雲のように風のように
『雲のように風のように』(くものように かぜのように)は、酒見賢一のデビュー作『後宮小説』を原作とするテレビアニメ。1990年3月21日に日本テレビ系で放送された。
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[編集] 概要
原作は日本ファンタジーノベル大賞最初の受賞作であり、主催の三井不動産販売が一社提供のスポンサーとなって、春分の日の日中に本編放送中はCMを入れないという異例の形式で放送された。
スタジオぴえろ作品であるのに、スタジオジブリ作品に多く参加しているアニメーターの近藤勝也が作画監督を務めていることもあり、よくジブリ作品と勘違いされることがある。
アニメ化にあたって登場人物の人生や設定等に多少の変更、描写の省略がされており、それについて原作者は「幾つか物足りなさはあるが映像化に感謝している」と1993年に出版された文庫版のあとがきで述べている。
2002年にDVDが発売された。
[編集] ストーリー
素乾国の皇帝が急死した。次に玉座が埋まるまで、宮廷内は官吏や皇太后の陰謀がいよいよ渦巻く。亡き先帝の后・琴皇太后は私欲のため皇太子の暗殺を企て、宦官たちは私利のため新皇帝の後宮(花嫁)を用意しようと宮女狩りを決定した。
宮女狩りとは宦官が全国各地に赴き、花嫁候補となる妙齢の娘を宮廷に連れ帰る事。緒陀県(おだけん)という地方にも宮女募集のお触れが立った。陶器職人の一人娘・銀河は、近所のおばさんから聞いた宮女の待遇に惹かれ都に行く事を即決し、銀河を逸材と感じた宦官の真野に連れられ故郷を後にした。
初めて目にする街の賑わい、そびえる素乾城、様々な人との出会い。そして6か月の研修を経て、銀河は皇帝の妃・銀正妃となった。しかし夢が叶った後には、顔も知らない皇帝との結婚が待っている。それに気づいた憂え顔の銀河に姿を見せた皇帝は、コリューンであった。
銀河はコリューンと〈たると〉の中で出会い、覆面に襲われている所を助けもした。銀河が女性と思っていた人物は、自分の夫であり義母に命を狙われる新しい皇帝だったのだ。
若い新皇帝は苦悩していた。国内で反乱が勃発したからだ。2人の男が退屈しのぎに起こした戦争だとは知る由もなく、反乱軍は日に日に兵士の数と勢いを増してゆき、ついにコリューンの頼みの綱であった北磐関(ほくばんかん)をも攻め落としてしまった。
ほとんどの役人や街の金持ちは、朝廷への進軍を止められぬ皇帝を見限り、都を去っていく。だが後宮では銀河が発起人となり、宮女と宦官で「後宮軍」を結成。女を求めて侵入をこころみる反乱軍と戦闘を開始する。
睦まじい夫婦の暮らしが始まるはずだった銀河とコリューンの運命、そして素乾国の行く末は………。
[編集] 用語解説
- 素乾国(そかんこく)
- 実在しない架空の帝国。人々の衣食住は古代中国を思わせるものの、王城内には大砲やマスケット銃があり、近世の明がモデルのようでもある。数百年にわたりコリューンの先祖が代々治めてきた。
- 宮女(きゅうじょ)
- 後宮に住む女のこと。規模は数百から数千人と皇帝によって異なる。女は貴賤の別なく全国から集められ、研修や試験に合格した者が晴れて宮女、すなわち皇帝の妻と認められる。
- たると
- 後宮に上がる者が必ず通る入口。漢字表記は「垂戸」。暗い上に長いトンネルの形をしており、案内婆という老女が宮女候補生の手を引いてたるとの出口まで案内する。月に一度、候補失格になった娘が入った時と同じようにここを通って城から去って行く。
- 女大学(おんなだいがく)
- 素乾国唯一の女子校。集まった宮女候補生はここで研修を受ける。開講期間は半年間で、皇帝の妻を務めるために必要な知識を学び、健康な子供を産むための運動もする。
