細雪
『細雪』(ささめゆき)は、日本の作家谷崎潤一郎の長編小説。全編の会話が船場言葉で書かれた異色の作品である(谷崎自身は東京出身)。上流の大阪人の生活を描き絢爛でありながら、それゆえに第二次世界大戦前の崩壊寸前の滅びの美を内包し挽歌的切なさをも醸しだしている。阪神間モダニズム時代の阪神間の生活文化を描いた作品としても知られる。舞台は阪神間だが本質的には大阪(船場)文化の崩壊過程を描いている。(完全な崩壊は昭和20年3月の大阪空襲)但し、現在の阪神間の住人は全く入れ替わっており、延長線上で考えないほうがよい。
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[編集] 概略
谷崎は第二次世界大戦中の1942年秋に河口湖畔の勝山に滞在し、月刊誌『中央公論』で『細雪』の執筆を始める。夫人の松子、義姉、義妹たち四姉妹の生活を題材にした大作だが、1943年に軍部から「内容が戦時にそぐわない」として掲載を止められる。1944年(昭和19年)には私家版の上巻を作り、友人知人に配ったりしていたが、それも軍により印刷・配布を禁止される。疎開を経て、戦後は京都鴨川べりに住まいを移し、1948年(昭和23年)に作品を完成させる。
その後『細雪』は評価され、谷崎は毎日出版文化賞(1947年)や朝日文化賞(1949年)を受賞する。また、作家の三島由紀夫をはじめ、『細雪』は作家たちにより多くの文芸随想等で幾度か取り上げて高く評価され、読書アンケートや名著選でも必ず近代文学の代表作に挙げられる。
『細雪』の舞台となった神戸市東灘区の谷崎の旧邸は保存運動がNPO法人「谷崎文学友の会」と地元住民によって進められ、六甲ライナー建設による移築保存を1990年に成しとげ、「倚松庵」と名づけられている。
なお、作中には年号の表記が出てこないが、作中で四季の移り変わりと大きな気象災害が克明に描かれているため、この作品は1937年〜1941年までのことを書いているものだとする研究結果も発表されている [1] 。
[編集] あらすじ
大阪船場で古い暖簾を誇る蒔岡家の四人姉妹、「鶴子」「幸子」「雪子」「妙子」の繰り広げる物語。三女雪子の見合いから話は始まる。三女雪子は美人なのであるが、なぜか縁遠く、三十路に入っても嫁げず姉の幸子夫婦が奔走している。一方四女妙子は始終恋愛事件をおこして姉達をてこずらせている。なお、兵庫県芦屋市に居を構える蒔岡家の分家で傍観者的な既婚者として登場する二女幸子は、(谷崎の夫人の)松子のことである。
[編集] 映画化
『細雪』はこれまで三度映画化されている。いずれも日本映画史を代表するトップ女優が出演して話題となった。
- 『細雪』(1959年、大映) 監督:島耕二、出演:轟夕起子、京マチ子、山本富士子、叶順子、川崎敬三、根上淳、菅原謙二、船越英二、信欣三、山茶花究、浦辺粂子、三宅邦子、北原義郎、川上康子、八潮悠子、藤田佳子、穂高のり子、瀧花久子、村田知英子、ほか
- 『細雪』(1983年、東宝) 監督:市川崑、出演:岸惠子、佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子、伊丹十三、石坂浩二、岸部一徳、桂小米朝、江本孟紀、小坂一也、小林昭二、辻萬長、常田富士男、浜村純、横山道代、三宅邦子、細川俊之、三條美紀、仙道敦子、頭師孝雄、橋爪淳、ほか
[編集] テレビドラマ化
| ドラマ |
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関連項目
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- 1957年 - 日本テレビ系/脚本:西村みゆき/出演:坪内美詠子、萬代峯子、谷崎恵美子、清水将夫ほか
- 1959年 - NET(現・テレビ朝日)系/脚本:菊田一夫/出演:乙羽信子、浦島千歌子、八千草薫、太刀川洋一ほか
- 1965年 - 日本テレビ系/脚本:井手俊郎/出演:淡島千景、草笛光子、司葉子、水野久美ほか
- 1966年 - フジテレビ系/出演:浦島千歌子、児玉利和、岡田茉莉子、神山繁ほか
- 1980年 - よみうりテレビ系(『木曜ゴールデンドラマ』枠)/演出:田井洋子/出演:島田陽子、新珠三千代、加茂さくら、吉沢京子ほか
なお1965年版については、
詳細は「細雪 (1965年のテレビドラマ)」を参照
[編集] 舞台化
『細雪』は1966年に初演され、多くの有名女優たちが四姉妹を演じてきた。上演回数は1000回を超える伝統の舞台となっており、会場も帝国劇場、明治座などが使用されている。
[編集] 文献
- 谷崎潤一郎 『細雪』(中公文庫、1983年1月 ISBN 412200991X)
- 谷崎潤一郎 『細雪』(上巻)(新潮文庫、改版1997年4月 ISBN 4101005125)
- 『細雪』(中巻)(ISBN 4101005133)
- 『細雪』(下巻)(ISBN 4101005141)
- 谷崎松子 『湘竹居追想 谷崎潤一郎と「細雪」の世界』(中公文庫 1986年 ISBN 412201364X、谷崎夫人の回想記)
- 他の回想記に 『倚松庵の夢』(中公文庫、1979年 ISBN 4122006929)
- 没後刊行で 『蘆辺の夢』(中央公論新社、1998年 ISBN 4120028437)
[編集] 関連項目
- 倚松庵
- 芦屋市谷崎潤一郎記念館
- 芦屋市
- 神戸市東灘区
- 西宮市
- 市川崑、和田夏十
- 東宝 舞台を数十年公演している
- 大阪府立清水谷高等学校
- 阪神間モダニズム
- 夙川
- エドワード・G・サイデンステッカー 英語版訳者
- 阪神大水害 - この災害についても作中で書かれている。
[編集] 出典
- ^ 島田 守家 『ブルーバックス B-922 暴風・台風びっくり小事典 目には見えないスーパー・パワー』 p.68 講談社 1992年6月20日発行 ISBN 4-06-132922-7