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越冬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

越冬(えっとう)とは、季節の変化がある地域において、生物が気温の低下する冬を乗り切ることである[1][2][3]。

また、南極に滞在するときや災害で住居が確保できないときなど特別な場合に、人間に対しても「越冬」、Winterizationの語が使われる[4][5]。

概説

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温帯において、気温が低下する冬を乗り切れるかどうかは、その生物がその地域を分布域にすることができるかどうかの重要な鍵となりうる[6]。地表に於いては生命の危機に及ぶほどの高温になることは少ないが、低温は活動を制約されるだけでなく、場合によっては生命の危機に至るからである[7]。

氷点下の気温では、体内の水分が氷となり、その体積変化や結晶のために細胞構造が破壊されるおそれがある[8]。そのような条件で越冬する生物には、体内の糖濃度を上げて凝固点を下げるなどの対応が見られる場合がある[9]。

動物の場合

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成虫で越冬するクロコノマチョウ[10]

昆虫の場合、生活史の上で、越冬する段階が決まっているものが多い[11]。幼虫で越冬するものを幼虫越冬[12]、成虫で越冬するものを成虫越冬[13]などと表現する。成虫で越冬するものはあまり多くない[14]。アキアカネのように卵で越冬するものもあれば[15]、モンシロチョウのように蛹で越冬するものもある[16]。

低温の時期を、不活発な状態で動かないで乗り切ることを冬眠という[17][18]。変温動物では、気温が下がれば当然不活発となるが、日が当たれば動き出すことも可能になる[19]。そこで、あえて日の当たらないところに潜り込んで、冬を過ごしてしまうのが冬眠である[20]。従って、冬に昆虫を探すには、斜面がいいとも言う[21]。恒温動物では、コウモリやヤマネはあえて体温を落とし、不活発な状態を作り出す[22]。

移動能力の大きいものでは、冬を暖かい地域に移動することで乗り切るものもある[23][24][25]。渡り鳥はその代表的な例である[26]。

植物の場合

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植物は、弱い部分を枯死させることで冬を生き抜く[27]。たとえば木本では葉を切り捨てるものが多い[27]。これを落葉という[27][28][29]。次の年に成長する新芽は厚い鱗片などで被われた冬芽となる[30]。草本ではこのほかに、地上部を枯死させ、地下茎や球根で生き延びるものや、種子のみが生き延びるものもある[31][32]。一部を捨てることをしない植物は常緑性という[33]。冬のある地域で常緑性のものは、より温暖な地域のものに比べ、背が低く、葉が硬くて厚いなどの特徴を持つ[34]。また、寒さに対して細胞内の糖分濃度を高めるものがあることも知られる[35][36]。細胞内が氷結しにくくなるための適応と考えられる。

ラウンケルの生活形というのは、植物が冬にどう対処するかを持って植物の生活の型を分ける試みである。

ガーデニングなどでは、冬越しという言葉が使われる[37]。

藁で囲うわらぼっち(藁囲い)、サーマルブランケットで植物を包む、藁で畑を覆う霜囲い、寒冷紗、マルチング、雪吊などが行われる[38][39][40][41]。

積極的利用

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冬の低温は、否定的な意味でとらえられがちだが、積極的にそれを利用しているものもある。たとえば、春に発芽する種子には、一度低温を経験しないと発芽しないものがある[42][43]。冬季の低温を、生活史を季節と同期させるために利用しているわけである[44]。類似の例は昆虫などにも知られる[45]。

むしろ問題となる低温でなく、日長を休眠解除のキーとする動物もある[46]。これは低温と日長がリンクしているだけに無意味でない[47]。それだけでなく、低温が毎年の変動を持つのに対して、日長は規則的であるから、生活史を暦に合わせるという点ではむしろ有効である[48][49]。

