タマリンド
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タマリンド | ||||||||||||||||||||||||
| 分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||
| Tamarindus indica L | ||||||||||||||||||||||||
| 和名 | ||||||||||||||||||||||||
| タマリンド、チョウセンモダマ | ||||||||||||||||||||||||
| 英名 | ||||||||||||||||||||||||
| Tamarind |
タマリンド(答満林度[1][2]、羅望子[2]、英: tamarind、学名: Tamarindus indica)は、マメ科[注 1]タマリンド属の常緑高木。古くは、エチオピアからインドに渡来した。ヘブライ語の「タマール」(なつめやしの意味)と「インド」から、タマリンドと名付けられた[3]。別名、チョウセンモダマ(朝鮮藻玉)[4]。
名称
[編集]属名はアラビア語で「インドのナツメヤシ(デーツ)」を意味する「タマル・ヒンディー」(تمر هندي)に由来する。アラビア語圏でタマリンドが知られるようになったのが、原産地のアフリカから直接持ち込まれたのではなく、果実がナツメヤシ類似の交易品としてインドからもたらされたためと推定される。アラビア語から中世ラテン語のtamarindusを経由して、英語になったのは16世紀初頭[6]。
分布・形態
[編集]アフリカの熱帯が原産で、インド、東南アジア、アメリカ州などの亜熱帯および熱帯各地で栽培される。インドでは、先史時代から栽培されてきた[7]。
樹高は20メートル以上になる常緑高木で、葉は長さ15 - 20センチメートルの羽状複葉、小葉は10 - 20片で長楕円形。花は総状花序をなし、5弁で径3センチメートル。黄色に橙色または赤色のすじが入る。
果実は長さ7 - 15センチメートル、幅2センチメートルほどのやや湾曲した肉厚な円筒形のさやで、黄褐色の最外皮は薄くもろい。1個ないし10個の黒褐色で扁平な卵円形の種子との間隙はペースト状の黒褐色の果肉で満たされる。この果肉は柔らかく酸味があり、食用とされる。
半乾燥地に適応しているが、雨の多いところでも生育する。
- 実生
- 花
- 接写した花
- 葉とさや
- 木
品種
[編集]酸味が弱く甘味が強い生食に適した品種もある。
食用
[編集]
| 100 gあたりの栄養価 | |
|---|---|
| エネルギー | 1,000 kJ (240 kcal) |
|
62.5 g | |
| 糖類 | 57.4 g |
| 食物繊維 | 5.1 g |
|
0.6 g | |
| 飽和脂肪酸 | 0.272 g |
| 一価不飽和 | 0.181 g |
| 多価不飽和 | 0.059 g |
|
2.8 g | |
| トリプトファン | 0.018 g |
| リシン | 0.139 g |
| メチオニン | 0.014 g |
| ビタミン | |
| ビタミンA相当量 |
(0%) 2 µg(0%) 18 µg0 µg |
| チアミン (B1) |
(37%) 0.428 mg |
| リボフラビン (B2) |
(13%) 0.152 mg |
| ナイアシン (B3) |
(13%) 1.938 mg |
| パントテン酸 (B5) |
(3%) 0.143 mg |
| ビタミンB6 |
(5%) 0.066 mg |
| 葉酸 (B9) |
(4%) 14 µg |
| ビタミンB12 |
(0%) 0 µg |
| コリン |
(2%) 8.6 mg |
| ビタミンC |
(4%) 3.5 mg |
| ビタミンD |
(0%) 0 IU |
| ビタミンE |
(1%) 0.1 mg |
| ビタミンK |
(3%) 2.8 µg |
| ミネラル | |
| ナトリウム |
(2%) 28 mg |
| カリウム |
(13%) 628 mg |
| カルシウム |
(7%) 74 mg |
| マグネシウム |
(26%) 92 mg |
| リン |
(16%) 113 mg |
| 鉄分 |
(22%) 2.8 mg |
