イタドリ

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イタドリ
Fallopia-japonica(Staude).jpg
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
: ナデシコ目 Caryopyllales
: タデ科 Polygonaceae
: ソバカズラ属 Fallopia
: イタドリ F. japonica
学名
Fallopia japonica
(Houtt.) Ronse Decr. (1988)
シノニム

F. j. var. compacta
Reynoutria japonica
R. j. var. compacta
R. j. f. compacta
Polygonum compactum
P. cuspidatum
P. c. var. compactum
P. c. f. compactum

英名
Japanese knotweed

イタドリ(虎杖、痛取、Fallopia japonica英語: Japanese knotweed)とは、タデ科多年生植物。別名は、スカンポ(酸模)、イタンポ、ドングイ、スッポン、ゴンパチ、エッタン、だんち。ただし、スイバをスカンポと呼ぶ地方もある[注釈 1]

分布・生態[編集]

北海道西部以南の日本台湾朝鮮半島中国に分布する東アジア原産種。日当たりの良い道ばた、土手、山野、荒れ地など様々な場所で生育でき、いたるところで見られる[1][2]。やや湿ったところを好むうえ、撹乱を受けた場所によく出現する先駆植物である。谷間の崖崩れ跡などはよく集まって繁茂している。これは太く強靭で、生長の早い地下茎によるところが大きい。

世界の侵略的外来種ワースト100 (IUCN, 2000) 選定種の1つでもある。19世紀には、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトによって観賞用としてヨーロッパへ持ち込まれて外来種となり、特にイギリスでは旺盛な繁殖力から在来種の植生を脅かすうえ、コンクリートやアスファルトを突き破るなどの被害が出ている[3]。2010年3月、イギリス政府はイタドリを駆除するため、天敵の「イタドリマダラキジラミ」を輸入することを決める[4]

一面に花が咲いていると、多くの昆虫が集まる。秋に昆虫が集まる花の代表的なものである。また、冬には枯れた茎の中の空洞をアリなどが冬眠用の部屋として利用しているのが見られる。イタドリハムシは、成虫も幼虫もイタドリの葉を食べる。

形態[編集]

草丈は1.5メートルほどになる大型の多年生草本[1]、肥沃な土地では高さが2メートルほどまでなることもある。

春、タケノコのような赤紅色の新芽が地上から生える[1]。茎は中空で、若いときは紅紫点があり、多数ある節には膜質で鞘状の托葉があり[2]、その構造はややに似ている。互生で、広卵形で先が尖った葉を交互につけ[2]、特に若いうちは葉に赤い斑紋が出る。

雌雄異株で、夏から秋にかけて7 - 10月頃に開花する[1]おしべ花弁の間から飛び出すように長く発達しており、雌花はめしべよりも花弁の方が大きい。夏には葉腋と枝先に、白か赤みを帯びた小さな花を多数着けた花序をだす[2]。特に花の色が特に赤みを帯びたものは、ベニイタドリ(メイゲツソウ)と呼ばれ、本種の亜種として扱われる。

雌株には、3稜ある果実ができ秋に熟する[2]種子には3枚の翼があり、風によって散布される。そして春に芽吹いた種子は地下茎を伸ばし、各所に芽をだし[2]、群落を形成して一気に生長する。

利用[編集]

山菜[編集]

若い茎は柔らかく、春頃の紅紫色でタケノコ状の新芽は食用になり、根際から折り取って採取して皮をむき山菜とする[1][注釈 2]。また、やわらかい葉も食用にされている[1]。新芽は生でも食べられ、ぬらめきがあり珍味であると形容されている[2]。かつては子供が外皮をむいて酸味を楽しんだ[1]。この酸味はシュウ酸で、多少のえぐみもあり、そのまま大量摂取すると下痢をおこす原因になり、健康への悪影響も考えられ注意が必要となる[1][5]

山菜として採った新芽は、外皮を取り除いて生食するか、かるく湯通しして十分に水分を切ってから油炒めにして醤油・塩・胡椒で味付けしたり、短冊状に切って肉や魚などと一緒に煮付けにする調理法で食べられている[1]。また、塩漬けにして保存し、食べるときに水にさらして塩抜きして食べられている[1]