脚注

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  1. ↑ 『読売新聞』2020年11月8日 長野 東京朝刊 長野27頁「ライチョウ5羽 群れ形成 木曽駒ヶ岳 放鳥したヒナが成長=長野」(読売新聞東京本社)
  2. ↑ 『毎日新聞』2025年12月4日 地方版/千葉 15頁「ミツバチ:北のミツバチ、南房総で越冬 200箱が館山に /千葉」(毎日新聞東京本社)
  3. ↑ 『朝日新聞』2026年1月31日 朝刊 鹿児島全県・1地方27頁「羽寄せ合い、寒さ耐える 奄美、リュウキュウアサギマダラ /鹿児島県」(朝日新聞西部本社)
  4. ↑ 『朝日新聞』2004年12月2日 朝刊 山梨1 35頁「被災者、現実と向き合う(新潟県中越地震 現場を歩く:1)/山梨」(朝日新聞東京本社)
  5. ↑ 『毎日新聞』2024年3月9日 地方版/長野 21頁「南極地域観測隊:危険を避けて、正確に 南極地域観測隊、訓練を公開 東御 /長野」(毎日新聞東京本社)
  6. ↑ 『読売新聞』2014年9月5日 全国版 東京朝刊 解説13頁「代々木公園でデング熱 海外の感染者から拡大か(解説)」(読売新聞東京本社)
  7. ↑ 『読売新聞』2025年3月28日 山形 東京朝刊 山形27頁「サクランボの凍結、霜被害防ぐ 広報キャラバン出発式=山形」(読売新聞東京本社)
  8. ↑ 『読売新聞』2014年6月2日 全国版 大阪朝刊 科学15頁「解凍後も変わらずおいしい 「不凍たんぱく質」効果 味・食感・鮮度保てます」(読売新聞大阪本社)
  9. ↑ 『読売新聞』2018年1月25日 全国版 東京朝刊 生活B 18頁「[探る]冬野菜 寒いとなぜ甘く? 糖分増やし凍結防ぐ」(読売新聞東京本社)
  10. ↑ 猪又 (2006)、230頁
  11. ↑ 『毎日新聞』2001年3月8日 地方版/岐阜 19頁「越冬中の昆虫を市民らが観察会--美濃加茂で開く /岐阜」(毎日新聞中部本社)
  12. ↑ 『毎日新聞』2001年12月1日 地方版/北海道 26頁「[おもしろ昆虫観察記]/44 モンキチョウ /北海道」(毎日新聞北海道支社)
  13. ↑ 『読売新聞』2003年11月20日 鳥取 大阪朝刊 鳥取2 26頁「[レッドデータ鳥取]マルガタゲンゴロウ=鳥取」(読売新聞大阪本社)
  14. ↑ 『毎日新聞』2004年8月18日 地方版/長野 15頁「[信州・生き物探訪]/14 ミヤマシロチョウ(東御市・湯の丸高原)/長野」(毎日新聞東京本社)
  15. ↑ 尾園 (2012)、388頁
  16. ↑ 猪又 (2006)、133頁
  17. ↑ 『読売新聞』2013年7月7日 栃木 東京朝刊 栃木2 34頁「オオムラサキ舞い上がれ 那須烏山で40匹を放蝶=栃木」(読売新聞東京本社)
  18. ↑ 『朝日新聞』2019年9月4日 朝刊 北九・1地方23頁「「かべちょろ」ってなんですか 地域・世代で異なり いのちのたび博物館が調査/福岡県」(朝日新聞西部本社)
  19. ↑ 『毎日新聞』2001年3月10日 地方版/北海道 24頁「[おもしろ昆虫観察記]/16 クジャクチョウ /北海道」(毎日新聞北海道支社)
  20. ↑ 『読売新聞』2011年2月16日 愛知 中部朝刊 名市内31頁「春を待つ松1700本 岡崎でこも外し=愛知」(読売新聞中部支社)
  21. ↑ 『朝日新聞』1998年11月7日 夕刊 2社12頁「タガメ、水辺離れて越冬 発信器つけ確認 姫路市立水族館 【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
  22. ↑ 『読売新聞』2007年12月30日 全国版 東京朝刊 社会23頁「[人物語]人生再起、コウモリのお陰 半身マヒの学芸員「研究ささげる」」(読売新聞東京本社)
  23. ↑ 『朝日新聞』2016年2月17日 朝刊 北海道総合24頁「♪この〜木 なんの木 ワシらの木♪ オオワシなど知床に越冬飛来中 /北海道」(朝日新聞北海道支社)
  24. ↑ 『毎日新聞』2024年11月10日 西部朝刊 社会面26頁「クロツラヘラサギ:舞い降りた 冬の使者 福岡」(毎日新聞西部本社)
  25. ↑ 『朝日新聞』2024年12月8日 朝刊 鹿児島全県・1地方25頁「旅鳥ハマヒバリ、熊本県内で初確認 九州では対馬・トカラで観察記録 /鹿児島県」(朝日新聞西部本社)
  26. ↑ 『毎日新聞』2025年4月29日 地方版/北海道 19頁「マガン:ロシアまで一休み 美唄・マガン飛来 /北海道」(毎日新聞北海道支社)
  27. 1 2 3 『朝日新聞』2024年8月22日 夕刊 環境4頁「常緑植物の葉、いつ枯れる? 京大研究者、4年半かけ3300枚超観察」(朝日新聞東京本社)