| 亜鉛 |
(1%) 0.1 mg |
| セレン |
(2%) 1.3 µg |
| 他の成分 | |
| 水分 | 31.4 g |
| |
| %はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース | |
果実が食用になる。料理の酸味料や食品添加物の増粘安定剤として用いられるほか、ピクルス、シロップ、清涼飲料水に加工されるなど、利用範囲の非常に広い果実である。そのほかに甘みと酸味を楽しむために生食、ドライフルーツ、砂糖漬け、塩漬けなどに加工される。香りの主成分はフルフラール、2-アセチルフランなど。
種子の胚乳部分から抽出して得られたものから、食品添加物としての多糖類を主成分とする増粘安定剤のタマリンドガム(タマリンドシードガム)を製造する。
調味料
[編集]酒石酸とクエン酸による強い酸味をもつ黒褐色の果肉が使われる。果肉だけを集めて固めた数百グラムのブロックか、浸出したエキスの形で売られるのが一般的である。ブロックのものは水に浸して、ペーストのようになったものを調理に用いる。
インド料理では果肉を熱湯に溶かしてチャツネを作るほか、サーンバール(サンバール、サンバルとも)やラッサムの酸味づけに用いる。インドのマクドナルドでは、マクイムリー(McImli:「イムリー」〈इमली〉とはヒンディー語でタマリンドの意)というタマリンドソースをつけてもらうことができる。
インドネシアの東部の山林で生活する人々にとって重要な蛋白源は、鹿肉である[9]。鹿肉は上質ではなく、干し肉にしてタマリンドの果実の酢と煮込まれる[9]。
タイ料理のトムソムやパッタイやフィリピン料理のシニガンの酸味づけにもタマリンドが欠かせない[10]。イラク中部と南部ではドルマの酸味づけにタマリンドを用いることがある。
デザート
[編集]ラテンアメリカや東南アジアでは、タマリンドの果肉から清涼飲料水を作る。タマリンドの缶ジュースも市販されている。
東南アジアではジャムやソフトキャンディーに加工したり、砂糖漬け、塩漬けのおやつとしても売られる。ベトナムではクラッシュアイスと煎りピーナツを加えたダー・メ(Đá me:「氷タマリンド」の意)や、さらに練乳を加えたスア・ダー・メ(Sữa đá me:「ミルク氷タマリンド」の意)として飲む。
生食にはスイートタマリンドと呼ばれる種類の果実を樹上で成熟させ水分が20パーセント以下にしたものを収穫して用いる。
解毒・脱臭
[編集]アフリカではヤム(ヤムイモ)を料理に使う際、ヤムの毒を消すために鍋にタマリンドの果実が入れられる[8]。他の地域では、魚料理の魚臭さを抑えるために用いられる[8]。
フィリピンでは、マラリアに効能があるとして葉をタマリンド茶として用いる。
- ジャマイカのお菓子
薬用
[編集]トマス・エリオット(Thomas Elyot)は著書『The Castel of Helth』(1533年)の中で、タマリンドを「胆汁を浄化するもの」として勧めている[6]。
果肉は壊血病の薬として使われてきたほか、インドネシアでは脱毛症、エリトリアでは赤痢とマラリア、コロンビアでは結膜炎、スリランカでは黄疸、潰瘍、眼病、タンザニアの大陸部ではヘビの咬傷、マダガスカルでは胃病の治療に使われる[8]。ブラジルでは発汗薬、緩和剤、瀉下薬、痔の薬として販売されており、モーリシャスではリウマチの塗り薬になっている[8]。
材木
[編集]材は非常に堅く、耐久力に優れる[8]。そのため、家具、杵(きね)、工具の柄、砂糖や油の製造過程で用いるひき臼、轆轤細工に使われる[8]。
材からは、黒色火薬に用いる最高級の木炭の微粉も作れるといわれる[8]。
パルプを金属磨きとして用いる地域がある。
民俗
[編集]ヌエル族やディンカ族の一部などアフリカの南スーダンのいくつかの民族集団の神話では、タマリンドの大木が人間の起源神話にかかわる特別な木となっている[12][13]。ヌエル族の神話によると、タマリンドの木の下にある穴か木の枝から始祖が出現したとされる[14]。その木はヌエル族の居住地に生えていたが、1918年に焼けうせた[14]。
東南アジアでは、タマリンドの木はアニミズムと結び付く[15]。ラーオ族が暮らすタイの東北部では、精霊を操ったり人に害をなす悪霊をはらったりする杖にはタマリンドが最適とされる[15]。また、ラオスのルアンパバーン郡では、タマリンドを火曜日に植えると、そのタマリンドから得た木材は呪力を持つとされた[15]。
