ウイキョウ
ウイキョウ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() フェンネル
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分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Foeniculum vulgare Mill. (1768) [3][4] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ウイキョウ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Fennel[4] |
ウイキョウ(茴香、学名: Foeniculum vulgare)は、セリ科のウイキョウ属に分類される、多年生の草本植物である。古くから、香辛料などとして用いられ、栽培も行われてきた。
名称[編集]
中国植物名は茴香(ういきょう、ハイシヤン[5])と書く[6]。和名のウイキョウは、日本で「茴」を唐音で「ウイ」、「香」を漢音で「キョウ」と読んで名付けられたのだとする説が存在する[5]。
なお、大茴香(だいういきょう)と呼ぶ場合のあるスターアニスに対して、小茴香(しょうういきょう)と呼ぶ場合もある[6][7]。
また、英語名からフェンネル(Fennel)の名でも知られ[5][6]、フランス語名からフヌイユ(fenouil)とも呼ばれる。参考までに、種小名のvulgareは、ラテン語で「普通の」という意味である。
産地[編集]
ヨーロッパ原産[6][8]、もしくは、地中海沿岸が原産とされる[5]。古代エジプトや古代ローマでも栽培されていた記録が残っており、ヒトが特に古くから栽培してきた植物の1つとされる。現代における主産地はエジプトだけではなく、インドや中国なども挙げられる。日本には平安時代に中国から渡来した。なお、21世紀初頭の日本における主産地は長野県や鳥取県である[8]。
形態・生態[編集]
ウイキョウは多年草である[5][8]。草丈は1 mかや2 m程度に達する[8][9]。全体が枝分かれし、葉は次第に分かれて糸状に細くなり、全草が鮮やかな黄緑色をしている[5]。葉柄の根元部分は鞘状になっている[5]。夏に開花し[8]、茎頂に黄色の小花を多数つけて傘形に咲かせる[5]。秋には7 mm程度の長楕円形をした麦粒状の茶褐色の果実をつける[5]。
利用[編集]
ウイキョウの若い葉および果実は、甘い香りと苦みが特徴で消化促進・消臭に効果を有し、香辛料や香料として、食用、薬用、化粧品用などに古くから用いられてきた。粉砕した果実を水蒸気蒸留して精油を採取する。収率は4パーセントから7パーセント程度とされる。
ウイキョウには、アニスやスターアニス(トウシキミ)に似た甘い香りが有る。この芳香は女性ホルモン(エストロゲン)と同じ働きをするフィトエストロゲン(植物性エストロゲン)が豊富に含まれている[10][11]。芳香の主成分はアネトール(trans-anethole、C6H4(OCH3)C3H5)である。
北米更年期学会(NAMS)の研究班の調査から、女性の更年期障害のほてり(ホットフラッシュ)や不眠、不安の症状の改善に効果が出ると判明している[12][13][14]。
食用[編集]
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 130 kJ (31 kcal) |
7.29 g | |
食物繊維 | 3.1 g |
0.20 g | |
1.24 g | |
ビタミン | |
チアミン (B1) |
(1%) 0.01 mg |
リボフラビン (B2) |
(3%) 0.032 mg |
ナイアシン (B3) |
(4%) 0.64 mg |
パントテン酸 (B5) |
(5%) 0.232 mg |
ビタミンB6 |
(4%) 0.047 mg |
葉酸 (B9) |
(7%) 27 µg |
ビタミンC |
(14%) 12 mg |
ミネラル | |
カリウム |
(9%) 414 mg |
カルシウム |
(5%) 49 mg |
マグネシウム |
(5%) 17 mg |
リン |
(7%) 50 mg |
鉄分 |
(6%) 0.73 mg |
亜鉛 |
(2%) 0.20 mg |
マンガン |
(9%) 0.191 mg |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース(英語) |
スープ、シチュー、肉料理などの香辛料として使用するフェンネル・シーズ(fennel seeds)は、ウイキョウの果実が熟した頃に、果穂を切り取り、そのまま天日で干して乾燥させてから、手で揉んで採取する[6]。フェンネル・シーズは種子のように見えるものの、正確には果実である[6]。西洋では魚料理やピクルスの風味付けに用いられ、インドではカレー料理に、中国では五香粉の原料の1つとして用いられる。またパスティス[15]やアクアビットなどの酒類・リキュール類の香り付けにも用いられる。またフェンネル・シーズを様々な色の砂糖でコーティングした物(ヒンディー語で「ソーンフ」。ウイキョウの意味。)が、インド料理店で口直しとしてレジの横などに置かれている場合がある。
沖縄料理においては、整腸作用のある島野菜として珍重されていた。魚汁やまーす煮などの魚料理の臭い消しとして用いられ、時にヒラヤーチーなどの薬味としても用いられた。
ウイキョウの鱗茎(葉柄基部が肥大した部分)はフィノッキオ (finocchio) とも呼ばれ、野菜としてタマネギなどのようにサラダや煮物、スープなどに用いられる。茎・葉は生食されるが、その他にも佃煮、シチューなど肉料理の香味野菜として使用される。
生薬[編集]
