イタドリ

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イタドリ
Reynoutria japonica(Staude).jpg
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
: ナデシコ目 Caryopyllales
: タデ科 Polygonaceae
: ソバカズラ属 Fallopia
: イタドリ F. japonica
学名
Fallopia japonica
(Houtt.) Ronse Decr. (1988)
シノニム

F. j. var. compacta
Reynoutria japonica
R. j. var. compacta
R. j. f. compacta
Polygonum compactum
P. cuspidatum
P. c. var. compactum
P. c. f. compactum

英名
Japanese knotweed

イタドリ(虎杖、Fallopia japonica英語: Japanese knotweed)とは、タデ科多年生植物。山野や道端、土手などのいたるところで群生し、草丈は1.5メートルほどになる。雌雄別株で、夏から秋に細かい白花を咲かせる。春先の若芽は食用になる。

名称[編集]

和名イタドリの語源は、傷薬として若葉を揉んでつけると血が止まって痛みを和らげるのに役立つことから、「痛み取り」が転訛して名付けられたというのが通説になっている[1][2][3]平安時代初期の本草書『本草和名』(918年)には、イタドリの名前が記されている[3]。漢字(漢名)では「虎杖」とも書き[4]、軽くて丈夫なイタドリの茎がに使われ、茎の虎斑模様から「虎杖(こじょう)」とよばれたことによる[5]

別名は、スカンポ(酸模)[6][3]、イタンポ、ドングイ、スッポン、ゴンパチ、エッタン、ダンチ、タンジ[7]、スイバ[6]、サイタナ[7]など、地方によりさまざまな呼び名がある。俗にスカンポとよばれる植物は、イタドリの他にも見た目はまったく異なるが、同じタデ科のスイバを「スカンポ」[注釈 1]とよぶ地域もある[3]

分布・生育地[編集]

東アジア原産で、北海道から奄美諸島までの日本全土[4]台湾朝鮮半島中国[4]に分布する。ヨーロッパやアメリカでは本種が帰化して、強害草になっている[4]。日当たりの良い道ばた土手山野荒れ地など様々な場所で群生し、いたるところで見られる[1][8]。やや湿ったところを好むうえ、撹乱を受けた場所によく出現する先駆植物である。短い期間に生長を遂げて大きくなり[3]、谷間の崖崩れ跡などはよく集まって繁茂している。これは太く強靭で、生長の早い地下茎によるところが大きい。

世界の侵略的外来種ワースト100 (IUCN, 2000) 選定種の1つでもある。イタドリは生長が早く、日本からヨーロッパに導入されて土壌侵食の防止や、家畜の餌に利用された[5]。19世紀には、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトによって観賞用としてヨーロッパへ持ち込まれて外来種となり、特にイギリスでは旺盛な繁殖力から在来種の植生を脅かすうえ、コンクリートやアスファルトを突き破るなどの被害が出ている[9]。2010年3月、イギリス政府はイタドリを駆除するため、天敵の「イタドリマダラキジラミ」を輸入することを決める[10]

形態・生態[編集]

草丈は30 - 150センチメートル (cm)ほどになる大型の多年生草本[7]、肥沃な土地では高さが2メートル (m) に達することもある。

冬期は地上部のみが枯死して地下部の地下茎や根のみが越冬する[6]。春、タケノコのような赤紅色の新芽が地上から直立して生える[1]。茎は中空で、若いときは紅紫点があり、多数ある節は赤みを帯びて[6]、膜質で鞘状の托葉があり[8]、その構造はややに似ている。そのためイタドリの茎は軽くて丈夫で、短い期間でも生長が早い[5]

互生し、葉身は先が尖った卵形から広卵形で[8]、長さは6 - 15センチメートル (cm) 、幅は7 - 15 cm[6]、基部は切れたようにまっすぐな形をしている[4]。特に若いうちは葉に赤い斑紋が出る。葉の裏は粉白色にならない[6]