- 正妃(せいひ)
- 皇帝の第一夫人に与えられる官職の名。女大学の卒業試験結果や皇帝と教師の協議等によって宮女の順位は決まる。ちなみに第二夫人以下第七夫人までの官名は上から順に、后妃(こうひ)・夫人(ふじん)・嬪妃(ひんひ)・婕婦(しょうふ)・美人(びじん)・才人(さいじん)という。
注意:以降の記述で登場人物・作品に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。 →[記述をスキップ]
[編集] 登場人物
[編集] 新皇帝側
- 銀河(ギンガ)
- 主人公。田舎に住む庶民の娘だったが「三食昼寝付き」の言葉につられて、皇帝の后候補となる。ものおじしない天衣無縫の性格。向学心旺盛で女大学では優秀な成績を修め、角人先生の推薦もあり正妃に選ばれた。
- 反乱軍から後宮を守るため他の宮女たちと共に奮闘するが、コリューンが降伏した事を知ると自らの命を盾にして敵の将軍に会いに行く。
- 双槐樹(コリューン)
- 素乾国の第18代皇帝。義理の母である琴皇太后から身を守るため後宮に身を隠す。女の様な風貌で銀河には女だと思われていた。落城の際、後宮の女たちを救うため自ら投降するが、聞き入れられず馬小屋に幽閉される。
- 世沙明(セシャーミン)
- 娥舎(女大学の寮。4人一部屋)での銀河のルームメイト。貴族出身でプライドが高い。部屋の鏡台を独占し、自慢の美しい髪をいつも梳いている。官職は嬪妃。
- 玉遥樹(タミューン)
- 娥舎での銀河のルームメイト。実は双槐樹の姉で、彼を心配して娥舎にもぐりこんでいた。2本の小刀や矛を使って複数の男相手に戦う。
- 角人先生(カクート先生)
- 後宮の女大学の先生。宦官によると素乾国一の学者で、膨大な量の本を読みそれとほぼ同数の本を書いた。コリューンの相談役にもなる。男と女の哲学について50年研究し続けてきた。
- 真野(マノ)
- 緒陀県から銀河を連れ帰った宦官。正妃となる人材を見つけた功績で出世する事を夢見る。銀河が正妃になった時は一番喜び、理想の未来に笑いを隠せなかった。
[編集] 皇太后側
- 琴皇太后(キン皇太后)
- 先帝の正妃。実の息子を皇帝にするべくコリューンの命を狙う。反乱軍に新皇帝を討ってもらおうと画策するが失敗に終わった。
- 菊凶(キッキョウ)
- カクート先生の助手。艶かしい容貌で宮女候補生から人気を集めるが、外見とは裏腹にかなりの野心家。琴皇太后と結託してコリューンの暗殺や反乱軍との和平交渉を実行する。
[編集] 反乱軍
- 幻影達(イリューダ)
- 渾沌の義兄弟の弟分。当初は平勝(ヘイショウ)という名前で用心棒などをしていたが安穏な生活に飽きて反乱を企て、反乱軍の将軍になる。遊びで始めた戦争だったがいつしか本気で玉座を望むようになる。
- 渾沌(コントン)
- イリューダの義兄弟の兄貴分。国政に少なからず不満を抱いており、読書にも飽きたことからイリューダに挙兵をもちかける。頭がよく反乱軍では参謀役を務めるが、調子に乗ったイリューダと意見が合わなくなり、銀河に協力して後宮の女たちを逃がす手伝いをする。
[編集] 原作との違い
本作は年少者、特に少女向けに製作されているが、「妊娠は性交によって発生する」ということを特に説明しておらず、そのことが分からなくても楽しめるようになっている。そのため、原作のいくつかのテーマが縮小されているか、完全に省略されており、シンデレラストーリーと「女性軍対男性軍の戦闘」というテーマのみがクローズアップされている。
- 第17代皇帝が好色であり、腹上死したことが詳しく説明されていない。