高知県では「イタズリ」とも称され、皮を剥ぎ、塩もみをして炒め、砂糖、醤油、酒、みりん、ごま油等で味付けし、鰹節を振りかける等の調理法で食べられている。和歌山県では「ゴンパチ」、兵庫県南但では「だんじ」とそれぞれ称され、食用にする。新芽を湯がいて冷水に晒し、麺つゆと一味唐辛子の出汁に半日ほど漬け、ジュンサイのようなツルツルとした食感がある。秋田県では「さしぼ」と称され、水煮にして味噌汁の具に使ったりする。岡山県では「さいじんこ」、「しゃじなっぽ」、「しゃっぽん」などとも称される。

山菜として本格的に利用するときには茹でて水にさらすことであく抜きをするが、そうするとさわやかな酸味も失われてしまう。高知県では、苦汁や苦汁成分を含んだあら塩で揉む。こうすると、苦汁に含まれるマグネシウムイオンシュウ酸イオンが結合し、不溶性のシュウ酸マグネシウムとなる。その結果、シュウ酸以外の有機酸は残したままシュウ酸だけを除去できる。

民間薬[編集]

根には、アントラキノン誘導体ポリゴニンを含み、加水分解することでエモジンエモジンメチルエーテルなどを生じる[1]。これら成分が、ゆるやかに下痢を起こす緩下作用、月経不順を整える通経作用、尿の出をよくする利尿作用として働く[1]。薬効は、緩下、利尿、通経、常習便秘、膀胱炎、膀胱結石、月経不順、産後の悪露に効用があるうえで老人や婦人にも安全とされ[2]、民間では、緩下薬として用いられている[1]

冬になる10 - 11月頃、地上部の茎葉が枯れた頃に根茎を掘り上げて採取し、水洗いして天日乾燥させたものは虎杖根(こじょうこん)という生薬になる[1][2]。便秘や月経不順には、虎杖根を1日量5 - 15グラムを500 - 600 ccの水で半量になるまで煎じ、食間3回に分けて服用するとよいとされている[1][2]。また、カンゾウといっしょに煎じて、咳を鎮めるために利用された[6]

若葉を揉んで擦り傷などで出血した個所に当てると多少ながら止血作用があり、痛みを和らげるのに役立つとされる[1]。「痛み取り」が転訛して名付けられたというのが通説で[1]、これが「イタドリ」という和名の由来になっている[7]

虎杖根を採るための栽培は、丈夫で土地を選ばないので容易であるが、切断した根からも発芽し駆除が困難なため、露地栽培はしない方がよいとの見方がされている[2]

その他[編集]

戦時中、タバコの葉が不足した時にイタドリなどを代用葉としてタバコに混ぜた。インドや東南アジアでは、イタドリの葉を巻いたものを葉巻の代用とする。

イタドリに寄生するイタドリ虫(アズキノメイガ)は釣りの生き餌として使われる。

変種・近縁種[編集]

イタドリには変種(亜種)が多く、高山には花が紅色のベニイタドリ(メイゲツソウ)や、斑入りの園芸種もある[2]。北方には、イタドリの一種で近縁種にあたるオオイタドリがある[2]

オオイタドリ Reynoutria sachalinensisシノニム Polygonum sachalinense
イタドリに似るが、葉の裏側がやや白っぽいことで区別される。名の通り大型で、その高さは3mに達する場合もある。葉も倍ほど大きい。イタドリ同様、若い茎は食用になる。

文化[編集]

昔の子供の遊びとして、イタドリ水車がある。切り取った茎の両端に切り込みを入れてしばらく水に晒しておくとたこさんウィンナーのように外側に反る。中空の茎に木の枝や割り箸を入れて流水に置くと、水車のようにくるくる回る。

タデ科のイタドリやスイバは別名を「スカンボ(酸模)」と呼称し、北原白秋童謡に「酸模の咲く頃」がある。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 茎を折るとポコッと音が鳴り、食べると酸味があることから。
  2. ^ 米沢藩藩士莅戸善政が編纂した『かてもの』でも、食べられる野草として紹介されている。

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 田中孝治 『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』 講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、63頁。ISBN 4-06-195372-9
  • 馬場篤 『薬草500種-栽培から効用まで』 大貫茂(写真)、誠文堂新光舎1996年9月27日、21頁。ISBN 4-416-49618-4

外部リンク[編集]