花期は夏から秋(7 - 10月)ころ[7]雌雄異株で、葉腋と枝先に白か赤みを帯びた小さなを多数つけた円錐花序をだして[8]、枝の上側に並んでつく[11]。花被片は萼片5枚のみで、花弁がない[6]。雄花は漏斗形で小さく、雄しべが萼片の間から飛び出すように長く発達しており、萼片は雄花よりも雌花の方が大きい[6]。また、白い雄花は数日で枯れ落ちる[6]。雌花は、先が5裂する[6]。特に花の色が赤みを帯びたものは、ベニイタドリ(メイゲツソウ)と呼ばれ、本種の亜種として扱われる。

雌株は、花が終わるとハート型の3稜ある果実ができ、秋に熟する[6][8]。果実は翼果で、種子を包む薄い3枚の翼は、雌花の花被片萼片)3個が痩果を包み込んで翼状に張り出したもので、風によって散布される[11]。痩果は3稜形、両端は尖っていて、表面がなめらかな暗褐色をしている[11]。そして春に芽吹いた種子は地下茎を伸ばし、各所に芽をだし[8]、群落を形成して一気に生長する。

一面に花が咲いていると、多くの昆虫が集まる。秋に昆虫が集まる花の代表的なものである。また、冬には枯れた茎の中の空洞を、の一種であるコメツガの幼虫や、アリの仲間が冬越しの部屋として利用しているのが見られる[5]イタドリハムシは、成虫も幼虫もイタドリの葉を食べる。

利用[編集]

山菜[編集]

春頃の紅紫色でタケノコ状の新芽・若い茎は「スカンポ」などと称して食用になり、根際から折り取って採取して皮をむき山菜とする[1][7][注釈 2]。また、やわらかい葉も食用にされている[1]。新芽は生でも食べられ、ぬらめきがあり珍味であると形容されている[8]。かつては子供が外皮をむいて酸味を楽しんだ[1]。この酸味はシュウ酸で、多少のえぐみもあり、そのまま大量摂取すると下痢をおこす原因になり、健康への悪影響も考えられ注意が必要となる[1][12]

山菜として採った新芽は、外皮を取り除いて生食するか、かるく湯通しして十分に水分を切ってから油炒めにして醤油・塩・胡椒で味付けしたり、短冊状に切って肉や魚などと一緒に煮付けにする調理法で食べられている[1]。また、塩漬けにして保存し、食べるときに水にさらして塩抜きして食べられている[1]

高知県では「イタズリ」とも称され、皮を剥ぎ、塩もみをして炒め、砂糖、醤油、酒、みりん、ごま油等で味付けし、鰹節を振りかける等の調理法で食べられている。和歌山県では「ゴンパチ」、兵庫県南但では「だんじ」とそれぞれ称され、食用にする。新芽を湯がいて冷水に晒し、麺つゆと一味唐辛子の出汁に半日ほど漬け、ジュンサイのようなツルツルとした食感がある。秋田県では「さしぼ」と称され、水煮にして味噌汁の具に使ったりする。岡山県では「さいじんこ」、「しゃじなっぽ」、「しゃっぽん」などとも称される。

山菜として本格的に利用するときには茹でて水にさらすことであく抜きをするが、そうするとさわやかな酸味も失われてしまう。高知県では、苦汁や苦汁成分を含んだあら塩で揉む。こうすると、苦汁に含まれるマグネシウムイオンシュウ酸イオンが結合し、不溶性のシュウ酸マグネシウムとなる。その結果、シュウ酸以外の有機酸は残したままシュウ酸だけを除去できる。

民間薬[編集]

根には、アントラキノン誘導体ポリゴニンを含み、加水分解することでエモジンエモジンメチルエーテルなどを生じる[1]。これら成分が、ゆるやかに下痢を起こす緩下作用、月経不順を整える通経作用、尿の出をよくする利尿作用として働く[1]。薬効は、緩下、利尿、通経、常習便秘、膀胱炎、膀胱結石、月経不順、産後の悪露に効用があるうえで老人や婦人にも安全とされ[8]、民間では、緩下薬として用いられている[1]

