SA 316 (航空機)
表示
Aérospatiale Alouette III
SA316およびその改良型であるSA319、通称アルーエトIII(Alouette III、Alouetteとは、フランス語でヒバリの意味)の愛称を持つフランス製の単発エンジン式軽汎用ヘリコプターである。
製造はフランスのシュド・アビアシオンが行っていたが、ルーマニアやインド、オランダ、スイスでもライセンス生産され、2,000機以上が製造されており、現在でもインドでは製造が続けられている。
運用
アルーエトIIIは冷戦中の各種戦争・紛争において対地攻撃、輸送、偵察、救急などで広く用いられており、実戦経験が多い機体である。
フランス軍では、1960年当時のアルジェリア独立戦争に投入され、SS.10やSS.11などの対戦車ミサイルを装備してアルジェリア独立派ゲリラの攻撃に従事した[1]。
その後も印パ戦争やローデシア紛争、ポルトガル植民地であるアンゴラ、モザンビーク、ギニアビサウの独立戦争、南アフリカのアンゴラ侵攻など、1980年代まで世界各地の紛争で運用された。
また、海軍でも艦載機としてレーダーやディッピングソナー、磁気探知機などの捜索用センサー類と短魚雷を装備しての対潜哨戒や、AS.12(en)有線誘導ミサイルを利用しての対艦攻撃、捜索救難に運用され、警察や消防などの公共機関や民間企業でも広く使用された。
派生型
- SA-316A:初期生産型。元々の形式番号はSE 3160。
- SA-316B:エンジンをチュルボメカ アルトゥステ IIIBターボシャフトエンジン(出力425 kW)に換装し、メインローターとテールローターを強化した性能向上型。インドとルーマニアでライセンス生産された。
- SA-319B:SA-316Bを改良した型で、エンジンをチュルボメカ アスタゾウ XIV(出力649 kWを、447 kWへ減格使用)に換装した機体。スイスでライセンス生産された。
- SA-316C:エンジンをチュルボメカ アルトゥステ IIID に換装した型であるが、少数のみ製造。
- G-Car:ローデシア空軍における、アルーエトIII汎用型の呼称。機体側面に1挺のFN MAG(後には2挺の.30口径ブローニング機関銃)をドアガンとして装備。
- K-Car:ローデシア空軍における、アルーエトIIIガンシップ仕様の呼称。機体のキャビン内部から左側面につきだす形で1門の20mm機関砲を装備しており、乗員はパイロット(前部左座席)と機関砲操作要員(後部の、左向きの座席)、指揮官(後方に向いた前部右座席)の3名。
K-carと同様に機体に20mm機関砲を搭載した機体はポルトガルや南アフリカでも運用されており、搭載機関砲はMG151/20の他にはイスパノMk Vや南アフリカ国産のGA-1[2]が使用された。
試作機
- IAR-317 スカイフォックス:ルーマニアがIAR-316をベースに設計した攻撃ヘリコプター。3機が試作されたのみで、量産化には至らず。
- XH-1 アルファ(en):南アフリカのアトラス社がSA-316をベースに試作した攻撃ヘリコプター。AH-2ローイファルク開発のための研究機として、1機のみ製造。
運用国
軍用
- アラブ首長国連邦 (アブダビ)
- アルバニア (SA 319)
- アンゴラ
- アルゼンチン (SA 316)
- オーストリア (SA 316, SA 319)
- オーストラリア
- オーストラリア空軍が1964年から1967年に3機(A5:165-167)を運用。
- バングラデシュ
- ベルギー
- ベルギー空軍が救難用にSA 319を運用。
- ビアフラ共和国
- ビアフラ軍が数機を運用。
- ボリビア
- ブルキナファソ
- ビルマ
- ブルンジ (SA 316)
- 中国
- カメルーン (SA 319)
- チャド (SA 316)
- チリ (SA 316)
- コンゴ共和国 (SA 316)
- コートジボワール
- デンマーク
- ドミニカ共和国
- エクアドル (SA 316)
- エルサルバドル
- 赤道ギニア
- エチオピア (SA 316)
- フランス (SA 316, SA 319)
- ガボン
- ガーナ (SA 316)
- ギリシャ (SA 319)
- ギニア
- ギニアビサウ (SA 316)
- イギリス領香港
- 王立香港空軍が警備や救難に運用。
- インド
- ヒンドスタン航空機がHAL チャタク(Chetak)の名でSA 319をライセンス生産。
- インドネシア (SA 316)
- イラク (SA 316)
- イラン
- アイルランド (SA 316)
- イスラエル
- ヨルダン (SA 316)
- ラオス
- レバノン
- SA 316を12 機運用。
- リビア (SA 316)
- マダガスカル
- マラウイ
- マレーシア (SA 316)
- マルタ (SA 316)
- メキシコ (SA 319)
- モロッコ
- モザンビーク
- ネパール
- オランダ
- ニカラグア
- パキスタン
- パキスタン海軍 (SA 316, SA 319)
- ペルー (SA 319)
- ポルトガル
- ポルトガル空軍がSA 319を18 機運用しているが、2011年までに引退予定。
- ローデシア
- ローデシア空軍
- ルーマニア (IAR 316)
- ルワンダ (SA 316)
- サウジアラビア
- セーシェル
- シンガポール
- シンガポール空軍
- スリランカ (SA 316)
- 南アフリカ共和国 (SA 316)
- 南アフリカ空軍
- 韓国
- 大韓民国海軍 (SA-319B)
- ベトナム共和国
- スペイン
- スリナム (SA 316)
- スイス (SA 316)
- チュニジア (SA 316)
- ベネズエラ (SA 316)
- ユーゴスラビア
- SFR ユーゴスラビア空軍が特殊ヘリコプター第一飛行隊でAFとADが2機のSA 316を運用。
- ザイール (SA 316)
- ザンビア
- ジンバブエ (SA 316)
民間
性能・主要諸元(SA-316B)
- 乗員:2名
- 乗客:5名(標準型)
- 全長:10.03 m
- 主回転翼直径:11.02 m
- 全高:3.09 m
- 円板面積:m²
- 空虚重量:1.108 t
- 吊下可能重量:2.1 t
- 最大離陸重量: 2.2 t
- 発動機:チュルボメカ アルトゥステ IIIB ターボシャフトエンジン(425kw)×1基
- 超過禁止速度:210 km/h
- 巡航速度:km/h
- 航続距離:540 km
- 巡航高度:m
- 上昇率:4.5 m/sec
保存
- 東京都新宿区の消防博物館に日本初の消防ヘリコプターである「ちどり」と「かもめ」
- 岐阜県各務原市のかかみがはら航空宇宙科学博物館に名古屋市消防局で使用された機体 SA316B
- 福岡県福岡市早良区の防災センターに福岡市消防局で使用された「あかとんぼ」の胴体部、同中央区の少年科学文化会館に同機のエンジン
脚注
- ^ http://worldatwar.net/chandelle/v3/v3n1/frcoin.html
- ^ http://www.saairforce.co.za/the-airforce/weapons/42/ga-1-20mm-cannon
外部リンク
- www.aviastar.org(英語)
- Globalsecurity.org(英語)
- FAS.org(英語)
- 南アフリカ空軍公式サイト - Alouette III(英語)
- ルーマニア空軍公式サイト:ルーマニア製IAR-316B(ルーマニア語)