トウシキミ
トウシキミ | ||||||||||||||||||
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![]() トウシキミのイラスト
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Illicium verum Hook.f. | ||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||
Star anise Chinese star anise |
トウシキミ(唐樒、学名:Illicium verum)は、中国南部からベトナム北東部原産のシキミ属の常緑の高木である[1]。大茴香(だいういきょう)とも呼ばれる。
花は赤褐色で、果実は香辛料の「八角」として利用される。中国広西チワン族自治区南部とベトナム北部の国境付近に自生が見られ、中国南部やインド南部、インドシナ半島で広く栽培されている[2]。
特徴[編集]
トウシキミの栽培は、紀元前2000年頃から行われてきたと考えられている[1]。成長すると樹高15 m程に達し、黄緑・濃いピンク・えんじ色の花をつける[1]。果実の収穫期は年2回で、中国では9月~10月及び3月~4月である[1]。
果実を乾燥させた物は、八角(はっかく)、八角茴香(はっかくういきょう)などと呼ばれる香辛料である[1]。実の形は8つの角を持つ星形をしており、セリ科のアニスに似た良い香りを放つため、スターアニス(star anise)とも呼ばる[1]。
成分[編集]
果実には5パーセントから10パーセントの精油が含まれ、その主成分はアネトールであり、精油成分の80パーセントから90パーセントを占める[2]。その他に、エストラゴール、メチルカビコール、シネオール、リモネン、フェランドレン、ピネンなどが含有されている[2]。
また、含有成分の1つであるシキミ酸はインフルエンザ治療薬オセルタミビルの合成原料の1つとして使用されている(2006年現在)[3]。ただ、当然ながらトウシキミの果実を食べてもインフルエンザに効果は無い[4]。なお、2005年後半に、細菌によってシキミ酸を生産する方法が発見された[5][6][7]。2006年にはタミフル製造に用いるシキミ酸の3分の1が、この醗酵法で生産されるようになった[1]。
利用方法[編集]
香辛料[編集]
トウシキミの果実は香辛料として、インド料理、マレーシア料理、インドネシア料理、ベトナム料理などにも用いられる[1]。 また、タイ・ティーやチャイなど飲用にも使われる[1]。
さらに、五香粉を構成する香辛料の1つで[2][8]、五香粉は主に中華料理に使用される。
医薬品[編集]
果実は、香辛料として以外にも、生薬や医薬品原料として利用されている。
- 日本薬局方では、トウシキミまたはセリ科のウイキョウ(茴香:Foeniculum vulgare)の果実から得られる精油を区別なくウイキョウ油としている[8]。
- 生薬名は大茴香であり、杜仲と木香とを配合した思仙散は腰痛に用いる漢方薬である[2][8]。
工芸材料[編集]
果実は、その形状を活かして、クリスマスリースなどにも利用される[1]。
近縁のシキミ[編集]

- 日本列島に自生するシキミ
- 近縁のシキミ(Illicium anisatum)は日本列島に自生し、仏事用(抹香[9]、線香、供花)として寺院にも植えられる[2]。花は淡黄色を帯びた白色で花弁は細長い。
- 実はトウシキミによく似ているが、猛毒のアニサチンを含むため、食した場合には腎臓や消化器に炎症を起こし、神経毒としても作用し最悪の場合は死亡する。日本では毒物及び劇物取締法により劇物に指定されている[10]。
- シキミはジャパニーズ・スターアニス(Japanese star anise)とも呼ばれ、これと区別するためにトウシキミがチャイニーズ・スターアニス(Chinese star anise)と表記されるケースもある[11][12]。
- イエローアニス( Illicium parviflorum )
- 北アメリカ大陸の南東部で発見された種で、毒性が有るため、医療や食用に向かない[13]。
脚注[編集]
- ^ a b c d e f g h i j “3.5 トウシキミ(ミャンマー)”. 農林水産省. 2020年1月26日閲覧。
- ^ a b c d e f 後藤實「生活の中の生薬166:大茴香」『活』第41巻第6号、財団法人日本漢方医学研究所、東京、1999年、 p85。
- ^ “抗インフルエンザ薬『タミフル』の純化学的製造法” (プレスリリース), 『東京大学広報・情報公開記者発表一覧』東京大学の公式webページ, (2006年3月1日) 2009年1月13日閲覧。
- ^ “【大森病院東洋医学科・三浦於菟教授】八角 新型インフル予防に効くって本当?(5/12 日刊ゲンダイ)”. メディア掲載情報. 東邦大学キャンパスポータルサイト. 2010年9月14日閲覧。 “三浦教授によると、八角の効能は血の巡りや消化を良くすることであり、新型インフルエンザには効かないとのこと。”
- ^ Bradley, D. (Dec 2005). “Star role for bacteria in controlling flu pandemic?”. Nature Reviews Drug Discovery 4 (12): 945–946. doi:10.1038/nrd1917. ISSN 1474-1776. PMID 16370070.
- ^ Krämer, M.; Bongaerts, J.; Bovenberg, R.; Kremer, S.; Müller, U.; Orf, S.; Wubbolts, M.; Raeven, L. (2003). “Metabolic engineering for microbial production of shikimic acid”. Metabolic Engineering 5 (4): 277–283. doi:10.1016/j.ymben.2003.09.001. PMID 14642355.
- ^ Johansson, L.; Lindskog, A.; Silfversparre, G.; Cimander, C.; Nielsen, K. F.; Lidén, G. (Dec 2005). “Shikimic acid production by a modified strain of E. coli (W3110.shik1) under phosphate-limited and carbon-limited conditions”. Biotechnology and Bioengineering 92 (5): 541–552. doi:10.1002/bit.20546. ISSN 0006-3592. PMID 16240440.
- ^ a b c 古尾屋不二、ほか「漢方から見るハーブ・スパイスの生理活性」『月刊フードケミカル』第12号、食品化学新聞社、1994年、 p69、 ISSN 09112286。
- ^ 抹香(コトバンク)
- ^ “毒物及び劇物指定令(昭和四十年政令第二号)第2条: 劇物 第1項第39項”. e-Gov (2019年6月19日). 2019年12月21日閲覧。 “2019年7月1日施行分”
- ^ Howes, Melanie-Jayne R.; Geoffrey C. Kite and Monique S. J. Simmonds (6 2009). “Distinguishing Chinese Star Anise from Japanese Star Anise Using Thermal Desorption−Gas Chromatography−Mass Spectrometry”. J. Agric. Food Chem. (American Chemical Society) 57 (13): 5783–5789. doi:10.1021/jf9009153 2010年7月16日閲覧。.
- ^ “Press Releases: Herbal Science Group Clarifies Safety Issue on Star Anise Tea” (英語) (プレスリリース), American Botanical Council, (2003年9月12日) 2010年7月16日閲覧。
- ^ http://balconygardenweb.com/how-to-grow-star-anise-care-and-growing-star-anise/
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- “トウシキミの花”. 『植物の話あれこれ』. 日本新薬サイト (2008–2009). 2010年9月14日閲覧。
- J. D. Hooker (1888年). “Illustration: Illicium verum” (英語). Flora of China @ efloras.org. 2010年9月14日閲覧。 だいういきょう (大茴香)(跡見群芳譜)。