日本語と朝鮮語の比較

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朝鮮語族(左)と日琉語族(右)の言語と方言の地図

本項では、日本語と朝鮮語の比較(にほんごとちょうせんごのひかく、英語:Comparison of Japanese and Korean、朝鮮語: 일본어와 한국어 비교)について述べる。

概説

日本語日琉語族に属しており、朝鮮語朝鮮語族に属している。地理的に近い言語である両言語は、言語類型の語法と形態については似ているが、語彙などの一致は少ない。また、どちらとも中国の漢字に由来しているものの、異なる文字を用いる。日本語では漢字が正書法の一部だが、朝鮮半島で伝統的に使用されてきたハンチャ(한자)は歴史上のものとなっている(大韓民国では、部分的に漢字が使われることがあるが、北朝鮮では漢字は全く使われないものとなっている)。言語の類似と朝鮮の日本の文化への影響を観察した多くの言語学者は、両言語は語族的な関係があるという仮説を立てたが[1][2]、ほとんどが確証が無いか、多くで信用されていない仮説の一部を取ったものが多かった。

計算言語学と考古学的証拠によって裏付けられたロベーツらによるトランスユーラシア語族仮説(新アルタイの提案)など、系図上のつながりの可能性を復活させた新しい研究もあったが[3]、この見解は厳しく批判されている[4]

朝鮮語 日本語
話者数 8300万 1億2640万
大韓民国の旗 大韓民国
朝鮮民主主義人民共和国の旗 朝鮮民主主義人民共和国
中華人民共和国の旗 中国延辺朝鮮族自治州長白朝鮮族自治県
日本の旗 日本
パラオの旗 パラオアンガウル州
語族 朝鮮語族 日琉語族
文字 ハングル漢字(韓国)、吏読口訣郷札(旧) かな平仮名片仮名)、漢字万葉仮名(旧)

文法

朝鮮語と日本語はどちらも、動詞が接頭辞[5]として機能する膠着語であり、主語-目的語-動詞(SOV) の類型をとっている[6][7][8]。どちらも主題優勢言語かつ主語省略言語英語版でもある。朝鮮語も日本語と同様に、名詞の後に助動詞 (日本語は「〇〇する」、朝鮮語は「〇〇하다(ハダ)」) をつけて1つの動詞をなすことがある。

単語

この 2 つの言語は (外来語を除いて)別々の同族語を持つと考えられてきたが[9]、 奈良市の名前を朝鮮語からの借用語に帰する少数派の理論も存在する (奈良#語源を参照)。

数詞

古代韓国の親戚である高句麗の証明された4つの数詞と、上代日本語のそれにあたるものとの間に類似点が示されている[10][11]

数字 高句麗語 上代日本語
3 mil mi1
5 uc itu
7 na-nin nana
10 dok to2 / to2wo

新羅語でも、数字の3に当たる数詞を「ミル」と言っている。

注: 古い日本語の下付き表記については、上代特殊仮名遣を参照。

文字

どちらの言語も、表音文字(日本語の場合はひらがな、朝鮮語の場合はハングル)と漢字をある程度併用している。

朝鮮語は、主に朝鮮半島発祥である素性文字ハングル(北朝鮮ではチョソングル)で表記される。伝統的な漢字(朝鮮語に対応した漢字) は、韓国はで使用されることが時々あるが、同音異義語 (特にテレビ番組の字幕)、言語や歴史の研究、芸術的表現、法律文書、および新聞などの特定の目的でのみ用いられており、ネイティブの北朝鮮人・韓国人の間では全く使われなくなった。北朝鮮では、中国の影響を取り除こうとして漢字が大幅に抑制されてきたが、一部の場合ではまだ漢字が使用されており、北朝鮮の学校で教えられている漢字の数は韓国の学校よりも多い[12]

日本語は、漢字(日本語に適応した漢字) と仮名を組み合わせて表記される[13][14]。ただし、北朝鮮・韓国の漢字とは異なり、漢字は漢語と日本語の両方を表記できる。

歴史上、かつては朝鮮語も日本語も漢字だけで書かれていた。しかし、何世紀にもわたって徐々に現代的な形に変化していった[15]

敬語

日本語と朝鮮語には、複数の段階を有する敬語が細部まで存在し、それぞれ言論と筆記の形式からは分けられている。両言語は最も細かい敬語を有する言語であり、他の言語と比類のないものであると言われている[16]。また、一部の敬語は同じ由来を持っているとも指摘されている[17]。これらの敬語は、親称などのよく使われる敬称などだけが使われるわけでなく、動詞語形変化も起こっており、比類を見ないものとなっている。

関連項目

参考文献

  1. ^ Andrew Logie (2013年11月22日). “Are Korean and Japanese related? The Altaic hypothesis continued.”. Koreanology. 2016年2月17日閲覧。
  2. ^ Kornicki, Peter. Aston, Cambridge and Korea Archived May 29, 2008, at the Wayback Machine.
  3. ^ Robbeets, Martine and Bouckaert, Remco. Bayesian phylolinguistics reveals the internal structure of the Transeurasian family Archived July 27, 2020, at the Wayback Machine., Robbeets, Martine et al. 2021 Triangulation supports agricultural spread of the Transeurasian languages, Nature 599, 616–621
  4. ^ Tian, Zheng; Tao, Yuxin; Zhu, Kongyang; Jacques, Guillaume; Ryder, Robin J.; de la Fuente, José Andrés Alonso; Antonov, Anton; Xia, Ziyang et al. (2022-06-12), Triangulation fails when neither linguistic, genetic, nor archaeological data support the Transeurasian narrative, Cold Spring Harbor Laboratory, doi:10.1101/2022.06.09.495471, https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.06.09.495471v1 
  5. ^ Bernard Comrie: "Introduction", p. 7 and 9 in Comrie (1990).
  6. ^ S. Tomlin, Russell. Surveyed in the 1980s.
  7. ^ Introducing English Linguistics International Student Edition by Charles F. Meyer
  8. ^ Russell Tomlin, "Basic Word Order: Functional Principles", Croom Helm, London, 1986, page 22
  9. ^ Martin, Samuel (1990).
  10. ^ Shinmura, Izuru (1916). “國語及び朝鮮語の數詞について [Regarding numerals in Japanese and Korean]”. Geibun 7.2–7.4. 
  11. ^ Yi, Ki-Mun (1972). Kugosa Kaesol [Introduction to the history of Korean]. Seoul: Minjung Sogwan. 
  12. ^ Hannas 1997: 68. "Although North Korea has removed Chinese characters from its written materials, it has, paradoxically, ended up with an educational program that teaches more characters than either South Korea or Japan, as Table 2 shows."
  13. ^ Advances in Psychology Research. Google Books. Books.google.co.uk. Retrieved on 2013-08-24.
  14. ^ Learning Japanese in the Network Society. Google Books. Books.google.co.uk. Retrieved on 2013-08-24.
  15. ^ The Handbook of Korean Linguistics By Jaehoon Yeon
  16. ^ Brown, Lucien (2008). “Contrasts Between Korean and Japanese Honorifics”. Rivista Degli Studi Orientali 81 (1/4): 369–385. JSTOR 41913346. 
  17. ^ Grammaticalization in Sentence-Final Politeness Marking in Korean and Japanese”. 2022年10月14日閲覧。