ブーメラン効果

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ブーメラン効果(ブーメランこうか)、あるいはブーメラン現象(ブーメランげんしょう)とは、物事の結果がブーメランの飛行軌道のようにその行為をした者に(主に負の)効果をもたらす現象のこと。また、ブーメランのように、一度離れたはずの出発点に戻ってきてしまう現象のこと。本来ならばブーメランが手元に戻ってくることは利点であるが、この場合は投げた自分が受け損なったブーメランの打撃を受けてしまうという連想から来ていると思われる。

ブーメラン効果の用法[編集]

  • 経済学で、発展途上国に移転した生産技術が、それを供与した先進国市場を脅かす結果となる現象。
  • 心理学で、説得をしようとすればするほど、その説得者が拒絶される現象。
  • 刑法学で、誤想防衛などの処理において、一旦構成要件段階で認められた故意責任段階で阻却され、さらに過失犯を構成要件から検討することになる現象。
  • 著名人が何かの失言やスキャンダル追及行動を起こすと、直後にそれと同等かそれ以上のスキャンダルが、発言者自身に発覚し、追求を仕掛けたほうが苦境に陥ることを意味する造語インターネットスラング)。類似例として、政党のスキャンダルを追及する新聞社や放送局の社員が同等、または類似したスキャンダルに関与していた場合や、競合する他社の不祥事(捏造や誤報など)を批判する社や局にも、同様の問題が発覚するような例をさすこともある。

ブーメラン効果(経済学)[編集]

先進工業国が持つ生産技術などを、市場の拡大や他市場への参入などの目的で発展途上国に移転することがある。生産技術が確立されると生産が拡大され、やがてもともと技術を持っていた先進工業国への輸出が増大して、自国製品と競合することとなる。発展途上国の輸出品は低賃金といった地の利を生かしてシェアを伸ばし、もともと技術を持っていた企業などから見れば「市場を脅かす存在」となってしまう。

篠原三代平が提唱した言葉。実例として、命名のきっかけとなったのが、1972年から1973年の間に起こった日本の繊維製品輸入の急増である。日本企業が、低賃金で収益性の高い東南アジア諸国に技術を供与し、現地企業や合弁会社などを設立して生産を増やした結果、1年間に日本の繊維製品輸入量は3倍以上に激増した。

近年でも多数の例が見られる。日本では家電製品や繊維製品などで顕著であり、繊維製品については日本製品のシェアが著しく低下し、輸入品が大半を占めることとなった。

ブーメラン効果(心理学)[編集]

ある人物がコミュニケーションによってほかの人物を説得しようとするとき、説得をすることによって、説得される側がまったく逆の意見を抱いてしまう現象。説得される側が、説得する側を信用していないとき、あるいは説得される側がはじめから持っていた意見の影響があるときなどに起こる。

情報操作においては、ブーメラン効果を利用して、国家権力による弾圧・迫害を行うことで、国民が自らを「自由の闘士」と思い込ませる手法がある。

ブーメラン現象(刑法学)[編集]

故意または過失を構成要件要素とする日本刑法学の通説を前提とする場合に発生するとされる問題。

誤想防衛の場合には、行為者は違法性阻却事由該当事実があると認識しているから、故意が阻却され、故意犯が成立しない(通説)。ここで、誤想したことについて過失がある場合、過失犯を処罰する規定が当該罪に存在するときには、過失犯が成立する(たとえば殺人の故意が阻却されたあとの過失致死)。このとき、一旦構成要件段階で故意(構成要件的故意)があることが認められたはずなのに、行為者の責任を検討する段階で故意(責任故意)が阻却され、次に再び過失行為として構成要件該当性を検討することになってしまう。そのため、そもそも構成要件の段階で故意犯と過失犯を特徴づけてそれぞれ限定すること自体に疑問が呈されることになる。

この問題を解決・解消する策として学者が唱える説は、多岐にわたる。

政治におけるブーメラン現象[編集]

2009年8月まで日本の最大野党であった民主党が与党の不正・不祥事を見つけ、それを指摘し追及を始めてしばらくすると、党内の誰かが実はそれにかかわっていたり、他のより悪質(とされる)不祥事が暴露される。そのさまがまるでブーメランのように返ってくる様から、2ちゃんねるを始めとする一部のインターネットサイトなどにおいて、民主党がブーメラン政党(または単にブーメラン)、と揶揄されるようになった。

それ以前にも社民党辻元清美自民党(当時)・鈴木宗男不正献金斡旋収賄疑惑を追及した際に自らの秘書給与詐欺容疑で逮捕されるなど、同様の事象はあったが、インターネットスラングとして広がり始めたのは、民主党が自民党に対抗する政党として力をつけて以降である。

例としては、年金未納問題を追及していた菅直人が自民党の閣僚を「未納三兄弟」と追及した直後に自身の未納[1]が発覚して辞任に追い込まれたこと、小泉純一郎の年金違法加入問題を追及すると岡田克也が公務員在籍時に無給ではあるものの家業の取締役との兼業を届けていなかった公務員法違反問題が浮上したこと、自民党の事務所・光熱水費問題を民主党が追及すると当時の代表・小沢一郎にも政治資金管理団体の不動産取得の問題が浮上したなど、攻勢をしかけてもすぐに逆に追及される事態が続いた。

このような現象について、民主党が「ブーメラン政党」として、主にゴシップ系のマスメディアにも取り上げられるようになった。読売新聞風刺絵などでは自民党に対して描かれていることもあり、一般には認知されていない。

