セリ

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セリ
W seri4081.jpg
愛媛県広見町(現・鬼北町)、2004年8月22日
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : キキョウ類 campanulids
: セリ目 Apiales
: セリ科 Apiaceae
: セリ属 Oenanthe
: セリ O. javanica
学名
Oenanthe javanica
(Blume) DC.
和名
セリ、シロネグサ
英名
Water dropwort
Japanese parsley
Chinese celery

セリ水芹芹子学名Oenanthe javanica)は、セリ科多年草である。春の七草の一つ。水田道や湿地などに生え、栽培もされる。

名称[編集]

和名セリの語源は、若葉の成長が競り合うように背丈を伸ばし群生して見えることから、「競り(セリ)」とよばれるようになったと言われている[1][2]

別名、シロネグサ(白根草)。中国植物名(漢名)は、水芹(スイキン)[3]

特徴[編集]

日本東アジアインドなどの北半球一帯と、オーストラリア大陸に広く分布する[4]。日本では北海道本州四国九州の各地に分布する[5]湿地あぜ道水田[6]休耕田など土壌水分の多い場所や、細い流れがある水辺に群生する湿地性植物である[7]。若葉は春の七草で、水田で野菜としても栽培される[8][4]

常緑多年草で、秋から冬にかけて日が短い低温期は、多数の根生葉を叢生し、春から夏にかけての日が長い時期では、泥の中や表面を横に這うように根元から白く長い匍匐枝(ほふくし)を伸ばして、秋にその枝の節から新しい苗ができて盛んに成長する[7][5]

高さは20 - 80センチメートル (cm) 程度[4]。茎や葉など全草に芳香があり[5]、長い柄のある葉を盛んに出す[4]は根際に集まってつく根生葉と、互生してつく葉に分けられ、ともに1 - 2回3出羽状複葉[4]小葉は卵形で鋸歯がある[7]。根生葉は長い葉柄がつき、茎につく互生葉の柄は上部になるほど短い[7][5]。葉柄はいずれもさや状になる[9]。全体的に柔らかく黄緑色であるが、冬には赤っぽく色づくこともある。

花期は7 - 8月。やや高く直立して花茎を伸ばし、その先端に枝分かれした複数の花序をつけて、白いを咲かせる[5]花柄の長さは揃っているので、花序はまとまっている[4]。個々の花は小さく、花弁は5個でたくさんつく[4]。果実は楕円形で、長い花柱を持っている[9]

栽培[編集]

田栽培と栽培の二つの方法で行われていて、田栽培は清水があるところに早春越株を植え付けが行われ、畑栽培では匍匐枝(ランナー)を取って植え付け、たびたび灌水して育成する[5]。栽培方法は各地で確立されていて、一般には秋早くに親株が水田に植えられて、冬の収穫期に緑の若葉が茂る[8]

利用[編集]

若いときのを収穫して、古くから薬効のある冬の野菜として親しまれている[1][5]東洋では2000年ほど前から食用に利用されてきているが、西洋では食べる習慣はない[10]。独特の香りを持ち、日本では春先の若い茎やお浸し酢味噌和え七草粥とする[9]。寒冷地域では、冬季の緑色野菜が不足するときに、新鮮な香味野菜として和風料理には欠かせない食材である[5]宮城県仙台市周辺では、セリを主役とした鍋料理「せり鍋」があり[11]、葉から根まで使われる。また、秋田県の代表的郷土料理の一つであるきりたんぽ鍋の具材としても欠かせない。ミキサーにかけて、青汁の食材としても利用されている[5]

秋田県湯沢市三関(みつせき)地区産の「三関せり」のように、気候や土質・水質の良さや江戸時代からの選抜育成によりブランド化した伝統野菜もある[12]

野菜としてのは3月から4月まで[10]であるが、春の七草の一つであるため1月頃であればスーパーマーケット等で束にして売られる。自生品が出回ることもあるが、最近では養液栽培も盛んである。

日本では生薬名は特に持たないが[13]、中国薬物名としては6 - 7月ころに刈り取って乾燥した全草を水芹(すいきん)と称している[14]。薬効としては、乾燥させた茎葉を布袋に入れて風呂に入れ浴湯料とすると、精油成分が湯に溶け出して血液循環をよくして、リウマチ神経痛血圧降下の効果に良いとされる[5][9]。また神経痛や消化不良による口臭には、水芹1日量3 - 5グラムを400 ccの水で煎じて、3回に分けて服用する用法も知られているが、胃腸が冷えて下痢しやすい人には禁忌とされている[14]。セリ特有の香り成分は、フタル酸ジエチルエステルなどの精油成分で、根の香りはポリアセチレン化合物に由来する[9]。これらの香り成分は、口内の味覚神経を刺激して、胃液の分泌を促すとともに[9]、人間の体温を上げて発汗作用を促す効果があり、風邪による冷えなどに有効とされる[10]。また、栄養成分にβ-カロテンビタミンB1B2Cカルシウム鉄分クエルセチンなどの栄養素を主に含み[9]、胃や肝機能を整えたり、利尿効果を高めて[9]、血液中の老廃物やコレステロールを排出して浄化する効果が高い食材といわれる[10]