- 宦官は去勢された男子であり、皇帝と宦官以外の男が後宮には入れないこと、真野が宦官でありながら一般の男性より見事なひげを生やしている特異体質であることが説明されていない。よって銀河がコリューンを女性だと誤解する理由が、容姿と特殊な言葉遣いのみになっている。宦官とそれ以外の臣下の対立も描かれていない。
- もともとコメディーリリーフ的存在だったセシャーミンの性格が強調されている。西洋風の呼び名を、アニメ版では本名と自己紹介している。コリューン、タミューン、セト・カクートも本名である。その他、原作の架空の言語学的うんちくは登場せず、イリューダ以外の登場人物に別名はない。
- タミューンの近親恋愛が、弟に対する保護者愛に変更されている。登場人物中最強の格闘術を持っている。
- 後宮が子宮、垂戸が膣、宮女候補生の失格が排卵というアナロジーの表現が控えめにされ、年少視聴者にはほとんどわからなくなっている。
- 銀河がまだ月経がなく、ストーリー中に初潮を迎えたというエピソードが、明確には示されない。(示唆するシーンはある)
- 菊凶がセト・カクート、琴皇太后と関係を持つバイセクシャルの女たらしであるという説明がないが、興奮するとオカマ言葉を使う。
- 江葉が特殊な習俗を持った少数民族、ないし閉鎖的な地方出身であることを示すエピソードが少なく、処女でないという説明もない。輸入兵器の操作法は、一般の素乾国人には理解しがたいが、江葉は短期間に理解できた超人的天才であることが、あまり説明されていない。
- セト・カクートと菊凶の房中術の講義のシーンがない。セト・カクートの「生母が学習すると優秀な皇子が生まれる」という理論も、「賢者も天才も英雄も女の腹から生まれる」という女性優位思想も登場しない。総じて女大学の諸子百家性が薄れ、女子校のルーツ的に表現されており、ストーリー全体の学園戦争ドラマ性が増している。
- イリューダの豪傑らしさと混沌の奇策、および、この架空作品に大きなリアリティを与えている、太平天国等と類似したイリューダ軍の流民性が、原作ほど描かれていない。
- 王斉美が名前しか登場しない。琴皇太后の残忍さは、もっぱらタミューンが説明するようになった。
- 研究者の考察という形で描かれた、イリューダと黒耀樹以外の生存者の後日談がない。
以上は、原作者を含む原作ファンの不満とするところであるが、銀河たち4人の宮女候補生の行動は、原作より能動的に描かれている。
以上で登場人物・作品に関する核心部分の記述は終わりです。
[編集] スタッフ
- 企画:務台猛雄(日本テレビ)、嶋村一夫(読売広告社)
- プロデューサー:堀越徹(日本テレビ)、大野実(読売広告社)、鈴木義瀧(スタジオぴえろ)
- 総監督:鳥海永行
- 脚本:宮崎晃
- 演出:玉野陽美
- 撮影監督:小山信夫
- 美術:池田祐二(スタジオワイエス)
- 編集:瀬山武司
- 音楽:丸谷晴彦
- キャラクターデザイン・作画監督:近藤勝也
- 制作:布川ゆうじ
- 企画制作:日本テレビ
- 製作:読売広告社、スタジオぴえろ
[編集] キャスト
- 銀河:佐野量子
- 双槐樹:市川笑也
- 渾沌:小林昭二
- 幻影達:福田信昭
- 江葉:井上瑤
- 世沙明:麻上洋子
- 玉遥樹:高畑淳子
- 角人先生:田村錦人
- 真野:北村弘一
- 垂戸婆:京田尚子
- 菊凶:三ツ矢雄二
- 琴皇太后:谷育子
- 亥野:秋元羊介
- その他:水鳥鉄夫、峰恵研、伊井篤史、塚田正昭、片岡富枝、篠原あけみ、矢島晶子、中沢みどり、佐原夏子
- ナレーション:中村正
[編集] 主題歌
- 「雲のように風のように」
- 作詞:真名杏樹、作曲:釘崎哲朗、編曲:山川恵津子 歌:佐野量子