冬になる10 - 11月頃、地上部の茎葉が枯れた頃に根茎を掘り上げて採取し、水洗いして天日乾燥させたものは虎杖根(こじょうこん)という生薬になる[1][8]。便秘や月経不順には、虎杖根を1日量5 - 15グラムを500 - 600 ccの水で半量になるまで煎じ、食間3回に分けて服用するとよいとされている[1][8]。また、カンゾウといっしょに煎じて、咳を鎮めるために利用された[13]

若葉を揉んで擦り傷などで出血した個所に当てると多少ながら止血作用があり、痛みを和らげるのに役立つとされる[1]

虎杖根を採るための栽培は、丈夫で土地を選ばないので容易であるが、切断した根からも発芽し駆除が困難なため、露地栽培はしない方がよいとの見方がされている[8]

なお、生薬となるコジョウコン(イタドリの根。指定については茎も該当。)は厚生労働省が定める「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」[14]に収録されており、医薬品ではないサプリメントでは用いれなくなっている事情が存在する(なお、若芽については「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」[15]に収録されている。)。イタドリの根はレスベラトロールを比較的多く含み(英語版記事)、海外では廉価なレスベラトロールサプリメントの材料として用いられているが、日本ではこの事情により、イタドリの根・茎を用いた医薬品ではないレスベラトロールサプリメントは違法の扱いとなっている。

その他[編集]

戦時中、タバコの葉が不足した時にイタドリなどを代用葉としてタバコに混ぜた。インドや東南アジアでは、イタドリの葉を巻いたものを葉巻の代用とする。

イタドリに寄生するイタドリ虫(アズキノメイガ)は釣りの生き餌として使われる。

変種・近縁種[編集]

イタドリには変種(亜種)が多く、高山には花が紅色のベニイタドリ(メイゲツソウ)や、斑入りの園芸種もある[8]。北海道などの北方には、大イタドリの一種で近縁種にあたる大型のオオイタドリがある[4]

オオイタドリ Reynoutria sachalinensisシノニム Polygonum sachalinense
イタドリに似るが、葉の裏側がやや白っぽいことで区別される。名の通り大型で、その高さは3mに達する場合もある。葉も倍ほど大きい。イタドリ同様、若い茎は食用になる。果実はイタドリよりも翼はやや狭く、全体に大きめ[11]

文化[編集]

昔の子供の遊びとして、イタドリ水車がある。切り取った茎の両端に切り込みを入れてしばらく水に晒しておくとたこさんウィンナーのように外側に反る。中空の茎に木の枝や割り箸を入れて流水に置くと、水車のようにくるくる回る。

タデ科のイタドリやスイバは別名を「スカンボ(酸模)」と呼称し、北原白秋童謡に「酸模の咲く頃」がある。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 茎を折るとポコッと音が鳴り、食べると酸味があることから。
  2. ^ 米沢藩藩士莅戸善政が編纂した『かてもの』でも、食べられる野草として紹介されている。

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 稲垣栄洋『残しておきたいふるさとの野草』地人書館、2010年4月10日、195 - 198頁。ISBN 978-4-8052-0822-9
  • 大嶋敏昭監修『花色でひける山野草・高山植物』成美堂出版〈ポケット図鑑〉、2002年5月20日、44頁。ISBN 4-415-01906-4
  • 大嶋敏昭『花色でひける山野草の名前がわかる辞典』成美堂出版、2005年3月20日、56頁。ISBN 4-415-02979-5
  • 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年4月10日、196頁。ISBN 978-4-09-208303-5
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『草木の種子と果実』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2012年9月28日、107頁。ISBN 978-4-416-71219-1
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、63頁。ISBN 4-06-195372-9
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、21頁。ISBN 4-416-49618-4

外部リンク[編集]