生薬としては、ウイキョウの果実が使われる[8]。中国薬物名として小茴香(しょうういきょう)と称する場合が有る[6]。 日本列島では7月から9月にかけて果実を採取し、それを干した物が、日本で茴香(ういきょう)と称している生薬である[5]。 漢方方剤の安中散(あんちゅうさん)に配合される生薬の1つとして知られ、また、太田胃散(漢方+西洋薬の処方)、口中清涼剤の仁丹などにも使われており、年間100トンが製薬原料として消費される[5]。
成分[編集]
果実は、脂肪油を12パーセントから18パーセント程度含み、ビタミンA、ビタミンCなども含む[5]。 さらに、フェンコン、α-ピネン、カンフェンなども含まれる[8]。
また、果実には精油も3パーセントから8パーセント程度含まれており、精油成分は、アネトールが5割から6割を占め[5][8]、 それに加えて、dl-リモネンも含まれる[8]。
薬効[編集]
同じセリ科のイノンドと同様に、健胃、腸内ガスの排出(駆風)、去痰などの薬効が有るとされる[5]。
漢方方剤では、例えば、安中散や丁香柿蒂湯に配合する[8]。
また、民間療法では、胃痛・腹痛に1日量2 gから3 g程度を、400 ml程度の水で煎じて、それを1日3回に分けて、温かい状態で服用する用法が知られている[6]。食べ過ぎ、飲み過ぎ、胃もたれ、消化不良、食欲増進、痰切、膨満感などには、紅茶にウイキョウ数粒を入れて食間に飲んだり、そのまま充分に噛んで飲んでも良いとされる[16]。また、口臭を消す効果も有し、イノンドと効用がよく似る[16]。胃腸を温める作用も持つため、腹を冷やした際に起こした腹痛に良いとされるのに対して、胃に熱がある人には使用禁忌とされる[6]。
その他の薬用利用[編集]
果実の代わりに、生葉を細かく刻み、スープの具として多めに入れた物を飲む方法も考えられ、駆風、たんきり、せき止めに役立つと考えられている[16]。
また、果実を収穫した後に残された茎葉は、イノンドと同様に浴湯料として使用できる[16]。
健康全書中のフェンネル
近縁種[編集]
- フローレンスフェンネル - 全草が香菜として使われる。ウイキョウと同じ仲間だが、こちらは一年草である。生け花の花材としても利用される[6]。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ 米倉浩司『高等植物分類表』北隆館、2010年、重版。ISBN 978-4-8326-0838-2。
- ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』アボック社、2010年、第2刷。ISBN 978-4-900358-61-4。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Foeniculum vulgare Mill.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年8月12日閲覧。
- ^ a b "'Foeniculum vulgare Mill.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 1700130. 2012年8月12日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 田中孝治 1995, p. 66.
- ^ a b c d e f g h i j 貝津好孝 1995, p. 12.
- ^ 日本薬学会 2004, p. 5.
- ^ a b c d e f g h i j 日本薬学会 2004, p. 4.
- ^ 本山荻舟『飲食事典』平凡社、1958年12月25日、48頁。
- ^ The Effect of Foeniculum Vulgare (Fennel) on Body Composition in Postmenopausal Women with Excess Weight: A Double-blind Randomized Placebo-controlled Trial 2017年12月29日 PMC - NCBI
- ^ Phytoestrogens - Oxford Journals - Oxford University Press
- ^ Fennel 'safe and effective' for easing menopause symptoms, study confirms 2017年5月17日 Health News - Medical News Today
- ^ Study confirms benefits of fennel in reducing postmenopause symptoms 2017年5月17日 sciencedaily
- ^ Menopause symptoms including hot flushes'can be reduced'by eating THIS plant 2017年5月17日 Express.co.uk
- ^ a b Société Ricard. “Ricard favorise la culture du fenouil en Provence”. 2012年8月12日閲覧。 (フランス語)
- ^ a b c d 田中孝治 1995, p. 67.
参考文献[編集]
- 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、12頁。ISBN 4-09-208016-6。
- 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、66-67頁。ISBN 4-06-195372-9。
- 日本薬学会『薬学生・薬剤師のための知っておきたい生薬100 ―含 漢方処方―』東京化学同人、2004年3月10日、4-5頁。ISBN 978-4-8079-0590-4。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- ウイキョウ(フェンネル) - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)