小泉政権時代には自民党はスキが少なく民主党のスキャンダルをたくさん握っていたが、安倍政権以降はスキを突かれるケースが増えたという指摘もある[要出典]

2007年1月、2001年7月の第19回参議院議員通常選挙における角田義一の献金疑惑が発覚。産経新聞はかつて角田が自民党出身議長秘書の疑惑を追及していたことをあげて、インターネットではブーメランと呼ばれていると報じた[2]。春から夏にかけては、自民党の新たな事務所・光熱費問題、閣僚らの失言、松岡利勝農林水産大臣の自殺、赤城徳彦の政治資金疑惑などが続いたのに対し、民主から新たな不祥事は特になく、ブーメラン政党との批判は影をひそめ、逆に自民党にブーメランが返ってくるケースが続発した。たとえば、自民党は角田の2千万円の総連献金収受を指摘したが、小泉政権下の朝銀信用組合事件で柳沢伯夫大臣が朝鮮総連傘下の同組合に1兆4000億円を注入したことが、核開発や日本を射程に収めるノドン弾道弾増備に転用された事を蒸し返され非難された。また、2008年10月、民主党の前田雄吉議員によるマルチ商法擁護問題を追求した野田聖子大臣にも、過去国会でマルチ商法を擁護する発言をしたことが反攻材料とされた。

しかし政権交代以降の2009年12月、鳩山由紀夫首相の元秘書による政治資金規正法違反が露見する事態となり、「秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべき」という自らの過去の発言が再びクローズアップされることになる。また、2010年10月、衆議院本会議で、菅直人内閣総理大臣が、「また、多くの質問に対して、多くもの質問に対して、答弁漏れを防ぐためにも、ある程度のメモを用意することは当然なことだと思っております」と発言した後に答弁漏れがあったことが判明し、衆議院議長横路孝弘が菅直人にもう一度壇上に立つことを許可した。

その一方で、蓮舫行政刷新担当相が国会議事堂内でファッション雑誌の写真撮影に応じた問題について指摘した自民党の片山さつきが、過去に同様の撮影を行っていたこと[3]や、仙谷由人内閣官房長官の「暴力装置でもある自衛隊」発言を自民党の谷垣禎一総裁が批判する一方で、同党の石破茂が過去に「自衛隊は暴力装置」と発言していたことが判明している。

2011年に首相に就任した野田佳彦は、2009年の第45回衆議院議員総選挙の応援演説で「マニフェストは書いてあることは命がけで実行し、書いていないことはやらないのがルール。書いてあったことは何にもやらず、書いてないことは平気でやるのではマニフェストを語る資格がない」と力説していた。また、同選挙のマニフェストでは任期中の消費税増税はしないとしている[4]。この選挙で民主党は大勝して第一党となり政権交代を実現したが、2012年12月16日の第46回衆議院議員総選挙では前回選挙から一転、党の議席を4分の1以下に減らした。野田は大勢が決した当日の深夜、党代表辞任に追い込まれた。

自民党の選挙前に公表した総合政策集では2月22日の竹島の日に政府主催で式典を開催すると明記し、演説で安倍晋三は「自民党はできることしか書いていない」と訴えた[5]が、総理大臣に就任した安倍は2013年2月25日に朴槿恵韓国大統領の就任式が開催されることを考慮し、式典開催に慎重な姿勢を見せた。このことから「ブーメラン現象が自民党政権にも降りかかってくるのではないか。そんな疑念さえ抱かせる」と指摘されている[6]。また尖閣諸島に公務員を常駐させることについても実施を当面先送りする方針で、公約違反との指摘が予想されている[7]

なお、新党日本田中康夫代表が記者会見で(仙谷由人官房長官が柳田稔法相に厳重注意したことに関し)「仙谷氏に厳重注意をする人は誰なのかというブーメランにならないことを願っている」[8]と発言するなど、用法の一般的な認知度は上がっていることが窺われる。

2013年11月26日の衆議院国家安全保障特別委員会で、民主党の近藤昭一が「福島ではいろいろな情報が隠ぺいされてきて、福島第一原発事故で情報が隠蔽され特定秘密保護法でさらに秘密が拡大されるとの懸念がある」と指摘したのに対し、首相の安倍晋三や少子化相の森雅子は事故直後に民主党政府が緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報を公表しなかったと反論。zakzakがブーメランと表現した[9]

脚注[編集]

  1. ^ 後に民主党は、社会保険庁から手続きの間違いを認める書面が送付されてきたと発表した[1][2]
  2. ^ 産経抄2007年1月29日]産経新聞
  3. ^ 過去突っ込まれ……片山さつき氏が開き直り 日刊スポーツ2010年10月8日
  4. ^ 【施政方針演説】福田・麻生氏演説つまみ食い ブーメラン野田首相 - 2012年1月24日 MSN産経ニュース
  5. ^ 自民・安倍総裁、マニフェスト「できることしか書いてない」財経新聞 2012年12月14日
  6. ^ 「竹島問題」にみる自民の本気度(1/3)産経新聞2012年12月24日『酒井充の政界XX話』
  7. ^ 安倍総裁、尖閣公務員常駐先送り 中国へ特使派遣検討 共同通信2012年12月22日
  8. ^ 新党日本・田中康夫代表が仙谷氏の法相への厳重注意に「ブーメランにならないよう…」と忠告 MSN産経ニュース(2010年11月17日閲覧)
  9. ^ 首相「菅政権が対応誤った」 民主議員にブーメラン 原発事故情報非公表に反論 zakzak2010年12月8日閲覧