ヤマネ

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ヤマネ
ヤマネ
ヤマネ Glirulus japonicus
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 齧歯目 Rodentia
: ヤマネ科 Gliridae
亜科 : ヤマネ亜科 Glirinae
: ヤマネ属 Glirulus
: ヤマネ G. japonicus
学名
Glirulus japonicus (Schinz, 1845)[2]
和名
ヤマネ[2][3]
英名
Japanese dormouse[2]

ヤマネ(Glirulus japonicus)は、哺乳綱齧歯目ヤマネ科ヤマネ属に分類される齧歯類。現生種では本種のみでヤマネ属を構成する。別名ニホンヤマネ[4][5]

分布[編集]

日本本州四国九州島後固有種[1][2][4][6]

種小名japonicusは「日本の」の意。インターネットを用いた近年(1995 - 2011年)の分布調査では本州・四国・九州の各都道府県で確認・撮影例があったが、大阪府・岡山県・香川県・千葉県では確認例はなかった[7]

形態[編集]

頭胴長(体長)6.8 - 8.4センチメートル[2][4]。尾長4.4 - 5.4センチメートル[2][4]体重は夏季には14 - 20グラムだが、冬眠前には34 - 40グラムに達する個体もいる[2]。尾には約2センチメートルの体毛が房状に伸長する[2]。背面は淡褐色で[2]、腹面の毛衣は白がかった褐色[4]。背面には暗褐色の縦縞が入る[2][4]。眼の周囲は暗褐色[2]

交尾栓をもつ。

分類[編集]

同属とされる化石種が、ヨーロッパの3,000,000年前の地層から発見されている[5]。2007年に発表されたヤマネ科の核DNAの3遺伝子座の分子系統推定では、本属とオオヤマネ属は25,000,000年前に分岐したという解析結果が得られている[8]

日本が大陸と地続きで温暖な時代に侵入した遺存種と考えられている[6]。山口県にある500,000年前の地層から、本種の化石が発見されている[5]。2012年に発表された61体の標本を用いたミトコンドリアDNAシトクロムbおよびY染色体上のSRY遺伝子の分子系統推定では、大きく東北(青森県から福島県)・関東(福島県から関東地方・静岡県)・紀州(岐阜県・和歌山県)・山陰(兵庫県・福井県)・四国・九州(島根県・広島県・山口県および九州)・赤石(長野県飯田市および静岡県静岡市)・白山・隠岐の9つの個体群に分かれるという解析結果が得られた(ただし石川県白山産と島根県隠岐の島産の標本はそれぞれ1体ずつしかなく、SRY遺伝子の解析では紀州と山陰は同じ系統という解析結果が得られている)[9]

集団ごとに食性や体色、冬眠期間、繁殖期間、出産回数などが異なっており、ほかの種類では別種となってもおかしくないとの指摘もある[10]

生態[編集]

低山地から亜高山にかけての森林に生息する[2]。樹上棲で[1]、細い枝はぶらさがりながら移動する[5]。枝の間を跳躍したり、後肢だけで樹上にぶら下がることもある[5]夜行性[1][2][4]浅間山麓個体群ではオス2ヘクタール、メス1ヘクタール弱の行動圏内で生活するという報告例がある[2]樹洞にコケや樹皮を集めた巣を作るが[2]、岩壁や岩の割れ目・スズメバチ類の古巣・後述するように山小屋や巣箱に巣をつくることもある[5]。尾を強く掴むと体毛と皮膚が抜け落ちて骨だけになり、外敵から襲われた時に役立つと考えられている[5]。平均気温が9℃以下まで下がると、樹洞や腐った木の樹皮の隙間・地中・落ち葉の下などで冬眠する[5]。例として浅間山麓や三ツ峠山では10月から翌4月、和歌山では11月から翌2月に冬眠する[5]。複数個体が集まって冬眠することが多い[5]。冬眠中は食事を取らず秋季まで蓄えた体内の脂肪を消費し、外気温にあわせて低体温を維持(0℃以下に下がることはない)し呼吸数や心拍数も低下させる[5]