野草としての性質が強く種子発芽率が低いため、計画的な生産には発芽率の改善が不可欠である。産地にもよるが、栽培ものと野生のものに、比較的差が少ない種である。観賞用の斑入りの品種もある。なお野生のものを食べる場合は肝蛭の感染に注意が必要である。対策としては良く洗うことが挙げられる[15]

毒草との間違い[編集]

野外で採取する場合、小川のそばや水田周辺の水路沿いなどで見られるが、大型で姿かたちがよく似て有毒なドクゼリとの区別に配慮が必要である[4][16]。特に春先の若芽はセリと間違いやすく[17]、ドクゼリのほうは地下茎は緑色で太くタケノコ状の節があり、横に這わず、セリ独特の芳香もないのに対し、セリは白いひげ根があるで区別できる[9]。また、キツネノボタンも同じような場所に生育する毒草である。ドクニンジンは、ニンジンにも似たヨーロッパ原産のセリ科有毒植物で、日本には関東地方から中国地方の範囲に帰化しており、草原に生えている[4]。個々の小葉だけを取ると似ているので間違えるおそれがある。

文化[編集]

日本では古くから食用にされており、平安時代には宮中行事にも用いられていた。

セリは春の七草の一つに数えられ、奈良時代に成立されたとされる『万葉集』にもセリ(芹子/世理)摘みの歌がいくつか知られている[5][18]。また『万葉集』巻一〇には「君のため山田の沢にえぐつむと 雪消の水に裳(も)の裾ぬれぬ」と詠まれた歌があり、ここで詠まれた「えぐ」はクログワイカヤツリグサ科)とする説もあるが、植物研究者の細見末雄や深津正はこれを否定し、セリ説を唱えている[19]。平安時代の『後拾遺和歌集』中に曽禰好忠が「根芹つむ春の沢田におり立ちて 衣のすそのぬれぬ日ぞなき」と詠んだ歌があり、細見は前述の『万葉集』の歌を本歌とした取歌であると解説している[20]

伝統料理[編集]

成句[編集]

高貴な女性がセリを食べるのを見た身分の低い男が、セリを摘むことで思いを遂げようとしたが徒労に終わったという故事から、恋い慕っても無駄なことや思い通りにいかないことを「芹を摘む」という[21]

脚注[編集]

  1. ^ a b 田中修 2007, p. 30.
  2. ^ 岩槻秀明『街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本』秀和システム、2006年11月5日、299頁。ISBN 4-7980-1485-0
  3. ^ 貝津好孝 1995, p. 181.
  4. ^ a b c d e f g h i 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 100.
  5. ^ a b c d e f g h i j k 馬場篤 1996, p. 96.
  6. ^ さとうち藍、松岡達英『冒険図鑑 野外で生活するために』福音館書店、1985年、306ページ、ISBN 4-8340-0263-2
  7. ^ a b c d 田中孝治 1995, p. 186.
  8. ^ a b 田中修 2007, p. 29.
  9. ^ a b c d e f g h i 田中孝治 1995, p. 187.
  10. ^ a b c d 小池すみこ 1998, pp. 82–83.
  11. ^ 「仙台のせり鍋 サッとゆで 驚きの甘さ」日本経済新聞』夕刊2018年3月22日(2020年1月23日閲覧)
  12. ^ 三関せりあきた郷土作物研究会(事務局:秋田県立大学生物資源科学部)2020年1月23日閲覧
  13. ^ 馬場篤 1996, p. 69.
  14. ^ a b 貝津好孝 1995, p. 161.
  15. ^ 寄生虫による食中毒にご注意ください内閣府食品安全委員会(2020年1月23日閲覧)
  16. ^ 「ドクゼリ:4人が食中毒 セリに酷似、1人重体 新潟市保健所発表/新潟」『毎日新聞』2013年4月2日(火)13時16分配信
  17. ^ 田中孝治 1996, p. 187.
  18. ^ 深津正 2000, p. 278.
  19. ^ 深津正 2000, pp. 276–278.
  20. ^ 深津正 2000, p. 279.
  21. ^ 新村出広辞苑 第七版』岩波書店、2018年1月12日、1650頁。ISBN 4-00-080131-7

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]