ほうおう座
| Phoenix | |
|---|---|
|
| |
| 属格形 | Phoenicis[1][2] |
| 略符 | Phe[1][2] |
| 発音 | 英語発音: [ˈfiːnɪks]、属格:/fɨˈnaɪsɨs/ |
| 象徴 | フェニックス[3] |
| 概略位置:赤経 | 23h 26m 46.2491s - 02h 25m 03.3633s[3] |
| 概略位置:赤緯 | −39.3127594° - −57.8484154°[3] |
| 20時正中 | 12月上旬[4][5] |
| 広さ | 469.319平方度[5] (37位) |
| バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 25 |
| 3.0等より明るい恒星数 | 1 |
| 最輝星 | α Phe(2.38[6]等) |
| メシエ天体数 | 0[7] |
| 確定流星群 | 1[8] |
| 隣接する星座 |
ちょうこくしつ座 つる座 エリダヌス座 みずへび座(角で接する) きょしちょう座 ろ座 |
ほうおう座(ほうおうざ、ラテン語: Phoenix)は現代の88星座の1つ。16世紀末にオランダの航海士ペーテル・ケイセルとフレデリック・デ・ハウトマンの観測記録を元にオランダの天文学者ペトルス・プランシウスが自作の天球儀に描いたことに始まる新しい星座で、西洋の伝承に登場するフェニックスをモチーフとしている[1][2]。ケイセルとデ・ハウトマンの観測に基づいて考案された12の星座の中で最大の領域を持つ星座である[2][4]。
特徴
[編集]
北東をろ座、北をちょうこくしつ座、西をつる座、南をきょしちょう座、南東をとけい座、東をエリダヌス座に囲まれており、みずへび座と南東の角で接している[9]。20時正中は11月下旬頃[4][5]で、北半球では秋の星座とされ[10]、晩春から晩冬にかけての長い期間観ることができる[9]。日本国内からは鹿児島市(北緯32°)以南では星座の全体を観ることができる[9]。また、北緯50°.7 付近より北の地域からは全く観ることができない星座となる[9]。
由来と歴史
[編集]ほうおう座は、1603年にヨハン・バイエルが出版した星図『ウラノメトリア』で世に知られるようになったためバイエルが新たに設定した星座と誤解されることがある[11]が、実際は1598年にフランドル生まれのオランダの天文学者ペトルス・プランシウスが、オランダの航海士ペーテル・ケイセルとフレデリック・デ・ハウトマンが1595年から1597年にかけての東インド航海で残した観測記録を元に、オランダの天文学者ヨドクス・ホンディウスと協力して製作した天球儀にフェニックスの姿を描き、ラテン語の星座名 Phoenix を記したことに始まる[2]。そのため、近世星座史の研究が進んだ2010年代以降はケイセルとデ・ハウトマンが考案した星座とされている[12]。
ケイセルとデ・ハウトマンが考案したとされる星座のうち、みなみのさんかく座を除く11の星座は生物をモチーフとしているが、Phoenix だけは空想上の生物をモチーフとしている[2]。このことについて、星座の歴史に詳しいイギリスの科学史家イアン・リドパスは、16世紀当時はフェニックスが実在する鳥であると考えられていた可能性を指摘している[2]。当時、南方から送られてきた極楽鳥の標本を見て、ヨーロッパ人はフェニックスそのものかその近縁種であると推測したとされる[2]。実際、フランスの博物学者ピエール・ブロンは、1555年の著書『鳥類誌 (L'histoire de la nature des oyseaux)』の中で、フェニックスを実在の鳥として記載している[2][13]。
この星座に付けられたギリシア文字の符号は、バイエルが付けたいわゆる「バイエル符号」ではなく、18世紀フランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカイユによって付けられたものである。ラカイユは、自身が考案した14星座のほか、バイエルが符号をつけていなかった南天の星座にギリシア文字の符号を付しており、ほうおう座の星々にもαからχまでの符号を付した[14]。ラカイユが付した符号は、19世紀イギリスの天文学者フランシス・ベイリーが編纂した『The Catalogue of Stars of the British Association for the Advancement of Science』(1845年)に全面的に引き継がれ[15]、さらにアメリカの天文学者ベンジャミン・グールドが1879年に出版した『Uranometria Argentina』で星座の境界線が引き直された際にοが外され、ψが加えられた[16]。21世紀現在ではωも加えられている[9][17]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Phoenix、略称は Phe と正式に定められた[18][19]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
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ヨハン・バイエルの著書『ウラノメトリア』 (1603) に描かれた南天の鳥の星座。ほうおう座は左下に描かれている。
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18世紀ドイツの天文学者ヨハン・ドッペルマイヤーの星図『Atlas Coelestis in quo Mundus Spectabilis』 (1742) に描かれた Phoenix
中国
[編集]現在のほうおう座の領域は、中国の歴代王朝の版図からはほとんど見ることができなかったため三垣や二十八宿には含まれておらず、明代末期の1631年から1635年にかけてイエズス会士アダム・シャールや徐光啓らの手で編纂された天文書『崇禎暦書』に初めて記述された[20]。この頃、明の首都北京の天文台にはバイエルの『ウラノメトリア』が2冊あり、南天の新たな星官は『ウラノメトリア』に描かれた新星座をほとんどそのまま取り入れたものとなっている[20]。これらの星座は、ドイツ人宣教師イグナーツ・ケーグラー(戴進賢)らが編纂し、清朝乾隆帝治世の1752年に完成・奏進された星表『欽定儀象考成』にそのまま取り入れられており、ほうおう座の星は「火鳥」という星官に充てられた[20]。
呼称と方言
[編集]世界で共通して使用されるラテン語の学名は Phoenix、属格は Phoenicis、略称は Phe と定められている[18][19]。Phoenix に対応する日本語の学術用語としての星座名は「ほうおう」と正式に定められている[21]。現代の中国でも日本と同じく「鳳凰座」と呼ばれる[22]。
