sorrel

スイバ(蓚、酸い葉、学名:Rumex acetosa)はタデ科の多年草。

名称[編集]

和名の由来は、茎や葉を口に入れて噛むと酸っぱいことから「酸(す)い葉」の意で名付けられた[1][2]ギシギシという地方名もあるが、ギシギシという標準和名を持つ植物は同じスイバ属(ルメックス属)の別種にもある。このほかにも地方によって、スカンポ[1][3]スカンボスイッパ[1][2]、スイコ[2]、ショッパグサ[2]、ネコノショッカラ(の塩辛)[2]、スイスイグサ[2]など、さまざまな別名でも呼ばれることもあり、その方言名の数は200を越えるといわれている[2]。ただし、スカンポはイタドリの方言名としても用いられることが多い[4]。英名からソレルとも呼ばれる。

特徴[編集]

北半球温帯に広く分布し[2]、日本では北海道から九州まで分布する[3]。日当たりの良い野原田畑、道端、あぜ道など人里近くにふつうに自生する[1][3]

冬の間は、葉は矢じり型でロゼット状に地面に広がっており、赤みを帯びるものが多い[3][4]。春になって温かくなると、赤みを帯びていた葉は緑色に変化する[4]。やがてが伸びると、草丈は30 - 100センチメートル (cm) ほどになる[3][4]根生葉は披針状長楕円形で長さは10 cm[3]。葉の付け根は矢尻型になり、上部の葉の基部は茎を抱く[3]

雌雄異株で、遅くから初夏(5 - 6月)にかけて、雄株は淡紫色の小花、雌株は紅紫色の小花を穂状に咲いて目立つ[1]。茎の先に総状花序を円錐状に出して、直径3ミリメートル (mm) ほどの小花がたくさんつく[3]。花は同じタデ科のギシギシによく似ていが、スイバの茎や葉は赤みを帯びているので区別がつく[4]。雄花は風で花粉を運ぶ風媒花で、大きな雄しべがぶら下がっていて、風に揺れながら花粉を飛ばす[5]。雌花の方は、花粉を受け止めるために細く分かれている縮れた感じの雌しべを花の外に出している[5]。食用にもされる若葉のころには、雄なのか雌なのか、株を見分けることはできない[6]。花が終わると、雌株には団扇をを連想させる小さな果実を多数つける[2]

田畑や道端に多くみられる(5月)

1923年木原均小野知夫によって、X染色体Y染色体を持つことが報告された。これは種子植物性染色体があることを初めて示した発見の一つである。スイバの性決定は、ショウジョウバエなどと同じく、X染色体と常染色体の比によって決定されている[5]

庭などでたくさん簡単に育成できる[1]

類似種に、小型で高さが20 - 50 cmほどになるヒメスイバ[3]高山植物タカネスイバなどがある[2]

利用[編集]

ポーランドのスイバのスープ

地上部の茎葉には、蓚酸蓚酸カリウムを含み、酸味の元になっている[1][4]。このほか、脂肪アスコルビン酸なども含んでいる[1]。蓚酸や蓚酸カリウムを大量に摂取すると、胃腸炎、出血性の下痢、腎炎などを起こす恐れがある[1]。根には、アントラキノン体であるクリソファノールエモジンクリソファノールアンスロンのほか、タンニンなどを含み、緩下作用がある[1]

料理[編集]

若い茎はそのまま食べることができる[1]日本では野生のものの新芽を山菜として先にイタドリ同様に食べるが、ヨーロッパでは古くから葉菜として利用され、野菜としての栽培品種はソレルやオゼイユと呼ばれる[6]。利用法は主にスープの実、サラダ、肉料理の副菜や付け合わせで、スイバを単体で調理するだけでなく、ホウレンソウやその他の葉菜類と混ぜて用いることもある。例えばフランス料理ではポタージュオムレツベニエピュレ、料理に添えるソースアイルランド料理ではスイバのパイギリシア料理では煮込み料理やピタ(ブレク風のパイ)、ブルガリア料理ではチョルバルーマニア料理ではサルマーレウクライナ料理ではスイバのボルシチロシア料理では緑のシチーの素材として好んで用いられる。

薬用[編集]

古代エジプトでは、食用のほかに薬草としても使われた。また、古代ギリシャ古代ローマでは利尿作用がある薬草として、特に胆石を下す効用があるとして利用された。この葉のハーブティーは、昔より解熱効果があるとして知られている。現在でも、うがい薬、火傷の手当などに使われている。ただしシュウ酸を多く含むので、大量に食べると中毒の恐れがある[7]

秋に地上部の茎葉が枯れ始めたころに、根茎や根を掘り上げて水洗いしたものを、3 - 5ミリメートル (mm) ほどの厚さで輪切りにしたものが生薬になり、酸模根(さんもこん)とよんでいる[1]

民間療法として、便秘には、酸模根1日量15グラムを約600 ccで半量になるまでとろ火で煮詰めた煎じ汁、食間3回に分けて服用する利用方が知られている[1]。昔から、魚の中毒にはスイバの生葉汁を約10 - 15 cc程度のむと良いとされていて[1]、水虫、たむしなどにもスイバの生葉汁で湿布しておくのがよいとされている[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 田中孝治 1995, p. 89.
  2. ^ a b c d e f g h i j 飯泉優 2002, p. 76.
  3. ^ a b c d e f g h i 菱山忠三郎 2014, p. 49.
  4. ^ a b c d e f 田中修 2007, p. 164.
  5. ^ a b c 稲垣栄洋 2010, p. 84.
  6. ^ a b 稲垣栄洋 2010, p. 85.
  7. ^ 北野佐久子『基本ハーブの事典』東京堂出版、2005年、84 - 85頁。

参考文献[編集]

  • 飯泉優『草木帖 —植物たちとの交友録』山と溪谷社、2002年6月1日、76頁。ISBN 4-635-42017-5
  • 稲垣栄洋『残しておきたいふるさとの野草』地人書館、2010年4月10日、82 - 85頁。ISBN 978-4-8052-0822-9
  • 小野知夫「高等植物の性決定と分化」『最近の生物学』第4巻、駒井卓木原均培風館、1951年、30 - 47頁。
  • 田中修『雑草のはなし』中央公論新社〈中公新書〉、2007年3月25日。ISBN 978-4-12-101890-8
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、89頁。ISBN 4-06-195372-9
  • 菱山忠三郎『「この花の名前、なんだっけ?」というときに役立つ本』主婦の友社、2014年10月31日、49頁。ISBN 978-4-07-298005-7