ミツバ

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ミツバ
Cryptotaenia japonica1.jpg
ミツバの花
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : キキョウ類 campanulids
: セリ目 Apiales
: セリ科 Apiaceae
: ミツバ属 Cryptotaenia [1][2]
: C. japonica
亜種 : ミツバ C. japonica subsp. japonica [3]
学名
Cryptotaenia canadensis (L.) DC.
subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz. (1933)[3][4]
シノニム
和名
ミツバ、ミツバゼリ
英名
Japanese honeywort
Japanese parsley[8]
Mitsuba[8]
honewort[9]
wild-chervil[9]

ミツバ(三つ葉[8]、野蜀葵、学名: Cryptotaenia canadensis subsp. japonica)は、セリ科ミツバ属多年草和名由来が3つに分かれている様子から。さわやかな香りが特徴の香味野菜ハーブ)で、と葉が食用される。

特徴[編集]

日本原産[8]北海道から沖縄までの日本各地、及び中国朝鮮半島サハリン南千島等の東アジアに広く分布し[10]、山地の日陰に自生する。日本には古来から自生している野菜で、1本の茎に3枚の葉がついていることから「三つ葉」の名がつく[11]。高さは40センチメートル (cm) ほど。6 - 8月に5枚の花弁からなる白い小さなを咲かせる。葉の形状は卵形で先が細くなり尖っている。互生し、3枚からなる複葉である。縁にはぎざぎざとした重鋸歯がある。全体にさわやかな香気を有する[9]

種類[編集]

市場に流通するミツバは、野生ミツバを栽培方法の違いによって3種類に改良したもので[8]、大別すると、畑などで育つ「根三つ葉」と、水耕栽培される「糸三つ葉」、灰汁が少ない「切り三つ葉」がある。元の品種に違いはなく、栽培方法によって葉や茎の見た目、香りの強さに違いを出している[8]

  • 根三つ葉(根ミツバ) - 旬は春で、根をつけたまま出荷されるもので、最も野生種に近く、他の三つ葉よりも香りや風味が強くて栄養価も高く、歯触りがしっかりしているのが特徴。芽を土寄せして軟化栽培しているので、根元だけが白い[8]。一般の青菜のような使い方ができ、お浸し、吸い物、卵とじ、揚げ物、炒め物に向く[12][8]。シャキシャキした歯触りが関東で好まれる[9]
  • 糸三つ葉(糸ミツバ) - 根にスポンジがついて水耕栽培されるミツバで、通年市場に出回る。密植して茎を細く育てている[8]。栄養価が高く、食感と香りは根三つ葉と切り三つ葉の中間くらいで、用途は丼物や吸い物など広く使われる[12]。主に関西で使われている[8]。茎が緑色で、別名「青ミツバ」ともよばれる[8]
  • 切り三つ葉(切りミツバ) - 旬は冬で、葉の緑色が薄く、茎が細くて白く、香りが穏やかで、葉も茎ともやわらかく口当たりがよいのが特徴。軟化栽培で根を切り取っているため、茎全体が白い[8]。茶碗蒸しや吸い物の彩りに適している[12]。関東を中心に雑煮にも使われる[8]

日本での栽培[編集]

江戸時代から栽培され、現在では主にハウス水耕栽培したものが周年出荷されており、山菜としてはから初夏が旬である。野生のものは一般的に、ハウス栽培のものよりも大きく香りも強い[13]が、筋張っているものもある。またアントシアニンを含む赤色のミツバも存在する。

種から育てられるミツバは、1年のうちで2回栽培でき、春まきして夏に収穫(4 - 8月)する方法と、秋まきして晩秋に収穫(9 - 12月)する方法がある[12]。根株は水耕栽培することができ、この場合は通年栽培が可能である[12]。栽培適温は10 - 20度とされ、連作も可能な作物である[12]

種は水に一晩浸し、新聞紙なとに広げて生乾きにした後に種をまく[12]。用土は浅い溝をつけて筋まきにし、種まき後は覆土せずに軽く手で押さえて静かに水やりをする[12]。芽が出たら間引きしながら育てていき、株間を4 - 5センチメートル (cm) 間隔になるようにする[12]。追肥は10日に1度の間隔で液肥を施し、夏場は日陰にして管理する[12]。草丈が15 cmほどになったら、根を残して株元から切って、必要な分だけ収穫する[12]。残した根株に追肥を行うことで新たな芽が出て、長期間収穫することができる[12]。家庭では、スーパーなどに売られている根つき三つ葉を、株元から5 cmほど残して切り、少量の液肥を入れた水に差して明るい窓辺に置くと、やがて新しい葉が再生して、周年栽培もできる[12]

生産地[編集]

ミツバは、収穫後にすぐに品質が落ち始める軟弱野菜の一つで、消費者のもとにすぐ届くような近郊農業で生産される作物である[14]。日本の主な産地は、茨城県埼玉県千葉県静岡県愛知県などである[15]

