ろ座
Fornax | |
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属格形 | Fornacis |
略符 | For |
発音 | 英語発音: [ˈfɔrnæks]、属格:/fɔrˈneɪsɨs/ |
象徴 | 炉 |
概略位置:赤経 | 01h 45m 24.2s - 03h 50m 21.3s[1] |
概略位置:赤緯 | −23.76° - −39.51[1] |
広さ | 398平方度 (41位) |
主要恒星数 | 2 |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 27 |
系外惑星が確認されている恒星数 | 3 |
3.0等より明るい恒星数 | 0 |
10パーセク以内にある恒星数 | 2 |
最輝星 | α For(3.85等) |
最も近い星 | HD 14412;(41.35光年) |
メシエ天体数 | 0 |
隣接する星座 |
くじら座 ちょうこくしつ座 ほうおう座 エリダヌス座 |
ろ座(ろざ、Fornax)は、現代の88星座の1つ。18世紀半ばに考案された新しい星座である。化学者が蒸留に使う炉がモチーフとされている[1][2]。日本国内のどこからでも星座の全域を見ることができるが、特に明るい星もないため目立たない星座である。
主な天体[編集]
エリダヌス座に東・北・南の3面を囲まれる形で位置している。面積は狭くないが最も明るい恒星でも4等星と暗く、目立つ天体はない。
銀河南極に近く、天の川銀河の銀河面から離れているため、遠方銀河の観測に適している。そのため、「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド (HUDF)」や「ハッブル・エクストリーム・ディープ・フィールド (XDF)」といった長時間露光観測の対象領域とされた。
恒星[編集]
2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) によって3個の恒星に固有名が認証されている[3]。
- α星:見かけの明るさ3.98等のA星[4]と7.19等のB星[5]の連星系。ろ座で最も明るい恒星で、A星に「ダリム[6](Dalim[3])」という固有名が付けられている。
- HD 20868:見かけの明るさ9.93等の10等星[7]。国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」でマレーシアに命名権が与えられ、主星はIntan、太陽系外惑星はBaiduriと命名された[8]。
- WASP-72:見かけの明るさ10.96等の11等星[9]。国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」でモーリシャス共和国に命名権が与えられ、主星はDiya、太陽系外惑星はCuptorと命名された[8]。
そのほか、以下の星が知られている。
星団・星雲・銀河[編集]
NGC1365の周辺にはろ座銀河団と呼ばれる銀河団があり、口径の大きい天体望遠鏡などで観測することができる。
- NGC 1365:棒渦巻銀河。
- NGC 1399:楕円銀河。
- NGC 1316:レンズ状銀河。全天で4番目に強力な電波源(ろ座A)。
- ろ座矮小銀河:天の川銀河の伴銀河。
- UDFj-39546284:2009年のHUDFで発見された、赤方偏移z=10.38の遠方銀河。
- ろ座ウォール:ろ座銀河団を含む銀河フィラメント。
由来と歴史[編集]
18世紀中頃にフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによって考案された。初出は、1756年に刊行された1752年版のフランス科学アカデミーの紀要『Histoire de l'Académie royale des sciences』に掲載されたラカーユの星図で、蒸留に使われる炉の星座絵とフランス語で「炉」を意味する le Fourneauという名称が描かれていた[2][11][12]。ラカーユの死後の1763年に刊行された『Coelum australe stelliferum』に掲載された第2版の星図では、ラテン語化された Fornax Chimiaeと呼称が変更されている[2][13]。
1801年に刊行されたヨハン・ボーデの『ウラノグラフィア』ではラテン語で「化学装置」を意味する Apparatus Chemicu と改称されたが、多くの天文学者はラカーユの Fornax Chimiae のほうを使っていた[2]。1844年にイギリスの天文学者ジョン・ハーシェルは、フランシス・ベイリー宛の書簡の中で、Fornax Chimiae を Fornaxと短縮することを提案した[2][14]。これを受けたベイリーが、翌年の1845年に刊行した『British Association Catalogue』で Fornax と改めたことにより、以降この呼称が定着することとなった[2]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Fornax、略称は For と正式に定められた[15]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
呼称と方言[編集]
日本では当初「舎密爐」という訳語が充てられていた。これは、1908年(明治41年)11月刊行の日本天文学会の会誌『天文月報』第1巻8号に掲載された星図で確認できる[16]。その後、1910年(明治43年)2月刊行の『天文月報』第2巻11号で、舎密爐から「爐」に改訂されたことが伝えられた[17]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも「爐(ろ)」として引き継がれた[18]。戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[19]とした際に、Fornax の日本語の学名は「ろ」と定められ[20]、これ以降は「ろ」という学名が継続して用いられている。
天文同好会[注 1]の山本一清らは、既にIAUが学名を Fornax と定めた後の1931年(昭和6年)3月に刊行した『天文年鑑』第4号で、星座名を Fornax Chemica、訳名を「化学爐」と紹介し[21]、以降の号でもこの星座名と訳名を継続して用いていた[22]。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ a b c “The Constellations”. 国際天文学連合. 2023年1月14日閲覧。
- ^ a b c d e f Ridpath, Ian. “Fornax”. Star Tales. 2023年1月14日閲覧。
- ^ a b “IAU Catalog of Star Names (IAU-CSN)”. 国際天文学連合 (2022年4月4日). 2022年11月11日閲覧。
- ^ "alf For". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月14日閲覧。
- ^ "alf For B". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月14日閲覧。
- ^ "HD 20868". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月14日閲覧。
- ^ a b “Approved names”. Name Exoworlds. 国際天文学連合 (2019年12月17日). 2023年1月14日閲覧。
- ^ "CD-30 1019". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月14日閲覧。
- ^ "LP 944-20". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月14日閲覧。
- ^ Ridpath, Ian. “Lacaille’s southern planisphere of 1756”. Star Tales. 2023年1月7日閲覧。
- ^ “Histoire de l'Académie royale des sciences” (フランス語). Gallica. 2023年1月7日閲覧。
- ^ “Coelum australe stelliferum / N. L. de Lacaille”. e-rara. 2023年1月7日閲覧。
- ^ “Extract (translated) from a letter from Professor Bessel to Sir J. F. W. Herschel, Bart. dated Königsberg, January 22, 1844”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society (Oxford University Press (OUP)) 6 (5): 62-64. (1844). Bibcode: 1844MNRAS...6...62.. doi:10.1093/mnras/6.5.62. ISSN 0035-8711.
- ^ Ridpath, Ian. “The IAU list of the 88 constellations and their abbreviations”. Star Tales. 2023年1月5日閲覧。
- ^ 「十一月の天」『天文月報』第1巻第8号、1908年11月、 8頁、 ISSN 0374-2466。
- ^ 「星座名」『天文月報』第2巻第11号、1910年2月、 11頁、 ISSN 0374-2466。
- ^ 東京天文台 編 『理科年表 第1冊』丸善、1925年、61-64頁 。
- ^ 『文部省学術用語集天文学編(増訂版)』(第1刷)日本学術振興会、1994年11月15日、316頁。ISBN 4-8181-9404-2。
- ^ 「星座名」『天文月報』第45巻第10号、1952年10月、 13頁、 ISSN 0374-2466。
- ^ 天文同好会 編 『天文年鑑』4号、新光社、1931年3月30日、6頁。doi:10.11501/1138410 。
- ^ 天文同好会 編 『天文年鑑』10号、恒星社、1937年3月22日、4-9頁。doi:10.11501/1114748 。