アメリカニゼーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

アメリカニゼーションまたはアメリカナイゼーション: Americanization)とは、政治経済社会文化の各面が、アメリカ合衆国のようになる現象である。また、アメリカ合衆国の政治、経済、社会、文化を模倣したり嗜好したりする現象もいう。和製英語でアメリカ化する現象・行為を「アメリカナイズする」ともいう。

主な特徴[編集]

政治[編集]

全世界に展開するアメリカの多国籍企業(グローバル企業)の利益を、自国の軍需産業と軍事力で支えて、世界規模で軍事力を行使する国家、即ち「グローバル軍事大国」を国家像とする。子ブッシュ政権のように、石油など軍事と密接に関わる産業の指導者が政治を握っている例も多く、「軍産複合体」「産軍複合体」とも呼ばれている。

「グローバル軍事大国」を実現する為に、同じ軍事大国路線を掲げる二大政党制を政治の特徴とする。アメリカの富裕階級である多国籍企業や軍需産業の上層は、二大政党のいずれかに政治献金を行い、片方の政党が政権を失っても、もう片方の政党に政治献金を行って「保険」をかけている。

経済[編集]

アーサー・ケストラーは、著書「ザ・ロータス・アンド・ザ・ロボット」[1]において、アメリカニゼーションを代表する者はコカ・コーラであると述べ、「コカコロニゼーション[2]なる造語を生んだ。「コカ・コーラ」と植民地化を意味する語「コロニゼーション」[3]かばん語である。

コカ・コーラ(食品)を筆頭に、マイクロソフト(OS)、IBMamazongoogle(IT)、カーギル(商社)、モンサント(農業・バイオ)、マクドナルド(外食)、ウォルマートコストコ(小売)、ダウ・ケミカル(化学)、ゼネラル・エレクトリック(電機など)、エクソンモービル(石油)、ベクテル(建設 ゼネコン)、ウォルト・ディズニー・カンパニー(メディア)など、全世界に影響力を誇示する大企業とその製品を経済の特徴とする。アメリカのグローバル企業が執る支配体制(企業内か企業外かを問わない)を指して、「マクドナルダイゼーション」(: McDonaldization(マクドナルド化。ジョージ・リッツァが造語)と呼ぶ例もある。

これらの大企業は、アメリカ合衆国以外の国々にも恩恵をもたらす一方、底辺の労働者は容易かつ大量に解雇されやすく、大量解雇や大量非正社員化も嫌悪しない頂点の企業家(冷戦後では「CEO」と呼ばれることもある)は破格の高報酬を手にする例がザラにある[4]雇用は随意的雇用(Employment-at-will)で、差別的でない限り解雇を規制できない。又、3ヶ月や1年といった短期間の利益ばかりを愛好し、5年や10年や1世代(30年)といった長期間の利益を嫌悪する傾向を持っている。資本主義の総本山であり「企業は株主の物」「市場は公正・無謬・万能」という発想が根深く、社会主義に基づいた「企業の社会的責任」「企業や市場の横暴を規制する」という発想は嫌悪される。

これらの企業や、これらの企業が執る支配体制が、他国の文化や風習を無視しているという批判もある。

なお、モータリゼーションの先進国であるため自動車社会を前提とした産業も多いが、自動車自体を製造するビッグスリーのアメリカ合衆国国外でのシェアは低い。

メディア[編集]

音楽における象徴的な人物としては、フランク・シナトラマイケル・ジャクソンエルヴィス・プレスリーなどが挙げられる。アメリカ合衆国の映画では、「強いアメリカ」「正義」「自由」「武装と独立」などが強いメッセージ性をもつとされる。西部劇では、基本的に主人公は白人で、勧善懲悪をストーリーの骨子とし、騎兵隊を「善役」、インディアンを「悪役」としたものが多い。戦争映画では、特に第二次世界大戦を中心にアメリカ軍が正義であるとする。アメリカ以外の国々に対するステレオタイプ的な描かれ方がしばしば問題となることがある。これは独立の経緯、銃社会、軍事産業の存在などが背景にあるとされる。

これら以外には、1950年代アメリカ合衆国のテレビドラマでは、『パパは何でも知っている』『うちのママは世界一』など、「庭付き一戸建て」の家庭を描いた作品が続々と制作され、「アメリカンドリーム」として喧伝された。この時代背景として、冷戦ソビエト連邦よりも優位に立ちたいという外交的立場と、「政府と企業が手を組めば何でも解決できる」という信仰がアメリカ社会に浸透していたこと[5]が挙げられる。

傾向が強いと目される国[編集]