  28. ↑ 『読売新聞』2026年1月21日 石川 東京朝刊 石川19頁「春待つロウバイ ほころぶ 小松=石川」(読売新聞東京本社)
  29. ↑ 『朝日新聞』2026年1月24日 朝刊 群馬全県・1地方27頁「枯れ葉の燃えかす、地面黒く変色 妙義山、強烈な炎の爪痕 現場へ /群馬県」(朝日新聞東京本社)
  30. ↑ 『読売新聞』1999年1月9日 全国版 東京朝刊 一面1頁「[編集手帳]冬芽観察会」(読売新聞東京本社)
  31. ↑ 『毎日新聞』2017年11月30日 地方版/広島 24頁「ツクシ:季節外れ 春の使者もう到来? 福山 /広島」(毎日新聞大阪本社)
  32. ↑ 『読売新聞』2025年2月16日 兵庫 大阪朝刊 神戸21頁「サギソウ 年中満開 姫路・手柄山温室植物園 栽培技術確立=兵庫」(読売新聞大阪本社)
  33. ↑ 『読売新聞』2024年3月7日 愛媛 大阪朝刊 愛媛26頁「観賞用ユーカリ栽培拡大 高齢農家「米、ミカンより育てやすい」=愛媛」(読売新聞大阪本社)
  34. ↑ 『毎日新聞』2014年2月9日 地方版/高知 22頁「土佐の百科事典:クロガネシダ(チャセンシダ科) /高知」(毎日新聞大阪本社)
  35. ↑ “果樹試験場の取り組み 常緑果樹研究担当(品種開発)” (PDF). 佐賀県. 2026年2月15日閲覧。
  36. ↑ “第1章 弱剪定と後期重点摘果” (PDF). 農業・食品産業技術総合研究機構. 2026年2月15日閲覧。
  37. ↑ 最新版 はじめての果樹の育て方 著:高橋栄治 年:2021、p202
  38. ↑ “植物たちの冬支度を知って、冬も花や緑を福岡で楽しもう!|フクリパ”. フクリパ|福岡の今と未来をつむぐ. 2023年2月9日閲覧。
  39. ↑ “Overwintering tender plants: wrapping / RHS Gardening” (英語). www.rhs.org.uk. 2023年2月9日閲覧。
  40. ↑ “Overwintering tender plants: lifting or mulching / RHS Gardening” (英語). www.rhs.org.uk. 2023年2月9日閲覧。
  41. ↑ Cox, Martyn. “It's a wrap! Simple tricks to keep your plants snug in the cold months”. Mail Online. 2023年2月9日閲覧。
  42. ↑ 『読売新聞』1997年9月19日 全国版 大阪夕刊 夕生2 7頁「[花そだて]球根の開花には低温が必要 11月までに植え付け、水やりは昼前に」(読売新聞大阪本社)
  43. ↑ 『読売新聞』2025年3月6日 大阪 大阪朝刊 市内28頁「梅の花 ようやく春告げ 大阪城公園見頃 1か月遅れ=大阪」(読売新聞大阪本社)
  44. ↑ 『読売新聞』2026年1月15日 千葉 東京朝刊 千葉21頁「寒空に 咲いた咲いた 船橋・アンデルセン公園=千葉」(読売新聞東京本社)
  45. ↑ 『朝日新聞』1995年11月17日 夕刊 科学11頁「カイコの卵に"タイマー"機能 たんぱく質が2週間で活性化」(朝日新聞東京本社)
  46. ↑ 『読売新聞』2004年9月21日 群馬 東京朝刊 群馬2 33頁「[ぐんまの虫と自然](15)季節型って何?(連載)=群馬」(読売新聞東京本社)
  47. ↑ 『朝日新聞』2016年4月22日 朝刊 茨城全県・2地方28頁「(花のある暮らし:126)イングリッシュラベンダー 黄金週間は香り最高 /茨城県」(朝日新聞東京本社)
  48. ↑ 『朝日新聞』2021年2月7日 朝刊 鳥取全県・1地方15頁「(虫にまつわるエトセトラ:22)オオヒメグモ 絶食し、各地で越冬中 /鳥取県」(朝日新聞大阪本社)
  49. ↑ 『朝日新聞』2022年12月4日 朝刊 鳥取全県・1地方27頁「(虫にまつわるエトセトラ:44)キタキチョウ 活発な交尾、越冬のため? /鳥取県」(朝日新聞大阪本社)

参考文献

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  • 猪又敏男(編・解説)、松本克臣(写真)『蝶』山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年6月。ISBN 4-635-06062-4。 
  • 尾園暁、川島逸郎・二橋亮『日本のトンボ』文一総合出版〈ネイチャーガイド〉、2012年6月19日。ISBN 978-4-8299-0119-9。 

関連項目

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