食性は雑食で、主にヤママユなどの鱗翅類・セミ類・トンボ類・カナブン・ニセノコギリカミキリなどの昆虫を食べ、クモも食べる[5]果実、鳥類の卵なども食べる[1][2]。果実はアケビサルナシヤマブドウなどを食べる[5]。果実は皮を残して、中身だけを食べる[5]

繁殖様式は胎生。飼育下では冬眠が明けて2週間後に交尾した観察例がある[5]。妊娠期間は平均33日[5]。1回に主に3 - 5頭、最大7頭の幼獣を産む[2]。生後10 - 15日で開眼し、生後20日で自分で食物を食べるようになる[5]。寿命は3年で、飼育下では8年[2]


冬眠中の心拍数は一分間に50-60回。 冬眠中でも、筋肉や血液がガチガチに凍る前に危険を知らせるスイッチのようなものがある。

人間との関係[編集]

丸まって冬眠する様子からマリネズミ、コオリネズミの俗称もある[4][5]

山小屋や巣箱に営巣することもあり、山小屋にある布団やタンスの中で冬眠することもある[5]。冬に木を切ると、冬眠中のヤマネが転がり出てくることがあることから、林業に携わる人々は、ヤマネを山の守り神として大切にしてきた。

日本では1975年に国の天然記念物に指定されている[2]

出典[編集]

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  1. ^ a b c d e Cassola, F. 2016. Glirulus japonicus. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T9246A22222495. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-2.RLTS.T9246A22222495.en. Downloaded on 05 March 2020.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 石井信夫 「ヤマネ」『日本の哺乳類【改訂2版】』阿部永監修、東海大学出版会、2008年、145頁。
  3. ^ 川田伸一郎, 岩佐真宏, 福井大, 新宅勇太, 天野雅男, 下稲葉さやか, 樽創, 姉崎智子, 横畑泰志世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  4. ^ a b c d e f g h 遠藤秀紀 「ニホンヤマネ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、175頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 湊秋作 「ニホンヤマネの生態」『動物大百科 5 小型草食獣』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社、1986年、96-97頁。
  6. ^ a b 加藤陸奥雄、沼田眞、渡辺景隆、畑正憲監修 『日本の天然記念物』、講談社1995年、627頁。
  7. ^ 杉山昌典,門脇正史 「インターネットを活用したヤマネGlirulus japonicusの全国分布調査」『哺乳類科学』54巻 2号、日本哺乳類学会、2014年、269-277頁。
  8. ^ Mitsuo Nunome, Shumpei P. Yasuda, Jun J. Sato, Peter Vogel, Hitoshi Suzuki, "Phylogenetic relationships and divergence times among dormice (Rodentia, Gliridae) based on three nuclear genes," Zoologica Scripta, Volume36, Issue 6, 2007, Pages 537-546.
  9. ^ Shumpei P. Yasuda, Manami Iwabuchi, Haruka , Shusaku Minato, Kunihiro Mitsuishi, Kimiyuki Tsuchiya, & Hitoshi Suzuki, "Spatial Framework of Nine Distinct Local Populations of the Japanese Dormouse Glirulus japonicus Based on Matrilineal Cytochrome b and Patrilineal SRY Gene Sequences," Zoological Science, Volume 29, Number 2, Zoological Society of Japan, 2012, Pages 112-120.
  10. ^ 湊秋作『ニホンヤマネ』東京大学出版会、2018年、29頁。
  • 中島福男 『日本のヤマネ[改訂版]』 (2006年3月1日刊行、信濃毎日新聞社)ISBN 9784784070176
  • 湊秋作 『ヤマネって知ってる?-ヤマネおもしろ観察記』 (2000年10月刊行、築地書館)ISBN 9784806712138
  • 小宮輝之 『日本の哺乳類』 学習研究社<フィールドベスト図鑑>、2002年、P79

関連項目[編集]