ミャンマーでは、分娩によって毒気が生じると考えられている[16]。毒気を抜くため、分娩から7日目の女性は毛布を着け、タマリンドの小枝とその他数種の草葉を熱湯に混ぜて大みかに注ぎ、大みかの上に1時間ほど座らなければならない[16]。
その他
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ↑ 新村出 編「タマリンド」『広辞苑』(第6版)岩波書店、2008年1月11日。ISBN 978-4-0008-0121-8。
- 1 2 三省堂百科辞書編輯部編「タマリンド」『新修百科辞典』、三省堂、1934年、1350頁。
- ↑ 瀧井康勝『366日 誕生花の本』日本ヴォーグ社、1990年11月30日、232頁。ISBN 4-52902-039-8。
- ↑ (デューク 1986, p. 361) NDLJP:12615703/195. 2026年1月27日閲覧。
- ↑ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia, Stockholm: Laurentius Salvius. p. 34 2026年1月27日閲覧。
- 1 2 エイトウ 2021, p. 265.
- ↑ (デューク 1986, p. 363) NDLJP:12615703/196. 2026年1月27日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (デューク 1986, p. 362) NDLJP:12615703/196. 2026年1月27日閲覧。
- 1 2 鶴見 1987, p. 122.
- ↑ シーラ・アンジリン・オカンポ(著)、京都外国語大学付属図書館 館報編集委員会(編)「フィリピン料理」(PDF)『GAIDAI BIBLIOTHECA』第215号、京都外国語大学付属図書館、京都外国語短期大学付属図書館、2017年1月10日、25頁、2026年1月22日閲覧。
- ↑ 桜井由躬雄 編『もっと知りたいベトナム』弘文堂、1989年3月10日、300頁。ISBN 4-335-51025-X。NDLJP:13130460/157。
- ↑ 橋本栄莉「第6章 タマリンドの木の下に集う : 世界樹は何を語るか」『タマリンドの木に集う難民たち : 南スーダン紛争後社会の民族誌』九州大学出版会、2024年4月、152-164頁。ISBN 978-4-7985-0373-8。
- ↑ “タマリンドの木に集う難民たち : 内容紹介”. 九州大学出版会. 2024年10月28日閲覧。 “タマリンドの木は、南スーダン各地に伝わる起源神話において、人類の「故郷」や「母」を意味する。”
- 1 2 ムビティ 1970, p. 107.
- 1 2 3 林 1991, p. 36.
- 1 2 シュウェイ・ヨー 1943, p. 2.
参考文献
[編集]- シュウェイ・ヨー『ビルマ民族誌』国本嘉平次、今永要 訳、三省堂、1943年8月15日、2頁。NDLJP:1875295/10。
- ジョン・ムビティ『アフリカの宗教と哲学』大森元吉 訳、法政大学出版局、1970年12月25日、107頁。NDLJP:12268061/63。
- ジェームズ・A・デューク『世界有用マメ科植物ハンドブック』星合和夫 訳、雑豆輸入基金協会、1986年6月15日。NDLJP:12615703。
- 鶴見良行『海道の社会史』朝日新聞社、1987年5月20日、122頁。ISBN 4-02-259430-6。NDLJP:12184370/66。
- 林行夫(著)、開発武(編)「タマリンド」『グリーン・パワー』第147号、森林文化協会、1991年3月1日、36頁、ISSN 0389-0988、NDLJP:12524817/19。
- ジョン・エイトウ『食のことば由来事典 食材・料理・飲み物』石川久美子、おおつかのりこ、児玉敦子、中村久里子 訳、柊風舎、2021年10月29日。ISBN 978-4-86498-085-2。OCLC 1305143262。
- 吉田よし子、菊池裕子『東南アジア市場図鑑』 植物篇、弘文堂、2001年7月。ISBN 978-4-3355-5091-1。