アメリカニゼーション

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アメリカニゼーションまたはアメリカナイゼーション: Americanization)とは、政治経済社会文化の各面が、アメリカ合衆国のようになる現象である。また、アメリカ合衆国の政治、経済、社会、文化を模倣したり嗜好したりする現象もいう。和製英語でアメリカ化する現象・行為を「アメリカナイズする」ともいう。

主な特徴

政治

全世界に展開するアメリカの多国籍企業の利益を、自国の軍需産業と軍事力で支えて、世界規模で軍事力を行使する国家、「グローバル軍事大国」を国家像とする。ブッシュ2世政権のように、石油産業など軍事と密接に関わる産業の大物が政治を握っている例も多く、「軍産複合体(産軍複合体)」とも呼ばれている。

「グローバル軍事大国」を実現する為に、同じ軍事大国路線を掲げる二大政党制を政治の特徴とする。アメリカの富裕階級である多国籍企業や軍需産業の上層は、二大政党のいずれかに政治献金を行い、片方の政党が政権を失っても、もう片方の政党に政治献金を行って「保険」をかけている。

経済

アーサー・ケストラーは、著書「ザ・ロータス・アンド・ザ・ロボット」[1]において、アメリカニゼーションを代表する者はコカ・コーラであると述べ、「コカコロニゼーション[2]なる造語を生んだ。「コカ・コーラ」と植民地化を意味する語「コロニゼーション」[3]かばん語である。

コカ・コーラ(食品)を筆頭に、マイクロソフトIBM(IT)、カーギル(商社)、モンサント(農業・バイオ)、マクドナルド(外食)、ウォルマートコストコ(小売)、ダウ・ケミカル(化学)、ゼネラル・エレクトリック(電機など)、エクソンモービル(石油)、ベクテル(建設 ゼネコン)、ウォルト・ディズニー・カンパニー(メディア)など、全世界で影響力を誇示する大企業とその製品を経済の特徴とする。

これらの大企業はアメリカ合衆国以外の国々にも経済的な恩恵をもたらす一方、多国籍企業は投資家や創業者オーナー、経営者に富が集中し、末端の労働者は容易かつ多量に解雇される懸念があるとされるが、随意的雇用(Employment-at-will)で、差別的でない限り解雇を規制できない。また、これらの企業が他国の文化・風習を無視しているという批判もある。

なお、モータリゼーションの先進国であるため自動車社会を前提とした産業も多いが、自動車自体を製造するビッグスリーのアメリカ合衆国国外でのシェアは低い。

メディア

音楽における象徴的な人物としては、フランク・シナトラマイケル・ジャクソンエルヴィス・プレスリーなどが挙げられる。アメリカ合衆国の映画では、「強いアメリカ」「正義」「自由」「武装と独立」などが強いメッセージ性をもつとされる。西部劇では、基本的に主人公は白人で、勧善懲悪をストーリーの骨子とし、騎兵隊を「善役」、インディアンを「悪役」としたものが多い。戦争映画では、特に第二次世界大戦を中心にアメリカ軍が正義であるとする。アメリカ以外の国々に対するステレオタイプ的な描かれ方がしばしば問題となることがある。これは独立の経緯、銃社会、軍事産業の存在などが背景にあるとされる。

