とかげ座
Lacerta | |
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属格形 | Lacertae |
略符 | Lac |
発音 | 英語発音: [ləˈsɜrtə]、属格:/ləˈsɜrtiː/ |
象徴 | トカゲ |
概略位置:赤経 | 21h 57m 30.4s - 22h 57m 51.7s[1] |
概略位置:赤緯 | +35.17° - +56.92°[1] |
正中 | 10月10日21時 |
広さ | 201平方度[2] (68位) |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 17 |
3.0等より明るい恒星数 | 0 |
最輝星 | α Lac(3.77等) |
メシエ天体数 | 0 |
隣接する星座 |
アンドロメダ座 カシオペヤ座 ケフェウス座 はくちょう座 ペガスス座 |
とかげ座(とかげざ、Lacerta)は現代の88星座の1つ。17世紀末に考案された新しい星座で、トカゲがモチーフとされている[1][3]。アンドロメダ座、はくちょう座の間にある北天の小さく目立たない星座。
主な天体[編集]
ギリシア文字の符号が付けられた星はα星とβ星の2つしかない。1936年6月にケフェウス座との境界近くで発見された新星は五味新星の名前で知られている。
恒星[編集]
2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) によって1個の恒星に固有名が認証されている[4]。
- HAT-P-40:見かけの明るさ11.34等の11等星[5]。国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」でリトアニアに命名権が与えられ、主星はTaika、太陽系外惑星はVytisと命名された[6]。
その他、以下の恒星が知られている。
- α星:見かけの明るさ3.77等の4等星[7]。とかげ座で最も明るく見える恒星。
- β星:見かけの明るさ4.44等の4等星[8]。
- とかげ座CP星:1936年6月に発見された古典新星[9]。白色矮星と赤色矮星の連星系と考えられている。日本人が第一発見者となった初の新星で、第一発見者となった五味一明の名前を取って「五味新星」と呼ばれた。
星団・星雲・銀河[編集]
- とかげ座BL:活動銀河核の一種。1929年に発見されたときは変光を示す点光源のように見えたために変光星の命名規則に基いた名がつけられた。現在では同様の天体が複数見つかっており、とかげ座BL型天体 (英: BL Lacertae object) と総称されている[10]。
由来と歴史[編集]

とかげ座は、17世紀末にポーランド生まれの天文学者ヨハネス・ヘヴェリウスによって考案された[3]。ヘヴェリウスの死後の1690年に妻によって出版された著書『Prodromus Astronomiae』に収められた星図『Firmamentum Sobiescianum』と星表『Catalogus Stellarum』に記載されたのが初出である。ヘヴェリウスは、はくちょう座とアンドロメダ座の間の領域に Lacerta sive Stellio(トカゲまたはハルドンアガマ)という名称とトカゲの星座絵を描いた[11]が、Stellio のほうは使われなくなった。なお日本の文献では「ヘヴェリウスは「いもり座」にしようかと考えた」とする説が紹介されているが[12]、これは Stellio をいもりと誤訳したことによる誤謬であり、事実ではない。
イギリスの天文学者ジョン・フラムスティードは、1725年に刊行した『Catalogus Britannicus』の中で、ヘヴェリウスがケフェウス座の一部としていた星をとかげ座に加えて、その領域を拡張させた[11]。この星座のギリシア文字の符号は、1845年にイギリスの天文学者フランシス・ベイリーが刊行した『British Association Catalogue』の中で付されたものである[3]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Lacerta、略称は Lac と正式に定められた[13]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
中国[編集]
中国の天文では、とかげ座の星々は二十八宿の北方玄武七宿の第五宿「危宿」と第六宿「室宿」に配されていた[14]。危宿では、1番星がペガスス座の2星とともに星官「杵」を成した[14]。15・11・2の3星ははくちょう座の4星とともに戦車の車庫を表す星官「車府」を成した[14]。
室宿では、αと4番星がアンドロメダ座・カシオペヤ座・ケフェウス座・はくちょう座の星とともに、空を飛ぶ蛇の妖怪を表す星官「騰蛇」を成した[14]。
呼称と方言[編集]
日本では、明治末期には「蜥蜴」という訳語が充てられていたことが、1910年(明治43年)2月刊行の日本天文学会の会報『天文月報』第2巻11号に掲載された「星座名」という記事でうかがい知ることができる[15]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも「蜥蜴(とかげ)」として引き継がれた[16]。戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[17]とした際に、Lacerta の日本語の学名は「とかげ」と定まり[18]、これ以降は「とかげ」という学名が継続して用いられている。
現代の中国では蝎虎座と呼ばれている[19]。
とかげ座に由来する事物[編集]
出典[編集]
- ^ a b c “The Constellations”. 国際天文学連合. 2023年1月22日閲覧。
- ^ “星座名・星座略符一覧(面積順)”. 国立天文台(NAOJ). 2023年1月1日閲覧。
- ^ a b c Ridpath, Ian. “Lacerta”. Star Tales. 2023年1月22日閲覧。
- ^ Mamajek, Eric E. (2022年4月4日). “IAU Catalog of Star Names (IAU-CSN)”. 国際天文学連合. 2022年12月14日閲覧。
- ^ "HAT-P-40". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月22日閲覧。
- ^ “Approved names” (英語). Name Exoworlds. 国際天文学連合 (2019年12月17日). 2020年1月12日閲覧。
- ^ "alp Lac". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月22日閲覧。
- ^ "bet Lac". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月22日閲覧。
- ^ "CP Lac". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月22日閲覧。
- ^ “とかげ座BL型天体”. 天文学辞典. 日本天文学会 (2019年9月14日). 2023年1月22日閲覧。
- ^ a b Ridpath, Ian. “Hevelius’s depiction of Lacerta”. Star Tales. 2023年1月22日閲覧。
- ^ 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味 -』(新装改定版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、190頁。ISBN 978-4-7699-0825-8。
- ^ Ridpath, Ian. “The IAU list of the 88 constellations and their abbreviations”. Star Tales. 2023年1月22日閲覧。
- ^ a b c d 大崎正次「中国の星座・星名の同定一覧表」『中国の星座の歴史』雄山閣出版、1987年5月5日、294-341頁。ISBN 4-639-00647-0。
- ^ 「星座名」『天文月報』第2巻第11号、1910年2月、11頁、ISSN 0374-2466。
- ^ 東京天文台 編『理科年表 第1冊』丸善、1925年、61-64頁 。
- ^ 『文部省学術用語集天文学編(増訂版)』(第1刷)日本学術振興会、1994年11月15日、316頁。ISBN 4-8181-9404-2。
- ^ 「星座名」『天文月報』第45巻第10号、1952年10月、158頁、ISSN 0374-2466。
- ^ 大崎正次「辛亥革命以後の星座」『中国の星座の歴史』雄山閣出版、1987年5月5日、115-118頁。ISBN 4-639-00647-0。