2019年度(令和元年度)の日本全体の年間生産量は1万4000トン (t) 、作付面積は891ヘクタール (ha) である[14]。都道府県別の収穫量割合は、千葉県 19%、愛知県 13%、茨城県 12%となっており、この3県で全国シェアの50%以上を占める[14]。市町村別では、大分市(大分県)が最も収穫量・出荷量ともに最多で、これに浜松市(静岡県)、愛西市(愛知県)が続く[16]。日本全体のミツバの生産量は年々減少する傾向にあり、過去14年で約24%の減少、作付面積も約28%減少しているが、単位面積当たりの収量は微増している[15]

利用[編集]

切りみつば 葉 生[17]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 66 kJ (16 kcal)
4.0 g
食物繊維 2.5 g
0.1 g
1.0 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(8%)
61 µg
(7%)
730 µg
チアミン (B1)
(3%)
0.03 mg
リボフラビン (B2)
(8%)
0.09 mg
ナイアシン (B3)
(3%)
0.4 mg
パントテン酸 (B5)
(6%)
0.29 mg
ビタミンB6
(3%)
0.04 mg
葉酸 (B9)
(11%)
44 µg
ビタミンC
(10%)
8 mg
ビタミンE
(5%)
0.7 mg
ビタミンK
(60%)
63 µg
ミネラル
ナトリウム
(1%)
8 mg
カリウム
(14%)
640 mg
カルシウム
(3%)
25 mg
マグネシウム
(5%)
17 mg
リン
(7%)
50 mg
鉄分
(2%)
0.3 mg
亜鉛
(1%)
0.1 mg
(4%)
0.07 mg
セレン
(1%)
1 µg
他の成分
水分 93.8 g
ビオチン(B7 1.9 µg

軟白栽培品
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した。
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

葉と茎が食用にされる。野菜としてのは、糸三つ葉が通年、根三つ葉が3 - 4月、切り三つ葉が12 - 2月といわれている[11]。葉の緑色が鮮やかで、茎とともに変色がなく、全体にピンとして瑞々しいものが市場価値の高い良品とされる[11][8]。 昔から野生種を食用にしていたといわれ、現代では見た目のかわいらしさとさわやかな香りを生かして、様々な和風料理に彩りを添えるために重宝されている[11]。 刻んで薬味にしたり、おひたし和え物とするほか、吸い物鍋物茶わん蒸し雑煮天ぷら丼物の具として広く用いられる[9]。調理の下ごしらえで茹でる際には、火の通りが早く茹ですぎると風味が損なわれる食材のため、短時間で手早く茹でてすぐに水にとって冷ます[12]。冷まし方が足りなかったり、水につけすぎると、緑色が変色したり、栄養素が逃げる原因となる[12]

栄養素[編集]

水耕栽培されている糸三つ葉や切り三つ葉に比べて、農地栽培されている根三つ葉は栄養価が高く、特にβ-カロテンカリウムカルシウムを多く含む緑黄色野菜である[11][8]。根三つ葉のビタミンC含有量は、糸三つ葉の1.5倍、鉄は約2倍含まれている[11]。3種のミツバのうち、糸三つ葉、根三つ葉、切り三つ葉の順にカロテン量が多いが、糸三つ葉のカロテンは可食部100グラム (g) 中に3200マイクログラム (μg) 含まれ、これは同じセリ科のセリを大きく凌ぐ量で、切り三つ葉でも730 μgも含まれている[9]。ミツバに含まれるこれら栄養素は、貧血予防、疲労回復、肌荒れ予防に有効といわれている[11]。また、ミツバの香り成分には、神経を鎮める作用や不眠改善、食欲増進作用があるといわれている[11][8]

保存[編集]

日持ちしない食材であるため、入手したらできる限り早く食べきるのが望ましい[11][8]。使い残しなどで保存する場合は3 - 4日程度を限度に、糸三つ葉は根を切り離して茎を2 - 3等分にして、濡らしたキッチンペーパーなどを敷いた保存容器に入れて冷蔵する[11]。根三つ葉は、洗わずに濡れたキッチンペーパーで根元を包み、ポリ袋に入れて乾燥防止して冷蔵する[11][8]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 米倉浩司 『高等植物分類表』(重版)北隆館、2010年。ISBN 978-4-8326-0838-2 
  2. ^ 大場秀章(編著) 『植物分類表』(第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4 
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis (L.) DC. subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月29日閲覧。
  4. ^ "'Cryptotaenia canadensis subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 1704252. 2012年7月29日閲覧
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia japonica Hassk.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月29日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis auct. non (L.) DC.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月29日閲覧。
  7. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis (L.) DC. var. japonica (Hassk.) Makino” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月29日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 170.
  9. ^ a b c d e f 講談社編 2013, p. 22.
  10. ^ 山岸 喬 『北海道 薬草図鑑 野生編』北海道新聞社、1992年。ISBN 4-89363-662-6 
  11. ^ a b c d e f g h i j k 主婦の友社編 2011, p. 134.
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 主婦の友社編 2011, p. 135.
  13. ^ 栽培および野生ミツバの形態ならびに生態に関する研究 園芸學會雜誌 Vol.33 (1964) No.2 P117-124
  14. ^ a b c 三つ葉 産地(都道府県)”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
  15. ^ a b 三つ葉 農業”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
  16. ^ 三つ葉 産地(市町村)”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
  17. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)

参考文献[編集]

外部リンク[編集]