経済制裁

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経済制裁(けいざいせいさい、economic sanctions)とは、経済の力をもって制裁を加える国家行為である。ある国の行った不当もしくは違法な行為に対して行政府や議会などが民間企業や大衆に呼びかける道義的ボイコットから、封鎖海域や港湾などを設定し、同区域を航行・停泊する商船に臨検を行い、敵性国家に所属する貨物等を拿捕・没収するなど、さまざまな手段がある。また資産凍結など金融制裁の手段がとられることがある[1]

概要[編集]

経済制裁は、対象国に国外から入手していた物資を欠乏させることによって国内的な問題が生じることを狙った外交政策の一環である。古くは私掠船以前から見られるものの、英蘭戦争ナポレオン大陸封鎖令のころに確立された[2]。一般的に、経済制裁を受けた国は経済成長が抑制されるために国力が低下する傾向がある。しかし、経済制裁は軍事的強制手段と比較すれば遅効性であり、また中立国など第三国と経済関係を持つことも可能であるため、

  • 代替可能性が最小の商品を選んで規制すること。
  • 第三国からの経済支援を阻止すること。
  • 国内経済へのコストやマイナス要因に配慮すること。
  • 逆に相手からも経済封鎖される危険性を考慮すること。
  • 経済的に打撃を受け窮乏した相手国国民が悪感情を抱き、相手国をさらに敵対的・攻撃的にさせる危険性を考慮すること。

以上の5点に注意を要する。

これらの問題を解決するために、集団的な制裁を行う場合も各国の国益の相違や抜け駆けなどによって制裁が機能しない場合、また、関係国の内部で摩擦が起こる場合も考えられるため、マーガレット・ドクシーは「経済制裁は真の目標を見失ってしまいかねない鈍い手段であり、ブーメラン効果(自国経済への反動)すら生み出しかねない手段である」[要出典]と述べた。

経済制裁は非軍事的強制手段のひとつであり、武力使用(交戦)による強制外交と同様に外交上の敵対行為と見なされる[2]。もっとも、どの水準をもって敵対行為と見なすかについては国際的合意が存在しているわけではなく、一般には道義的ボイコットの水準においては宣戦布告と見なされることはない。一方で封鎖海域の設定や臨検の実施、拿捕、金融資産の凍結、敵性船舶貨物等の再保険の制限や禁止、敵性資産の没収などは敵対行為とみなされる可能性があり、紛争当事国以外の国家による経済制裁への任意の協力は戦時国際法における中立国の権利義務に抵触する可能性がある[2]

国際連合の主要機関である国際連合安全保障理事会決議に基づく経済制裁においては、一定の期間、当該国家の輸出入を停止する。その他、主要貿易相手国によるものや主要物資に掛かるものなどがある。この際に行われる臨検は経済制裁の一環であり軍事行動(制裁戦争)としての性格を持つ。

日本国憲法第9条は戦争放棄を規定しているが、個別的自衛権および制裁戦争の実施を否定するものではないと解釈されており[3]日本が独自に、あるいは国際連合の決議や同盟国等の依頼に協力して経済制裁を実施することは日本の憲法規定には抵触しない。

多国間行政協定(条約)における制裁[編集]

経済制裁は伝統的に安全保障上の非軍事的強制行為として発展してきたが、第二次世界大戦後の多国間条約時代においては、経済連携協定や環境協定、労働協定などの実効性を担保する目的として設定されることがある。WTOGATTの制裁措置や、EUECBの財政協定、京都議定書などにも制裁規定が設定されており、条約上の目標水準に違背する場合には対象国に対する貿易制限措置や制裁金が課されることがある。

一覧[編集]

経済「封鎖」の例[編集]

1928年5月14日、上海反抗日軍暴行委員会による対日経済絶交。1937年10月5日ローズヴェルトによる「隔離演説」。国際連盟1938年9月30日に対日経済制裁(連盟規約16条)を採択。もっともこの時点では日本は連盟を脱退しており、連盟各国による対日経済制裁は国際法上における一方的行為の状態であった。

過去に経済制裁を受けた国[編集]

イタリアは1937年12月11日に国際連盟を脱退。
石油輸出国機構(OPEC)諸国が石油禁輸制裁を行い、第一次オイルショックが発生(1973年)。

最近経済制裁を受けた国[編集]

現在でも経済制裁を受けている国[編集]

核兵器弾道ミサイルの開発とその保有に対する2006年国際連合安全保障理事会決議1718の採択により経済制裁を受けている。また日本が独自に行う特定船舶入港禁止法外為法を利用した経済制裁も受けている。
ウラン濃縮などの核兵器開発に対する2006年12月の安保理決議1737、2007年3月の決議1747、2008年3月の決議1803の採択により経済制裁を受けている。

なお、1962年から制裁継続中のキューバや、ミャンマージンバブエベラルーシが受けている経済制裁は、国連安保理の決議に基づくものではなく、アメリカ合衆国国際緊急経済権限法や、EUなどの個別国家による独自の制裁である。オイルショックアラブ石油輸出国機構(OAPEC)諸国によるイスラエル支持国(アメリカ合衆国やオランダなど)への制裁である。

参考文献[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Haidar, J.I., 2013. "Sanctions and trade diversion: Exporter-level evidence from Iran," VoxEU.org, 9 April
  2. ^ a b c 高橋文雄 2011.
  3. ^ 「「憲法第9条について〜自衛隊の海外派遣をめぐる憲法的諸問題」に関する基礎的資料」衆議院憲法調査会事務局、平成15年6月[1] P.12(PDF-P.16)

関連項目[編集]