傾向が強いと目される国

中華民国台湾
台湾人は幼稚園から英語を勉強し始めるが、国民の英語力はシンガポールのような英語を公用語化している国にははるかに及ばず、英語能力が国際観や国際人に値するのかどうかが議論されている。また、測量の単位にアメリカ式のものを使用する場合がある。
日本国
太平洋戦争終結後、降伏した日本を占領した連合軍の主力はアメリカ軍である。主要都市の多くへ爆撃を受けた事により荒廃した日本の国土とは対照的に、ほとんど戦災を受けなかったアメリカ本土では、戦時中でも娯楽映画[4]が制作されるなど豊かな生活が享受されていた。学校給食においてアメリカ産小麦によるパンが提供され、日本の食文化にアメリカ産農産物を定着させることとなった。テレビではアメリカ製の映画やテレビドラマが放送され、国民をアメリカ文化に馴染ませる政策がとられた(特に、ホームドラマにおける「頼りになって何でも相談出来る格好いい父親、優しい美人の母親」の存在は、従来の日本型家庭である「厳父慈母」のイメージとは正反対であった)。日米安全保障条約により政治・軍事面でのアメリカとの結びつきは独立後も強いものでありつづけ、日本はアメリカ合衆国を主な市場として経済成長を遂げた。近年では日本文化のアメリカへの輸出も増えているが、「ディズニーパレード」が放送されディズニーパークが人気であるなど、占領期から高度経済成長期に定着したアメリカ文化の影響力は今なお強い。21世紀に入って、ジョージ・W・ブッシュは対日占領(=親米保守対米従属化)を「最も成功した占領」と呼んだ。
大韓民国
朝鮮戦争でアメリカ軍を主体とする国連軍が韓国を支援したことや、日本と同様東アジア情勢におけるアメリカのパートナーでもあることから、韓国とアメリカの政治的距離は近い。また韓国はキリスト教が盛んな国でもあり、宗教的にもアメリカの影響を受けやすいとされる。
スウェーデンノルウェーフィンランド
スウェーデン・フィンランドはアメリカとは政治・経済面では一定の距離を置きつつ、文化面では強い影響を受けている。ノルウェーは他の北欧諸国との関係とともに英米との関係を重視し、特にアメリカとの関係が深い。北欧諸国では、アメリカ製の番組が英語のままで放送されている。フィンランドを除くスカンディナヴィア諸国では語族の同じ言語を使うこともあって、北欧人の英語能力は一般的に高いと評価されている。
メキシコ
アメリカとは隣国であり、古くから関係は深い。さらに近年はNAFTA圏に組み込まれることでアメリカ系企業の進出が進み、経済面での従属性が強まっている。NAFTA圏内の貿易自由化によりメキシコの農業や地場産業は衰退し、多数のメキシコ人がアメリカ=メキシコ国境を越えて、合法・違法の移民として流出している。
フィリピン
かつてアメリカ植民地であったため公用語が英語であり、長期間にわたり安定して親米政権とされる国である。クラーク空軍基地、スービック海軍基地など軍事的な関係も緊密である。
ミクロネシア
カナダ
イギリスの植民地であったカナダは、1812年の米英戦争ではかろうじてアメリカ合衆国からの侵略は防いだが、長大な国境を挟んだ隣国であり、古くからアメリカ合衆国からの影響は大きい。1907年には既にサミュエル・E・モフェット(Samuel Erasmus Moffett)が「カナダのアメリカ化(The Americanization of Canada)」を著しており、1993年にはローレンス・マーチン(Martn, Lawrence)が「忠誠の誓い:マルルーニ時代のカナダのアメリカ化(Pledge of Allegiance: The Americanization of Canada in the Mulroney Years)」を記している。メキシコ同様、近年はNAFTA圏に組み込まれることでアメリカ系企業の進出が進み、経済面での関係が強まっている。政府は業種によって外資規制や外国製メディアコンテンツ規制などで対応している。

代表的人物

各国においてアメリカニゼーションを実行したと目される政治家・実業家・学者・理論家は、概ね以下の通りである。

アメリカ
ヨーロッパ
日本
中南米
大韓民国
フィリピン
旧南ベトナム
旧ハワイ共和国
中東・西アジア

脚注

  1. ^ : The Lotus and the Robot
  2. ^ : cocacolonization
  3. ^ : colonization
  4. ^ 西部劇プロパガンダ的な面もあるが「サウンド・オブ・ミュージック」が好例。

関連書籍

関連項目

外部リンク