日本では明治末期に既に「鳳凰」という訳語が充てられていた。これは、1908年(明治41年)に創刊された日本天文学会の会誌『天文月報』の第1巻7号に掲載された「十月の空」と題する星図で確認できる[23]。この名称は、1910年2月に星座の訳名が改訂された際も据え置かれ[24]、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも「鳳凰(ほうわう)」として引き継がれた[25]。1944年(昭和19年)に天文学用語が見直された際もこの呼称が継続して採用された[26]。戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[27]とした際に、Phoenix の日本語の学名は「ほうおう」と改められた[28]。この改定以降は「ほうおう」が星座名として継続して用いられている[21]。
主な天体
[編集]恒星
[編集]2025年12月現在、国際天文学連合恒星名称ワーキンググループ(Working Group on Star Names, WGSN) によって3個の恒星に固有名が認証されている[29]。
- α星
- 太陽系から約81.7 光年の距離にある、見かけの明るさ 2.38 等、スペクトル型 K0.5IIIb の赤色巨星で、2等星[6]。ほうおう座で最も明るく見える。「アンカー[9](Ankaa[29])」という固有名が認証されている。
- ζ星
- 太陽系から約291 光年の距離にある、見かけの明るさ 4.014 等の、三重の階層構造を持つ四重連星系で、4等星[30]。A星系は2つのB型主系列星によるアルゴル型の食変光星で、約1.67日の周期で3.91等から4.42等の範囲で変光する[31]。A と B のペアは約210 年の周期で互いの共通重心を公転している[32]。C 星は5000年以上の周期でこれらの星の最も外側の軌道を公転していると見られている[33]。
- 2017年11月に、主星のAa星に対してオーストラリア連邦ノーザンテリトリーに居住するオーストラリア先住民ワルダマン族の言葉に由来する「ウレン[9](Wurren[29])」という固有名が認証された。
- HD 6434
- 太陽系から約138 光年の距離にある、見かけの明るさ7.71 等、スペクトル型 G2/3V のG型主系列星で、8等星[34]。太陽とよく似たスペクトルを持つが、直径は太陽の約1.12 倍、金属量は太陽の約4分の1と推定されている[35][36]。2000年に太陽系外惑星の存在が報告されており、主星から軌道長半径0.14 au(天文単位)、軌道離心率0.17 の軌道を約22 日の周期で公転する0.39 MJ(木星質量)の系外惑星が存在すると考えられている[35][36]。
- IAUの100周年記念行事「IAU100 NameExoWorlds」でエクアドル共和国に命名権が与えられ、主星はエクアドル国内のアマゾン川流域先住民ワオラニ族の言語で「太陽」を意味する言葉に由来する Nenque、太陽系外惑星は「近い」を意味する言葉に由来する Eyeke と命名された[37]。
このほか、以下の恒星が知られている。
- SX星
- 太陽系から約271 光年の距離にある、見かけの明るさ7.12等の7等星[38]。約0.055日の周期で6.76等から7.53等の範囲で変光する[39]。脈動変光星の一種「ほうおう座SX型変光星」のプロトタイプとされる[40]。
- HE0107-5240
- 太陽系から約3万光年の距離にある、炭素過剰金属欠乏星 (Carbon enhanced metal poor star, CEMP) に分類される化学特異星[41]。金属量が太陽の30万分の1以下と非常に少なく、鉄に対して炭素が過剰に存在し、r過程元素とs過程元素のいずれも少ないことから、最初期の恒星が起こした超新星爆発で生じた炭素に富む超新星残骸から誕生した非常に古い星であると考えられている[42]。
- HLX-1
- 初の中間質量ブラックホール候補天体とされるX線天体。2004年11月、天の川銀河から約2億9000万 光年の距離にある渦巻銀河ESO 243-49の周縁部に位置するX線天体として発見された。2008年に、HLX-1を中間質量ブラックホールの候補天体であるとする研究結果が発表され、X線・可視光・電波の各波長域での追観測もそれを支持する結果が出ている。
星団・星雲・銀河
[編集]メシエカタログやコールドウェルカタログに挙げられた天体は1つもない[7][43]。
- ロバートの四つ子銀河
- 天の川銀河から約1億6000万 光年の距離にあるコンパクト銀河群。NGC 87・88・89・92の4つの銀河が重力相互作用によってグループを形成している[44]。
- ほうおう座銀河団
- 天の川銀河から約59億 光年の距離にある銀河団[45]。年老いて冷えてしまった銀河団とされるが、2020年に銀河団の中心にある巨大銀河から噴き出すジェットが観測され、「ジェットが高温ガスの冷却を止める」とするこれまでの知見を覆す発見となった[45][46]。
流星群
[編集]ほうおう座の名前を冠した流星群で、IAUの流星データセンター (IAU Meteor Data Center) で確定された流星群 (Established meteor showers) とされているものは、ほうおう座流星群のみである[8]。1956年12月、南極大陸に向けて航行中の南極観測船宗谷の船上から初めて観測された[47]。ブランペイン彗星を母天体とする12月2日頃に極大を迎える流星群と推測されたが、その後半世紀以上出現が観測されていなかった[48]。ダストトレイル理論により初観測から58年後の2014年に出現が予測され、実際に国立天文台を中心とした研究チームによってスペイン領カナリア諸島において58年ぶりに観測された[48]。なお2014年出現時のほうおう座流星群の放射点は、ほうおう座の北にあるちょうこくしつ座の中に位置していた[9]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c “The Constellations”. 国際天文学連合. 2025年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年3月17日閲覧。
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参考文献
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