腹上死

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腹上死(ふくじょうし)とは性交中に突然死することを指して言う言葉である。ただし腹上死というとやや俗な意味が強く、医学的には性交死(せいこうし)と表現される[1]

概要 [編集]

腹上死の元の意味は男性が性交中に女性の上、すなわち正常位の体勢でに至る事を形容して使われた言葉で、その原型とみなされるものには『洗冤集録』中に意訳すると「男子が過度に励んだ結果として婦女の上で消耗し死ぬこと」という趣旨の記述が見出せる。他の体位、死者が女性でも用いることがあり性交死と同じように用いられる。

なお実際に性交中に死亡することは珍しく、むしろ行為を終えた直後から数時間内に死亡することが多い。また、自慰行為によって同様の死にかたをする者が腹上死による死亡者の約8%[2]を占めるといわれる。

公式な死亡診断などに「死因:腹上死」などと記載される事は無いが、しばしば(家族にとっては特に)不名誉な死に方として扱われる。他方、冗談やシャレの範疇で最高の理想の死に様(男子の本懐)と解する向きもあり[3]、例えばビートたけしは自身の監督作品『Dolls』記者会見で「監督にとって“究極の愛”とは?」と記者に問われた際に端的に腹上死と答えている[4]。相手が関係を公に出来ない相手の場合、119番通報がなされず迅速な医療的処置を受けられず死に至る場合がある。ただし医師が診察した場合には医師法第21条で異状死として届出義務がある。

死因[編集]

他の突然死と同様に、持病成人病等の疾患が直接的な死因であることが多い。それらを性交中の性的興奮で悪化させて死に至るのである。こういった「肉体的な機能不全」の原因としては上野正彦が報告した約500例における統計では過半数が心血管系の問題であり、脳血管系は半数をやや下回る。それ以外の死因は1%程度である。

傾向[編集]

春先に多く約7割が結婚相手か愛人など交際相手となっており、また長期出張から帰ったばかりなど過労気味のところで、無理に及んだ結果として亡くなる傾向も見られる。また30%が行為前に飲酒している。特に前述の通り、慢性病を持った人が極端な年齢差のある若い相手と行為に及ぶなど、普段よりも極端に性的興奮が増している場合に、無理がたたって致命的な事態に陥る傾向が見出せる。

広義の腹上死[編集]

性交は非常に体力を消耗する運動であるため、心臓疾患のある人などは方法を工夫して過度に体力を消耗しないような工夫が必要である。心臓疾患のため血管を広げて発作を緩和する硝酸系薬剤を使用している人が、バイアグラを使用しての性交時、それらの相互作用によって循環器障害(心臓疾患の発作など)を発生させるケースが報告されている(バイアグラの項を参照)。

このような副次的要因によって死亡しても、しばしば一般には腹上死と見なされる場合も見られる。中には性交中の事故(交通事故感電事故など)によって死亡しても、広義の腹上死とみなされるケースも見られる。

腹上死を主題とした作品[編集]

本節では、単独の作品として腹上死を主題にした作品を挙げる。

  • BODY/ボディ(映画・1992年・主演:マドンナ) - ある老人が愛人との激しい行為で急死し、老人が心臓病と知りつつ激しい行為を求めた愛人の罪が問われることになる内容。
  • Wの悲劇 (映画) - 有名女優の身代わりにパトロン男性の腹上死を隠す片棒を担ぐことになった駆け出し女優が有名女優の裏工作により大役を手にするものの、追い落とされた女優に真相を暴露される。
  • 快楽の罠(漫画・山川純一) - 高血圧の持病を持つ社長をゲイセックスにより腹上死させ、現金の詰まったトランクを奪おうと企む内容。
  • 17歳 (映画) - 売春に手を染める17歳の少女。売春相手が腹上死したことで家族にバレてしまう。

脚注[編集]

  1. ^ 上野 (2005)
  2. ^ 後述外部リンク・上野正彦の調査による 
  3. ^ ノンフィクション作家新郷由起は「理想の死に方は腹上死」と語る高齢男性は驚くほど多いとしている。70歳、ディズニーホテルで彼女と過ごす夜。高齢男性が語る人生最後のセックス
  4. ^ 「究極の愛は“腹上死”」北野武監督「Dolls(ドールズ)」を語る

参考文献[編集]