中華民国台湾
台湾人幼稚園から英語を勉強し始めるが、国民の英語力はシンガポールのような英語公用語化している国にははるかに及ばず、英語能力が国際観や国際人に値するのかどうかが議論されている。また、測量の単位にアメリカ式のものを使用する場合がある。
日本国
第二次世界大戦の結果、敗北した日本を占領した連合軍の主力はアメリカ軍である。主要都市の多くへ爆撃を受けた事により荒廃した日本の領土とは対照的に、ほとんど戦災を受けなかったアメリカ本土では、戦時中でも娯楽映画[6]が制作されるなど豊沃な生活が享受されていた。
戦後混乱期には、学校給食においてアメリカ産小麦によるパンが提供され、日本の食文化にアメリカ産農産物を定着させることとなった。1950年代には、自家用車家電製品を備えた「庭付き一戸建て」家庭を描いたホームドラマがアメリカで続々と制作されたが、日本でも続々と放送された。
政治や軍事でも、日米安全保障条約年次改革要望書など、アメリカとの結び付きは冷戦後も一貫して強い。経済でも、冷戦時代にはアメリカを主な市場として、またアメリカ国民が日本製品を買い支えたお陰で繁盛を享受した。
近年では、日本文化のアメリカへの輸出も増えているが、「ディズニーパレード」が放送されディズニーパークが人気を博す、ハロウィンのイベントが日本国内で定着するようになるなど、戦後混乱期(=占領期)から高度経済成長期に定着したアメリカ文化の影響力は今なお強い。2000年代には、子ブッシュ大統領は対日占領(=親米保守対米従属)を「最も成功した占領」と呼んだ。
大韓民国
朝鮮戦争でアメリカ軍を主体とする国連軍が韓国を支援したことや、日本と同様東アジア情勢におけるアメリカのパートナーでもあることから、韓国とアメリカの政治的距離は近い。また韓国はキリスト教が盛んな国でもあり、宗教的にもアメリカの影響を受けやすいとされる。
スウェーデンノルウェーフィンランド
スウェーデン・フィンランドはアメリカとは政治・経済面では一定の距離を置きつつ、文化面では強い影響を受けている。ノルウェーは他の北欧諸国との関係とともに英米との関係を重視し、特にアメリカとの関係が深い。北欧諸国では、アメリカで制作された番組が英語のままで放送されている。フィンランドを除くスカンディナヴィア諸国では語族の同じ言語を使うこともあって、北欧人の英語能力は一般的に高いと評価されている。
メキシコ
アメリカとは隣国であり、古くから関係は深い。さらに近年はNAFTA圏に組み込まれることでアメリカ系企業の進出が進み、経済面での従属性が強まっている。NAFTA圏内の貿易自由化によりメキシコの農業や地場産業は衰退し、多数のメキシコ人がアメリカ=メキシコ国境を越えて、合法・違法の移民として流出している。
フィリピン
かつてアメリカの植民地であったため公用語が英語であり、長期間にわたり安定して親米政権とされる国である。クラーク空軍基地スービック海軍基地など軍事的な関係も緊密である。
ミクロネシア
カナダ
イギリスの植民地であったカナダは、1812年の米英戦争ではかろうじてアメリカ合衆国からの侵略は防いだが、長大な国境を挟んだ隣国であり、古くからアメリカ合衆国からの影響は大きい。1907年には既にサミュエル・E・モフェット(Samuel Erasmus Moffett)が「カナダのアメリカ化(The Americanization of Canada)」を著しており、1993年にはローレンス・マーチン(Martn, Lawrence)が「忠誠の誓い:マルルーニ時代のカナダのアメリカ化(Pledge of Allegiance: The Americanization of Canada in the Mulroney Years)」を記している。メキシコ同様、近年はNAFTA圏に組み込まれることでアメリカ系企業の進出が進み、経済面での関係が強まっている。政府は業種によって外資規制や外国製メディアコンテンツ規制などで対応している。

代表的人物[編集]

各国においてアメリカニゼーションを実行したと目される政治家・実業家・学者・理論家は、概ね以下の通りである。

アメリカ
ヨーロッパ
日本
中南米
大韓民国
フィリピン
旧南ベトナム
旧ハワイ共和国
中東・西アジア

脚注[編集]

  1. ^ : The Lotus and the Robot
  2. ^ : cocacolonization
  3. ^ : colonization
  4. ^ 例として:AT&Tロバート・アレン[要曖昧さ回避]会長は、4万人を解雇して年収が520万ドル(5億4千万円、1996年2月の日本円に換算)に増大。IBMルイス・ガスナーCEOは、1987年から合計18万人を解雇して、年収が770万ドル(8億4700万円、1993年)や1320万ドル(14億5200万円、1995年)に増大。参照:朝日新聞 1996年2月28日付12頁、ビル・トッテン『日本はアメリカの属国ではない』117頁~119頁。
  5. ^ 朝日新聞 1996年2月29日付夕刊13頁 青木保「欲望の資本主義」
  6. ^ 西部劇プロパガンダ的な面もあるが「サウンド・オブ・ミュージック」が代表例。

関連書籍[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]